○国民健康保険における高額療養費支給事務の取扱い等について
(昭和五九年九月二八日)
(保険発第七二号)
(各都道府県民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知)
国民健康保険における高額療養費支給制度の改正の内容については概ね別紙のとおりであるが、その取扱い等については、昭和五九年九月二二日保発第八七号・庁保発第二二号「健康保険法等の一部を改正する法律等の施行について」によるほか、次の事項に留意するよう、貴管下保険者の指導に遺憾のないよう配慮されたい。
記
第一 高額療養費に関する事項
一 高額療養費の支給に当たつての一部負担金等の合算は、世帯を単位として行われるものであり、合算を行うことができる場合には、必ず合算したうえ支給するものとすること。
二 高額療養費の支給の基礎となる一部負担金等の額は、従来どおり、診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を単位とするものであり、レセプト等の取扱いについては、従来と同様であること。
三 一般被保険者と退職被保険者及びその被扶養者との混合世帯において、それぞれの一部負担金等を合算することにより高額療養費の支給要件に該当する場合には、当該高額療養費はそれぞれの一部負担金の額に応じて按分して経理すること。
なお、按分した場合に端数が生じたときは、一般被保険者分について一円未満を切り上げ、その額を高額療養費の支給額全体から控除することによつて退職被保険者及びその被扶養者分を算出すること。
四 高額療養費支給制度の改正は、本年一○月診療分から適用されるものであるので、高額療養費多数該当世帯に係る措置(四回目以降の高額療養費の支給額の特例)が適用されるのは、早くとも昭和六○年一月診療分からとなること。なお、多数該当の判定は、保険者単位に行うものであり、市町村間の住所異動があつた場合には、連続してカウントされないものであること。
五
(一) 特定疾病療養受療証(以下「受療証」という。)の交付申請の際、慢性腎不全に係る更正医療券の提示を行う等により当該疾病にかかつていることが明らかである者については、当該疾病にかかつていることに関する医師等の意見書の添付は要しないこと。
(二) 受療証の発行期日の欄は、申請のあつた月の初日を記載すること。ただし、新たに被保険者資格を取得した月に申請を行つた者については、当該資格を取得した日を記載すること。
(三) 受療証の保険者番号欄の前二桁には、認定を受ける者が退職被保険者又はその被扶養者である場合は六七を記入し、一般被保険者である場合にあつては空白にすること。
(四) 受療証を療養取扱機関等に提示した場合には、高額療養費は現物給付化されるが、受療証を交付した月において既に一万円を超える自己負担を窓口払いしており現物給付化することが困難な場合には、その月については一万円を自己負担限度額とする償還払となること。また、特に昭和五九年一○月診療分の特定疾病に係る高額療養費の現物給付化が円滑かつ適切に行われるよう制度の周知徹底を図ること。
六 高額療養費に係る資金の貸付事業については、すでに相当数の市町村において種々の形態で実施されているところであるが、今般、国民健康保険法第八二条第一項に、新たに、「被保険者の療養のための費用に係る資金の貸付け」の事業が加えられ、その法的な根拠が明確にされたところである。従つて、貸付事業未実施の保険者においては、法改正の趣旨を踏まえ、他の保険者による実施例も参考としつつ積極的にこれに対応するようにされたいこと。
第二 一部負担金に関する事項
一 一部負担金の支払に係る一○円未満の端数金額は四捨五入することとされたところであるが、療養取扱機関から審査支払機関へ請求する額は、療養に要する費用の額から四捨五入を行う前の一部負担金に相当する額を控除した額とするものであること。
なお、この措置については、特定療養費が現物給付化された場合に係る療養取扱機関等の窓口での支払及び療養取扱機関等から審査支払機関に対する請求についても適用されるものであること。
二 この端数処理は、療養取扱機関等の患者に対する請求の都度行うこと。
別紙
高額療養費制度改正の概要
一 世帯合算
高額療養費は、被保険者(法第五五条第一項の規定により特別療養給付を受けている者を含む。)が、同一の月にそれぞれ一の病院等について受けた療養に係る次に掲げる一部負担金相当額が五・一万円(低所得者三万円)を超える場合又はこれらの額のうち三万円(低所得者二・一万円)以上のものを同一の世帯について合算した額が五・一万円(低所得者三万円)を超える場合に支給するものとし、その額は当該一部負担金相当額又は当該合算した額から五・一万円(低所得者三万円)を控除した額とする。
① 一部負担金の額(当該被保険者が、同一の月において、②に該当するときは、②に掲げる額を加えた額とする。⑤において同じ。)
② 法第五六条第一項に規定する法令による医療の現物給付及び同条第二項の規定による差額の支給を受けた場合における当該差額の算定の基礎となつた一部負担金の額
③ 特定療養費の支給についての療養につき算定した費用の額(その額が現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額とする。以下同じ。)からその療養に要した費用につき特定療養費として支給される額に相当する額を控除した額(当該被保険者が、同一の月において、④に該当するときは、④に掲げる額を加えた額とする。⑤において同じ。)
④ 特定療養費の支給を受けるべき場合について法第五六条第一項に規定する法令による医療費の支給及び同条第二項の規定による差額の支給を受けた場合における当該差額の算定の基礎となつた特定療養費の額を当該特定療養費の支給についての療養につき算定した費用の額から控除した額
⑤ 当該療養が法第三六条第一項に規定する厚生大臣の定める療養を含む場合における一部負担金の額に特定療養費の支給についての療養につき算定した費用の額からその療養に要した費用につき特定療養費として支給される額に相当する額を控除した額を加えた額
⑥ 法第五四条第三項の規定により控除された法第四二条第一項各号に掲げる割合を乗じて得た額に相当する額(当該被保険者が、同一の月において、⑦に該当するときは、⑦に掲げる額を加えた額とする。)
⑦ 療養費の支給を受けるべき場合について法第五六条第一項に規定する法令による医療費の支給及び第二項の規定による差額の支給を受けた場合における当該差額の算定の基礎となつた療養費の額を当該療養費の支給についての療養につき算定した費用の額から控除した額
(例)
二 特例療養費と世帯合算との調整
混合世帯に属する退職被保険者又はその被扶養者が一般被保険者として一部負担金相当額を支払い、それが三万円(低所得者二・一万円)以上となることによつて世帯合算による高額療養費が支給された場合において、後に特例療養費等が支給されることにより一部負担金相当額が三万円(低所得者二・一万円)未満になると、当該高額療養費の支給に係る医療費が一○万円以上一五万円未満の場合に限り、既に支給した高額療養費を返還しなければならない場合が生じる。
(例)
この不合理を調整するため、このような場合には、既に支給した高額療養費の額から特例療養費等として支給すべき額を控除した額(すなわち返還すべき額)を高額療養費の支給額とするものとする。
三 保険優先の公費負担医療の取扱い
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律による一般疾病医療費の支給(以下「原爆一般疾病医療費の支給」という。)その他厚生省令で定める保険優先の公費負担医療が行われるべき療養に係る一部負担金相当額については、世帯合算の対象としないこととし、従来通り五・一万円を超える場合について当該一部負担金相当額から五・一万円を控除した額を現物給付により支給するものとする。
(例)
四 保険優先の公費負担医療について費用が徴収されている場合の取扱い
三に掲げた療養を受け、かつ、当該療養について公費サイドから費用が徴収されている場合であつて、当該療養に係る一部負担金相当額が三万円(低所得者二・一万円)を超えるときには当該費用として徴収された額を世帯合算の対象額とする。
(例)
五 長期高額疾病患者の負担軽減について
保険者の認定を受けた被保険者が、厚生大臣の定める疾病に係る療養を受けた場合においては、一部負担金相当額が一万円を超える場合にその額から一万円を控除した額を現物給付により支給し、かつ、当該一部負担金相当額が三万円(低所得者二・一万円)を超えるときには、その一万円を世帯合算の対象とする。
(例)
六 高額療養費多数該当世帯の負担軽減
前一二か月間に、同一世帯において高額療養費の該当が四回以上あつた場合には、四回目以降の高額療養費は三万円(低所得者二・一万円)を超えた額を支給する。
七 その他
(一) 以上の高額療養費の支給については、歯科及びそれ以外の診療科、総合病院における各診療科はそれぞれ別の医療機関とみなし、同一医療機関について受けた入院に係る療養及び入院外に係る療養は別個の医療機関について受けたものとみなすこととする。
(二) 低所得者の定義は、従来どおりとする。