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○船員保険法の一部を改正する法律、船員保険法施行令の一部を改正する政令、船員保険法施行規則の一部を改正する省令及び船員保険法の一部を改正する法律による保険給付の額の更正手続に関する省令の施行について
(昭和三七年四月二八日)
(保発第二〇号)
(各都道府県知事あて厚生省保険局長通知)
船員保険法の一部を改正する法律(昭和三七年法律第五八号。以下「改正法」という。)は、昭和三七年三月三一日に公布され、同年四月一日から施行された。また、船員保険法施行令の一部を改正する政令(昭和三七年政令第一四八号。以下「改正施行令」という。)及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令(昭和三七年厚生省令第一九号。以下「改正規則」という。)は、それぞれ昭和三七年四月一二日及び同年四月二七日に公布され、ともに昭和三七年四月一日にさかのぼって適用された。さらに、船員保険法の一部を改正する法律による保険給付の額の更正手続に関する省令(昭和三七年厚生省令第二〇号。以下「更正手続に関する省令」という。)は、昭和三七年四月二七日に公布、施行された。
今回の改正法等の要旨及び改正に伴い取扱上留意すべき事項は左記のとおりであるから、実施にあたって遺憾のないようご配意願いたい。
なお、今次の標準報酬の改正による財務効果等を考慮すれば、船員保険疾病部門における財政収支は、保険料収納面についての行政努力と相俟って、前年度に引き続き均衡を保つものと予想されるところであるが、今後の状勢のいかんによっては、必ずしも楽観を許さないものと考えられるので、保険料の徴収等については今後とも一層の御配意を願いたい。また、船員法改正に伴う適用範囲の拡大が予想されるので、これに即応する態勢を整備すべきことのほか、標準報酬の適正な把握、決定及び傷病手当金給付の適正化については、ここ一両年の間相当の成果を見たものの、なお改善の努力を傾注すべき状況にあるから、本年度における行政努力の重点を引き続きこれらの諸点に指向して制度の運営に万全を期することとされたい。
記
第一 改正法について
1 標準報酬に関する事項
標準報酬月額の最低を七、〇〇〇円、最高を五万二、〇〇〇円とし、標準報酬の区分を二一等級としたこと(改正法第四条第一項)。経過措置として、本年三月の標準報酬月額が五、〇〇〇円、六、〇〇〇円、又は三万六、〇〇〇円(報酬月額が三七万五、〇〇〇円未満である者を除く。)である被保険者については、四月からその標準報酬を改定することとしたこと(改正法附則第二項)。
(1) 改正法施行前の標準報酬月額が五、〇〇〇円又は六、〇〇〇円である被保険者については、その標準報酬月額を七、〇〇〇円に改定し、この旨を船舶所有者に通知すること。
なお、この改定に関しては船舶所有者からの届出は必要としないものであること。
(2) 改正法施行前の標準報酬月額が三万六、〇〇〇円である者については、船舶所有者から標準報酬月額の算定の基礎に関する届書を提出させ、当該標準報酬月額の改定を行なうこと。
(3) 改正法施行前の標準報酬等級が第三級から第一七級まで該当する被保険者については、四月以降それぞれ第一級から第一五級までに該当することとなるから、これに応じて被保険者名簿等の整理を行なうこと。
2 遺族給付の合理化に関する事項
寡婦年金、鰥夫年金及び遺児年金の制度を廃止して、これを遺族年金の制度に統合するとともに、遺族の範囲、年金額の計算方式等について遺族年金の場合と同様とする等の調整を図ったものであること(改正法第二三条)。
(1) 遺族の範囲については、従来の寡婦、鰥夫及び遺児のほか新たに父母、孫及び祖父母が加えられたこと。ただし、父母は配偶者又は子が、孫は配偶者、子又は父母が、祖父母は配偶者、子父母又は孫が、それぞれ遺族年金の受給権を取得したときは遺族年金を受ける遺族とされないものであること(改正法第二三条第三項)。したがって、今回の改正法によって設けられた遺族年金(以下「新遺族年金」という。)については、従来の遺族年金と異なる。配偶者と子との間を除き、当該遺族年金の転給はあり得ないものである。
(2) 被保険者又は被保険者であった者(以下「被保険者等」という。)の死亡当時四〇歳未満の妻に対しては、従来、被保険者等の死亡当時その者により生計を維持した一八歳未満の子又は不具廃疾により労働能力のない子がある場合には寡婦年金を支給することとされていたが、新遺族年金においては、その子と被保険者等との生計維持関係のほかに新たにその妻とその子との間に生計同一関係が必要とされたこと(改正法第二三条第二項第三号)。したがって、新遺族年金の支給開始後受給者たる妻とその子との間に生計同一関係が失われるに至ったときは、当該新遺族年金は失権又は支給停止となること(改正法第五〇条ノ四第二項)。
(3) 被保険者等の死亡当時四〇歳以上の妻に支給される新遺族年金の受給権は、当該保険事故の発生したときに発生することとされたが、その年金の支給は、その妻が不具廃疾により労働能力のない者である場合及びその妻に遺族年金を受くべき遺族の範囲に属する子がある場合以外は、その妻が五五歳に達するまで停止されるものであること(改正法第五〇条ノ五第一項)。なお、五五歳まで当該年金が支給停止される場合であっても、保険事故発生後遅滞なく遺族年金証書の交付請求の手続をとるよう当該受給権者を指導されたいこと。
(4) 遺族年金及び新遺族年金の加給金の加給については、単に受給者に遺族の範囲に属する子があるだけでなく、新たにその受給者とその子との間に生計同一関係が必要とされたこと(改正法第五〇条ノ三)。
なお、新遺族年金を受くべき夫たる配偶者(従来の鰥夫年金を受け得る夫)についても遺族の範囲に属する子と引き続き生計を同じくしているときは、加給金を加給することとされたこと。
(5) 新遺族年金の額の計算方法は、船員保険法第五〇条第一号の遺族年金の額の算出方法の例によることとし、かつ、この場合、被保険者であった期間の月数は一率にこれを一八〇として、次の算式により計算することとされたこと(改正法第五〇条ノ二第一項第四号)。
(24,000円十平均標準報酬月額×8/1000×180)×1/2
なお、この場合において、昭和二七年四月一日前及び同日以後において被保険者であった者の遺族に支給する新遺族年金の額を計算するときは、昭和二七年四月一日前の被保険者であった期間の標準報酬月額は、平均標準報酬月額の計算の基礎としないものであること(改正法附則第五項)。
(6) 以上の改正規定は、本年四月一日以後に保険事故の発生したものについて適用されるものであって、同日前に死亡した被保険者等の遺族に関する保険給付については、同日以後もなお従前の例によって支給されるものであること(改正法附則第三項)。
(7) 従前の例によって支給する寡婦年金、鰥夫年金及び遺児年金については、その額が一万四八八〇円に満たないものは一万四八八〇円に引き上げられ、本年四月以後の月に係る分から適用されることとなったこと(改正法附則第四項)。
この経過措置に該当する受給者については、五月支払期分から一部改訂された年金額が支給されることとなるが、年金額の改訂は、更正手続に関する省令に基づき、受給者の請求をまたないで行なわれるものであること。
また、改正法施行前の保険事故発生分を支給決定する際には、支給決定通知書に改正法施行前の年金額と同法施行後の年金額とを明記するとともに、本年四月以後の年金額として改正法に基づく年金額を記載した年金証書を交付する予定である。
第二 改正施行令について
改正法の施行に伴い、船員保険法施行令中、寡婦年金、鰥夫年金及び遺児年金の字句を削ったものであること。
第三 改正規則について
改正法の施行に伴い、船員保険法施行規則中、寡婦年金、鰥夫年金及び遺児年金に関する規定を削り、あわせて遺族年金に関する規定を整備したものであること。
なお、改正規則の詳細については、別途通知する予定である。
第四 更正手続に関する省令について
改正法附則第四項の規定に基づき、従前の例により支給される寡婦年金、鰥夫年金又は遺児年金の額の更正に関する手続を定めたものであること。
なお、貴管内に居住する受給者に対する年金額更正の通知は、当局から別途送付する「更正支給額票」により貴職を経由して行なう予定である