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○船員保険における保険給付と民事損害賠償との調整について

(昭和五六年一〇月三〇日)

(庁保険発第一九号)

(各都道府県民生主管部(局)保険課(部)長あて社会保険庁医療保険部船員保険課長通知)

標記のことについては、昭和五六年一○月三○日庁保発第三○号をもつて社会保険庁医療保険部長及び年金保険部長から都道府県知事あて通知されたところであるが、これが取扱いについては次の事項に留意のうえ遺憾のないよう配意されたい。

第一 労働協約等に定められる企業内災害補償の取扱い

1 労働組合法(昭和二四年法律第一七四号)第一四条の規定に基づく労働協約等に定められる企業内災害補償については、船員保険法(昭和一四年法律第七三号。以下「法」という。)附則第一八項の規定により厚生大臣が定めた「民事損害賠償が行われた際の職務上の事由による保険給付の支給調整に関する基準(以下「支給調整基準」という。)」1の(3)イに該当するか否かについて慎重に検討し、その適正な運営を期すること。

2 企業内災害補償が行われた場合であつて、当該補償に疑義が生じた場合は、その取扱いにつき、必ず当課あて協議を行うこと。なお、協議を行う場合は、当該補償の支給が行われることとなつた労働協約書等の写を添付すること。

3 未組織船員に対して企業内災害補償に準ずる補償が行われた場合は、当該補償の支給が行われることとなつた文書等の内容を検討し、「支給調整基準」の1の(3)イに該当するか否かを判断すること。

この場合において、その内容に疑義が生じた場合は、前記2に準じて当課に協議すること。

第二 保険給付と民事損害賠償との調整事務の取扱い

1 船主責任災害損害賠償受領に関する届

船員保険の職務上の事由による保険給付を受ける者が、当該保険給付を受けることとなつた事故と同一の事故について、船舶所有者から民事損害賠償(保険給付により填補される損害を填補する部分に限る。)を受けたときは、民事損害賠償を受領した旨を別紙様式1「船主責任災害損害賠償受領届(以下「損害賠償受領届」という。)」により都道府県知事に提出させること。

2 保険給付と民事損害賠償との調整事務

保険給付を受ける者から「損害賠償受領届」が出された場合の年金給付を除く保険給付との調整に関する事務は、次により行うこと。

(1) 提出された「損害賠償受領届」及び添付書類を審査のうえ、保険給付との調整対象になる損害賠償の額を確定し、支給調整を行う保険給付別に支給調整期間及び支給調整額を給付記録台帳又は被保険者原票の給付記録欄(以下「給付記録台帳等」という。)に記載すること。

なお、「損害賠償受領届」及び添付書類のみから、損害賠償に保険給付により填補される損害を填補する部分が含まれるか否か不明であるときは、調査を行つたうえで確定すること。

(2) 民事損害賠償には、賠償の対象となる損害の種類、形態により様々のものが考えられるが、職務上の事由による保険給付の支給調整の事由となる民事損害賠償の損害項目は、「支給調整基準」において、次のとおりとされていること。

支給調整を行う保険給付

民事損害賠償の損害項目

障害年金

障害手当金

遺族年金

遺族一時金

傷病手当金

行方不明手当金

逸失利益

療養の給付

療養費

葬祭料

葬祭費用

(注) 1 保険給付には、通勤による疾病、負傷、廃疾又は死亡に関するものを含む。

2 遺族一時金とは、法第四二条ノ三第一項及び第二項に規定する一時金をいう。

3 療養の給付には、療養費を含む。

(3) 民事損害賠償の損害項目にある逸失利益、療養費及び葬祭費用とは、それぞれ次のとおりである。

ア 逸失利益

逸失利益とは、加害行為がなければ被害者が得たであろう利益をいうものであり、船主責任災害の場合、一般的には災害がなければ船員が稼働して得たであろう賃金分が該当する。

イ 療養費

療養費とは、傷病の治療に要する費用であり、狭義の治療費の他、通院費、付添看護費用、入院雑費等がある。

ウ 葬祭費用

葬祭費用とは、被害者が死亡したため一定の者が葬儀を営むために支出を余儀なくされたことによる費用をいう。

このように、逸失利益、療養費及び葬祭費用についてなされた民事損害賠償に限つて、船員保険の職務上の事由による保険給付の支給調整を行うこととなるが、これらの損害項目以外の損害を填補する民事損害賠償については、支給調整は行われないものであること。

また、(2)の損害項目についてなされた民事損害賠償が船員保険の職務上の事由による保険給付の支給調整の対象となるが、この民事損害賠償の賠償額のうち保険給付の支給水準相当分のみを支給調整の対象とすることとされたものであること。

(4) 支給調整の方法

ア 傷病手当金

傷病手当金については、「支給調整基準」の3の(1)ホに定められた調整対象給付期間内に限つて、次により計算された額に相当する額について支給調整を行うこと。

1

支給調整額=逸失利益額×給付相当率(0.6+(1/就労可能年数)×(4/12)×0.4)-既支給額


12

(注) 1 「調整対象給付期間」は、次のいずれか短い期間とする。

(1) 災害発生日から起算して九年が経過する日までの期間

(2) 被災船員が災害に遭わなければ就労が可能であると考えられる年齢(「支給調整基準」別表第1)を超えるに至る時までの期間

2 傷病手当金の支給停止は、民事損害賠償を受けた時点から開始すること。

3 支給調整額算定時における就労可能年数は、「支給調整基準」別表第1に定められる年数とするが、判決等における就労可能年数が明らかであるときは、その年数とすること。

イ 行方不明手当金

行方不明手当金の支給に先行して当該給付に見合う民事損害賠償が行われた場合には、行方不明手当金は行方不明について行われた民事損害賠償額の限度で支給調整を行うこと。すなわち、行方不明手当金の支給予定額から当該給付に見合う賠償額を差し引いて支給することとし、差額が生じない場合は全額支給停止すること。

ウ 療養費

療養の給付は、療養費に対する民事損害賠償の賠償額のうち療養の給付に見合う額の限度で支給調整を行うこと。この場合、療養の給付に見合う民事損害賠償が行われた日以後の療養の給付については、当該賠償額に達するまで返還措置をとること。

エ 葬祭料

葬祭料の支給に先行して当該給付に見合う民事損害賠償が行われた場合には、葬祭料は葬祭について行われた民事損害賠償額の限度で支給調整を行うこと。すなわち、葬祭料の支給予定額から当該給付に見合う賠償額を差し引いて支給することとし、差額が生じない場合は全額支給停止すること。

オ 民事損害賠償の内訳等が不明なものの取扱い

民事損害賠償の内訳等が不明なものの取扱いについては、「支給調整基準」の4によることとなるが、特に船員保険の給付によつて填補する損害を含める趣旨が当事者間での何らかの文書によつて明記されているもの以外は、すべて保険給付の上積みとして行われる賠償と評価して支給調整を行わない取扱いとなつているので留意すること。

(5) 支給調整に関する記録等

ア 給付記録台帳等への記載

保険給付の支給調整を行つた場合は、給付記録台帳等の給付支給欄に支給調整を行う保険給付別に当該調整の結果を朱書すること。

この場合、給付記録台帳等の備考欄に「法附則第一八項該当」と併せて朱書すること。

イ 保険給付受給者に対する支給調整通知

前記により保険給付の支給調整を行つた場合は、別紙様式2及び3により保険給付を受ける者に対して支給調整に関する通知を行うこと。

(別紙様式1)

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(別紙様式2)

(別紙様式3)