添付一覧
○国民健康保険法による給付と公害健康被害補償法による補償給付との調整について
(昭和五〇年一二月二二日)
(保険発第一一六号)
(都道府県民生主管部(局)長あて厚生省保険局国民健康保険課長通達)
公害健康被害補償法(昭和四八年法律第一一一号。以下「公害補償法」という。)及び公害健康被害補償法施行令(昭和四九年政令第二九五号)が昭和四九年九月一日から施行されたことに伴い、国民健康保険法(以下「国保法」という。)による給付と公害補償法による補償給付との間で給付の調整が行われることとなつたが、その取扱いについては、次のとおりであるので貴管下保険者の指導方宜しく願いたい。
なお、この通知については環境庁企画調整局環境保健部と協議済であるので念のため申し添える。
おつて、同部より本件につき、別添一のとおり各関係都道府県知事(政令市長)あて事務連絡されているので参考とされたい。
記
第一 公害補償法における調整規定の趣旨及び内容
一 公害補償法による補償給付(以下単に「補償給付」という。)の支給がなされた場合においては、同一の事由について当該補償給付に相当する給付を支給すべき国民健康保険の保険者(以下「保険者」という。)は、その支給された補償給付の価額の限度で当該補償給付に相当する給付を支給する義務を免れること(公害補償法第一四条第一項及び同法施行令第七条第一項)。
二 国保法の規定により同一の事由について補償給付に相当する給付がされた場合においては、補償給付の支給の実施機関である都道府県知事(政令で定める市(区)にあつては、当該市(区)の長。以下同じ。)は、その価額の限度で補償給付を支給する義務を免れること。
この場合において保険者は、当該都道府県知事が補償給付を支給する義務を免れた価額の限度で、当該都道府県知事に対し、当該給付の価額に相当する金額を求償することができること(公害補償法第一四条第二項及び同法施行令第七条第二項)
三 公害補償法による補償給付で国保法による給付に相当する給付は、次表のとおりであること。
公害補償法による補償給付で国保法による給付に相当する給付 |
国保法による給付 |
一 療養の給付及び療養費 二 葬祭料 三 障害補償費 |
一 療養の給付及び療養費高額療養費 二 葬祭の給付及び葬祭費 三 傷病手当金 |
第二 具体的取扱い
一 公害補償法による被認定者に係る通知
補償給付の対象となる公害補償法による被認定者(国民健康保険の被保険者である者に限る。)については、当該都道府県知事から当該被認定者を被保険者としている保険者(国民健康保険組合にあつてはその主たる事務所)に対し、次により通知がなされるものであること。
(一) 通知の時期
ア 国民健康保険の被保険者が公害補償法による指定疾病にかかつていると認定されたとき。
イ 国民健康保険の被保険者で公害補償法による指定疾病にかかつていると認定された者の認定の効力が失われ、又は認定が取り消されたとき。
(二) 通知される事項
ア 国民健康保険の保険者名
イ 国民健康保険の被保険者証の記号番号
ウ 指定疾病にかかつていると認定された者の氏名
エ 指定疾病の種類
オ 公害医療手帳の記号番号
カ (一)のアの場合においては、認定の申請年月日及び認定年月日
キ (一)のイの場合においては、その事由及びその事由に該当した年月日
二 補償給付の支給がされた者に関する取扱い
(一) すでに補償給付の支給がされた者については、同一の事由についてその支給された補償給付の価額の限度で、当該補償給付に相当する国民健康保険による給付はしないようにすること。
(二) 補償給付の受給者に対し同一の事由について、その支給された補償給付と重複して国保法による給付をしたことが明らかとなつたときは、重複する価額について被保険者に対して返還請求を行うこと。
三 都道府県知事に対する求償
(一) 補償給付の支給がされる前に、国保法の規定により同一の事由について補償給付に相当する給付がされたことが明らかとなつた場合における都道府県知事に対する求償は、別紙様式による文書に納入通知書を添え、これを当該都道府県公害主管部(局)担当課に提出することにより行うこと。
なお、求償を行う際には、同一事由によるものか否か求償内容が分るような診療報酬請求明細書の写、傷病手当金請求書の写等を添付すること。
(二) (一)の場合、公害補償法による葬祭料については指定疾病に起因して死亡した場合にその旨の認定がなされたうえ支給されるものであり、また、障害補償費は指定疾病による障害の程度が一定程度以上の場合に支給されるものであるので、都道府県知事のこれらの給付に関する支給決定がされた後求償するよう留意されたいこと。
(三) 公害補償法による療養の給付及び療養費は指定疾病について行われるものであり、その具体的範囲については、昭和四九年九月二八日環保企第一一〇号環境庁企画調整局環境保健部長通知(別添二)に示されているものであること。
四 その他
(一) 本通知に基づく求償に代わり、指定疾病を発生させた原因者が明確に特定できるときは、その原因者に対し国保法の規定(第三者行為による損害賠償請求権の代位取得)に基づく求償を行うこともさしつかえないので留意すること。
(二) 本通知に基づき都道府県知事に対して求償を行つた場合における当該求償金に係る経理上の取扱い及び療養給付費負担金(療養給付費補助金を含む。)の取扱いについては、昭和四〇年一〇月一一日保険発第一二四号「第三者行為に伴う損害賠償金等に係る療養に要した費用の取扱いについて」中の損害賠償金の取扱いに準じて取り扱うこと。なお、詳細については、おつて通知する予定であること。
様式
別添一
(案)
事 務 連 絡
昭和五○年一二月一日
都道府県・政令市(区)
公害健康被害補償法
主管部(局)長殿
環境庁企画調整局
環境保健部保健業務課
公害健康被害補償法による補償給付と他の法律による
給付等との調整について
公害健康被害補償法による補償給付と他の法律による給付等との調整については、現在、別紙の案で関係省庁と折衝を行つているところですが、関係法令が二八(例によるもの、準用するものを含めれば三○余)にも及ぶため、すべての省庁と完全な了解に達するには、なお、若干の日時を要するものと考えております。
しかしながら他制度からの求償行為が現実に行われている県、市(区)もあるかと思いますので求償行為があつた場合には、追つて正式な通知がなされるまでの間は、別紙案の定めるところにより支払等の手続が行われますようお願いいたします。
環保業第 号
昭和 年 月 日
都道府県・政令市(区)
公害健康被害補償法
主管部(局)長殿
環境庁企画調整局
環境保健部保健業務課長
公害健康被害補償法による補償給付と他の法律による給付等との調整について
公害健康被害補償法(昭和四八年法律第一一一号。以下「法」という。)及び公害健康被害補償法施行令(昭和四九年政令第二九五号。以下単に「令」という。)は、昭和四九年九月一日から全面的に施行されたところである。法においては、法による補償給付と健康保険法等他の法律による補償給付とについて同一人に対する二重給付を避ける趣旨から調整規定が設けられているが、その具体的な取扱いについては、次の事項に留意のうえ、遺憾のないよう配慮されたい。
なお、本通知については、他の法律を所管する関係省庁とも、協議済であるので、念のため申し添える。
記
第一 法における調整規定の趣旨及び内容
一 公害健康被害補償制度の補償給付(以下単に「補償給付」という。)の支給がなされた場合においては、健康保険法等令第七条で定める法律の規定により、同一の事由について本制度の補償給付に相当する給付等を支給すべき保険者等は、その支給された補償給付の価額の限度で当該補償給付に相当する健康保険法等による給付等を支給する義務を免れること(法第一四条第一項及び令第七条第一項)。
二 逆に、健康保険法等他の法律から同一の事由について本制度の補償給付に相当する給付等が先に支給された場合には、本制度はその価額の限度で支給義務を免れるが、この場合、他の法律の保険者等は本制度の補償給付の支給を免れた価額の限度で本制度に対して求償することができるものとされていること(法第一四条第二項及び令第七条第一項)。
三 二の場合において、本制度がその支給義務を免れる補償給付の価額には、令第七条各号に掲げる法令の規定により補償給付に相当する給付等の支給を受ける者その他の者にその費用の一部を負担させることとしている場合(すなわち自己負担分がある場合)における当該一部負担金は含まれないものとされていること。これは、他の法律において自己負担分がある場合に本制度がその価額の限度で補償給付の支給を免れることとなると被認定者が自己負担分を最終的に負担する結果となつて本制度の趣旨にそぐわなくなるので、このような措置をとることとしたものであること。
四 本制度の補償給付と健康保険法等他の法律による給付等に相当する補償給付との対応関係は別表第一の第一欄に掲げる他の法律の種類に応じそれぞれ第二欄に掲げるとおりであること。
第二 具体的調整の方法
一 法による被認定者に係る通知
本制度の補償給付の対象となる被認定者(健康保険法等他の法律による受給資格がある者に限る。)について都道府県知事又は政令市の長は、別表第一の第一欄に掲げる他の法律の種類に応じそれぞれ第二欄に掲げるところに対し、次により通知されたいこと。
(一) 通知の時期
通知は次の場合に行うこと。ただし、すでに認定されている者についての通知はできるだけ速やかに行うようにされたいこと。
① 他の法律による受給資格者等が本制度の指定疾病にかかつていると認定したとき。
② 他の法律による受給資格者等で本制度の指定疾病にかかつているとしたものの効力が失われ、又は認定が取り消されたとき。
(二) 通知すべき事項
通知すべき事項は、次のとおりであること。
① 他の法律の規定により給付等を行う者(○○市○○組合)
② 他の法律の規定による記号番号
③ 指定疾病にかかつていると認定された者の氏名
④ 指定疾病の種類
⑤ 公害医療手帳の記号番号
⑥ (一)①の場合においては、認定の申請年月日及び認定年月日
⑦ (一)②の場合においては、その事由及び事由に該当した年月日
(三) 通知の方法
通知は、各月分をまとめて行うようにされたいこと。
二 他制度からの求償に対する支払
他制度から法第一四条第二項の規定に基づき求償を受けた場合には、次により支払いを行うようにされたいこと。
(一) 他制度からの求償に応ずることが出来る場合は、同一事由についてしかも相当する給付に対応する部分のみであるから、これに該当するか否かについては求償者と連絡を密にし、十分に確認するようにされたいこと。従つて実質的に両者で額について合意された後に求償を受けるようにされたいこと。
(二) とくに医療費について保険者等から求償があつた場合には、本制における医療は指定疾病に関連したもののみを対象としているので、これに対応する医療費のみが求償の対象となるものであること。なお、これを確認するための書類(レセプトの写し等)を求償者に要求すること。この場合、必要に応じて診療報酬審査委員会の意見をきくこと。
(三) 障害補償費及び児童補償手当並びに療養手当は指定疾病による障害の程度が一定程度以上の場合に支給されるものであること。遺族補償費、遺族補償一時金及び葬祭料については指定疾病に起因して死亡した場合にその旨の認定がなされたうえ支給されるものであることから都道府県知事又は政令市の長のこれからの補償給付に関する支給決定がなされないうちは求償に応ずる必要はないものであること。したがつて、被認定者であつても補償給付の請求がなされていない者についての求償関係は生じないものであること。
なお、同一事由によつて受けたものであることを示す書類を求償者に求めること。
(四) 保険者等からの求償の様式は別紙によつてなされることになつていること。
(五) 本制度から先に補償給付の支給を行つた場合には、求償ということはないものであること。
(六) 同一事由、相当給付の確認や求償に対する具体的な支払いに関する手続等については、都道府県又は政令市と保険者等との間で意志の疎通が図られるようにしておくことが必要であるので常に連絡を密にされたいこと。
別紙
別表1(抄)
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第一欄 |
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補償給付 |
療養の給付療養費 |
障害補償費 |
遺族補償費 |
遺族補償一時金 |
法律名 |
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20 国民健康保険法 |
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療養の給付(36) |
傷病手当金 |
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療養費(54) |
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高額療養費(57の2) |
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第一欄 |
第二欄 |
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児童補償手当 |
療養手当 |
葬祭料 |
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葬祭の給付 葬祭費 |
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