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○国民健康保険の保険料(税)滞納者に対する措置の取扱いについて
(昭和六一年一二月二七日)
(保険発第一一三号)
(各都道府県民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知)
老人保健法等の一部を改正する法律(昭和六一年法律第一〇六号)による国民健康保険法等の改正により、国民健康保険の保険料(税)滞納者に対する措置が設けられたところであり、その施行については、昭和六一年一二月二五日付け厚生省発健医第二八五号により厚生事務次官から各都道府県知事あてに、また同月二七日付け保発第一五六号により厚生省保険局長から各都道府県知事あてに通知されたところであるが、その実施に当たつては、これらの通知によるほか、左記の事項に留意の上、貴管下保険者の指導に遺憾のないよう配慮されたい。
記
一 措置の趣旨
今回の措置は、老人保健制度改革における老人医療費の公平な負担の理念を踏まえ、国民健康保険の被保険者間の負担の公平を図る観点から、特別な事情がないのに保険料(税)を滞納している者に対して、被保険者証の返還及び被保険者資格証明書の交付の措置、保険給付の全部又は一部の支払いの差止めの措置等も講ずるものであること。
二 運用上の留意点
(一) 被保険者証の返還及び被保険者資格証明書の交付等に際しては次の点に留意すること。
① 保険料(税)を滞納している世帯主又は組合員(法令の規定上、措置の対象外とされる者を除く。)であつても、直ちに被保険者証の返還等の措置を講ずるのではなく、その措置が設けられた趣旨に鑑み、次のような適正な運用を行うものとすること。
ア 被保険者証の返還の措置を行うに際しては、世帯主又は組合員に対し督促、催告等を通じて、前もつて、保険料(税)を滞納していること、保険料(税)の滞納が続く場合は、被保険者証の返還を求めることがあること等を連絡し、併せて十分な納付相談・指導を行うこと。
したがつて、相当程度の納付相談・指導を続けても、なお滞納状態が続いているような、相当程度以上に滞納している者を措置の対象とするものであること。一般的には、当該年度の年額保険料(税)の二分の一に相当する額以上の滞納額がある場合を、措置の対象の目安とするのが適当であるが、実際の運用に当たつては、納付相談・指導を通じて滞納者の実情等を十分に把握し、その実情を勘案すべきものであること。
イ また、徒らに被保険者証の返還の措置を求めるのではなく、納付相談・指導を通じても対応が不可能であると認められる次のような場合に措置を行うものとして、運用することが適切であること。
(ア) 納付相談・指導に一向に応じようとしない。
(イ) 納付相談・指導の結果、所得、資産を勘案すると十分な負担能力があると認められる。
(ウ) 納付相談・指導において取り決めた保険料(税)納付方法を誠実をもつて履行しようとしない。
(エ) 滞納処分を行おうとすると意図的に差押財産の名義変更を行うなど滞納処分を免れようとする。
ウ 法令の規定上の措置の対象外となる事実に関しては、保険者は必要に応じて届出を求めることができるとされているが、この届出については、アの連絡の際に周知させるとともに、納付相談・指導を通じてその事実の確認に努めること。
② 保険料(税)を滞納している世帯に、法第九条第三項に規定する老人保健法の規定による医療等を受けることができる者がいるときは、その者に係る被保険者証及びそれ以外の被保険者に係る被保険者資格証明書の両方を交付する場合があり得るので留意すること。
この場合においては、被保険者証の(一)面及び被保険者資格証明書の(表)面の双方に世帯主(組合員)の氏名を記載することになるが、当該世帯主(組合員)に対し、当該被保険者証又は被保険者資格証明書の効果が及ばない場合には、「世帯主(組合員)には別証交付」と明記すること。
(二) 被保険者資格証明書の交付に伴い療養取扱機関等における診療については次の点に留意すること。
① 被保険者資格証明書の交付されている世帯の被保険者に対しては、療養の給付及び特定療養費の支給は行わないこととなるので、療養取扱機関等は、療養の給付及び特定療養費の支給に係る療養を取り扱おうとするときは、必ず被保険者証(二)面の「この証で療養給付を受けることができる被保険者の氏名」欄による確認を行うものとすること。(被保険者証(一)面の世帯主名欄に「世帯主には別証交付」と記載がある場合は、当該世帯主に対しては療養の給付及び特定療養費の支給に係る療養は行わない。)
② 被保険者資格証明書の交付を受けている場合の診療については、次のような取扱となるものであること。
ア 被保険者に対して資格証明書が交付されているときは、被保険者は、療養取扱機関等に対し被保険者資格証明書の提示を行うものとすること。
イ 療養取扱機関等は被保険者資格証明書の提示があつたときは、保険診療に準じた扱いを行うものとすること。(ただし、診療費用は全額被保険者が負担するものであること。)
ウ 一般的な療養費の場合と同様、患者の求めに応じて、療養取扱機関は、診療の内容、患者から支払を受けた金額を明らかにした書類を交付するものとすること。
(三) 保険給付の支払の差止めについては、(1)に準じた取扱を行うよう留意すること。
(四) 今回の法改正に基づく措置の運用に関しては、当分の間、適宜、都道府県において、当職と協議することとされたいこと。