添付一覧
○国民健康保険法の一部を改正する法律の施行に伴う国民健康保険関係法令の改正について
(昭和六三年六月一日)
(保発第七一号)
(各都道府県知事あて厚生省保険局長通知)
国民健康保険法の一部を改正する法律(昭和六三年法律第七八号)については、本日公布されたところであり、その施行については同日付け厚生省発保第六三号により厚生事務次官より通知されたところである。
また、今回の法改正に伴い、国民健康保険法施行令等の一部を改正する政令(昭和六三年政令第一七七号)、国民健康保険法施行規則等の一部を改正する省令(昭和六三年厚生省令第四〇号)についても、同日公布され、これらの政令及び省令により、国民健康保険法施行令(昭和三三年政令第三六二号)等の国民健康保険関係政令及び関係省令の一部改正が行われたところである。
その内容については次のとおりであるので、前記の厚生事務次官通知と併せ、今回の法改正の施行に当たつて、貴管下保険者の指導に遺憾のないよう配慮されたい。
なお、この通知においては、国民健康保険法の一部を改正する法律を「改正法」と、改正後の国民健康保険法を「法」と、国民健康保険法施行令等の一部を改正する政令を「改正政令」と、改正後の国民健康保険法施行令を「施行令」と、改正後の国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令を「算定政令」と、国民健康保険法施行規則等の一部を改正する省令を「改正省令」と、改正後の国民健康保険法施行規則を「規則」と、改正後の国民健康保険の事務費負担金等の交付額の算定に関する省令を「算定省令」と、それぞれ略称する。
記
第一 高医療費市町村における運営の安定化の推進に関する事項
一 法第六八条の二第一項の規定に基づく指定市町村の指定
(一) 指定市町村の指定は、指定年度の前々年度の療養の給付等に要する費用の額と老人保健法の規定による確定医療費拠出金の額との合計額(以下「実績給付費」という。)を基礎として、指定年度の実積給付費が被保険者の年齢階層別の分布状況(以下、法第七〇条第三項第二号の規定に基づき被保険者の年齢階層別の分布状況を勘案して算定する給付費総額と老人保健医療費拠出金との合計額を「基準給付費」という。)や災害その他の特別の事情を勘案してもなお多額と見込まれる市町村について、指定年度の前年度の一月三一日までに行うこととされたこと。(施行令第二九条の四第一項)
(二) 実績給付費及び基準給付費とは、それぞれの各市町村における次の額の合計額とされたこと。(法第七〇条第三項)
ア 実績給付費
① 一般被保険者(退職被保険者等及び老人保健法の規定による医療を受けることができる被保険者(以下「老人被保険者」という。)以外の被保険者をいう。以下同じ。)に係る医療給付費の額
② 老人保健法の規定による確定医療費拠出金の額
イ 基準給付費
① 年齢階層ごとの全国平均一人当たり給付額に当該市町村の年齢階層に属する一般被保険者の数を乗じて得た額の合算額
② 年齢階層ごとの全国平均一人当たり老人医療費額に当該市町村の年齢階層に属する老人被保険者の数を乗じて得た額の合算額を基礎として、老人保健法の規定に基づき老人保健医療費拠出金として算定した額
(三) 指定市町村の指定に当たつて、実績給付費及び基準給付費の算定、並びに災害その他の特別な事情の控除及び当該事情に係る額の算定については、原則として法第七〇条第三項の規定による基準超過費用額の算定方法を準用するものであるが、基準給付費に乗ずる率は一・一七とされたこと。(施行令第二九条の四第一項)
(四) 指定市町村の指定に当たつては、厚生大臣は都道府県の意見を聴かなければならないこととされているので、都道府県においては、高医療費市町村の国民健康保険事業の実態等その実情把握に努められたいこと。(法第六八条の二第二項)
(五) 指定を受けた市町村について、指定を受けた日から当該指定年度の三月三一日までの間において廃置分合があつた場合には、当該廃置分合により事務を承継した市町村について、指定を行うものとされたこと。(政令第二九条の四第三項)
(六) 昭和六三年度における法第六八条の二第一項の指定については、特例として昭和六三年七月三一日までに行うこととされたこと。(改正政令附則第三条)
二 安定化計画の作成
(一) 指定市町村は、厚生大臣の定める指針に従い、国民健康保険事業の運営の安定化に関する計画(以下「安定化計画」という。)を定め、その計画に従い、療養の給付等に要する費用の適正化その他の運営の安定化のための措置を講じなければならないこととされたこと。(法第六八条の二第三項)
(二) 前記の厚生大臣の定める指針は、本年六月を目途として作成し、告示する予定であること。
(三) 安定化計画の内容には、指定市町村の国民健康保険の事業運営の現状、高医療費の要因分析、その分析結果に応じた適正化対策等が盛り込まれるものであること。
(四) 安定化計画の作成に当たつては、指定市町村は国民健康保険運営協議会の意見を聴く等、被保険者や医療関係者、学識経験者等の意見を幅広く聴いた上で作成することが適当であること。
(五) 都道府県においては、必要に応じ、指定市町村の安定化計画の達成に必要な都道府県の措置について、その計画を定めることが適当であること。
三 基準超過費用額の算定及び負担
(一) 法第七〇条第三項の規定に基づく基準超過費用額の算定に当たつて、指定市町村の基準給付費に乗ずる率は、一・二とされたこと。(算定政令第二条の二第一項)
(二) 基準超過費用額の算定に当たつて、指定市町村の国民健康保険事業の運営に与える影響の程度その他の事情を勘案して、基準超過費用額の上限として、当該市町村の指定年度における実績給付費から災害その他の特別の事情に係る額を控除した後の額の三%に相当する額が設定されたこと。(算定政令第二条の二第二項)
(三) 法第七〇条第三項第一号に規定する政令で定める災害その他特別の事情として、次の事情が定められたものであること。(算定政令第二条の二第三項)
① 風水害その他の災害が発生したこと。
② 一般被保険者のうちに原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三二年法律第四一号)第二条に規定する被爆者(以下「被爆者」という。)である者が含まれていること。
③ 精神病院又は結核療養所があること。
④ 高額な医療に関する給付の発生があつたこと。
⑤ 人口一〇万人当たりの病院の病床が著しく多いこと。
⑥ 法第四三条第一項若しくは第五二条第二項の規定により一部負担金の割合を減じていること又は被保険者の全部若しくは一部についてその一部負担金の相当する額の全部若しくは一部を都道府県若しくは市町村が負担することとしていること。
⑦ その他前各号に類する事情であつて厚生大臣が認めるものがあること。
(四) 前記の(1)から(7)に掲げる特別の事情に係る額の算定方法は、次のように定められたものであること。(算定政令第二条の二第四項)
なお、実績給付費から控除する場合、当該事情について一般被保険者に係る額については給付費ベースで、老人保健法の対象者に係る額については拠出金ベースで控除することとされたこと。
①について(算定政令第二条の二第四項第一号)
当該事情に係る額
②について(算定政令第二条の二第四項第二号)
被爆者に係る給付費の額のうち、当該市町村の他の被保険者の平均的な給付費の額を超える部分の額
③について(算定政令第二条の二第四項第二号)
精神病院又は結核療養所に入院するため当該市町村に転入した者に係る給付費の額のうち、当該市町村の他の被保険者の平均的な給付費の額を超える部分の額
④について(算定政令第二条の二第四項第三号)
当該市町村の高額医療費総額のうち、全国の平均的な高額医療費の発生額を超える部分の額。なお、高額医療費の発生率を勘案して、高額医療費の定義として一般被保険者の場合には八〇万円、老人保健法の対象者の場合には一二〇万円とされたこと。
なお、全国の平均的な高額医療費の発生額については、例えば、一般被保険者の場合、当該市町村の一般被保険者に係る給付費額に、すべての市町村の八〇万円を超える高額医療費のうち八〇万円を超える部分の額の合算額がすべての市町村の給付費総額の合算額に占める割合として厚生大臣が定める割合を乗じて得た額とされたこと。(算定省令第六条の三)
⑤について(算定政令第二条の二第四項第四号)
当該市町村の一人当たり平均入院給付費に当該市町村の超過病床数(当該市町村の人口一〇万人当たり病床数から、全国平均の人口一〇万人当たり病床数に一・二倍を乗じて得た数を控除した数値)を乗じて得た額に、超過病床数に係る医療費の逓減率を乗じて得た額。
この算定に当たつて用いる当該市町村の人口一〇万人当たりの病床数は、当該市町村の主たる区域を含む医療法(昭和二三年法律第二〇五号)第三〇条の三第一項に規定する医療計画に定める医療圏の区域の人口一〇万人当たりの病床数か、当該市町村の区域の人口一〇万人当たりの病床数のいずれか多い方を用いることとされたこと。(算定省令第六条の二)
なお、医療計画を定めていない都道府県の区域内の市町村については、当面、医療圏のかわりに保健所の所管区域の人口一〇万人当たりの病床数を用いることとされたこと。(改正省令附則第四条)
また、超過病床数に係る医療費の逓減率は、〇・七とされたこと。(算定省令第六条の四)
⑥について(算定政令第二条の二第四項第五号)
当該市町村の一部負担金の割合を減じていること等により給付費増及び波及増分のうち、一部負担金の割合を減じていることによる全国の平均的な給付費増及び波及増分を超える額。
⑦について(算定政令第二条の二第四項第六号)
個別の事情ごとに厚生大臣が別に定める額
なお、(7)に係る事項としては、伝染病予防法(明治三〇年法律第三六号)第一条の規定に基づく法定伝染病に係る額や地域的に発生する特定疾病等に係る額が想定されるものであること。
(五) 前記の特別な事情に係る額を控除する場合、計算上の重複を回避する観点から一定の調整を行うこととされたこと。(算定政令第二条の二第七項)
(六) 基準給付費は一般被保険者と老人被保険者に係る額を別々に算定し、その合算額をいうものであるが、基準給付費を算定する際の基礎となる年齢階層は、一般被保険者の場合には六九歳までの五歳ごととし、老人被保険者の場合には六五歳から八五歳までの五歳ごと及び八五歳以上とされたこと。(算定政令第二条の二第八項及び第一〇項)
また、年齢階層ごとの全国の平均的な一人当たり給付額は、毎年五月診療分及び同月末日における被保険者の数についての調査結果を基に厚生大臣が定めることとされたこと。(算定政令第二条の二第九項及び第一一項)
なお、基準給付費の算定の際の年齢階層別全国平均一人当たり給付額に乗ずる当該市町村の年齢階層別被保険者数は、毎年九月末の被保険者数を年間平均被保険者数で補正して得るものであること。(算定省令第六条の六)
四 指定市町村に廃置分合があつた場合の国庫負担等に関する規定の適用の特例
(一) 指定市町村について、指定を受けた日から指定年度の翌々年度の三月三一日までの間に廃置分合があつた場合における基準超過費用額の負担については、廃置分合の時期及びその内容によつて、それぞれの場合における負担の特例の規定が設けられたものであること。(算定政令第一〇条)
(二) 基準給付費の算定の基礎となる当該市町村の年齢階層別被保険者数についても、廃置分合があつた場合における特例の規定が設けられたものであること。(算定省令第六条の七)
第二 保険基盤安定制度に関する事項
(一) 法附則第一一項の規定により市町村が当該市町村の国民健康保険の特別会計に繰り入れる額は、当該市町村の一般被保険者の属する世帯におけるいわゆる保険料軽減制度に基づく保険料軽減相当分の合計額とされたこと。ただし、国民健康保険の財政の状況その他の事情を勘案して必要があると認められるときは、別に政令で定めるところにより、その額を増額するものとされたこと。(算定政令附則第二一項)
(二) 昭和六三年度においては、すべての市町村の保険料軽減相当分の額の見込額を調査した上で、本年中を目途に、市町村が繰り入れる額の確定を行うための政令を別途作成、公布する予定であり、各都道府県及び各市町村においては、この政令に基づき算定される額を負担することとなるものであること。
第三 昭和六三年度及び昭和六四年度における国庫負担の特例
(一) 昭和六三年度及び昭和六四年度における療養給付費等負担金の額は、一般被保険者の療養の給付等に要する費用から、当該年度における保険基盤安定制度における市町村の繰入金の額を控除した額と、老人保健医療費拠出金の納付に要する費用に係る部分について当該年度の概算医療費拠出金に係る部分の一定割合を調整した額との合算額の四〇%とされたこと。(算定政令附則第一〇項及び第一一項)
(二) 昭和六三年度及び昭和六四年度における調整交付金についても、(一)の合算額の見込額の一〇%とされたこと。
(三) 昭和六三年度及び昭和六四年度における調整交付金については、保険基盤安定制度の創設に伴い、軽減費交付金を交付しないこととされたこと。(算定政令附則第一二項)
第四 特別療養費に関する事項
(一) 被保険者資格証明書を掲示して療養取扱機関又は特定承認療養取扱機関(以下「療養取扱機関等」という。)について受けた療養に係る療養費について特別療養費と称するとともに、社会保険診療の扱いとされたことから、関係規定を準用する場合の技術的読替えについて定められたこと。(施行令第二八条の三)
(二) 高額療養費の適用に当たつて、特別療養費の支給に係る療養について算定した額の一定部分についても適用の対象として明確化されたこと。(政令第二九条の二第一項第八号及び第九号)
(三) 特別療養費の支給申請の規定が整備されたこと。(規則第二七条第二項)
(四) 療養取扱機関等は、特別療養費に係る療養を取り扱つたときは、当該療養取扱機関等の名称及び住所等の事項を記載した届書を保険者に提出しなければならないこととし、また、保険者はその届書に基づき診療内容等について審査し、その結果を当該療養取扱機関等に書面により通知することとされたこと。(規則第二七条の二)
(五) 特別療養費に係る療養については、療養取扱機関等は当該療養を受けた被保険者に対して、特定療養費の場合と同様に領収証を発行することとされたこと。(法第五四条の二第三項及び規則第二七条の三)
(六) 被保険者資格証明書の提示が義務づけられたこと等を踏まえ、被保険者資格証明書の記載事項として、保険者番号、被保険者の記号番号が加えられたこと。(規則様式第一の三)
なお、改正省令の施行の際に現に交付されている被保険者資格証明書については、経過措置として、改正省令による改正後の様式による被保険者資格証明書とみなされるものであること。(改正省令附則第三条)
第五 施行期日その他
(一) 改正政令及び改正省令の施行期日は、改正法と同様に公布の日から施行することとされたこと。
(二) 高額医療費共同事業については、今回の法改正の趣旨にかんがみ、その強化・拡充を図ることとされたので、国民健康保険高額医療費共同事業実施要領(昭和五八年四月二三日保発第三七号)については所要の改正を行い、別途当職より通知する予定であること。