添付一覧
○国民健康保険の退職被保険者等に係る適用の適正化について
(平成八年一〇月三一日)
(保険発第一四五号)
(各都道府県民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知)
標記については、かねてから適正な事務処理について貴管下保険者の指導等格別のご配慮を煩わしているところであるが、今般、会計検査院が実地検査を実施した結果、
1 国民健康保険法第八条の二第一項に規定する退職被保険者及び同条第二項に規定するその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)に対する適用対策が不十分なため、市町村が行う国民健康保険の退職被保険者等以外の被保険者(以下「一般被保険者」という。)から退職被保険者等への資格移行事務が行われていない市町村がある。
2 また、一般被保険者から退職被保険者等への資格移行に係る適用については、年金受給権発生日が資格取得日であるにも拘わらず、当該年金受給権発生日まで資格を遡及していない市町村がある。
本来、これら退職被保険者等に係る保険給付に要した費用は、退職被保険者等の保険料と被用者保険等保険者からの療養給付費拠出金により賄われるべきものであるが、一般被保険者のまま保険給付を受けていることから、一般被保険者の保険料と療養給付費負担金等で賄われることとなり、結果として、国が療養給付費負担金を過大に負担しているとの指摘を受けたところである。
このことについては、退職被保険者等へ不利益をもたらすことはもとより、国民健康保険制度の運営に多大な影響を与えるものであり、当省としては、従来から通知等により当該適用の適正化に努めているところであるが、市町村によっては必ずしも適正に行われていない状況にあることから、貴職におかれては、左記の事項に留意のうえ退職被保険者等に係る適用の適正化について貴管下保険者の指導を行うよう特段のご配慮をお願いする。
記
退職被保険者等の適用対策並びに事務処理について改善が必要な市町村にあっては早急にその改善を図ることはもとより更に適用の適正化を推進することは、退職被保険者等の医療給付の充実につながるのみならず、市町村における医療給付費の適正化等国民健康保険事業の運営の安定化に資するものである。
よって、今後、市町村における退職被保険者等の適用対策並びに事務処理について以下の方策を講ずることにより適用の適正化を図ることとする。
1 市町村における適用対策
退職被保険者等の適用について次の方策を講ずることにより、一般被保険者からの資格移行事務を的確に行い、退職被保険者等の適用の適正化を図ること。
(1) 適用対象者への届出勧奨通知の徹底
各被用者年金保険者から国民健康保険団体連合会を通じて送付される「年金受給権者一覧表」等を基に適用対象者を把握し、届出勧奨通知を送付すること。
これは従来から適用対策の参考資料として「年金受給権者一覧表」が市町村へ送付されているが、一部市町村においてはこれを活用して適用対象者への届出勧奨通知を行っておらず、適用対象者が退職者医療制度を知らないことが届出漏れの最大の原因と考えられることから、特にその徹底を図られたいこと。
なお、届出勧奨通知の実施にあたっては、届出のない者に対して複数回実施することが効果的であること。
また「年金受給権者一覧表」の内容については別添のとおりであること。
(2) (1)のほか次の方策を参考として市町村の実態に応じた対策を講じること。
① 被保険者等への退職者医療制度の周知広報活動の強化
・市町村の広報誌等を活用した広報
・ポスター、リーフレットによる広報
・各種イベント等あらゆる機会を捉えた制度の啓発
② 適用対象者に対し電話を活用した届出勧奨を行うこと。
③ 届出勧奨を行ってもなお届出のない者については、保険証更新時等市町村窓口へ出向く機会を捉え届出勧奨を行うこと。
④ 適用対象者への届出勧奨通知等の処理及び結果状況を管理し、未届者の早期適用を図ること。
(3) なお、小規模保険者等にあっては、国民健康保険団体連合会と連携して適用対策を講ずるなど、必要な対策を検討すること。
2 市町村の事務処理の適正化
市町村の事務処理については次の方策を講ずることにより、一般被保険者からの資格移行事務を的確に行い、退職被保険者等の適用の適正化を図るとともに療養給付費負担金と療養給付費交付金相互の費用について振替整理の適正化を図ること。
(1) 市町村の事務処理については「国民健康保険事業状況報告記載便覧」及び毎年度当課より通知される「国民健康保険療養給付費等負担金の実績報告等の提出について」に基づき適正に行うようその徹底を図ること。
(2) 市町村の国民健康保険担当職員に対し退職者医療制度の仕組み、事務処理の実施方法について研修強化を図ること。
(3) 都道府県国民健康保険主管課(部)における管下市町村への指導監査にあたっては昭和四四年五月一日保発第一八号保険局長通知のほか、毎年度通知される「指導監査方針」に基づき指導の徹底を図ること。
3 被保険者資格の遡及に伴う療養給付費負担金及び療養給付費交付金の振替整理に係る取扱いについて
資格移行に伴う振替整理に係る遡及の取扱いについては、原則として退職被保険者の資格を取得した日である年金受給権発生日(ただし、当該年金受給権発生日が国民健康保険加入日以前の場合は国民健康保険加入日)まで遡ることとする。
ただし、当該退職被保険者等に係る保険給付の実績及び保険料収納実績の確認ができない期間については、この限りではない。
<別添>
「年金受給権者一覧表」について
1 趣旨
「年金受給権者一覧表」は、退職者医療制度を運営するうえで市町村において退職被保険者の届出が提出された場合の資格確認資料として利用するとともに、退職被保険者の適用対象者を把握し届出勧奨を行うための参考資料として、昭和五九年より各被用者年金保険者にその作成・送付につき協力依頼し、実施しているものである。
2 掲載対象者
各被用者年金保険者ごとに、七〇歳未満の老齢又は退職を支給事由とする年金受給権者について市町村(又は郵便番号別)ごとに氏名を五〇音順に掲載している。
3 送付時期
新規裁定者に係る年金受給権者一覧表を毎年九月(二月から七月までの新規裁定者)、三月(八月から一月までの新規裁定者)の年二回国民健康保険団体連合会を経由して市町村に送付している。
4 一覧表の項目
(1) 厚生年金保険
① 氏名、性別、生年月日、住所
② 受給権発生年月
③ 従前の通算老齢年金相当年金の受給権者の場合には、四〇歳以降の被保険者期間
(2) 共済年金
① 氏名、性別、生年月日、住所
② 退職年月、実支給開始年月、組合員期間
5 活用方法
(1) 適用対象者の把握にあたっては年金受給権者一覧表から要件該当者を抽出し、国民健康保険関係台帳と突合することにより確認すること。
(2) 従前の通算老齢年金相当年金の受給権者の場合、年金受給権者一覧表だけでは所要の加入期間が確認できない者について、本人に照会する等被用者年金期間の把握に努めること。
6 その他留意事項
(1) 年金受給権者一覧表は、その受入れに際して年金受給権者一覧表掲載人員数の確認等必要な確認措置を講じ、これを記録するとともに、処理後は直ちに所定の場所へ格納等の措置を講じ、適正に管理すること。
(2) 年金受給権者一覧表は、退職者医療制度の適用事務に関してのみ使用することとし知り得た情報を第三者に譲渡し、転貸し、又は閲覧させてはならないこと。
(3) 年金受給権者一覧表については、一括、個別を問わず再送付はできないこととなっているので、保護及び管理のため、滅失、き損又は漏洩することのないよう必要な措置を講じること。
(4) 年金受給権者一覧表の内容等についての市町村、国民健康保険団体連合会からの照会は都道府県の国民健康保険担当課で取りまとめ厚生省保険局国民健康保険課に行うこと。