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○船員保険法の一部改正に関する法律の施行について(施行通達)

(昭和四四年一二月一〇日)

(庁保発第二三号・保発第四二号)

(各都道府県知事あて厚生省保険局長・社会保険庁医療保険部・年金保険部長連名通知)

船員保険の年金部門の改正に関する「厚生年金保険法及び船員保険法の一部を改正する法律」は昭和四四年一二月六日法律第七八号をもつて、失業部門の改正に関する「船員保険法の一部を改正する法律」は昭和四四年一二月一○日法律第八八号をもつてそれぞれ公布施行され、これに伴う船員保険法施行令の一部を改正する政令も昭和四四年一二月一○日政令第二八五号として公布施行された。これが実施にあたつては、さきの厚生事務次官通達(昭和四四年一二月九日厚生省発年第四一号)によるほか、次の事項に留意し、遺憾なきを期せられたい。

なお、この通達においては、改正後の船員保険法を「法」と、今回の年金部門の改正法を「年金改正法」と、今回の失業部門の改正法を「失業改正法」と、改正後の厚生年金保険及び船員保険交渉法を「交渉法」と、改正後の船員保険法施行令を「令」と、今回の改正政令を「改正令」とそれぞれ略称する。

第一 年金部門の改正に関する事項

1 任意継続被保険者に関する事項

(1) 法第二○条の規定による被保険者(以下「任意継続被保険者」という。)となるための申請期間が三か月から六か月に延長されるとともに、資格取得年月日は、最後に被保険者の資格を喪失した日又はその申請が受理された日のうち、申請者の選択する日とされたこと(法第二○条第一項及び第三項)。

(2) 保険料の前納は、社会保険庁長官の定める期間の範囲内についてできることとされたこと(令第七条)。

2 被保険者期間の計算に関する事項

同一月内に二回以上の被保険者の資格の取得及び喪失があつた場合の被保険者期間の計算については、当該月は一月として取り扱う旨が、規定上明確にされたこと(法第二二条第二項)。

3 保険給付に関する事項

(1) 死亡の推定

船舶が沈没、転覆、滅失若しくは行方不明となつたことによる被保険者又は被保険者であつた者の死亡の推定又は船舶の航行中に行方不明となつた被保険者又は被保険者であつた者の死亡の推定については、船舶の沈没等の日又は航行中行方不明となつた日が死亡の日とされたこと。また、航空機が墜落、滅失若しくは行方不明となつた場合又は航空機の航行中に行方不明となつた場合の被保険者又は被保険者あつた者の死亡の推定についても同様とされたこと(法一一条)。

(2) 未支給の保険給付

未支給の保険給付については、未裁定の給付についても遺族は自己の名でその支給を請求することができることが明らかにされたほか、未支給の保険給付を受けることができる遺族について同順位者が二人以上ある場合は、その一人のした支給の請求は同順位者全員のためにその全額につき行なつたものとみなされ、また、一人に対して行なつた支給は同順位者全員に対して行なつたものとみなされることとなつたこと(法第二七条ノ二第一項、第二項及び第五項)。

(3) 年金額の改定

被保険者である老齢年金、通算老齢年金及び特例老齢年金(以下「老齢年金等」という。)の受給権者が被保険者の資格を喪失した場合の年金額の改定は、その資格を喪失した日から起算して、被保険者の資格を取得することなく一月を経過したときに、行なうこととされたこと(法第三八条ノ二)。

(4) 六○歳以上六五歳未満の被保険者に支給される老齢年金等の支給停止

六○歳以上六五歳未満の被保険者で、標準報酬等級が第一級から第四級までであることにより受けられる老齢年金等は、その者の標準報酬等級が第一級から第四級までの等級以外の等級に該当するときは、失権の扱いではなく、その期間、その全部の支給が停止されるものであること。(法第三八条第三項、第三九条ノ五第二項)。

4 経過措置に関する事項

(1) 標準報酬に関する経過措置

(1) 標準報酬が改定されたことに伴い、、昭和四四年一○月における標準報酬月額が九○○○円又は一万円である法第一七条の規定による被保険者(以下「強制被保険者」という。)については一万二○○○円に、同月における標準報酬月額が一○万四○○○円である強制被保険者のうち報酬月額が一○万七○○○円以上の者については、改正後の一一万円から一三万四○○○円までのいずれかの標準報酬月額に、それぞれ昭和四四年一一月から改定することとされたこと(年金改正法附則第一六条第一項)。

(2) 標準報酬月額が一万二○○○円未満である任意継続被保険者の昭和四五年一月以後の標準報酬月額は、一万二○○○円とすることとされたこと(年金改正法附則第一六条第二項)。

(2) 死亡の推定に関する経過措置

改正法の公布の日前に行方不明等となつた船舶若しくは航空機に乗つていた者又は同日前に船舶若しくは航空機に乗つていて行方不明となつた者で、同日において、まだ生死不明であるか又は死亡は明らかであるが死亡の時期が明らかでないものについては、死亡の推定に関する改正後の法第一一条の規定が適用されるものであること(改正法附則第一七条)。

(3) 年金額に関する経過措置

既裁定の年金の額は、原則として改正後の規定により計算した額に改定されるが、次の特例があること。

(1) 昭和四○年五月一日において職務外の事由による障害年金の受給権者であつて、昭和四四年一一月一日において、なお当該年金の受給権を有する者については、最低保障額が一二万四八○○円に引き上げられたこと。

また、加給金の額は、今回の加給金の額の引上げに応じて引き上げられたこと(年金改正法附則第二三条)。

(2)

(イ) 昭和四一年二月一日前に受給権の発生した職務上の事由による障害年金の受給権者であつて、昭和四四年一一月一日において、なお当該年金の受給権を有する者については、昭和四一年二月一日前に適用されていた職務上の事由による障害年金の額に関する規定により計算した額と次の表の中欄の額とを合算した額とされ、その額が下欄の額に満たないときは、下欄の額に引ぎ上げられたこと。また加給金の額は、今回の加給金の額の引上げに応じて引き上げられたこと(年金改正法附側第二四条)。

廃疾の程度

金額

一級

七八〇〇〇円

一七四〇〇〇円

二級

七八〇〇〇

一六二〇〇〇

三級

六二四〇〇

一四〇四〇〇

四級

六二四〇〇

一三四四〇〇

五級

六二四〇〇

一二八四〇〇

六級

四六八〇〇

一〇六八〇〇

七級

四六八〇〇

九七二〇〇

(ロ) 前記(イ)の者が、昭和四四年一一月一日以後において、廃疾程度の変更等によりその額を改定する場合も、同様とされたこと(年金改正法附則第二五条)。

(3) 従前の寡婦年金、寡夫年金又は遺児年金の受給権者であつて、昭和四四年一一月一日において、なお当該年金の受給権を有する者については、加給金又は増額金の額を除いた額が九万六○○○円に引き上げられたこと。また、加給金の額又は増額金の額が今回の加給金の額の引上げに応じて引上げられたこと(年金改正法附則第二六条)。

(4) 昭和四一年二月一日前に受給権の発生した「職務上の事由による障害年金の受給権者の職務外の事由による死亡による遺族年金」の受給権者であつて、昭和四四年一一月一日において、なお当該年金の受給権を有する者については、昭和四一年二月一日前に適用されていた当該遺族年金の額に関する規定により計算した額と一万五六○○円とを合算した額とされ、加給金を除いた額が九万六○○○円未満であるときは九万六○○○円とされたこと。また、加給金の額は、今回の加給金の額の引上げに応じて引き上げられたこと(年金改正法附則第二七条第一項)。

(5) 昭和四一年二月一日前に受給権の発生した職務上の事由による遺族年金の受給権者であつて、昭和四四年一一月一日において、なお当該年金の受給権を有する者については、昭和四一年二月一日前に適用されていた当該遺族年金の額に関する規定により計算した額と三万一二○○円とを合算した額とされ、加給金を除いた額が九万六○○○円未満であるときは九万六○○○円とされたこと。また、加給金の額は、今回の加給金の額の引上げに応じて引き上げられたこと(年金改正法附則第二七条第二項)。

(4) 通算老齢年金に関する経過措置

明治四四年四月一日以前に生まれた者で、昭和三六年四月一日前の通算対象期間である被保険者期間と同日以後の被保険者期間とを合算した期間が七年六月以上であり、昭和四四年一一月一日において六○歳以上であり、かつ、被保険者でないもの、又は同日において六五歳以上の被保険者であるものについては、昭和四四年一一月から通算老齢年金が支給されることとされたこと(年金改正法附則第四九条第二項)

(5) 旧共済組合期間の特例に関する経過措置

旧陸軍共済組合等の組合員期間が船員保険の被保険者又は厚生年金保険の被保険者であつた期間とみなされることにより、昭和四四年一一月一日において、老齢年金又は通算老齢年金を受けるに必要な資格期間を満たし、かつ、退職及び年齢要件等を満たす場合は、老齢年金又は通算老齢年金が支給されることとなつたこと(年金改正法附則第三七条)。

(6) 併給調整に関する経過措置

改正法の公布の日前に、すでに二以上の年金給付を受ける権利を有している者の当該年金給付については、改正後の規定による併給調整は行なわず、なお従前の例によることとされたこと(年金改正法附則第二九条)。

(7) 任意継続被保険者の保険料等に関する経過措置

(イ) 任意継続被保険者が昭和四五年一月一日以後の期間の各月につき追加して納付することとなる保険料の額は、改正後の保険料の額と改正前の保険料の額との差額とされたこと(年金改正法附則第三二条第一項)。

(ロ) 前記(イ)の保険料の追加納付がなされなかつた月があるときは、老齢年金等の定額部分の額の計算にあたつては、改正後の規定による額からその一月につき二○○円を控除することとされたこと(年金改正法附則第三二条第二項)。

5 交渉法に関する事項

(1) 旧共済組合期間

(イ) 船員保険の被保険者であつた期間が厚生年金保険の被保険者であつた期間とみなされて支給される厚生年金保険の老齢年金又は遺族年金に関しては、旧共済組合期間のうち昭和一七年六月から昭和二○年八月までの期間は船員保険の被保険者であつた期間に含まれること(交渉法第二条第一項)。

(ロ) 厚生年金保険の被保険者であつた期間が船員保険の被保険者であつた期間とみなされて支給される船員保険の老齢年金又は遺族年金に関しては、旧共済組合期間のうち昭和一七年六月から昭和二○年八月までの期間は厚生年金保険の被保険者であつた期間に含まれること(交渉法第三条第一項)。

(2) 法第三四条第一項第二号に該当する者に支給する老齢年金

法第三四条第一項第二号に該当する老齢年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者となつたことにより、その老齢年金の支給が停止されている者で六○歳以上六五歳未満のものについて、厚生年金保険の標準報酬等級が第一級又は第二級であるときは加給金の額を除いた年金額の八割相当額、第三級であるときは六割相当額、第四級であるときは四割相当額、第五級であるときは二割相当額にそれぞれ加給金の額を加算した額の老齢年金を、その者から支給の停止の解除の申請があつたときに支給されること(交渉法第一六条第一項)。

(3) 通算老齢年金

厚生年金保険の通算老齢年金の受給権者が船員保険の被保険者となつた場合又は船員保険の通算老齢年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者となつた場合であつて、その者が六○歳以上六五歳未満であり、その者の船員保険の標準報酬等級が第一級から第四級までの等級又は厚生年金保険の標準報酬等級が第一級から第五級までの等級であるときは、その者が支給の停止の解除の申請をすることにより、その標準報酬等級に応じて厚生年金保険法第四六条の三第三項又は法第三九条ノ二第三項と同様にその一部の支給が停止された厚生年金保険の通算老齢年金又は船員保険の通算老齢年金が支給されることとされたこと(交渉法第一九条の三第一項及び第二項)。

(4) 老齢年金と障害年金との調整

厚生年金保険の老齢年金及び船員保険の障害年金の受給権を有する者が同時に厚生年金保険の遺族年金または船員保険の遺族年金の受給権を有するときは、厚生年金保険の老齢年金と船員保険の障害年金との併給の調整は行なわないこととされたこと。また、船員保険の老齢年金及び厚生年金保険の障害年金の受給権を有する者が同時に船員保険の遺族年金または厚生年金保険の遺族年金の受給権者を有するときは、船員保険の老齢年金と厚生年金保険の障害年金との併給の調整は行なわないこととされたこと(交渉法第二○条、法第二三条ノ七及び厚生年金保険法第三八条)。

(5) 遺族年金の額の特例

厚生年金保険の被保険者であつた期間が船員保険の被保険者であつた期間とみなされる遺族年金の額は、その額が九万六○○○円に満たないときは、九万六○○○円とされたこと(交渉法第二六条)。

第二 失業部門の改正に関する事項

1 失業保険金の加給金に関する事項

(1) 失業保険金受給者に扶養する配偶者や子がある場合の失業保険金の加給金の額は、政令で定めることとされたこと(法第三三条ノ九第三項)。

(2) その額は、配偶者については、三○円に引き上げられたこと(令第三条ノ二)。

2 失業保険金の減額に関する事項

失業保険金受給者に内職等による収入があつたときの失業保険金の減額は、その収入から一○○円を控除した額と失業保険金の額(加給金を含まない。)の合算額と標準報酬日額の八割相当額とを比較し、前者が後者を超えるときは、両者が等しくなるよう失業保険金の額(加給金を含まない。)を減額した後に加給金の額を加えることとされたこと(法第三三条ノ九第四項)。

3 失業の認定に関する事項

(1) 失業保険金受給資格者が失業の認定を受けないで死亡した場合、その認定を受けなかつた日に係る失業保険金は、その遺族が認定を受けたうえ、支給を受けることができることとされたこと(法第三三条ノ八ノ二)。

なお、傷病給付金についても同様の取扱いがされること(法第三三条ノ一六第七項)。

(2) 失業の認定の回数は、原則として二週間に一回とされたこと。これに伴つて、失業保険金の支給は、原則として、二週間に一回、その日前の一四日分を支給することとされたこと(法第三三条ノ五第一項及び法第三三条ノ一四第一項)。

4 移転費の支給に関する事項

移転費の支給は、福祉施設として行なうこととされたこと(法第五七条ノ三第一項)。

なお、次に関する規定は、従来と同様に適用されることとされたこと(法第五七条ノ三第三項)。

時効(法第五条)、戸籍の無料証明(法第八条)、文書提出又は出頭命令(法第九条ノ二)不正行為による相当給付の費用の徴収(法第二五条ノ三)、非課税(法第二六条)、譲渡・差押の禁止(法第二七条)、未支給の支給(法第二七条ノ二)、詐欺等の場合の不支給(法第五五条)、不服申立(法第六三条)、罰則(法第六九条)おつて、移転費の支給に関する事務は、受給資格者が失業の認定を受ける海運局又は公共職業安定所の所在地の都道府県知事が行なうこととされ、それに要する費用は、支出官から所属の出納官吏に資金を前渡することとされたこと(令第一条第七号及び改正令附則第二項による改正後の船員保険特別会計法施行令第六条第一項)。

5 その他の条文整理に関する事項

移転費に関する規定が法第三三条ノ一七から法第五七条ノ三に改められたことに伴い、沖縄居住者等に対する失業保険に関する特別措置法について関係条文の整理が行なわれたこと(失業改正法附則第三項)。