添付一覧
○厚生年金保険法の一部を改正する法律の施行について
(昭和四〇年六月五日)
(庁保発第二二号)
(各都道府県知事あて社会保険庁年金保険部長通達)
厚生年金保険法の一部を改正する法律(昭和四○年法律第一○四号)は六月一日付で公布され、これに伴う厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令も、別添のとおり、六月五日厚生省令第三○号をもつて公布された。
今回の改正は、保険給付の内容を改善充実することにより、厚生年金保険制度をわが国年金制度における中核としてふさわしいものとしたという点で重要な意義を有するので、その実施にあたつては、社会保険庁長官通達によるほか、次の事項に留意し、遺憾なきを期せられたい。
なお、この通達においては、厚生年金保険法を「法」と、厚生年金保険法の一部を改正する法律を「改正法」と、厚生年金保険法施行規則を「規則」と、厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令を「改正規則」と、それぞれ略称する。
記
一 年金の選択
(一) 老齢年金、通算老齢年金又は特例老齢年金及び障害年金の受給権者には、その者の選択により、その一を支給し、他の支給を停止することにされたこと(法第三八条)。
(二) 選択は、年金受給選択申出書を都道府県知事に提出することによつて行なわれること(規則第三○条の二、第四三条の三及び第四四条の二)。
(三) 都道府県知事は、選択の申出があつた場合において、申出にかかる年金給付以外の年金給付の裁定を行なつた都道府県知事が他の都道府県知事であるときは、その旨を当該都道府県知事に通知しなければならないこと(規則第七九条第二項)。
二 在職者に対する老齢年金等の支給
(一) 老齢年金、通算老齢年金及び特例老齢年金(以下「老齢年金等」という。)の受給権者であつて、同時に被保険者である者に支給する老齢年金等に関する事務は、当該老齢年金等の裁定を行なつた都道府県知事が行なうものとすること。
(二) 都道府県知事は、六五歳をこえる老齢年金等の受給権者が、被保険者の資格を取得したことにより、被保険者資格取得届が提出されたとき及び(三)の通知を受けたときは、当該届書及び(三)の通知に基づいて、老齢年金等の一部支給停止の処分を行なうこと。
なお、支給停止の処分を行なつたときは、年金支給原簿又は年金裁定原簿の余白に支給停止した旨を標示すること。
(三) 都道府県知事は、六五歳をこえる老齢年金等の受給権者にかかる被保険者資格取得届の提出があつた場合において、老齢年金等の裁定を行なつた都道府県知事が他の都道府県知事であるときは、その旨を当該都道府県知事に通知しなければならないこと(規則第七九条第一項)。
なお、通知すべき事項は、老齢年金等受給権者の氏名、老齢年金等証書の記号番号、被保険者資格取得年月日並びに事業所の名称及び所在地とすること。
(四) 在職中に支給する老齢年金等の受給権者にかかる年金支給原簿又は年金裁定原簿には、被保険者の資格取得年月日、事業所の名称及び所在地並びに社会保険事務所の名称を明記しておくこと。
(五) 都道府県知事は、在職中に支給する老齢年金等の受給権者が被保険者の資格を喪失したことにより、支給停止事由消滅届が提出されたときは(規則第三四条、第四三条の四、規則附則第九項)、被保険者原票又は被保険者名簿等によつて被保険者の資格喪失の事実を確認のうえ、一部支給停止解除の処分を行なうこと。
(六) 都道府県知事は、在職中に支給する老齢年金等の受給権者が、被保険者の資格を喪失した日から起算して三○日を経過したことにより年金額改定事由該当の届書が提出されたときは(規則第三四条の二、規則第四三条の五、規則附則第九項)、老齢年金等の額を改定すること。
三 障害年金
(一) 第四種被保険者であつて同時に共済組合の組合員であるものについて、その組合員である被保険者であつた間に発した傷病につき、当該共済組合から廃疾年金又は障害年金を受けることができるときは、法による障害年金は支給されないこと(法第五四条の二)。
(二) 都道府県知事は、法附則第一六条第一項の規定によつて支給する従前の障害年金の例による保険給付を受ける権利を有する者について、その廃疾の程度を診査し、法別表第一に定める一級に該当すると認めるとき又は法別表第一に定める一級に該当しないと認めるときは、それぞれ年金の額を改定できることとされたこと。また、旧法の障害年金受給権者はその廃疾の程度が増進したときは、年金額の改定の請求をすることができること(改正法附則第一○条第二項及び第三項)。
四 遺族年金
(一) 死亡の推定
ア 被保険者又は被保険者であつた者が海難等で行方不明となつた場合でも、早期に遺族保障を行なう必要性から、遺族年金の支給に関する規定の適用について死亡推定の規定が設けられたこと(法第五九条の二)。
イ 法第五九条の二の規定は、単に死亡の推定だけでなく、死亡時期も推定するものであること。
ウ 法第五九条の二の規定は、遺族年金の支給規定の適用に限られるものである。したがつて、受給権者の死亡による未支給の保険給付に関しての死亡推定はなされないこと。
エ 法第五九条の二の規定は、昭和四○年六月一日前における行方不明又は死亡時期が不明の場合についても適用されること(改正法附則第一四条)。したがつて、昭和四○年六月一日前に死亡推定がなされたときは、その該当月分までさかのぼつて遺族年金が支給されること。
オ 被保険者又は被保険者であつた者が法第五九条の二の規定に該当したことによる遺族年金裁定請求書には、添付書類として被保険者又は被保険者であつた者が行方不明となつた事実又は死亡した事実を明らかにすることができる書類を添えなければならないこと(規則第六○条第四項)。
(二) 遺族年金の受給権は、直系血族の養子となつたときも消滅しないこと(法第六三条第一項第三号)。
(三) 第四種被保険者であつて、同時に共済組合の組合員であるものについて、その組合員である被保険者の死亡につき、当該共済組合から遺族年金をうけることができる場合においては法による遺族年金は支給されないこと(法第六八条の二)。
五 女子に対する特例による脱退手当金の支給
(一) 次に掲げる者に対しては、通算年金制度を創設するための関係法律の一部を改正する法律(昭和三六年法律第一八二号)による改正前の法の規定による脱退手当金が支給されることとなつたこと(改正法附則第一七条第一項及び第二項)。
ア 昭和四○年六月一日から六年以内に被保険者の資格を喪失した女子であつて、被保険者期間が二年以上あるもの
イ 昭和三六年一一月一日から昭和四○年五月三一日までに被保険者の資格を取得した女子(明治四四年四月一日以前に生まれた者を除く。)で、昭和四○年六月一日に被保険者でないものであり、かつ、被保険者期間が二年以上あるもの
(二) (一)の脱退手当金は、通算老齢年金の受給権を有しているとき又は通算老齢年金の受給権を取得したときは支給されないこと(改正法附則第一七条第一項及び第三項)。
(三) (一)の脱退手当金の受給権者が死亡した場合には、法第三七条の規定が準用されること(改正法附則第一七条第四項)。
六 その他
(一) 年金の支払いの調整
年金の支給を停止すべき事由及び年金を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、過払いが生じたときは、当該過払い分は、その後に支払うべき年金の内払いとみなすことができることとされたこと(法第三九条第二項)。
(二) 不正利得の徴収
偽りその他不正の手段により保険給付を受けたときは、不正利得の徴収金として、国税徴収の例により徴収できることとされたこと(法第四○条の二)。
(三) 保険給付の制限
絶対的給付制限を故意の事故による廃疾にかかる障害給付のみとし、従来、絶対的給付制限とされていた自己の故意の犯罪行為又は故意による死亡にかかる遺族給付を相対的給付制限の対象としたこと(法第七三条及び第七三条の二)。
(四) 時効
障害手当金をうける権利の消滅時効は五年間に延長されたこと。また、年金たる保険給付の全額が支給停止されている期間は、基本権たる受給権の消滅時効は進行しないものとされたこと(法第九二条第二項及び第三項)。
七 標準報酬の改訂に伴う経過措置
標準報酬が改訂されたことに伴い、昭和四○年四月における標準報酬月額が三、○○○円から六、○○○円までの者又は三万六、○○○円である被保険者について行なう新標準報酬の決定は、その者が同年五月一日に被保険者の資格を取得したものとして行なわれること。ただし、この場合においてその者が同時に健康保険の被保険者であるときは、その者の同年五月における健康保険の標準報酬の基礎となつた報酬月額を、改正法による標準報酬の基礎となる報酬月額とみなすこととされたこと(改正法附則第四条)。この標準報酬の決定事務に関し、次の届出義務が規定されたこと。
(一) 事業主は、この使用する者のうち、昭和四○年四月における厚生年金保険の標準報酬月額が三万六、○○○円であつて、健康保険の被保険者でない者があるときは、その者が昭和四○年五月一日に資格を取得したものとみなした場合の報酬月額を都道府県知事に届け出ること(改正規則附則第二項)。
(二) 健康保険組合が設立されていない事業所の事業主は、その使用する者のうち、昭和四○年四月における厚生年金保険の標準報酬月額が三万六、○○○円である者について、その者の同年五月における健康保険の標準報酬の基礎となつた報酬月額(五万円未満である者を除く。)を都道府県知事に届け出ること(改正規則附則第三項)。
(三) 健康保険組合が設立されている事業所の事業主は、その使用する者のうち、昭和四○年四月における厚生年金保険の標準報酬月額が三万六、○○○円である者について、その者の同年五月における健康保険の標準報酬の基礎となつた報酬月額(三万四、五○○円未満である者を除く。)を都道府県知事に届け出ること(改正規則附則第四項)。
八 老齢年金及び通算老齢年金の支給の特例
昭和四○年六月一日において、老齢年金を受けるに必要な被保険者期間を満たしている被保険者であつて六五歳以上であるもの又は被保険者期間が一年以上あり、かつ、通算老齢年金を受ける必要な期間を満たしている被保険者であつて六五歳以上であるものに対しては、老齢年金又は通算老齢年金が支給されることになつたこと(改正法附則第六条及び第七条)。なお、これらの年金は、昭和四○年七月分から支給されること。
九 特例老齢年金の支給に関する経過措置
昭和四○年六月一日において、特例老齢年金を受けるに必要な期間を満たしているもののうち、六○歳以上であつて被保険者でない者又は六五歳以上である被保険者に対しては、特例老齢年金が支給されることになつたこと(改正法附則第八条)。なお、この年金は、昭和四○年七月分から支給されること。
一○ 基本年金額の引き上げに伴う経過措置
(一) 昭和四○年五月一日において現に法第三章の規定によりその額が計算された年金たる保険給付をうける権利を有する者に支給する保険給付については、その額が改正後の法第三章の規定により計算した額に引き上げられること(改正法附則第九条)。
(二) 昭和四○年五月一日において現に法附則第一六条第一項の規定によつて従前の例により障害年金を受ける権利を有する者のうち、法別表第一に定める一級の廃疾の状態にあるものについては、加給金を除く額が八万四、○○○円に、その他のものについては、加給金を除く額が六万七、二○○円に、それぞれ引き上げられること(改正法附則第一○条第一項)。
(三) 昭和四○年五月一日において現に法附則第一六条第一項の規定により従前の例による遺族年金、寡婦年金、かん夫年金又は遺児年金をうける権利を有する者については、加給金を除いた額が六万円に引き上げられること(改正法附則第一一条)。
(四) 都道府県知事は、(一)から(三)までによつて年金たる保険給付の額が引き上げられる者に対して、年金更訂支給額票を交付すること(改正規則附則第五項)。
一一 遺族年金の支給停止に関する経過措置
昭和四○年六月一日において現に改正前の法第六五条の規定によりその支給が停止されている遺族年金は、昭和四○年五月分からその支給が開始されることになつたこと(改正法附則第一五条)。
一二 寡婦年金に関する経過措置
法附則第一六条第一項の規定により従前の例によつて支給される寡婦年金をうける権利の取得及び消滅については、昭和四○年六月一日以後は改正後の法第五九条第一項(妻に関する部分に限る。)及び第六三条第一項の規定の例によることとされたこと(改正法附則第一六条)。
一三 事務取扱いの変更
(一) 年齢計算については、従来、誕生日主義をとり出生日を年齢計算の期間に算入していなかつたが、今後は、年齢計算ニ関スル法律(明治三五年法律第五○号)の定めるところによることとしたこと。したがつて、誕生日の前日の終了をもつて満年齢に達することになり、たとえば、明治三九年七月一日生まれの者は、昭和四○年六月三○日に満六○歳に達することとなるので、同年七月分から老齢年金が支給されることとなること。
(二) 法第三六条第三項の規定により毎支払期月に支払う年金額に一円未満の端数がある場合、当該端数の取扱いについては、従来、国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律(昭和二五年法律第六一号)第三条の規定を適用していたが、今後は、同法第二条第一項の規定を適用することにしたこと。
(三) 保険給付の額を算出するにあたり、平均標準報酬月額を算出する場合には、円以下第四位まで算出していたが、今後は、円未満第一位を四捨五入した額をもつて平均標準報酬月額とすること。
(四) 基本年金額を計算するにあたり、第三種被保険者としての被保険者期間に一月に満たない端数があるときは、今後は、その端数は一月として算出すること。
(五) 年金証書の記号及び番号
年金証書の記号は、都道府県別及び年金の種類別に漢字化した符号を使用していたが、今後は、数字化した次の符号を使用すること。
ア 都道府県別の記号
社会保険事務所別にそれぞれ別表「社会保険事務所別符号表」の符号とすること。
イ 年金の種類別の記号
年金の種別 |
記号 |
老齢年金 |
01 |
通算老齢年金 |
02 |
障害年金 |
03 |
遺族年金 |
04 |
寡婦年金 |
05 |
かん夫年金 |
06 |
遺児年金 |
07 |
特例老齢年金 |
08 |
ウ 番号
番号は、七桁を一単位として取り扱うこと。この場合、番号の末尾の一桁は遺族年金の受給権者が二人以上ある場合における枝番号であるから、遺族年金以外の年金及び遺族年金であつても枝番号のないものについては末尾の一桁は必ず○と標示すること。なお、番号(末尾を除く。)が一○万未満である場合も、次の例のように必ず○を用いて六桁で標示すること。
(例) 345番→0003450
――――
1234番→0012340
――――
(六) 次の通知は廃止すること。
ア 昭和二六年一二月一○日保険発第二九三号厚生年金保険課長通知(保険給付の額の算出について)
イ 昭和三五年八月二日保険発第一○三号の二厚生年金保険課長通知(年金支給金額の端数処理について)
別表 略