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○船員保険法の一部を改正する法律の施行について

(昭和三二年五月一三日)

(保発第三九号)

(各都道府県知事あて厚生省保険局長通知)

標記の件に関し、その大綱については、昭和三二年五月一日厚生省発保第九九号をもって事務次官から通達されたところであるが、同法の施行に当っては、同通達によるほか、更に左記の事項に留意して、遺漏なきを期せられたい。

なお、この通達においては、改正後の船員保険法を「法」、改正前の船員保険法を「旧法」、改正後の船員保険法施行令を「令」、改正後の船員保険法施行規則を「規則」、改正前の船員保険法施行規則を「旧規則」とそれぞれ略称する。

第一 標準報酬の等級区分に関する事項

標準報酬は、四○○○円の等級を削り、五○○○円を第一級とし、以下順次一級ずつ繰り上げて第一八級までとしたのであるが、法附則第三条の規定により、本年三月の標準報酬月額が四○○○円である者については四月からその標準報酬を改定するものであるから、この旨を法第二一条ノ三第一項の規定に準じて船舶所有者に通知するものとし、改正前の標準報酬等級の第二級から第一九級までに該当する者については、これらの者が四月以降それぞれ第一級から第一八級までに該当することとなるから、これに応じて被保険者名簿等の整理を行うこと。

なお、右のいずれの場合においても、船舶所有者からの標準報酬月額変更届は必要としないものであること。

第二 歩合報酬の改定及び算定方法に関する事項

1 報酬が歩合により定められる被保険者の標準報酬の改定については、法第四条第四項及び第五項の規定により規則第一八条各号に掲げる要素の変更に基く場合及び基準月現在による算定に基く場合にこれを行うこととされたが、報酬の全部が歩合で定められる被保険者については勿論、その一部が歩合で定められる者についても右条項の適用があるものであるから、規則第九条及び第九条ノ二の規定に基き、報酬月額変更届及び報酬月額基準日届を提出させること。

なお、基準日は、別途厚生大臣の告示をもって定められるものであること。

2 歩合により報酬が定められる場合の報酬月額の算定方法については、従前の規定の内容が必ずしも明確でなかったのを改め、法第四条ノ二第一項第五号イ、ロ又はハに掲げる額を基準として算定することと改められたのであるが、原則として前年における実績を基準として算定する趣旨であること。

なお、この算定方法については、別途厚生大臣の告示をもって定められるものであること。

第三 一部負担に関する事項

1 法第二八条ノ三に規定する初診の際の一部負担金並びに規則第二五条及び第二六条に規定する命令をもって除外される初診及び二以上の診療科名を有する保険医療機関についての取扱は、健康保険の初診の際の一部負担の場合と全く同様であること。

2 法第二九条ノ三の規定により一部負担金が、船員法第八九条に規定する療養補償に相当する療養の給付及び療養費の支給に係るものであるときは、当該一部負担金の費用は船舶所有者が負担すべきものとされ、かつ、船舶所有者のこの負担責任は船員法に規定する災害補償責任とみなされ、船員法の、審査及び仲裁の規定、船員労務官による監督等の規定及び罰則の規定が適用されるものであるから海運局等とも十分連絡のうえ、特にこの点に関して船舶所有者及び被保険者に対し周知徹底を図り、この一部負担金が被保険者の最終的負担となることのないよう努めること。

なお、一部負担金の費用を船舶所有者が負担するを要しない場合は、予備員期間中等雇入契約終了後に職務外の傷病にかかったとき、当該傷病について療養を受けることができる状態にある時から三箇月を経過した後に係るとき及び当該傷病について船員に故意又は重大な過失があったときである。

3 初診の際における一部負担金の支払は、単に保険医療機関においてのみならず、行政庁の指定する医療機関においてもまた必要とされるが、例外として、法第二八条ノ七に規定する如く、船舶所有者が開設する病院又は診療所において、当該船舶所有者に使用され又は使用された被保険者又は被保険者であった者が船員法第八九条に規定する療養補償に相当する療養の給付を受ける場合に限り、一部負担金の支払は不要であること。

第四 保険医療機関及び保険医療担当者に関する事項

1 船員保険の保険医療は、原則として、健康保険法第四三条第三項第一号に規定する保険医療機関が担当することとされ、右保険医療機関が療養の給付を担当する場合及び当該保険医療機関において保険医が診療に当る場合の準則については、法第二八条ノ二の規定により健康保険法第四三条ノ四第一項及び第四三条ノ六第一項の規定による命令の例によることとされたので、今回制定公布された省令「保険医療機関及び保険医療養担当規則」によるべきものであること。また、法第二八条ノ五の規定により健康保険法第四三条ノ二の規定が準用されるので、保険医療機関において船員保険の診療に従事する医師等は右の規定による登録を受けていなければならないものであること。

2 法第二八条第三項第二号の規定に基き、行政庁は、船員保険の福祉施設である病院及び診療所並びに船舶内にある診療所等を指定することとなるが、これらの医療機関において船員保険の診療に従事する医師又は歯科医師について、健康保険法による登録を受ける必要はないものであること。然しながら、これらの医療機関において行われる療養の給付及び診療に関する準則については、法第二八条ノ六の規定により保険医療機関の場合と同様に健康保険法の規定による命令の例によることとされたので、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」によるべきものであること。

なお、右の医療機関のうち、船舶内にある診療所の指定は、令第一条第五号の規定により従前どおり都道府県知事がこれを行うこととなるが、昭和三二年五月一日において現に指定を受けているものについては、法附則第六条の規定により同年七月三一日までは法第二八条第三項第二号による指定があったものとみなされるので、同日までに新たな指定を行うべきものであること。また、いわゆる船員保険病院等の指定及び法第二八条第四項に規定する休療所の指定は、別途厚生大臣の告示をもって実施ずみであること。

なお、船員保険病院等が健康保険の被保険者等の診療を行おうとする場合は、健康保険法第四三条第三項第一号の規定により都道府県知事の指定を受けなければならないものであること。

第五 資格喪失後の療養の給付等に関する事項

1 法第二八条第二項の規定により職務外の事由による傷病に対する療養の給付については、新たに一定の資格期間が設けられたが、職務外傷病に関する給付であっても船員法第八九条の療養補償の範囲に属するものについては、資格期間の制限の規定は及ばないので、雇入契約存続中に傷病にかかった者(その傷病について故意又は重大な過失があったときを除く。)については、療養を要し、かつ、それを受け得る状態にある時から三箇月の範囲内においては従来どおりの取扱で差し支えないこと。

2 1の資格期間は、健康保険法の場合と異り、必ずしも引き続いたものであることを要しないほか、この資格期間には法第一五条に規定する組合員たる機関をも含むものであること。

3 法第二八条第二項の規定は、法第三○条第三項、第三一条ノ二第七項、第三二条ノ四及び第三三条第四項の規定により傷病手当金、家族療養費、分べん費、出産手当金及び育児手当金の支給並びに配偶者の育児手当金の支給を受ける場合に準用され、これに伴い、規則第二九条、第四三条、第四四条及び第四七条ノ五から第四七条ノ八までの規定において所要の改正が行われたこと。

なお、昭和三二年五月一日前に資格を喪失した者で同日において療養の給付を受けているものについては、同一の傷病に限り従前の例によるものとするほか、法附則第八条において所要の経過措置がとられていること。

第六 入院独身者の傷病手当金に関する事項

法第三○条第二項第三号ただし書の規定により病院若しくは診療所に収容され、又は自宅以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事の支給を受けている者であって被扶養者のないものに支給する職務外の事由による傷病手当金の額は一○○分の五○に減額されたが、これに伴い、規則第四四条の規定において所要の改正が行われたこと。

なお、昭和三二年五月一日において現に傷病手当金の支給を受けている者については、法附則第九条の規定により従前の例によるものとする経過措置がとられていること。

また、これに関連して、旧規則第三七条の入院届の規定は削除され、他方、休療所への入所手続が規則第二八条の規定により明確化されたこと。

第七 保険料率の改正に関する事項

保険料率については、法第五九条第五項の改正により一○○○分の五の引上がなされたが、法附則第一○条により当分の間、失業保険金の支給を受けることができないものについては、一○○○分の七の引上がなされることとなった。失業保険金の支給を受けることができない一般漁船関係については、従来保険料収納状況が必ずしも良好でなかったが、今回の改正による引上の率が高いので、今後の保険料収納については延滞金徴収滞納処分等を励行するほか、駐在員制度の活用により収納率の維持向上に特に留意すること。

第八 被扶養者の範囲等に関する事項

被扶養者の範囲(法第一条第二項、法附則第二条)、不正行為による受給者に対する費用徴収(法第二五条ノ三)、船舶所有者に対する質問検査権、文書提出命令権等(法第九条ノ二、規則第九八条ノ二)、医師、受給者等に対する質問権、文書提示命令権等(法第九条ノ三、規則第九八条ノ三)、文書提出命令等に従わない場合の受給者に対する給付の制限(法第五六条、第五七条)、保険料の繰上徴収の場合の滞納処分(法第一二条、第一二条ノ二)、保険料の先取特権の順位(法第一三条)、相続、合併、解散等の場合における保険料納付義務の承継及び有価証券による委託納付(法第一四条、規則第九八条ノ五)、罰則(法第六八条から第七○条まで)等の規定については、健康保険法と同様の趣旨から同様の改正が行われたものであること。

第九 その他の事項

1 特別脱退手当金については、法(昭和一四年法律第七三号)附則第二項、第三項及び第四項並びに法別表第六及び別表第七の改正により、従前の規定を整理し、併せて別表第八を設けることにより、昭和二九年五月一日前における被保険者期間が三年未満であって、昭和一五年六月一日前一五年間において被保険者となるべき資格を有する船員として船舶に乗り組んだ期間が一四年未満である者に対する脱退手当金の額について従前の規定の不備を補ったものであること。

2 船舶所有者が故意重過失により届出を怠った場合における災害補償相当給付の費用の徴収については、旧法第二五条ノ二の規定においては死亡が推定される期間内に届出があれば同条の規定の適用の余地がないものと解されていたので、同条第二項の規定を新設し、これが不備を補ったものであること。

なお、この改正規定については、法附則第五条の規定による経過措置がなされていること。

3 法附則第一二条の規定において厚生年金保険及び船員保険交渉法の一部を改正したのであるが、これらはいずれも従前の規定の不備を補い、又はその明確化を図ったものであり、同法の施行の日まで適用を遡及するものであること。

第一○ 省令改正に関する事項

1 規則第一八条各号に掲げる要素のうち、同条第一○号に掲げる事情とは、例えば北洋漁業におけるサケ、マスの漁獲量の制限、ビキニ海域における水爆実験の実施等国際事情を意味するものであること。

なお、本条に掲げる要素の変更そのものは、規則第九条の規定による届出事由とはならないのであって、その変更により標準報酬月額の変更を生ずる場合にのみ届出を要するものであること。

2 規則第九条ノ二の規定による届出は、様式第二号による船員保険被保険者報酬月額基準日届をもって行うこととされたが、この届出に基く算定が従前の報酬月額の変更を来す場合には、報酬月額変更届による改定の場合の例によって標準報酬改定の手続を行うものとすること。

3 規則第九条第二項及び第九条ノ二第二項に規定する報酬月額の算定基礎の明細を記載した書類は、水揚高、大仲経費、乗組員の持歩の合計、被保険者の持歩、労務機関、船主と船員の配分率等を記載した書類を意味するものであること。

4 様式第一号の備考の改正は、二重台帳の作成を防止するためにとられた措置であるから、特に備考第一○号ホの記載の励行に努めさせること。

5 被保険者証及び被扶養者証の改正は、様式第四号及び様式第五号の改正をもって行われたが、本改正規定の施行日は六月一日であり、旧様式による被保険者証及び被扶養者証は六月末日まで有効なものとされたから、六月中に旧証の回収及び新証の交付を行うこと。

なお、これに伴い、規則の附則第三条の規定により本年九月一日における更新はこれを行わないこととされたから、注意すること。

また、被保険者証の様式の改正は、特に一部負担金記録欄の新設のために行われたものであるが、これは一部負担金のうち船舶所有者の負担となるべき金額が被保険者に確実に交付されることを担保するためにとられた措置であるから、この欄の記載の励行につき指導すること。

規則どおり実行せしむるを適当と認められる組合については、従前同様一部負担を実施せしめるよう指導されて差し支えないが、新法附則第七条の設けられた目的にかんがみ、組合において自主的に還元することに決定し規約改正の認可申請のあった場合においては、これを尊重し、監督権によって規約改正の認可をせず、または保留する等のことのないよう配意すること。

なお、家族療養費の支給につき付加給付を大幅に実施している組合にあっては、改正一部負担制度を実施する場合において、被保険者に対する給付を越えることのないよう配意し指導すること。