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○船員保険法の一部を改正する法律の施行について

(昭和四〇年六月一六日)

(庁保発第二六号)

(各都道府県知事あて社会保険庁医療保険部長通知)

標記に関する改正の趣旨及び要点については、昭和四〇年六月一六日庁発第八号をもって社会保険庁長官から通達されたが、この法律の施行にあたっては、次の事項に留意願いたい。

なお、この通知において船員保険法の一部を改正する法律(昭和四〇年法律第一〇五号)を「改正法」と、改正法による改正後の船員保険法を「法」と、船員保険法施行規則の一部を改正する省令(昭和四〇年厚生省令第三一号)を「改正規則」と、それぞれ略称する。

第一 保険給付に関する事項

1 老齢年金及び通算老齢年金

(1) 改正法の施行の日において現に老齢年金又は通算老齢年金を受けるのに必要な資格期間を満たしている被保険者であって、六五歳以上であるものに対しては、老齢年金又は通算老齢年金が支給されること(改正法附則第五条、第六条)。この場合、年金額(加給金の額を除く。)の一〇〇分の二〇に相当する額は支給を停止されるものであること。

(2) 老齢年金又は通算老齢年金の支給を受けている者が、六五歳に達した後に被保険者となったときは、受給権は失権しないこと(法第三七条、第三九条ノ四)。

この場合、年金額(加給金の額は除く。)の一〇〇分の二〇に相当する額は、支給停止されるものである。

(3) 老齢年金又は通算老齢年金の支給を受けている被保険者がその資格を喪失したときは、前(1)及び(2)の支給停止が解除されること。

(4) 老齢年金又は通算老齢年金の支給を受けている被保険者がその資格を喪失した後被保険者となることなく三〇日を経過したときは、前後の被保険者であった期間を合算して、当該年金の額を改定し、その翌月から支給されること(法第三八条ノ二、第三九条ノ六)。

2 障害年金、障害手当金及び障害差額一時金

(1) 職務外の事由による障害年金の額は、老齢年金の額の計算の例により計算した額(被保険者であった期間が一五年未満であるときは一五年として計算する。以下「基本額」という。)に次の率を乗じて得た額とされたこと(法第四一条)。

一級の障害年金  一、二五

二級  〃    一、〇〇

三級  〃    〇、七五

(2) 職務外の事由による障害手当金の額は、基本額の一〇〇分の一五〇に相当する額とされたこと(法第四一条ノ三第二号)。

(3) 法別表第四下欄の一級第八号、二級第一五号及び三級第一四号の規定による厚生大臣が定める障害年金を支給すべき程度の廃疾の状態は、昭和四年六月一日厚生省告示第二九六号をもって告示されたこと。

(4) 昭和四〇年五月一日から改正法の施行の日の前日までの間において職務外の事由による障害年金又は障害手当金を受ける権利を取得した者の当該障害年金又は障害手当金の額は、前(1)及び(2)にかかわらずその額が従前の例により計算した額(障害年金にあっては、従前の例により計算した額が、七万六八〇〇円に満たないときは、七万六八〇〇円とする。)に満たないときは、従前の例により計算した額であること(改正法附則第一一条)。

(5) 職務外の事由による障害年金の支給を受けている者が、さらに職務外の事由による障害年金を受ける廃疾の状態に該当した場合は、前後の廃疾の状態を併合してあらたな年金が支給されること(法第四一条第三項)。

(6) 職務外の事由による障害手当金は、疾病又は負傷がなおった場合においてのみ支給することとされたこと(法第四〇条第二項)。

(7) 廃疾の程度が増減したことによる等級の変更及び前記(5)の併合認定は、昭和四〇年五月一日以後において障害年金を受ける権利を取得するものについてのみ適用されるものであり、また、障害差額一時金は、昭和四〇年五月一日以後においてその事由が生じた場合についてのみ適用されるものであること(改正法附則第二条、第八条第一項)。

(8) 昭和四〇年五月一日から改正法の施行の日の前日までの間において、改正法による改正前の船員保険法の規定により職務外の事由による障害手当金を受ける権利を取得した者が、同一の疾病又は負傷につき、改正後の規定により障害年金を受ける権利を取得したときは、その者は、当該障害手当金を受ける権利を取得したかったものとみなされること(改正法附則第一一条第三項)。

3 遺族年金等

(1) 遺族年金を受けることのできる妻についての年齢制限及び妻に対する若年支給停止が廃止されたことにより、改正法の施行の日においてその支給が停止されている遺族年金が、昭和四〇年五月分から支給され、また、昭和三七年四月一日前に死亡した被保険者又は被保険者であった者の妻であって、改正法の施行の日において、五五歳(昭和二九年五月一日前に被保険者であった者の妻であった者にあっては五二歳)に達したならば、同日において、寡婦年金の例による保険給付を受ける権利を取得することとなるものについては、その者が同日において五五歳又は五二歳に達したものとみなして、昭和四〇年七月分から、寡婦年金の例による保険給付が支給されるので、これらについて請求もれのないよう、改正の普及に努められたいこと(改正法附則第一三条、第一四条)。

(2) 被保険者又は被保険者であった者の死亡当時四〇歳未満の妻で、法第五〇条第四号から第六号までに該当したことによって遺族年金の支給を受けていたものが、四〇歳に達するまでの間に遺族年金を受ける遺族の範囲に属する子と生計を同じくしなくなっても受給権は失権しないものとされたこと(法第五〇条ノ四)。

(3) 法第五〇条第一号に該当したことによる遺族年金の額は、被保険者であった期間の月数が一八〇に満たないときは一八〇として法第三五条の例により計算した額の二分の一とされ、その額が六万円に満たないときは六万円とされたこと(法第五〇条ノ二)。

(4) 従前の寡婦年金の例による保険給付(改正法附則第一四条の規定による保険給付を含む。)を受ける権利の消滅については、改正法の施行の日以後においては、法第五〇条ノ四の規定の例によることとされたこと(改正法附則第一四条第二項)。

4 脱退手当金

(1) 脱退手当金は、障害差額一時金とも調整することとされたこと(法第四六条、第四八条)。

(2) 改正法の施行の日から起算して六年以内に被保険者の資格を喪失した女子については、当該資格を喪失したとき、二年以上被保険者であった期間があれば、脱退手当金を支給されることとされ、また、昭和三六年一一月一日から改正法の施行の日の前日までの間に被保険者の資格を取得した女子(明治四四年四月一日以前に生れた者を除く。)であって、改正法施行の際現に被保険者でない者であり、被保険者であった期間が二年以上であるものに対しても、脱退手当金を支給することとされたこと(改正法附則第一九条第一項、第二項)。

5 法第二〇条の規定にる被保険者(以下「任意継続被保険者」という。)に対する給付

(1) 任意継続被保険者について、あらたに任意継続被保険者期間中に発した疾病又は負傷による障害年金、障害手当金及び遺族年金を支給することとされたが、任意継続被保険者が同時に共済組合の組合員である場合において、当該共済組合から同一の事由による廃疾年金若しくは障害年金又は遺族年金を受けることができるときは、船員保険の障害年金又は遺族年金は支給しないこととされ、また、同一の事由による廃疾又は死亡について国家公務員災害補償法、労働者災害補償保険法等による障害補償若しくは障害補償費又は遺族補償若しくは遺族補償費の支給を受けることができるときは、船員保険の障害年金又は遺族年金は六年間その支給を停止され、障害手当金は支給しないこととされたこと(法第二〇条第四項、第四四条ノ二、第四四条ノ三、第四五条第二項)。

(2) 任意継続被保険者に対する障害年金、障害手当金及び遺族年金の支給は、昭和四〇年五月一日以後における任意継続被保険者である間に発した疾病又は負傷によって廃疾となり又は死亡した場合にのみ支給されるものであること(改正法附則第一二条)。

6 船内診療の給付制限の廃止

(1) 療養の給付(入院及び看護を除く。)について船舶内にあることによる給付制限が廃止されたが、これは改正法の施行の日(本年六月一日)前に行なわれたものについては、適用されないこと(改正法附則第一条)。

(2) 船舶による移送については、船員法第四七条に規定する船舶所有者の送還義務と調整され、船舶所有者が送還義務を有する場合には給付されないものであるから、海運局、同支局等との連絡を密にし、誤りのないよう留意されたいこと(法第五三条)。

7 特例老齢年金

(1) 被保険者であった期間(老齢年金の受給要件である期間の計算の基礎となる期間に限る。)が一年以上であった者で、老齢年金又は通算老齢年金を受けるのに必要な資格期間を満たしていないものが、次に該当した場合には、特例老齢年金が支給されること(改正法附則第一七条第一項)。

ア 次のいずれかに該当する者が、六〇歳に達した被保険者の資格を喪失したとき又は被保険者の資格を喪失した後に被保険者となることなく六〇歳に達したとき。

(ア) 被保険者であった期間に三分の四を乗じて得た期間と旧陸軍共済組合令に基づく旧陸軍共済組合その他政令で定める共済組合の組合員であった期間のうち政令で定める期間(以下「旧共済組合員期間」という。)とを合算した期間が二〇年以上であること。

(イ) 被保険者であった期間に三分の四を乗じて得た期間と厚生年金保険の被保険者期間及び旧共済組合員期間とを合算した期間が二〇年以上であること

イ 六〇歳に達した後に被保険者の資格を喪失し、又は被保険者の資格を喪失した後に六〇歳に達した者が、被保険者となることなくアの(イ)に該当したとき。

ウ アの(ア)又は(イ)のいずれかに該当する被保険者が六五歳に達したとき、又は被保険者が六五歳に達した後にアの(ア)又は(イ)のいずれかに該当したとき。

(2) 改正法の施行の日において現に特例老齢年金を受けるに必要な資格期間を満たしている被保険者であった者が、六〇歳以上であるとき又は特例老齢年金を受けるに必要な資格期間を満たしている被保険者が六五歳以上であるときは、特例老齢年金が支給されること(改正法附則第一八条)。

(3) 特例老齢年金の額は、通算老齢年金の額の計算の例により計算した額とされ、通算老齢年金と同様毎年六月及び一二月に、それぞれその前月までの分が支払われること(改正法附則第一七条第二項及び第三項)。

(4) 特例老齢年金は、船員保険法(第三九条から第三九条ノ四までを除く。)の規定並びに通算年金通則第四条第二項及び第五条の規定の適用については、船員保険法による通算老齢年金とみなされること(改正法附則第一七条第四項)。

(5) 特例老齢年金の受給権は、受給権者が死亡したとき、被保険者となったとき(六五歳に達した後に被保険者となったときを除く。)、老齢年金を受ける権利を取得したとき又は通算老齢年金を受ける権利を取得したときは、消滅すること(改正法附則第一七条第五項)。

8 その他

(1) 二つ以上の年金を受けることができる者には、その者の選択により、一つの年金を支給することとされた(法第四三条第一項)ので、被保険者又は被保険者であった者が二つ以上の年金を受けることができることとなった場合には、必らず選択の届出をするよう指導されたいこと。

(2) 改正法の施行の日前すでに二つ以上の年金を受ける権利を有する者については、改正法による改正前の船員保険法第四三条第一項の規定により、高額の年金(二つ以上の年金の額が同じであるときは、障害年金)が支給されており、改正法の施行の日以後においてもその年金が支給されることとなるが、同日以後において他の年金の支給を受けようとするときは、その者の選択によって、他の年金の支給を受けることができること。

(3) 自己の重大なる過失により、保険事故が生じたときは、療養の給付の全部若しくは一部を行なわず、又は傷病手当金、法第三三条ノ一六第一項の規定による給付、障害年金、障害手当金、遺族年金若しくは葬祭料の全部若しくは一部を支給しないことができることとされたこと。

また、自己の故意の犯罪行為により、保険事故が生じたときは、個々の事例に応じ、全部又は一部を制限するように改められたこと(法第五二条)。

(4) 既決定年金の年金額が更正される年金受給者に対しては、更正支給額票が交付されること(改正規則附則第三項)。

第二 標準報酬に関する事項

標準報酬区分が改められたことに伴い、昭和四〇年五月一日前に被保険者の資格を取得して、同日まで引き続き法第一七条の規定による被保険者の資格のある者のうち、同年四月の標準報酬月額が七、〇〇〇円、八、〇〇〇円又は五万二、〇〇〇円(報酬月額が五万四、〇〇〇円未満である者を除く。)である者については、同年五月から標準報酬を改定すること(法第四条第一項、改正法附則第四条)。

この場合において昭和四〇年四月の標準報酬月額が七、〇〇〇円及び八、〇〇〇円である者については、同年五月からその標準報酬月額を九、〇〇〇円に改定し、五万二、〇〇〇円である者については、船舶所有者から当該被保険者に係る同年五月一日現在における報酬月額算定の基礎に関する届書を船員保険法施行規則様式第二号によって提出させたうえ、所要の改定を行なうこと。

なお、標準報酬の改定を行なったときは、その旨を法第二一条ノ三第一項の規定に準じて船舶所有者に通知するとともに、船舶所有者は同条第二項の規定に準じて被保険者に通知するよう船舶所有者を指導されたいこと。

第三 保険料に関する事項

保険料率は、当分の間、失業給付を受けることができる被保険者については一、〇〇〇分の一九四(船舶所有者負担一九四分の一二九、被保険者負担一九四分の六五)、失業給付を受けることができない被保険者については一、〇〇〇分の一八三(船舶所有者負担一八三分の一二三・五、被保険者負担一八三分の五九・五)、任意継続被保険者については一、〇〇〇分の六七とし、保険財政の均衡するまで、段階的に引き上げられるべきものとされた(法第五九条第五項、第六項、第六〇条第一項)が、保険料率の引上げにより保険料の収納に困難が予想されるので、収納率の向上に一層の努力をされたいこと。

第四 その他の事項

(1) 年金の支払の調整、任意継続被保険者の保険料の前納制度を新設したこと(法第二四条ノ三、第六二条ノ三)。

(2) 時効(法第五条)、租税その他公課の非課税(法第二六条)、譲渡、差押の禁止(法第二七条)に関する規定の改正、その他所要の整理が行なわれたこと。

第五 施行期日に関する事項

本通達の第一 保険給付に関する事項のうち、2、3の(4)、4の(1)及び5、第二 標準報酬に関する事項、第三 保険料に関する事項のうち、任意継続被保険者に関する部分以外の部分並びに第四その他の事項の1の前段は、それぞれ昭和四〇年五月一日にさかのぼって適用され、これら以外の事項は同年六月一日から適用されるものであること(改正法附則第一条、第二条)。