添付一覧
○国民年金法等の一部を改正する法律による改正後の国民年金法等の施行について(施行通知)(抄)
(昭和六〇年七月一日)
(厚生省発年第四四号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)
国民年金法等の一部を改正する法律は、昭和六〇年五月一日法律第三四号として公布された。
この改正は、昭和五九年二月二四日の閣議決定(「公的年金制度の改革について」)に基づく公的年金制度改革の一環として、国民年金、厚生年金保険及び船員保険について基礎年金の導入、給付と負担の適正化等を行うことを内容とするものであるが、その立案に当たつては、年金制度改革に関する各方面の意見をも徴し、二年半にわたる関係審議会等における検討及び一年余にわたる国会審議を経て、今般、成立の運びとなつたものである。前記改正法による改正後の国民年金法等の規定は、一部の事項を除き昭和六一年四月一日から実施することとされており、これに必要な政省令についても今後十分検討の上、漸次公布する予定であるが、今般、改正の趣旨及び内容についてあらかじめ次のとおり通知するので、管下市町村その他関係者への周知徹底を図るとともに、改正法の実施に関する諸般の準備等に遺憾なきよう取り扱われたい。
なお、今回の制度改正に引き続く公的年金制度改革の実現のためには、共済年金への基礎年金の導入と制度間の格差の是正が不可欠であるが、共済年金に関するこれらの制度改正については、本年四月二〇日に「国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律」等四法案が第一〇二回国会に提出され、六月二五日に同国会の閉会に伴い継続審議とされていることを申し添える。
第一 改正の趣旨
近時、我が国の社会経済は、人口構造の高齢化の進行、産業構造・就業構造の変化等により大きく変動しつつあり、その中で年金制度のよつて立つ基盤にも大きな変化が生じつつある。いうまでもなく、年金制度は、国民が安心して老後生活を営んでいく上で主柱となるべきものであり、我が国社会が高齢化のピークを迎える二一世紀においても、公平で安定した年金制度の運営が図られるよう長期的展望に立つた制度全般にわたる見直しと改革が急務となつている。
今回の改正は、このような観点から、本格的な高齢化社会と人生八〇年代の到来に備え、公的年金制度の一元化を目指しつつ、制度の長期的な安定と整合性のある発展を図るため、国民共通の基礎年金を導入するとともに、給付と負担の均衡を長期的に確保するための措置を計画的に講ずることとし、まずその第一段階として、国民年金、厚生年金保険及び船員保険について所要の改正を行うこととしたものである。
第二 基本的事項
1 基礎年金の導入と制度体系の再編成について
(1) 我が国の公的年金制度は、現在三種七制度に分立しており、これに伴い制度間の格差、産業構造等の変化に伴う制度基盤の不安定化、重複給付・過剰給付等の問題が生じてきている。このため、今回の改正では公的年金制度全体の長期的安定と公平性の確保を図る観点から、厚生年金保険の被保険者及びその配偶者にも国民年金を適用することとし、国民年金制度をすべての国民に共通の基礎年金を支給する制度に改めるとともに、厚生年金保険制度を原則として基礎年金に上乗せする報酬比例の年金を支給する制度とし、いわゆる二階建ての体系に再編成したこと。また、船員保険の職務外年金については、年金制度一元化の趣旨にかんがみ、制度的におおむね同一の内容を有する厚生年金保険に統合したこと。
(2) 基礎年金の給付に要する費用は、自営業者世帯と被用者世帯を通じてそれぞれの制度ごとの加入者数に応じいわば各制度が「頭割り」で公平に負担することとしており、また、国庫負担については、基礎年金の給付に要する費用としてそれぞれの制度が負担する額の三分の一に集中することとし、これまで各制度独自に行つてきた国庫負担を原則として廃止することとしている。
(3) 以上の結果、全国民共通の基礎年金の導入に伴い給付の面及び負担の面において同一に取り扱われることから制度間格差が是正され、制度基盤が強化されるとともに、重複給付の支給調整等についても統一的な整理が行われるなど公的年金制度全体の公平性及び安定性が確立されるものであること。
2 給付水準及び負担の適正化について
(1) 現行制度の下では、今後、平均加入年数の伸びに応じて年金の給付水準が上昇することにより、現役の勤労者の賃金とのバランスを失することとなるとともに、将来の保険料負担が過大となり、世代間の公平と制度の円滑な運営が損なわれることが確実に予測される。このため、今回の改正では将来の年金給付水準について現役の勤労者の賃金水準とのバランスを図るとともにその保険料負担が過大にならないよう、給付と負担の均衡を図ることとしたこと。
(2) 具体的には、将来、各制度を通じて平均的な加入期間が四〇年になることを見込み、その年金水準をおおむね現在程度の水準とすることとし、国民年金については、基礎年金の額を四〇年加入した者について単身五万円、夫婦一〇万円(いずれも昭和五九年度価格。月額)としたこと。この基礎年金の水準は、老後生活の基礎的な部分を保障するものとなるよう高齢者の現実の生活費等を総合的に勘案して定めたものであること。
(3) また、厚生年金保険については、夫婦ともに基礎年金が支給されることとなることを前提としてこれに報酬比例年金を加えたものが、成熟時における標準的年金でみて現役被保険者の平均報酬の六九%程度とほぼ現行の水準で維持されるものとした。そのため定額部分の単価及び報酬比例部分の乗率を施行日において四〇歳以上六〇歳未満の者について二〇年かけて段階的に逓減させることとし、施行日において四〇歳未満の者からは新方式に完全に移行することとしたこと。なお、施行日において既に六〇歳に達している者の老齢年金及び既に受給している年金については、原則として従来どおりとしたこと。
(4) この給付水準を維持していくためには、保険料負担が今後とも上昇していくことは避けられないが、今回の改正により将来のピーク時の保険料負担は、現行制度のまま推移した場合に比べ、国民年金については、月額一万九五〇〇円程度から一万三〇〇〇円程度(いずれも昭和五九年度価格)へ、厚生年金保険については、報酬の三九%程度から二九%程度へとそれぞれおおむね三分の一程度軽減されるものと見込まれること。
3 婦人の年金について
(1) 現行制度の下では、厚生年金保険の被保険者である被用者の妻については、夫の厚生年金保険の給付によつてその年金保障の対象とされているが、妻自身が国民年金に任意加入しない限り、離婚した場合や障害となつた場合には、妻独自の年金が支給されないこととなつていた。また、妻が任意加入した場合としない場合とで世帯として受給する年金額に大きな差が生じることとなる。このため、今回の改正では被用者の妻についてもすべて国民年金を適用し、夫、妻それぞれに基礎年金を支給することにより妻の年金権の確立を図ることとし、併せて、妻が基礎年金を受給することとなること等により被用者世帯の受給する年金の給付水準について単身の場合と夫婦の場合の均衡を図ることとしたこと。なお、妻が国民年金の適用を受けることとなつてもその負担すべき費用は、夫の保険料の中に含まれることから個別の保険料負担を要しないものとし、また、これらの者がこれまで任意加入していた場合には、その保険料納付済期間は、将来支給される基礎年金に引き継がれその計算の基礎とされるものであること。
(2) 今回の改正では、これと併せて男女平等の観点から厚生年金保険に加入した女子については、その老齢年金の支給開始年齢を生年月日に応じて一五年かけて五五歳から六〇歳に引き上げることとし、また、保険料率についても毎年一〇〇〇分の一・五ずつ引き上げることとし、男女格差の解消を図ることとしたこと。
4 障害者の年金について
(1) 現行制度の下では、幼い時からの障害などの年金制度に加入する前に生じた障害については、二〇歳から障害福祉年金が支給されていたが、今回の改正では障害者に対する所得保障の充実を図る観点から、これらの障害についても障害基礎年金を支給し、その額を大幅に引き上げることとしたこと。また、現に障害福祉年金を受給している者についてもこれと同様であること。
(2) また、現行の厚生年金保険制度の下では、障害認定日を経過した後においても障害が進行し、あるいは増悪するものについて、初診日から五年以内に限つて本人の請求により障害年金を受給することができることとされている(「事後重症制度」)が、今回の改正においては、初診日から五年以上を経過した場合であつても六五歳に達するまでの間に障害等級表に定める程度の障害の状態に該当するに至つた者を厚生年金保険等の障害年金の事後重症制度の対象とすることとしたこと。なお、この規定の施行日は、法律上「公布の日から三月を超えない範囲内において政令で定める日」とされているが、今般、これを七月一日とすることとし、これに併せて、事後重症制度の改善に関して必要な経過措置を定めることとしたのでその旨御了知ありたい。
5 その他の事項について
(1) これまで国民年金事業の運営の大綱については、国民年金審議会に、厚生年金保険事業の運営の大綱については、社会保険審議会に、それぞれ諮問することとしてきたが、今後はこれらを併せて「年金審議会(仮称)」へ諮問することとしたこと。なお、当該審議会における所掌事務等は、政令で定めることとされており、また、その施行日は、法律上「公布の日から三月を超えない範囲内において政令で定める日」とされている。このため、七月中には実施することとなるのでその旨御了知ありたい。
(2) 今回の改正は、世代間及び同一世代内を通じて年金制度が公平な仕組みとなることを基本目標とするものであり、この点にかんがみ、各種の特例措置の見直しを行うこととし、また、保障の必要性に応じた給付の重点化を図ることとしたこと。
(1) これまで四〇歳以後一五年の加入期間があれば厚生年金保険の老齢年金が支給されることとされていたが、施行日において三五歳以上の者については、一定の経過措置を設けてこれを廃止することとした。
(2) 坑内員・船員の被保険者期間を三分の四倍して計算することとされていたが、この特例を廃止することとした。ただし、施行日前の期間については現行どおりとし、施行日から昭和六六年三月までの期間については、五分の六倍する経過措置を設けている。
(3) 被保険者等が死亡した場合に支給される遺族年金については、子(一八歳未満。障害の状態にある場合は二〇歳未満)がある妻や子については、遺族基礎年金を支給するほか子の数に応じて加算を行うとともに、遺族厚生年金については、中高齢の子のない妻について特別の加算を行う等遺族の態様に応じて、年金給付の重点化を図ることとした。
(4) これまで公的年金制度が分立していたこと等により一人が複数の年金を受給する事例も生じていたが今回の改正では、基礎年金については、いずれか一を選択することとし、原則としてこれと同一の事由による被用者年金のみを併給することにより併給調整の整理を行うこととした。
(3) これまで公的年金制度に加入することができなかつた在外邦人についても国民年金に任意加入することができることとし、また、任意加入しなかつた場合の在外期間を老齢年金の受給要件たる加入期間に算入することとし、その年金権の確保を図ることとしたこと。
(4) これまで厚生年金保険の適用事業所とされていなかつた五人未満の事業所については、法人形態のものについては被用者としての年金保障の必要性にかんがみ、厚生年金保険の適用事業所とすることとしたこと。
(5) 年金額の自動物価スライドは、従来どおり五%を超える消費者物価の上昇に基づいて実施されるものとするが、その実施時期を毎年四月からとしたこと。
(6) 基礎年金の水準、費用負担の在り方等、自営業者等の保険料並びに学生及び二〇歳未満の自営業者等の取扱いについては、今後更に検討することとされたこと。
第五 船員保険法の改正の要点
1 保険事故に関する事項
船員保険は、疾病、失業及び職務上災害に関し保険給付を行うこととしたこと。
2 給付に関する事項
(1) 障害年金
(1) 船員保険においては、職務上の事由又は通勤による障害について障害年金を支給することとしたこと。
(2) 障害年金の額は、最終標準報酬月額に障害の程度に応じて定める一定の月数を乗じて得た額としたこと。
(3) 同一の事由により障害年金と厚生年金保険法の障害厚生年金が支給される場合には、(2)の額に政令で定める率を乗じて得た額の支給を停止することとしたこと。
(4) 障害年金の受給権者である被保険者が被保険者資格を喪失した場合における障害年金の額の改定は行わないこととしたこと。
(5) 障害年金差額一時金は、障害年金の受給権者が死亡した場合において既に支給を受けた障害年金の総額が最終標準報酬月額にその基礎となつた障害の程度に応じて定める一定の月数を乗じて得た額に満たないときに、その差額をその遺族に支給することとしたこと。
(2) 遺族年金
(1) 船員保険においては、職務上の事由又は通勤による死亡について遺族年金を支給することとしたこと。
(2) 遺族年金の額は、最終標準報酬月額の五・五月分に相当する額に加給金及び寡婦加算額を加算した額としたこと。
(3) 同一の事由により遺族年金と厚生年金保険法の遺族厚生年金が支給される場合には、(2)の額に政令で定める率を乗じて得た額の支給を停止することとしたこと。
(4) 遺族一時金の額は、最終標準報酬月額の三六月分に相当する額としたこと。
3 その他
(1) 標準報酬及び保険料率について厚生年金保険法に準じて所要の改正を行つたこと。
(2) その他経過措置等所要の改正を行つたこと。
第六 関係法律の廃止及び改正について
1 通算年金通則法を廃止するとともに、これに伴う所要の経過措置を講じたこと。
2 厚生年金保険及び船員保険交渉法を廃止したこと。
3 その他関係法律の規定について所要の改正を行つたこと。
第七 施行期日
厚生年金保険等の標準報酬及び保険料率に関する事項については、昭和六〇年一〇月一日から、その他の事項(第二の4の(2)及び5の(1)の事項を除く。)については、昭和六一年四月一日から施行することとしたこと。
