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○船員保険における傷病手当金給付適正化対策の推進について

(昭和四二年六月五日)

(庁保発第一二号)

(各都道府県知事あて社会保険庁医療保険部長通知)

船員保険事業の運営については、平素から格段の御配慮を煩わしているところであるが、疾病給付部門における傷病手当金の支給状況は、被保険者一人あたり件数、日数、金額ともに、ここ数年著しく増加の傾向にある。

傷病手当金が、疾病給付部門において大きな割合を占めていることおよび船員保険制度自体の特殊性を考慮してもなお他の制度に比して支給率がきわめて高いことに鑑み、これが対策として、別紙のとおり「船員保険傷病手当金給付適正化対策実施要領」を策定したので、同要領に基づき、その適正化対策を推進するよう、特段の御配意をお願いする。

なお、昭和四二年度においては、事業運営の最重点事項として傷病手当金給付の適正化対策を強力に推進することとしたので、実施にあたつては、同要領によるほか次の事項に留意のうえ、その目的を達成するよう御努力をお願いする。

おつて、昭和三六年八月二一日保発第六三号厚生省保険局長通知は廃止する。

1 昭和四二年度における傷病手当金調査強化月間を、昭和四二年六月および昭和四三年二月とすること。

なお、前記月間のほかに、都道府県の実情に応じ、閑休漁期あるいは上架期間等実施調査の強化を図ることが最も適当な月を選び、その月を傷病手当金調査強化月間とすること。

2 昭和四二年度においては、傷病手当金調査強化月間にあつては請求件数の二○%以上、傷病手当金調査強化月間以外の月にあたつては請求件数の一○%以上について実地調査を行なうものとすること。

〔別紙〕

船員保険傷病手当金給付適正化対策実施要領

この要領は、都道府県保険課又は社会保険事務所における船員保険傷病手当金給付の適正化対策を実施するために必要な事項を定めるものとする。

第一 審査の強化

1 審査体制の整備

(1) 関係法令、通達のほか、審査における着眼点、不正受給の事例研究、実地調査の効果的な方法等の実務について、担当職員の研修に努め、審査体制の強化をはかること。

(2) 職務に服することが不能であるかどうかの認定については、医療技官による審査を強化すること。なお、傷病が慢性疾患等であつて医学的知識に基づく判断を必要とするものについては、必ず医療技官による審査を行うこと。

2 資格関係の審査

(1) 職務外の事由による資格喪失後の期間についての請求は、資格を喪失した日前において必要とされる被保険者であつた期間の確認を確実に行うこと。

この場合、被保険者であつた期間が他府県の管轄にかかるものについては、必ず照会を行ない、確認すること。

(2) 資格取得の日又は資格取得届提出日若しくは資格取得年月日訂正届提出日と、発病負傷年月日若しくは職務に服することが不能になつた日又は傷病手当金請求書提出の日とが接近しているものについては、資格関係が適正であるかどうかについて注意すること。

3 傷病原因の審査

(1) 職務上の事由によつて発した傷病によるものとして、傷病手当金の請求があつたときは、その傷病と職務との間に相当因果関係があるかどうかについて、傷病発生時の状況、病歴、医師の意見等により慎重に審査すること。

(2) 職務上の事由によつて発した傷病によるものとして、はじめて傷病手当金の請求をするときは、傷病が職務上の事由による旨の船舶所有者の証明書を提出させること。

(3) 資格喪失前に発した傷病によるものとして、資格喪失後に傷病手当金の請求があつたときは、その傷病が資格を喪失する前に発したものかどうかについて確認すること。

この場合、その傷病が慢性疾患であるときは、病歴を徴する等審査を厳正にすること。

4 職務不能の審査

(1) 職務に服することが不能であることの判断にあたつては、照会の回答、実地調査の結果、関係資料等により多角的に検討すること。

(2) 資格喪失後の期間について職務に服することが不能であることの認定は、次の通知に基づき行なうこと。

ア 昭和三三年九月三○日保発第六一号(「船員保険の被保険者資格喪失後の期間にかかる傷病手当金の支給について」)

イ 昭和三六年八月二三日保険発第八四号(「船員保険の被保険者資格喪失後の期間にかかる傷病手当金の支給について」)

(3) 別紙に掲げる不正受給の傾向にある事例に該当するものについては、審査を特に厳正にすること。

(4) 傷病手当金請求の期間に対応するレセプトとの照合を行ない、療養の給付との関連について検討すること。とくに療養の給付を受けた事実のない傷病に関して傷病手当金の請求があつたもの等については、注意すること。

(5) 症状等から判断して、特に必要を認めないものを除き、三カ月以上傷病手当金を受給している者については、三カ月を経過したとき及びその後必要に応じて随時「療養状況・日常生活状況調査票」(別紙様式1)を提出させること。

5 給付制限の措置等

(1) 給付の制限事由に該当するかどうかの審査をし、制限を必要とするものについては必ずその措置をとること。

(2) 第三者の行為により生じたものであるかどうかの審査をし、第三者の行為により生じたものであつて、損害賠償請求権を代位取得することとなるものについては、遅滞なく求償の措置をとること。

(3) 船舶所有者が故意又は重大な過失によつて資格取得届を提出しない間に、職務上の事由による傷病が発生し傷病手当金を支給したときは、災害補償相当給付の費用の徴収の措置を必ずとること。

(4) 詐欺その他の不正行為によつて傷病手当金を受けた者については、その費用を徴収するほか給付制限の措置をとること。

第二 実地調査の強化

1 実地調査の励行

(1) 書面審査の結果、不正受給の疑いを生じたものについては、実地調査あるいは照会を確実に実施すること。

(2) 書面審査の結果不正受給の疑いを生じたもののほか、別紙に掲げる不正受給の傾向にある事例に該当するもの及び「療養状況・日常生活状況調査票」を提出しないものについては、つとめて実地調査を行なうこと。

(3) 実地調査にあたつては、請求者、医師及び船舶所有者等それぞれについて行なうこと。

この場合の調査票は「船員保険傷病手当金実地調査票」(別紙様式2)に準じて作成すること。

(4) 実地調査を行なう場合は、あらかじめ医療技官と打ち合わせをし医学的立場から必要とされる調査事項を検討しておくこと。

(5) 傷病手当金を請求した後において乗船しあるいは居住地を離れる等の理由により、請求者に対する実地調査が困難な場合が多い実態にかんがみ、請求後速やかに実地調査を行なうよう留意すること。

(6) 指定団体、船舶所有者等の代理人に対して傷病手当金を支払つたものについては、その額が確実に本人に渡されているかどうかについて随時調査を行なうこと。

2 調査強化月間の設定

(1) 実地調査を強化して、傷病手当金給付の適正化を推進するため、傷病手当金調査強化月間(以下「調査強化月間」という。)を設定すること。

(2) 調査強化月間においては、所定の調査率を達成するよう努めるものとし、調査対象の選定及び調査方法については、前記第二の1によること。

(3) 調査強化月間及び調査強化月間以外の月において、止むを得ない事情によつて調査率を達成できなかつたときは、その後において達成に努めること。

(4) 調査強化月間の調査結果については、「船員保険傷病手当金調査強化月間結果報告書」(別紙様式3)により翌月末日までに医療保険部船員保険課へ報告すること。

3 他府県への調査依頼

(1) 調査を効率的かつ迅速に行なうため傷病手当金請求者の居住地が、管轄区域外にあつて、実地調査の必要を認めるものについては、その者の居住地を管轄する都道府県保険課又は社会保険事務所(以下「保険課所」という。)に調査の依頼をすること。

(2) 実地調査の依頼を受けた保険課所は、できるだけ速やかに実地調査を行ない、その結果を回報すること。

(3) 調査依頼を受けた保険課所においては、必要に応じ、船員保険の事務を取り扱わない社会保険事務所の協力を求めて調査の効率化と迅速化を図ること。

(4) 調査依頼を受けた保険課所において、特別の事情のため実地調査に時日を要するときは、その旨を調査の依頼をした保険課所へ連絡すること。

第三 実態把握の強化

1 分析と活用

(1) 傷病手当金の受給者の実態について、船舶種類別、被保険者資格現存、喪失別の支給状況及び実地調査と支給決定との関連及び調査依頼の状況等実地調査の結果を毎月集計して把握すること。なお、支給状況及び実地調査の結果を地区別、時期別、漁種別、疾病別、事例別等多角的に随時分析すること。

(2) 支給状況及び実地調査の結果の集計又は分析の結果は、傷病手当金給付の適正化対策の推進に活用すること。

2 情報の交換

自庁における受給者の実態と、地区が近接している場合、船積貨物が共通している場合又は漁種が共通している場合等これを他の保険課所の受給者の実態と比較する必要のある場合は、保険課所相互間において情報の交換を積極的に行なうこと。

3 結果の報告

(1) 傷病手当金の支給状況及び実地調査の結果について、「船員保険傷病手当金支給状況調査報告書」(別紙様式4)により毎月翌月二五日までに医療保険部船員保険課へ報告すること。

(2) 傷病手当金の支給状況及び実地調査の結果を分析したときは、その分析結果を医療保険部船員保険課へ報告すること。

第四 広報の強化

1 主題の選定

(1) 対象者及び時期に応じた主題を選定し、広報の効果をあげるよう努めること。

(2) 主題は、次に掲げる事項のほか、保険課所の実情に即して適切と認められる事項とすること。

ア 船員保険制度の現況、傷病手当金の支給状況及び傷病手当金給付適正化の必要性

イ 傷病手当金不正受給者摘発の状況、給付制限の状況、不正受給者排除の必要性及び不正受給と費用負担の関連

ウ 傷病手当金適正化について、被保険者、受給者、船舶所有者、指定団体および医療機関それぞれの役割と協力の必要性

2 方法及び時期

対象者に応じて適切な媒体を選定するよう留意するとともに、効果のある時期を選定するよう配意すること。

(別紙)

不正受給の傾向にあるものの事例

1 閑休漁期、上架期間等操業の可能性のない期間に繰り返し同一疾病及びこれによつて発した疾病で診療を受け、傷病手当金の請求をしているもの

2 高齢者及び老齢年金の受給権の発生を待つ者が、慢性疾患による傷病手当金の請求をしているもの

3 著しく長期にわたつて傷病手当金を請求しているもの

4 症状から判断して、傷病手当金の請求期間にくらべ診療実日数が著しく少ないもの

5 傷病手当金請求書に、症状及び傷病の経過についての医師意見の記載が不十分であるもの

6 傷病手当金支給開始後に、合併症を付し請求しているもの

7 軽度と思われる消化器循環器系疾患、精神神経系疾患及び歯科系疾患により傷病手当金を請求しているもの

8 漁獲物の変更、操業区域の変更等によつて実報酬が著しく低下する期間にかかる傷病手当金の請求をしているもの

9 傷病手当金の請求件数の著しく多い船舶所有者にかかるもの

10 傷病手当金請求書に、職務に服することが不能であることの意見を記載する医師が、特定の医師に多くかたよつているもの

11 傷病手当金の請求が、特定の地域に居住する者に多くかたよつているもの

別紙様式1

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別紙様式2

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別紙様式4

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