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○厚生年金保険法及び船員保険法の一部を改正する法律の施行について(施行通達)(抄)

(昭和四四年一二月九日)

(厚生省発年第四一号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)

厚生年金保険法及び船員保険法の一部を改正する法律は、昭和四四年一二月六日法律第七八号として公布施行された。

この改正は、最近における国民生活水準の向上と人口の老齢化傾向とにかんがみ、厚生年金保険及び船員保険の年金部門の給付を大幅に改善し、被保険者の老後保障等の充実強化を図ることを目的とするものであつて、厚生年金保険及び船員保険両制度の充実、発展のために極めて重要な意義を有するものであり、その改正の趣旨及び内容は次のとおりであるので、その周知徹底を図るとともに、この法律の実施にあたつては遺憾のないよう取り扱われたい。

第一 改正の趣旨

最近における国民生活水準の向上と人口の老齢化傾向にかんがみ、いわゆる二万円年金を実現するため、給付水準を大幅に引き上げるほか、老齢年金の支給対象者の範囲の拡大等の改善を行ない、被保険者の老後保障等の充実強化を図つたものであること。

第二 厚生年金保険法の改正の要点

1 保険給付に関する事項

(1) 基本年金額

ア 定額部分については、被保険者期間一月につき二五○円であつたのを四○○円に引き上げたこと。

イ 報酬比例部分については、平均標準報酬月額の計算について、次の措置を講じたこと。

(ア) 昭和三二年一○月以後の被保険者期間のみを計算の基礎とすること。ただし、昭和三二年一○月以後の被保険者期間が三年に満たないときは、最終三年の被保険者期間のみを計算の基礎とすること。

(イ) 一万円未満の標準報酬月額があるときは、これを一万円とみなすこと。

(2) 加給年金額

一人につき一率四、八○○円(月額四○○円)であつたのを、配偶者については一万二、○○○円(月額一○○○円)、第一子については七、二○○円(月額六○○円)に、それぞれ引き上げたこと。

(3) 老齢年金

ア 老齢年金の受給資格期間を満たしている六○歳以上六五歳未満である被保険者について、標準報酬等級が第一級又は第二級であるときは基本年金額の八割相当額、第三級であるときは六割相当額、第四級であるときは四割相当額、第五級であるときは二割相当額に、それぞれ加給年金額を加算した額の老齢年金を、その者から請求があつたときに、支給するものとしたこと。

イ 明治四四年四月一日以前に生まれた者(昭和三六年四月一日において五○歳をこえる者)は、国民年金の強制加入被保険者でないため昭和三六年四月一日以後の被保険者期間が一○年以上あれば通算老齢年金を支給するとした措置では、必ずしも年金に結びつかない場合も多いため、その者については昭和三六年四月一日以後の被保険者期間と同日前の被保険者期間とを合算して一○年以上の期間があるときは、通算老齢年金の受給要件に該当するものとみなして、通算老齢年金を支給するものとしたこと。

ウ 被保険者の資格を喪失した後の傷病により支給開始年齢前でも老齢年金の支給が受けられる障害の範囲は、改正前の厚生年金保険法においては一級及び二級であつたが、これを三級まで拡大して老齢年金を支給することとしたこと。

(4) 障害年金

三級障害年金の最低保障額が六万円(月額五、○○○円)であつたのを九万六、○○○円(月額八、○○○円)に引き上げたこと。

(5) 遺族年金

遺族年金の最低保障額が六万円(月額五、○○○円)であつたのを九万六、○○○円(月額八、○○○円)に引き上げたこと。

(6) 旧陸軍共済組合等の組合員であつた期間に関する特例

旧陸軍共済組合令(昭和一五年勅令第九四七号)に基づく旧陸軍共済組合その他政令で定める共済組合の組合員であつた期間を有する者の老齢又は死亡を支給事由とする年金たる保険給付については、昭和一七年六月から昭和二○年八月までの期間を被保険者期間とみなして、定額部分の額の計算の基礎としたこと。

2 標準報酬

標準報酬については、第一級七、○○○円から第二三級六万円までの二三等級であつたのを、第一級一万円から第二八級一○万円までの二八等級に改めたこと。

3 保険料

保険料率を次のように改めたこと。

(単位 千分ノ一)

区分

改正

昭和四六年一〇月三一日まで

昭和四六年一一月一日以後

第一種被保険者

(特例第一種被保険者)

五五

(三一)

六二

(三六)

六四

(三八)

第二種被保険者

(特例第二種被保険者)

三九

(一九)

四六

(二四)

四八

(二六)

第三種被保険者

(特例第三種被保険者)

六七

(三一)

七四

(三六)

七六

(三八)

第四種被保険者

五五

六二

六四

4 既裁定年金

現に支給されている年金についても、前記の改善に準じて、年金額の引上げを行なうものであること。

5 その他の事項

(1) 企業における人事管理の集中化傾向に即するよう二以上の適用事業所を一括して一の適用事業所とすることができる途を開いたこと。

(2) 第四種被保険者になるための申出期間は、被保険者資格喪失後三月となつていたのを六月に改めたこと。

(3) 老齢年金と障害年金とについて行なわれていた併給の調整を遺族年金にまで拡げたこと。

第三 船員保険法(年金部門)の改正の要点

1 保険給付に関する事項

(1) 老齢年金

ア 定額部分

(ア) 年額六万円であつたのを九万六○○○円に引き上げたこと。

(イ) 被保険者期間が一五年をこえる者に対する年数加算について一年につき四○○○円であつたのを六四○○円に引き上げたこと。その限度額については、三万円であつたのを四万八○○○円に引き上げたこと。

イ 報酬比例部分

平均標準報酬月額の計算について、次の措置を講じたこと。

(ア) 昭和三二年一○月以後の被保険者期間のみを計算の基礎とすること。ただし、昭和三二年一○月以後の被保険者期間が三年に満たないときは、最終三年の被保険者期間のみを計算の基礎とすること。

(イ) 一万二○○○円未満と標準報酬月額があるときは、これを一万二○○○円とみなすこと。

ウ 老齢年金の受給資格期間を満たしている六○歳以上六五歳未満である被保険者について、標準報酬等級が第一級であるときは加給金の額を除いた年金額の八割相当額、第二級であるときは六割相当額、第三級であるときは四割相当額、第四級であるときは二割相当額にそれぞれ加給金の額を加算した額の老齢年金を、その者から請求があつたときに、支給するものとしたこと。

エ 明治四四年四月一日以前に生まれた者(昭和三六年四月一日において五○歳をこえる者)は、国民年金の強制加入被保険者でないため昭和三六年四月一日以後の被保険者期間が七年六月以上あれば通算老齢年金を支給するとした措置では、必ずしも年金に結びつかない場合も多いため、その者については昭和三六年四月一日以後の被保険者期間と同日前の被保険者期間とを合算して七年六月以上の期間があるときは、通算老齢年金の受給要件に該当するものとみなして、通算老齢年金を支給するものとしたこと。

オ 被保険者の資格を喪失した後の傷病により支給開始年齢前でも老齢年金の支給が受けられる障害の範囲は、改正前の船員保険法においては一級及び二級であつたが、これを三級まで拡大して老齢年金を支給することとしたこと。

(2) 障害年金

ア 職務外の障害年金

老齢年金の改正に伴う所要の引上げを行なつたこと。最低保障額については、六万円(月額五○○○円)であつたのを九万六○○○円(月額八○○○円)に引き上げたこと。

イ 職務上の障害年金に含まれる職務外の障害年金相当分についても、アに準じて所要の引上げを行なつたこと。

(3) 遺族年金

ア 職務外の遺族年金

老齢年金の改正に伴う所要の引上げを行なつたこと。最低保障額については、六万円(月額五○○○円)であつたのを九万六○○○円(月額八○○○円)に引き上げたこと。

イ 職務上の遺族年金

職務上の遺族年金に含まれる職務外の遺族年金相当分についても、アに準じて所要の引上げを行なつたこと。

(4) 加給金

一人につき一率四八○○円(月額四○○円)であつたのを、配偶者については一万二○○○円(月額一○○○円)、第一子については七二○○円(月額六○○円)に、それぞれ引き上げたこと。

(5) 旧陸軍共済組合等の組合員であつた期間に関する特例

旧陸軍共済組合令(昭和一五年勅令第九四七号)に基づく旧陸軍共済組合その他政令で定める共済組合の組合員であつた期間を有する者の老齢又は死亡を支給事由とする年金たる保険給付については、昭和一七年六月から昭和二○年八月までの期間を被保険者期間とみなして、定額部分の額の計算の基礎としたこと。

2 標準報酬

標準報酬については、第一級九○○○円から第三○級一○万四○○○円までの三○等級であつたのを、第一級一万二○○○円から第三二級一三万四○○○円までの三二等級に改めたこと。

3 保険料

保険料率を次のように改めたこと。

(単位一○○○分の一)

区分

改正

昭和四六年一〇月三一日まで

昭和四六年一一月一日以後

失業保険適用

二〇五

二一六

二一八

失業保険非適用

一九四

二〇五

二〇七

任意継続被保険者

六七

七八

八〇

4 既裁定年金

現に支給されている年金についても、前記の改善に準じて年金額の引上げを行なうものであること。

5 その他の事項

(1) 任意継続被保険者になるための申出期間は、被保険者資格喪失後三月となつていたのを六月に改めたこと。

(2) 老齢年金と障害年金とについて行なわれていた併給の調整を遺族年金にまで拡げたこと。

第四 施行期日

(1) この法律は、公布の日から施行すること。ただし、厚生年金保険の第四種被保険者及び船員保険の任意継続被保険者についての保険料率の改正は、昭和四五年一月一日から施行すること。

(2) 第二の1の(3)のア及び5並びに第三の1の(1)のウ及び5以外は、昭和四四年一○月一日から適用すること。