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○国民健康保険保健婦の活動等について

(昭和五二年七月五日)

(保険発第七一号)

(各都道府県国民健康保険主管課(部)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通知)

国民健康保険保健婦の活動等については、昭和三五年五月一三日厚生省発保第九三号「国民健康保険の保健施設と公衆衛生行政との関係について」及び昭和三五年五月二〇日保険発第六二号「国民健康保険の保健施設について」により行われているところであり、今後とも引き続きこれによることとするが、近時における国民健康保険保健婦の活動の状況を勘案のうえ、今般、別添のとおり「国民健康保険保健婦の活動に関する指針」をとりまとめたので今後の業務の参考とするよう貴管下保険者に対し周知方について御配意願いたい。

なお、本年度から、従来の保健施設活動の域をこえる先駆的、実験的な保健施設活動であつて、当該活動が、他の市町村の範となるものと認められ、かつ、国民健康保険の財政の健全化にも資するものに要する経費に対し、申請に基づき、調整交付金による助成を考慮することとしているのでこの旨をあわせて貴管下保険者に対し周知されたい。

おつて、この助成の対象経費申請については、当該活動の計画の概要を添えて、国民健康保険課施設係あてに、都道府県を経由のうえ、随時提出されたい。

別添

国民健康保険保健婦の活動に関する指針

第一 趣旨

この指針は、地域住民の保健ニーズが、近年の生活環境の整備、人口の老齢化等による疾病構造の変化等を反映して、著しく増大し、かつ、多様化しつつあるという今日の情勢の下において、今後とも国民健康保険保健婦(以下「国保保健婦」という。)が、地域住民のニーズに即応した、有効かつ適切な活動を展開するために必要と考えられる事項について、主に新たに国保に関係する人々の「しるべ」とすることを目的として作成したものである。

なお、この指針は、国保保健婦が地域の保健ニーズに即して自主的な判断を行い、独自に工夫を加えて活動を行うことを制約するものではないこと、及び今後の情勢の変化に応じて定期的に検討が加えられ必要な変更が行われるものであることに留意すること。

第二 活動の展開方法

1 市町村の保健ニーズの把握

国保保健婦は、地区調査等により、的確な保健ニーズを把握すること。市町村の保健ニーズの把握に当たつては、特に次の事項に留意すること。

(1) 診療報酬明細書による病類別疾病統計、人口動態統計、衛生統計等の諸統計資料及びその他の関係資料を十分活用すること。

(2) 各種統計資料等により、必要に応じ、市町村内の地区別に比較を行うほか、類似する他の市町村、都道府県及び全国平均等との比較を行い、問題点を分析すること。

2 活動項目の選定と活動計画の策定

国保保健婦は、把握された保健ニーズに対して、活動可能な業務量の範囲内で、優先順位を考慮し、年間の活動項目を選定するとともに、活動計画を定めること。

活動項目の選定及び活動計画の策定に当たつては、特に次の事項に留意すること。

(1) 優先順位は、地域の要求度がどの程度か、技術的にその解決方法の有効性が一般に認められているかどうか、国保保健婦等の技術的能力からみて解決の可能性があるかどうか、保険財政の合理化にどの程度寄与するものか等の観点から十分考慮し、決定すること。

(2) 年間の活動可能な業務量については、おおよその目安は必ずつけておくこと。また、この場合においては、公衆衛生行政事務と国保保健婦業務について人員等の調整等を十分行つておくこと。

(3) 選定した年間の活動項目を効果的かつ的確に実施するため詳細な月間活動計画をたてること。

(4) 活動計画に基づき活動が円滑に実施できるよう、関係機関等に対し活動の時期、方法等を連絡し、必要に応じ調整を行うこと。

3 活動結果の分析と効果の測定

国保保健婦は、活動計画に基づいて実施した活動の結果について必要な分析を行うとともに、効果の測定を行い、その後の計画策定及び広報活動等の際の資料を得ること。

活動結果の分析と効果の測定に当たつては、特に次の事項に留意すること。

(1) 活動の実施状況を、具体的に、計画と比較し、どの程度の実績をあげたか等の結果を明確にすること。

(2) 予定した活動結果が得られなかつた場合等には、その原因等を分析すること。

(3) 活動効果の測定は非常に重要であるので、できうる限り数量化しうる指標を用い、活動前と活動後との比較等を行うことが望ましい。たとえば年齢階層別医療費の動向、疾病分類別患者数、受診率、一件当たりの費用等の変化、妊産婦、脳卒中等の死亡率の変化、乳幼児の発育状況の変化等について比較分析等を行うこと。

第三 効率的活動の確保

国保保健婦の活動は、保健ニーズを的確に把握して、自主的判断に基づいて実施されなければならないが効率的活動を確保する観点から、特に次の事項に留意すること。

(1) 国保保健婦活動において重点的に取り組むことが必要と考えられる対象と活動方法としては別添(参考)のようなものが考えられること。

(2) 保健ニーズの増大と多様化に対応するため、家庭訪問活動と並んで保健相談活動及び集団指導に努めること。

(3) 保健相談活動及び集団指導を充実するため、たとえば、保健婦ステーションの設置、市町村役場内又は既存の施設を利用した健康相談コーナー(室)の設置等を行い、効率的活動の促進を図ること。

(4) 必要に応じ、地域的条件等が類似する市町村のうち国保保健婦活動が活発で実績効果が顕著である市町村等の見学を行い、又は当該市町村に講師の派遣を依頼し研修会を開催する等により活動の効率化を図ること。

(5) 必要に応じ、市町村の保健ニーズの把握、活動計画の策定、実施、結果の分析等について、都道府県に設置されている指導保健婦及び関係機関の職員から積極的に助言を受けること。

(6) 国保被保険者はもとより一般地域住民の保健に対する認識を深め、国保保健婦活動に対する理解と協力を得るため、保健婦活動の実績、結果の分析、活動効果と今後の対策、類似市町村等との比較等について、積極的かつ計画的に広報活動を行うよう努めること。

第四 関係機関等との調整等

1 保険者は、国保保健婦と、公衆衛生行政事務担当課(係)及び社会福祉担当課(係)等の関係課(係)との連けいを図り、国保保健婦活動計画策定等に当たつて相互に資料交換等が円滑に行われるようにするとともに、業務上の問題について調整を図るため定期的に会議を行うように努めること。

2 国保保健婦は、保険者の保健施設の実施計画の策定の際に積極的に意見を述べること。

3 保険者は、保健婦活動が円滑かつ適正に実施できるよう地区医師会、医療機関、国保運営協議会、国保診療施設、福祉関係機関及び公衆衛生行政機関等との有機的連けいを図ること。

4 国保保健婦本来の業務に支障を生ぜしめないよう、公衆衛生等の行政事務はそれぞれの担当部課で処理するよう配慮すること。

(参考)

国保保健婦活動において重点的に取り組むべき対象と活動方法

1 一般に保健相談に重点をおいて実施すること。

2 現在、各地で実際に行われている事例としては次のようなものがあるがその他地域の実情に適応した重点目標(対象)を定め保健婦活動を展開すること。

(1) 成人病予防に関しては、個別に正しい健康生活及び栄養食餌指導を実施し、特に、脳卒中後遺症者に対しては、医療機関と充分連けいし、看護及び生活訓練を実施すること。

(2) ねたきり病人に対しては、主治医と充分連けいし、適切な看護方法を家族に教え、かつ、熟練した看護技術を実施し、ねたきりの解消を図ること。

また、積極的にねたきり防止のための運動の推進に努めること。

(3) 独居老人又は高齢者世帯に対しては、ホームヘルパーとの連けいのもとに生活の場での個別保健サービスに当たり、かつ、老人クラブ活動等の機会をとらえて保健指導を実施すること。

(4) 保健指導を必要とする乳幼児、心身障害児への看護及び家族支援を実施すること。

(5) 疾病不安又は不定愁訴を持つ半健康者に対する相談を積極的に実施すること。

(6) 地域における健康管理の網の目からもれ易い主婦に対する保健指導を実施すること。

(7) 多受診世帯における重複受診者は、生活上の問題が多くあるので、医療機関と充分な連けいをとりながら正しい受診、生活指導等を実施すること。