添付一覧
○船員保険法の一部を改正する法律の施行について(施行通達)
(昭和四五年五月二一日)
(保発第二三号・庁保発第一〇号)
(各都道府県知事あて厚生省保険局長・社会保険庁医療保険部長・社会保険庁年金保険部長連名通知)
船員保険法の一部を改正する法律(昭和四五年法律第七二号。以下「改正法」という。)は、昭和四五年五月一九日に公布された。
今回の改正の趣旨ならびに改正法の内容は、左記のとおりであるので、その周知徹底を図るとともに、実施にあたつては遺漏のないよう取り扱われたい。
なお、今回の改正に基づく政令及び省令については、制定され次第おつて通知する。
記
第一 改正の趣旨
今回の改正は、業務災害による障害者等の福祉の向上を図るため、年金たる災害補償給付額を引き上げるとともに、業務災害防止の推進と災害補償給付に係る保険料の負担の公平を図るため、災害補償に相当する給付に係る保険料について、いわゆる個別メリット保険料率を導入できることとすることをその趣旨としたものであること。
第二 改正の要点
1 職務上の事由による年金の給付水準の改善に関する事項
労働者災害補償保険の障害補償年金及び遺族補償年金の給付水準の引上げに見合つて、船員保険の職務上の事由による障害年金及び遺族年金の給付水準について、次により引上げを図るものであること。
(1) 職務上の事由による障害年金受給者のうち、廃疾の程度が一級から四級までのものについては、その年金額の算式中の最終標準報酬月額に乗ずべき月数をそれぞれ次のとおり改めたこと(改正法第一条)。
廃疾の程度 |
改正後 |
改正前 |
一級 |
九・三月 |
八・〇月 |
二級 |
八・三 |
七・〇 |
三級 |
七・二 |
六・五 |
四級 |
六・四 |
六・〇 |
(2) 遺族年金受給者のうち、船員保険法第五○条第二項の規定による遺族年金受給者については、その年金額の算式中の最終標準報酬月額に乗ずべき月数を二月半分から二・七五月分に、同条第三号の規定による遺族年金受給者については、その年金額の算式中の最終標準報酬月額に乗ずべき月数を五月分から五・五月分にそれぞれ改めたこと(改正法第一条)。
(3) 既裁定の職務上の事由による障害年金ならびに船員保険法第五○条第二号及び第三号の規定による遺族年金の受給者については、その年金額を前記(1)または(2)に準じて改定することとしたこと(改正法附則第二条)。
2 個別メリツト保険料率の適用に関する事項
労働者災害補償保険においては、すでに保険料のメリツト制が実施されていることを考慮し、船員保険においても、船舶所有者ごとの災害発生率を保険料率に反映させることにより、災害防止努力を経済的な側面からさらに推進するとともに、保険料負担の公平を図るため、次により船員法に規定する災害補償に相当する給付に要する費用に充てられるべき保険料の保険料率を命令で定める率に変更できることとしたこと。
(1) 毎年三月一日前三年間の各一年間において月平均一○○人以上の被保険者を使用した船舶所有者について適用することとしたこと(改正法第二条)。
(2) 保険給付の額と保険料の額との割合(収支率)の算出方法等は、命令で定めることとし、また、個々の船舶所有者にかかる個別メリツト保険料率は、毎年変更することが考えられるため、社会保険庁長官が定めることにより、その円滑な運営を期することとしたこと(改正法第二条)。
(3) 個別メリツト保険料率の適用に関し、船舶所有者に使用される被保険者数のとらえ方ならびに収支率の算出に用いる保険給付の額及び保険料の額のとらえ方については、昭和四七年三月三一日までの間特例を設けることとしたこと(改正法附則第四条)。
3 既裁定の職務上の事由による年金額の改定に関する事項
既裁定の職務上の事由による障害年金または遺族年金の年金額については、廃疾又は死亡の原因となつた疾病又は負傷の生じた時点の標準報酬月額を基礎としているため、受給権を取得してから相当期間経過している年金の額と、新たに受給権を取得する年金の額との間には、賃金の上昇等の影響もあり、相当の格差が生じているので、当分の間、労働者災害補償保険法による障害補償年金または遺族補償年金の額の改定措置、その他の事情を勘案して、政令で定めるところにより、その額を改定することができることとしたこと(改正法附則第五条)。
4 保険料に関する事項
(1) 災害保険料率は、従来、船員保険法に明定されていたが、今回の個別メリツト制の導入に伴い、船員法に規定する災害補償に相当する保険給付に要する費用の予想額を基礎として、個別メリツト保険料率の適用を受ける船舶所有者の使用する被保険者に係る災害の発生率其の他の事情を考慮して厚生大臣が定めることとしたこと(改正法第二条)。
(2) 現在、年金部門の災害補償に相当する給付に係る保険料率は、一○○○分の一四となつているが、財政再計算の結果及び前記1の給付改善に伴う所要料率を考慮して、本年一一月一日から一二月三一日までは、これを一○○○分の二○に、また、明年一月一日からはさらに前期3の給付改善分に要する料率を加えて一○○○分の二一にそれぞれ改定を行なうこととしたことに伴い、全体の保険料率ならびに被保険者及び船舶所有者の負担する料率は、次の表に掲げる料率となる予定であること(改正法第一条、第二条及び附則第三条)。
第三 施行期日
第二の1の事項については、昭和四五年一一月一日から施行し、第二の2及び第二の3の事項については、昭和四六年一月一日から施行すること。