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○国民健康保険法施行事務の取扱について

(昭和三四年一月二七日)

(保発第四号)

(各都道府県知事あて厚生省保険局長通達)

国民健康保険法は、本年一月一日より施行され、その運用については、別途次官名をもつて通知されたところであるが、これが施行事務の取扱については、左記事項に御留意のうえ、その実施に遺憾なきを期せられたい。

なお、管下の保険者、被保険者、医療関係者、関係団体等に対しても、関係の事項をそれぞれ示達の上、実施について十分留意せしめるよう指導されたい。

おつて、昭和二三年七月一三日付保発第九号「改正国民健康保険法の施行に関する件」、昭和二三年七月一三日付保険発第六号「健康保険と船員保険並びに国民健康保険の診療に関する保健所の管理者との契約について」、昭和二三年七月一四日付保発第一○号「国民健康保険の事務取扱に関する件」、昭和二三年一○月一三日付保発第七一号「健康保険組合被保険者の被扶養者に対する国民健康保険の取扱について」、昭和二四年五月六日付保発第三五号「健康保険の被扶養者が国民健康保険の被保険者の資格を有する場合の取扱について」、昭和二五年七月一五日付保発第四九号「国立病院及び国立療養所の行う健康保険、船員保険及び国民健康保険の診療に関する契約の件」、昭和二六年四月一日付保発第一九号「国民健康保険法の一部を改正する法律の施行に関する件」、昭和二九年五月二二日付保発第四一号「国民健康保険の保険者と国立病院との協定について」、昭和二九年八月七日付保発第六五号「国民健康保険における一部負担金の徴収に関する最終責任者について」、昭和二九年九月一日付保発第七一号「特別国民健康保険組合の設立について」、昭和三一年五月一八日付保発第二五号「国民健康保険の保険者と療養担当者である薬剤師との協定例の改正について」及び昭和三一年一二月二六日付保発第六○号「身体障害者福祉法の一部を改正する法律の施行等について」は、これを廃止する。

なお、この通知において引用する法令は、次のように略称する。

一 国民健康保険法(昭和一三年法律第六○号) 旧法

二 国民健康保険法(昭和三三年法律第一九二号) 新法又は法

三 国民健康保険法施行法(昭和三三年法律第一九三号) 施行法

四 国民健康保険法施行令(昭和三三年政令第三六二号) 令

五 療養取扱機関の申出の受理並びに国民健康保険医及び国民健康保険薬剤師の登録に関する政令(昭和三三年政令第三六三号) 登録政令

六 国民健康保険法施行規則(昭和三三年厚生省令第五三号) 規則

七 療養取扱機関の申出の受理並びに国民健康保険医及び国民健康保険薬剤師の登録に関する省令(昭和三三年厚生省令第五四号) 登録省令

八 療養取扱機関の療養の給付に関する費用の請求に関する省令(昭和三三年厚生省令第五五号) 請求省令

第一 市町村による国民健康保険事業の実施に関する事項

(一) 市町村の実施義務

(市町村)

一 国民皆保険を実現するため、昭和三六年四月一日までの間の猶予を認めて、国民健康保険事業の実施を市町村の義務としたこと(法第三条、法附則第二項)。

(事務組合)

二 旧法第二条に規定する市町村又は特別区の組合については、地方自治法の定めるところにより、国民健康保険を行うことができること。

(勧告及び助言)

三 厚生大臣又は都道府県知事は、国民健康保険の未加入者を一日もすみやかに解消させるため、昭和三六年三月三一日までの間において、国民健康保険を行つていない市町村に対し、事業の開始につき必要な勧告及び助言を行うことができることとされたこと(施行法第一条)。

なお、この勧告は、その趣旨を明らかにするため、文書をもつて行うことが適当であること。

(二) 昭和三六年三月三一日までの経過措置

(国保開始の猶予期間)

一 未実施市町村は、(一)の一に示すように国民健康保険の開始について、昭和三六年三月三一日までの猶予が認められていること(法附則第三項)。

(一部公営)

二 新法の施行の際現に旧法第八条ノ一五第三項の規定により指定されている市及び新法の施行後国民健康保険事業を開始する市であつて、特別の理由により厚生大臣が指定するもの並びに町村合併促進法第一八条の規定(新市町村建設促進法において例による場合を含む。)の適用を受ける合併町村は、昭和三六年三月三一日までの間(合併町村にあつては、昭和三六年三月三一日までの間において町村合併後五箇年以内に限る。)、条例の定めるところにより、一部公営を行うことができること(施行法第三条)。

(普通国民健康保険組合及び営利を目的としない社団法人)

三 新法の施行の際現に旧法の規定により国民健康保険を行つている普通国民保険組合又は営利を目的としない社団法人は、新法の施行後も、普通国民健康保険組合にあつてはその地区の全部につき市町村が国民健康保険を行うに至るまでの間、社団法人にあつてはその地区の全部又は一部につき市町村が国民健康保険を実施するまでの間、経過的に引き続き事業を行うことが認められるものであること(施行法第二条・第四一条・第四七条)。

(三) 昭和三六年四月一日以後における特例

(特別の事情により国保を実施しない場合)

一 昭和三六年四月一日以後は、医療機関のない離島その他特別の事情があるもので厚生大臣の承認を受けた市町村のみが国民健康保険を行わないことができること。町村合併等に伴い、市町村の一部区域において、国民健康保険を行ういわゆる一部公営も、この期日まで(この期日前に町村合併促進法の規定による一部公営を行い得る期限が切れるものについては、その時まで)は認められるが、同年四月一日以後においては、都道府県知事の承認を受け、条例の定めるところにより、その区域のうち医療機関のない離島その他国民健康保険を行うことが著しく困難である区域の住民については、これを除外して一部公営を行うことが認められること(法附則第三項)。

(特別の事情)

二 法附則第三項に規定する「特別の事情」とは、調整交付金創設の趣旨にかんがみ、財政上の理由はこれに該当せず、もつぱら医療機関の存在しない離島その他国民健康保険を実施することが本来不可能である市町村をいうものであること。また、施行法第三条第二項の規定により市町村がその一部区域につき国民健康保険を行わないことのできる場合も、右と同様の事情にある場合に限る趣旨であること。

第二 都道府県の義務に関する事項

法第四条第二項の規定により、都道府県は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるように必要な指導をしなければならないこととされたが、これは、国民健康保険事業の性格にかんがみ、この事業が単に国と市町村との責任のみにおいて運営されるべきものではなく、市町村を包括する広域の地方公共団体として都道府県もまた国民健康保険事業の基準の維持及び運営の指導に当る趣旨を規定したものであり、法第七五条において都道府県がその財政情況等に応じて、国民健康保険事業に要する費用に対して補助するというのも、この趣旨のあらわれであること。

第三 市町村の被保険者に関する事項

(一) 資格

(住所を有する者)

一 被保険者の資格については、従来の世帯主及び世帯に属する者を被保険者としていたのを改め、市町村の区域内に住所を有する者をもつて被保険者としたこと(法第五条)。

(住所の認定)

二 住所の認定については、定住の意思と定住の事実の両面より判断して、生活の本拠を確定すべきであるが、この場合、住民登録、戸籍、米穀通帳、選挙人名簿等の資料を調査し、住所認定の適正化を図られたいこと。従つて、転入の当初より他所に移転することが明らかであり、かつ、在住の期間がきわめて短期間に過ぎない者の取扱については、国民健康保険の性格に照らし、住所を有する者と認定しないことが適当であること。

(適用除外例の法定)

三 健康保険その他の被用者保険の被保険者を、法律上、国民健康保険の被保険者から除外する点については、旧法と同様であるが、被保険者から除外される者は、すべて、この法律又はこれに基く厚生省令で定め、被保険者の資格の統一を図つたこと(法第六条)。

(二重加入の廃止)

四 従来から問題となつていた他の社会保険の被扶養者と国民健康保険に加入せしめる二重加入は新法においては認められないものであること。

(生活保護を受けている者の適用除外)

五 生活保護法の規定による保護を受ける者は、保護開始と同時に被保険者から除外することをせず、政令で定める期間すなわち、三箇月間を経過した場合にはじめて、被保険者資格を喪失させ、当該保護を停止又は廃止されるにいたつた場合は、ただちに被保険者資格を取得させることとしたこと。この政令で定める期間は、当分の間の措置を定めたものであつて、おそくとも昭和三五年三月三一日までに再検討されるものであること。

また、法第六条第六号に規定する「生活保護法による保護を受け」の保護とは、生活扶助たるとその他の扶助たるとを問わず、すべての保護について保護の決定を受けた場合をいい、三箇月経過すれば被保険者より除外するものであり、その間、何らかの理由により停止されている期間をも、右の三箇月の期間には算入するものであること。ただし、三箇月経過した時期において保護を停止されている場合には、被保険者より除外せず、当該停止が解除され、保護を受けたときに被保険者から除外する趣旨であること。

なお、期間の計算については、民法の期間に関する規定を準用するものであること(法第六条第六号・第一一一条・令第一条・附則第一二項)。

(条例で定める者)

六 法第六条第八号の規定による厚生省令で定める者のうち、規則第一条第三号に定める「その他特別の事由がある者で条例で定める者」とは、従前におけるように任意に定める趣旨ではなく、貧困により市町村民税の免除を受けた者等明らかに保険料(税)負担能力のないと認められる者又は保険事業の対象としがたい者に限り市町村の実情に応じて定めること。

(資格得喪の時期)

七 被保険者の資格の得喪時期については、法第七条及び第八条に規定するところであるが、国民健康保険の各保険者の相互の間においては、重複はもとより間隙を生じないように配慮したものであること。

(健康保険との調整)

八 被保険者の資格に関しては、健康保険と国民健康保険との間に取扱上の調整を考慮する必要があるが、とくに国民健康保険が実施されている市町村においては、保険料及び保険給付に関し複雑な点も生ずることが考えられるので、健康保険の適用に当つては関係市町村との調整に留意すべきものであること。この調整に関して、別途通知するものであること。

(二) 経過措置

(二重加入者)

一 新法施行の際、現に二重加入をしている者については、昭和三六年三月三一日までの間は被保険者とすることが認められるものであること。

すなわち、新法の施行の際現に国民健康保険を行つている市町村は、被保険者の資格に関し、昭和三六年三月三一日までの間は、条例の定めるところにより、従前の例によることができるが、その趣旨は、新法への切換えを円滑にするため、経過的に、従前の条例の規定の例によることを認めたものであること。従つて、例えば、二重加入者につきこれを希望しているもののみを被保険者とし、その他を除外するという取扱はできず、二重加入者につき従前の例によらないこととする場合は、二重加入者のすべてを除外し、従前の例によることとする場合は、現に二重加入者である者はすべて被保険者とすることとしなければならないものであること。

(二重加入の制限)

二 二重加入者については、新法の施行の際、当該市町村の被保険者であり、かつ他の社会保険各法の被扶養者に限り、被保険者とすることができるのであつて、新法の施行後における出生、住所、移転等による二重加入は一切認められないこと。

第四 市町村の運営に関する事項

(被保険者証の交付請求)

一 世帯主は、市町村に対し、被保険者証の交付の請求をすることができることとした趣旨は、市町村が被保険者証を交付しないときは、国民健康保険審査会に対し、不服の申立をなしうるようにするために特に設けたものであり、被保険者の資格について確認制度をとつていない国民健康保険においても、被保険者の資格につき不服があるときは、右の制度を通じて審査会に審査の請求ができるものであること(法第九条第三項・第九一条)。

(特別会計の勘定)

二 直営診療施設を有する市町村は、規則第一六条の規定に従つて特別会計を事業勘定及び直営診療施設勘定に区分しなければならないものであること(法第一○条、令第二条、規則第一六条)。

(国民健康保険運営協議会)

三 法第一一条に規定する国民健康保険事業の運営に関する重要事項とは、一部負担金の負担割合、保険料の賦課方法、給付期間、保険給付の種類及び内容の変更並びに保健施設の実施大綱の策定等のことであり、直営診療施設の設置は当然同条の重要事項に該当するものであること。

なお、国民健康保険運営協議会の組織については、被保険者を代表する委員、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師を代表する委員及び公益を代表する委員各同数をもつて組織することとし、現実に委員を何名とするかは、各市町村の実情により決定すべきものであること(法第一一条、令第三条・第五条)。

(条例の協議)

四 市町村は、法第四三条第一項及び第五二条第二項の規定による一部負担金の割合の引下げ、保険料の料率、新法第五三条ただし書の規定による給付期間の延長並びに新法第五八条の規定による保険給付の種類及び内容について条例を制定改廃しようとするときは、あらかじめ、都道府県知事に協議しなければならないものとされ、右の事項に関して、協議をせず又は協議が調わないときは当該条例を制定改廃することができないものであること。

なお、市町村が都道府県知事に協議する時期については、通常条例案の議会提出前に行うことが適当であり、市町村より右の協議を受けたときは、都道府県において総務部、民生部相互の間において十分調整を図ることが肝要であること(法第一二条、令第六条)。

第五 国民健康保険組合に関する事項

(国民健康保険組合)

一 同業者等の職域を基礎として設立する国民健康組合(以下「組合」という。)は、公営国保に支障を及ぼさない限り、新法においてもその設立が認められることになつたものであること(法第一三条)。

(同種の事業又は業務)

二 法第一三条第一項に規定する同種の事業又は業務のうち、事業又は業務とは、地方税法第七二条の事業の分類に、おおむね準拠するものであつて、旧法において、「同一ノ事業又ハ同種ノ業務」と規定されていたにもかかわらず、実際の運用においては、同種の事業又は業務に従事する者をもつて特別国民健康保険組合を組織していたので、新法においては、これらの事実にかんがみ、同種の事業又は業務に従事する者をもつて組織することとしたものであること(法第一三条)。

(組合の地区)

三 組合の組織については、新たに、地区の概念が導入されたこと(法第一三条)。

(設立の認可)

四 新法においては、市町村の国民健康保険の実施が義務となつたことに伴い、組合の設立に当つては、都道府県知事は、組合と市町村との国民健康保険事業の調整を図るため、組合の地区をその区域に含む全市町村長の意見をきく、当該組合の設立によつて、これら市町村の国民健康保険事業の運営に支障を及ぼさないと認める場合でなければ、認可をしてはならないものとされたこと(法第一七条第三項)。

(組合の住所)

五 新法においては、組合の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものと規定されたこと(法第一六条)。

また、市町村の国民健康保険実施の義務に伴い、組合の事業内容が公営と同程度であることは、その存在意義を減殺することとなるので、組合の指導監督にあたつては、傷病手当金その他の現金給付の創設等給付内容を充実し、保険料の賦課については、事業主と従業員の負担を基礎とする特性を活かすよう努力されたいこと。

(加入及び脱退)

六 組合員の加入及び脱退については、組合の性格にかんがみ、任意であるが、組合員となつたときは、当該組合員及びその世帯に属する者は、法第六条各号(第七号を除く。)のいずれかに該当する者及び他の組合の被保険者である者を除き、当該組合が行う国民健康保険の被保険者となることは当然であること。また、組合員となり被保険者の資格を取得した者(その世帯に属する者を含む。)については、法の定めるところにより、受給権が発生し、規約をもつて、給付制限をすることはできないものであること。

(被保険者資格の得喪)

七 被保険者の資格、その得失の時期及びその届出については、市町村に関する規定を準用するものであること(法第一九条)。

(監事)

八 新法においては、組合の役員として理事のほかあらたに監事をかならず置くこととされたこと(法第二三条)。

(組合会の招集)

九 組合会の招集については、理事は、毎年度一回通常総会を招集する必要があり、新法第二八条第二項の場合は臨時組合会を招集しなければならないが、理事は規約の定めるところにより、適宜、組合会を招集することができるものであること(法第二八条)。

(準備金)

一○ 組合は、毎年度末日において、当該年度内に請求を受けた保険給付(療養の給付のほか、現金給付をも含む。)に関する費用の総額の一二分の二に相当する金額を特別積立金として積み立て、翌年度末日まですえ置かなければならないこととしたが、その趣旨は、組合の解散、合併等の場合においても診療報酬の支払に支障をきたさないため、通常診療報酬の審査及び支払に要する二箇月の保険給付に関する費用に相当する資金がつねに保有されていることが適当であることによるものであること。

また、毎年度収支決算上剰余金を生じたときは、当該年度を含む三箇年度内に行つた保険給付に要した費用(保険給付に関し被保険者が負担した一部負担金の額を除く。)の一年度当り平均額の一○○分の一○に相当する額に達するまでは、給付費支払準備金として積み立てなければならないとしたことは、保険給付に要した費用の支払に不足を生ずる場合に対処しようとする趣旨であり積立の限度額を右の一○○分の一○に相当する額としたのは、従来の組合における保険財政の運営の実際に則すようにしたものであること(令第二○条)。

(合併及び分割)

一一 組合の合併については、新設合併の場合には、新設された組合は、新規設立の手続を要し、合併により解散する組合は、解散の手続をとるものであり、吸収合併の場合に、合併後存続する組合は規約の変更をする必要があり、合併により吸収される組合は、解散の手続をとらなければならないこと(法第一七条・第三二条から第三四条まで)。

また、組合の分割については、新法は何ら規定を設けなかつたが、分割されるそれぞれの組合において、新規設立の手続をなすべきものであること(法第一七条)。

経過措置

(旧法の特別国民健康保険組合)

一 旧法第一一条の規定により設立された特別国民健康保険組合で新法の施行の際現にあるものは、新法第一七条の規定により設立された国民健康保険組合とみなされるものであること(施行法第八条)。

(組合の区域)

二 旧法の組合で施行法第八条の規定により新法の組合とみなされたものについては、その組合員が住所を有する市町村の区域が、当該組合の地区として規約に定められているものとみなされるものであり、当該組合は、新法の施行後三箇月以内にその地区を含む市町村の名称を、主たる事務所の都道府県知事に届け出なければならないこと(施行法第九条第二項及び第三項)。

(旧役員・組合会議員)

三 新法の施行の際現に組合の理事又は当該組合の業務の執行及び財産の状況の監査を職務とする理事以外の役員の職にある者並びに組合会議員である者は、それぞれ、新法の規定により理事、監事に選任され、又は組合会議員に選挙されたものとみなされ、その任期については、それぞれ旧法の規定により選任又は選挙された日から起算するものであること(施行法第一二条第一項)。

(旧組合会議員の定数)

四 新法施行の際現に存する組合の組合会議員の定数については、新法の施行の際現に組合会議員である者の任期が満了するまでの間は、なお従前の例によることとし、その任期満了の日以後、新法第二六条第二項の規定によることとし、新法への円滑な切り換えを図つたものであること(施行法第一二条第二項)。

第六 療養の給付に関する事項

(一) 療養の給付の範囲

(範囲)

一 療養の給付の範囲は、原則として健康保険その他の被用者保険なみに引上げることとしたが、財政上の理由等から、一挙に、右の範囲の療養の給付を行うことが困難である保険者も予想されるので、療養のうち政令で定める範囲のものについては、当分の間、保険者は条例の定めるところにより行わないことができることとし、漸進的にその改善を図る途を開いたこと(法第三六条第一項)。

(受給方法)

二 被保険者が新法第三六条第一項第一号から第四号までに定める療養の給付を受けようとするときは、自己の選定する療養取扱機関に被保険者証を提出して、そのものについて受けるものとされたが(法第三六条第五項)、薬局である療養取扱機関について薬剤の支給を受けようとするときは、被保険者証を提出することを要せず、療養取扱機関において療養を担当する国民健康保険医の交付した処方せんを提出することとされたこと(規則第二五条)。

また、被保険者が新法第三六条第一項第五号又は第六号に掲げる療養の給付を受けようとするときは、看護承認申請書又は移送承認申請書を保険者に提出しなければならないこととされたこと(規則第二六条)。

なお、法第三六条第一項第四号から第六号までに掲げる療養の給付は、政令で定める場合及び保険者が必要と認める場合に限り、行うものとされているが(法第三六条第二項)、これに関する政令は制定されていないので、保険者が必要と認める場合に行われることとなること。この場合における保険者の認定は、健康保険法第四三条第二項の保険者認定と同一の取扱とし、適正に行われるよう留意すること。

また、法第三六条第一項第五号及び第六号の療養の給付を行おうとするときは、医師又は歯科医師の意見をきくものとされているが(法第三六条第六項)、この場合の医師又は歯科医師は、必ずしも国民健康保険医であることを要せず、その意見は、規則第二六条に規定する看護承認申請書又は移送承認申請書の「医師又は歯科医師の意見」欄に記入するものとすること。

経過措置

(範囲)

一 保険者は、施行法第一四条第一項及び令附則第五項の規定に基き、当分の間、条例又は規約で定めるところにより、往診、歯科診療における補てつ病院又は診療所へ収容した場合における給食及び寝具設備につき療養の給付を行わないことができることとされたが、従来、実際上行われていた制限に比べると、初診、基準看護(病院又は診療所への収容に伴う看護)看護及び移送については、必ず療養の給付を行わなければならないこととなつたものであるから、この旨を関係者に周知徹底させるよう留意されたいこと。

(当分の間)

二 施行法第一四条第一項の「当分の間」とは、保険者の財政状況等を考慮しつつ、なるべくすみやかに給付範囲の制限を撤廃することにつとめる趣旨であるから、新法の施行の際現にこれら政令で定める範囲の給付を行つている保険者は、新法の施行によつて制限することがないようつとめられたいこと。

(同意を得て定める療養取扱機関)

三 保険者が往診、歯科診療における補てつ、病院又は診療所へ収容した場合の給食及び寝具設備について療養の給付を行つている場合において、被保険者がその範囲に属する療養の給付を受けようとするときは、保険者が開設者の同意を得て定める療養取扱機関について受けるものとし、緊急その他やむを得ない理由により右の療養取扱機関以外の療養取扱機関についてその範囲の療養を受けたときは、療養の給付に代えて、療養費を支給することとされたこと。この場合において、保険者が療養取扱機関の開設者の同意を得る方法は、文書による契約の方式をとる必要はなく、保険者がその行う療養の給付の範囲を明らかにして開設者の了解を求めることとし、了解を得た場合には、当該療養取扱機関名等を被保険者に対して周知徹底するよう配慮すること。

なお、開設者の了解を求めるにあたつては、被保険者が通常利用する範囲の療養取扱機関については、すべてこれを求めるようにつとめるべきであり、又療養取扱機関の開設者が自発的に右の範囲に属する療養の給付の取扱をする旨申し出た場合には、故なくこれを拒むべきでないこと。特に、公私医療機関の間に、差別を設けることは認められないこと(施行法第一四条第二項・第三項)。

(同意を得て定める療養取扱機関の経過措置)

四 保険者が新法の施行前から引き続き右の範囲の給付を行うこととしている場合に、当該保険者が新法の施行の際現に旧法の規定により定めている療養担当者が新法の施行と同時に療養取扱機関となつたときは、その療養取扱機関は、施行法第一四条第二項の規定により、保険者が開設者の同意を得て定めた療養取扱機関とみなされるものであるから、このような療養取扱機関については、あらためて開設者の同意を求める必要はないものであること(施行法第一四条第四項)。

(二) 一部負担金

(窓口払)

一 一部負担金の負担方法としては、旧法においては被保険者に対する療養の給付が行われた後、保険者において徴収する方法と、療養の給付を受ける際、被保険者をして当該療養取扱機関の窓口において支払ういわゆる窓口払の方法とが認められていたが、新法においては、他の被用者保険に準じ、原則として、窓口払の方法を採用したこと(法第四二条)。

(一部負担金の負担割合)

二 保険者が行うすべての療養の給付についての一部負担金の負担割合は二分の一をこえてはならないものであり(法第四二条第一項)、これに関しては経過的な特例は認められない。保険者は、国民健康保険財政の健全性をそこなうおそれがないと認められる場合に限り、一部負担金の割合を減ずることが認められるものであること。

一部負担金の負担割合を減ずる場合には、療養の給付の種類別に負担割合に差異を設け、世帯主若しくは組合員とその他の被保険者の一部負担金の負担割合に差異を設け、又は一部負担金を負担させないこととする等の方法によることも認められるものであるが、保険者の財政状況、被保険者の利便等を十分考慮して、その取扱に遺憾のないよう留意されたいこと(法第四三条第一項・第五二条第二項、令第二八条)。

なお、市町村が一部負担金の負担割合を引き下げる場合の条例の制定改廃については、あらかじめ都道府県知事に協議しなければならないものであること(法第一二条、令第六条第一号)。

(同意を得て定める療養取扱機関)

三 保険者が一部負担金の負担割合を減じた場合において、被保険者が保険者が開設者の同意を得て定める療養取扱機関について療養の給付を受けるときは、その減ぜられた割合による一部負担金をその療養取扱機関に支払えば足りることとされたこと。なお、療養取扱機関の開設者の同意を得る場合(法第四三条第二項)の取扱は、前記(一)の経過措置の三に準じ、保険者が一部負担金の負担割合を明らかにして開設者の了解を求めることとし、了解を得た場合には、当該医療機関名等を被保険者に対して周知徹底するよう配慮すること。また了解を求めるにあつては、被保険者が通常利用する範囲の療養取扱機関については、すべてこれを求めるようにつとめるべきであり、療養取扱機関の開設者が自発的に申し出た場合には、故なくこれを拒むべきでないこと。特に、公私医療機関の間に、差別を設けることは認められないこと。

(一部負担金の差額支給)

四 保険者が開設者の同意を得て定める療養取扱機関以外の療養取扱機関について療養の給付を受けるときは、被保険者は、その療養の給付に要する費用の二分の一に相当する額をその療養取扱機関に支払わなければならないものとし、被保険者が支払つた一部負担金と保険者が減じている割合による一部負担金との差額は、保険者がその被保険者の請求に基き支給しなければならないこととしたこと(法第四三条第三項)。

右の差額は、当該療養の給付に関する診療報酬の審査終了後すみやかに支払うものとすること。

(一部負担金の直接徴収)

五 法第三六条第一項第一号から第四号までの療養の給付を受ける場合の一部負担金は、当該療養の給付を受ける際、療養取扱機関に対して支払わなければならないが、市町村は、被保険者の大多数につきこれによりがたい特別の事情があると認める場合には、都道府県知事の承認を受け、条例で、当該市町村が開設者の同意を得て定める療養取扱機関について療養の給付を受ける被保険者から、一部負担金を直接に徴収するものとすることができること。この場合における「被保険者の大多数」とは被保険者のおおむね三分の二以上の多数をいうものとし、「特別の事情」とは、たとえば、被保険者の生計が専ら養蚕のみに依存している山村の如く、現金収入を得る時期が季節的に限定され、日常生活上の債務の決済が一年の一定時期において行われる慣習が一般的に存在している場合等極めて特殊な事情のみに限定されるものであること(法第四三条第四項)。

なお、療養取扱機関の開設者の同意を得る場合の取扱は、前記(一)の経過措置の三に準じて開設者の了解を求めることとし、了解を得た場合には、当該療養取扱機関名を被保険者に対して周知徹底するよう配慮すること。

また了解を求めるにあたつては、被保険者が通常利用する範囲の療養取扱機関については、すべてこれを求めるようにつとめるべきであり、療養取扱機関の開設者が自発的に申し出た場合には、故なくこれを拒むべきでないこと。特に、公私両機関の間に、差別を設けることは認められないこと。

(減免及び徴収猶予)

六 保険者は、特別の理由がある被保険者で療養取扱機関に一部負担金を支払うことが困難であると認められるものに対し、一部負担金を減額し、その支払を免除し、又は療養取扱機関に対する支払に代えて、一部負担金を直接に徴収することとしてその徴収を猶予することができることとされたこと(法第四四条第一項)。一部負担金の減額の措置を受けた被保険者は、その減額された一部負担金を療養取扱機関に支払うをもつて足り、一部負担金の支払の免除の措置を受け、又は各保険者が徴収することとされてその徴収を猶予された被保険者は、一部負担金を療養取扱機関に支払うことを要しないものであること(法第四四条第二項)。この場合において被保険者が療養取扱機関に支払わなくてもよいこととなつた一部負担金は、保険者が療養取扱機関の請求により支払うものであること(法第四五条第一項)。

(直接徴収の場合の減免及び徴収猶予)

七 新法第四三条第四項の規定により一部負担金を直接徴収することとしている市町村は、特別の理由がある被保険者で、一部負担金を納付することが困難であると認められるものに対し、その一部負担金を減免し、又はその徴収を猶予することができることとされ(法第四四条第三項)、さらに、保険者は、法第三六条第一項第五号又は第六号に定める給付(看護又は移送)を受ける場合に、特別の理由がある被保険者で一部負担金を納付することが困難であると認められるものに対してもその一部負担金を減免し、又はその徴収を猶予することができることとされていること(法第五二条第三項)。

(特別の理由)

八 六及び七の「特別の理由」とは、貧困、災害、不作、不漁、世帯主又は組合員の事故による不在等一部負担金を支払い、又は納付することが困難と認められる事由をいうものであるが、被保険者が生活保護法による医療扶助を受けるものである場合においては、当該扶助は、当然、当該被保険者が支払い、又は納付することが困難である一部負担金について行われるものであるからこれら一部負担金の減免等に関する規定は適用しないものであること。

なお、被保険者に対して一部負担金の減額、免除又は徴収猶予の措置のいずれを適用するかは、その一部負担金の支払又は納付が困難である理由の内容、困難の程度及び態様に応じ、最も適切であることが必要とされるものであること。

(減免又は徴収猶予の手続)

九 一部負担金の減免又は徴収猶予の措置は、当該被保険者の属する世帯の世帯主又は組合員の申請に基いてとるものとし、当該被保険者が療養取扱機関について療養の給付を受けるものであるときは、被保険者証のほか一部負担金の減免又は徴収猶予に関する証明書を当該療養取扱機関に提出してこれを受けさせるものとするが、その詳細については、おつて別途通知するものであること。

(療養取扱機関の一部負担金の取扱)

一○ 療養取扱機関に対する一部負担金の支出が困難である特別の理由がある被保険者に対しては、保険者が一部負担金の減免又は徴収猶予の措置をとるものであるが、これらの被保険者以外の被保険者が支払うべき一部負担金については療養取扱機関がその支払を受ける責任を有し、療養取扱機関が善良な管理者と同一の注意をもつてその支払を受けることにつとめたにもかかわらず、なお被保険者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、保険者は、当該療養取扱機関の請求に基き、この法律の規定による徴収金の例により、強制徴収等の方法によりこれを処分したうえ、支払うものであること(法第四二条第二項)。その詳細については追つて別途通知するものである。

経過措置

(同意を得て定める療養取扱機関)

一 新法の施行前から引き続き一部負担金の負担割合を二分の一未満としている保険者が新法の施行の際現に定めている療養担当者が、新法の施行と同時に療養取扱機関となつたときは、当該療養取扱機関は、新法第四三条第二項の規定により保険者が開設者の同意を得て定めた療養取扱機関とみなされるものであるから(施行法第一七条)、これらの療養取扱機関についてはあらためて開設者の同意を求めることを要しないものであること。

(直接徴収の経過措置)

二 新法の施行の際現に旧法の規定により、一部負担金を直接徴収することとしている市町村は、昭和三四年三月三一日までの間は、このような特別の事情がない場合においても、法第四三条第四項の規定により一部負担金を直接に徴収するものとすることができ、かつ、これにつき同項の規定による都道府県知事の承認を受けることを要しないものとされたこと(令附則第六項)。

右の施行令附則第六項の規定に基き一部負担金の直接徴収を行う市町村が新法施行の際現に旧法の規定により定めている療養担当者が、新法の施行と同時に療養取扱機関となつたときは、当該療養取扱機関は、当該市町村が法第四三条第四項の規定により開設者の同意を得て定めた療養取扱機関とみなされるので(施行法附則第七項)、これらの療養取扱機関については、あらためて開設者の同意を求める必要はないものであること。

(一部負担金の経過措置)

三 新法の施行前に行われた療養の給付に関する一部負担金については、なお、従前の例によるものであること(施行法第一六条)。

(三) 療養の給付の期間

療養の給付の期間に関しては、健康保険と同様同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病については、当該保険者がこれを開始した日から起算して三年を経過したときは、行わないこととしたが、市町村にあつては、条例で三年をこえて療養の給付を行うことができることとしたこと(法第五三条)。

経過措置

(期間の計算)

一 療養の給付の期間は、新法の施行の際現に旧法の規定による療養の給付を受けている者の当該疾病若しくは負傷又はこれによつて発した疾病については、当該保険者が旧法の規定により当該療養の給付を開始した日を新法の規定による療養の給付を開始した日とみなして、計算することとなるが(施行法第二一条第一項)、法第五三条の適用にあつて、甲保険者の給付期間と乙保険者の給付期間とを通算することはできないものであること。

(協議の経過措置)

二 市町村が三年をこえて療養の給付を行おうとする場合の条例の制定改廃については、あらかじめ都道府県知事と協議するものとされているが(法第一二条、施行令第六条第三号)、新法の施行の際現に旧法の規定による条例で三年をこえて療養の給付を行うこととしている市町村が、新法の施行後も引き続きその条例の定めるところにより三年をこえて療養の給付を行おうとするときは、あらためて都道府県知事に協議する必要はないものであること。

(組合の場合の経過措置)

三 組合は、同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病に関しては三年をこえて療養の給付を行うことはできないこととなつたが、新法の施行の際現に旧法の規定に基く規約で同一の疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病に関し三年をこえる期間療養の給付を行うこととしている組合は、新法の施行の際現に旧法の規定による療養の給付を受けている者の当該疾病又は負傷及びこれによつて発した疾病については、従前の例により療養の給付を行うべき期間、従前の例による療養の給付を行わなければならないものであること(施行法第二一条第二項)。

市町村が、旧法の規定に基く条例で三年以上の給付を行つている場合には、なくべく従前どおり三年をこえて給付を行うことが望ましいが、新法の施行に伴い、療養の給付の期間を三年とする場合は、右の組合の場合に準じ、条例の定めるところにより、従前の例による療養の給付を行うことが適当であること。

(四) 継続給付

(日雇労働者の継続給付)

一 国民健康保険の被保険者が日雇労働者又は被扶養者となつたためその資格を喪失した場合において、その資格喪失の際現に療養の給付を受けていたときは、日雇労働者健康保険法による受給要件をみたすまでの間、療養の給付が行われない期間が存在することになり、被保険者の福祉の上に好ましくないので、新法においては、特に規定を設け、その者が被保険者として受けることができる期間、継続して当該保険者から療養の給付を受けることができることとしとこと(法第五五条第一項)。

なお、この場合の療養の給付は、その者が国民健康保険の被保険者資格を喪失した日から起算して六箇月を経過したとき等においては、行わないこととされていること(法第五五条第二項)。

(継続療養証明書)

二 前記一により被保険者資格喪失後引き続き療養の給付を受けようとする者には、被保険者資格喪失後一○日以内に施行規則第二八条第一項に規定する申請書を提出させた上、同条第二項に規定する継続療養証明書を世帯主又は組合員に交付すること。継続療養を受けようとする者は、療養取扱機関に当該継続療養証明書を提出してそのものについてこれを受けるものとすること。

経過措置

(継続給付の制限)

一 昭和三六年三月三一日までの間は、(四)の一の事由のほか、当該保険者が市町村であるときは、その者が当該市町村の区域内に住所を有しなくなつたとき、当該保険者が組合であるときは、その者が当該組合の組合員又は組合員の世帯に属する者でなくなつたときも、行わないこととされたこと(施行法第二二条)。

(二重加入者等の被保険者資格の喪失に伴う継続給付)

二 新法の施行の際現に国民健康保険を行つている市町村又は組合は、それぞれ施行法第五条第一項又は第一○条第一項の規定により昭和三六年三月三一日までは、被保険者の資格に関して従前の例によることができることとされているが、これらの市町村又は国民健康保険組合が、被保険者の資格に関し従前の例によらないこととなつたため被保険者資格を喪失した者に対しても、当該疾病又は負傷及びこれらによつて発した疾病に関しては、継続給付を行わなければならないこととなつていること(施行法第五条第三項・第一○条第二項)。この場合における継続療養の実施方法等についても前記(四)の二に準じて実施するよう配慮されたいが、この場合の継続療養は、旧法の規定によつて当該療養の給付を開始した日から起算して新法の施行の際における従前の例により療養の給付を行うべき期間、新法の施行の際における従前の例による療養の給付とされているので、この点に留意し、継続療養証明書に療養の給付の内容を明記する等のほか、療養取扱機関に対する連絡を密接にし、その取扱に遺憾のないよう格段の配慮をつくされたいこと。

なお、組合が施行法第二一条第二項の規定に基いて継続給付を行う場合の取扱及び新法の施行の際現に存する旧法の普通国民健康保険組合又は社団法人についても、継続給付を行う場合の取扱は、右と同様とされたいこと(施行法第三七条・第四四条第二項及び第三項)。

(五) 療養の給付の制限

(市町村の逆選択防止のための給付制限)

一 国民健康保険未実施市町村が存在する間は、国民健康保険実施市町村に対する転入によりいわゆる逆選択が起りうることが予想されるので、施行法第二四条において、市町村は、昭和三六年三月三一日までの間は、条例の定めるところにより、当該市町村の区域内に住所を有するに至つたため被保険者資格を取得した者に対して、資格取得の日から起算して六箇月をこえない期間、当該資格取得の日前に発した疾病若しくは負傷又はこれにより発した疾病に関し、療養の給付の一部を制限することができることとしたこと。この場合に制限することができる療養の給付の一部とは、歯科診療における補てつ、病院又は診療所への収容、看護、移送の範囲のものとし、いわゆる逆選択を防止するに最少限必要な限度において条例で定めることとすること(施行法第二四条本文)。

(給付制限ができない場合)

二 逆選択防止のための療養の給付の制限は、当該市町村に住所を有するに至つたことのみにより被保険者資格を取得した場合に限り認められるものであるが、当該市町村の区域に住所を有するに至つたことにより被保険者資格を有するに至つた場合においても、施行法第二四条各号に掲げる場合に該当するときは、療養の給付を制限することは認められないこと(施行法第二四条ただし書)。

なお、施行法第二四条第二号の厚生省令で定める理由としては、規則附則第七項において、離婚又は離縁及び海外からの帰還が規定されたものであること。

また、出生によつて住所を有するに至つた場合、市町村合併により住所を有するに至つた場合等において施行法第二四条により療養の給付の制限を行い得ないことはいうまでもないものであること。

(六) 国民健康保険医及び国民健康保険薬剤師

(国民健康保険医等)

一 法第三六条第三項は、法第三六条第一項第一号から第四号までに定める療養は、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師が担当するものと規定し、医療面における国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の自主性を法律の規定上明確にしたものであること。

(国民健康保険医の登録等)

二 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録は、医師若しくは歯科医師又は薬剤師の申請に基き、その住所地の都道府県知事が行うこととされているが(法第三八条及び第三九条)、保険者が開設する病院若しくは診療所又は薬局において業務に従事する医師若しくは歯科医師又は薬剤師も、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録を受けない限り、国民健康保険の療養を担当することができないものである点は、特に留意する必要があるものであること。

なお、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録は、当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師の住所地の都道府県知事が行うものであつて、健康保険法の規定による保険医又は保険薬剤師の登録は原則として保険医療機関又は保険薬局の所在地の都道府県知事が行う制度と趣を異にし、これに伴い事務処理上も健康保険法の場合と異る点があるから、これに関しても留意する必要があること。

(登録の手続の特例)

三 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録は、前記二のとおり、当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師の申請に基いて行われるのであるが、これに対しては、手続の簡素化のため、次のような特例が認められていること。

(一) 診療所又は薬局が医師若しくは歯科医師又は薬剤師が開設したものであり、かつ、当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師のみが診療又は調剤に従事している場合において、当該診療所又は薬局につき法第三七条の規定による療養取扱機関の申出の受理があつたときは、その申出の受理の時に、当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師につき、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録があつたものとみなされること(法第三九条第二項)。

(二) 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師以外の医師若しくは歯科医師又は薬剤師につき健康保険法の規定による保険医又は保険薬剤師の登録があつたときは、その者が厚生省令の定めるところにより、別段の申出をしない限り、その登録の時に、その者について国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録があつたものとみなされるものであること(法第三九条第三項)。

なお、この場合における別段の申出は、登録省令第八条の規定により、健康保険法の規定による保険医又は保険薬剤師の登録申請書にあわせて、申出書を都道府県知事に提出して行うこととされていること。

(登録の欠格事由)

四 都道府県知事が国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録を拒み得るのは、申請者が新法の規定により国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録を取り消され、二年を経過しないものである場合に限定し(新法第三九条第四項)、医師若しくは歯科医師又は薬剤師の皆保険参加を保障したものであること。

(登録の事務)

五 三の国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録があつたものとみなされた場合においても、登録に関する事務は、すべて登録政令及び登録省令の定めるところによりこれを実施し、登録の消除、取消等はすべて国民健康保険法の規定に基いて行うものであつて、健康保険法における登録のまつ消、取消等は、健康保険法の保険医又は保険薬剤師の身分を併有する国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の地位に影響を及ぼさないものであることはいうまでもないこと(法第三九条第五項)。

(登録手続)

六 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録手続等に関しては、登録政令及び登録省令に定められており、その内容は、健康保険法の規定による保険医又は保険薬剤師の登録手続等とおおむね同様であるが、次の点についてはその取扱を異にするものであるから特に留意し、事務処理に遺憾のないようにされたいこと。

(一) 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録は当該医師、歯科医師又は薬剤師の住所地の都道府県知事が行い(法第三九条第一項)、療養取扱機関の申出の受理は当該病院、診療所又は薬局の所在地の都道府県知事が行うこととなつている(法第三七条第一項)ものであるから、都道府県知事は、他の都道府県の区域内に住所を有する医師若しくは歯科医師又は薬剤師の開設する診療所又は薬局について法第三七条第一項の規定による療養取扱機関の申出を受理した場合に、前記三の(1)においてみたとおり法第三九条第二項の規定により当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師について国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録があつたものとみなされるときは、すみやかに、登録政令第三条第二号から第四号までに掲げる事項をその住所地の都道府県知事に通知し、当該都道府県知事の登録事務の処理に遺憾のないようにしなければならないこととされたこと(登録政令第四条前段)。同様の通知義務は、住所地の都道府県以外の都道府県の区域内にある保険医療機関又は保険薬局において診療又は調剤に従事する医師若しくは歯科医師又は薬剤師について健康保険法の規定による保険医又は保険薬剤師の登録をしたときにも課せられているものであること(登録政令第四条後段)。

なお、都道府県知事は、登録政令の施行の際(新法の施行の際)現に健康保険法の規定により登録している保険医又は保険薬剤師のうち、他の都道府県の区域内に住所を有する者については、登録政令施行後、すみやかに右と同様の通知を行わなければならないこととされているものであること(登録政令附則第二項)。

(二) 都道府県知事は、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録をしたとき及び法第三九条第二項又は第三項の規定により登録があつたものとみなされたときは、すみやかに所定の様式による登録票を交付するものとされているが(登録政令第五条)、施行法第一五条第二項の規定により登録があつたものとみなされた場合においても同様の措置を講ずるよう配慮されたいこと。

(三) 都道府県知事は、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録をしたとき及び法第三九条第二項又は第三項の規定により登録があつたものとみなされたとき並びに登録の取消又は消除をしたときは、すみやかに所定の事項を告示することとされているが(登録政令第九条)、施行法第一五条第二項の規定により登録があつたものとみなされた者に関しても同様の措置を講ずるよう配慮されたいこと。

(担当準則)

七 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師が国民健康保険の療養を担当する場合の準則については、健康保険法第四三条ノ六第一項の規定による命令の例、すなわち、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三二年厚生省令第一五号)第二章又は保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和三二年厚生省令第一六号)第八条から第一○条までの規定の例によるものであること(新法第四○条)。

(指導大綱)

八 国民健康保険医及び国民健康保険薬剤師は、その担当する療養に関し、厚生大臣又は都道府県知事の指導を受けなければならないが(新法第四一条)、その指導の大綱は、社会保険療養担当者指導大綱(昭和三二年七月四日保発第六二号都道府県知事あて保険局長通知)によるものであること。

(監督等)

九 国民健康保険医及び国民健康保険薬剤師に対する質問(新法第四六条)、登録の消除(新法第四七条第二項及び第三項)、登録の取消事由の法定(新法第四九条)、登録の取消処分に関する諮問(新法第五○条第二項)及び弁明(新法第五一条第二項)に関しても、健康保険法に準じて規定し、国民健康保険医及び国民健康保険薬剤師の法律的地位の安定と国民健康保険事業運営の適正化をはかつたものであること。

経過措置

旧法の規定による療養担当者で施行法第一五条第一項本文の規定により療養取扱機関の申出の受理があつたものと見なされたものにおいて新法の施行の際現に診療又は調剤に従事している医師、歯科医師若しくは薬剤師又は新法の施行の際現に健康保険法に規定する保険医若しくは保険薬剤師であるものは、その者が厚生省令の定めるところにより別段の申出をしない限り、新法の施行の際、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録があつたものとみなされること(施行法第一五条第二項)。この場合において、これらの医師、歯科医師又は薬剤師が診療所又は薬局を開設したものであり、かつ、これらの者のみが診療又は調剤に従事している場合に、施行法第一五条第二項の規定の適用が排除されているのは、同法同条第一項の規定により当該診療所又は薬局につき、新法の施行の際に、新法第三七条第一項の規定による療養取扱機関の申出の受理があつたものとみなされることに伴い、新法第三九条第二項の規定により、国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師の登録があつたものとみなされるものであること。

なお、右の前段の場合における別段の申出は、登録省令附則第三項の規定による申出書を都道府県知事に提出して行うものとされていること。

(七) 療養取扱機関

(療養取扱機関)

一 国民健康保険の療養の給付は、新法第三七条の規定による申出を受理された病院、診療所又は薬局、すなわち療養取扱機関が取り扱うものであるが、新法は公私医療機関を平等に取り扱う建前から、保険者が開設する病院、診療所又は薬局も療養取扱機関とならない限り、国民健康保険の療養の給付を取り扱うことができないこととしたこと。

(国民健康保険医等との関係)

二 国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師と療養取扱機関の開設者との関係については、法第三六条第四項に規定されており、開設者は、当該療養取扱機関において業務に従事する国民健康保険医又は国民健康保険薬剤師に対し、その者が療養を担当するにつき必要な措置を講ずべきこととされていること。この場合における必要な措置とは、療養を実施するにつき必要な人的、物的設備の整備等開設者が自ら行うべき措置はもちろん、管理者をして行わせるべき従事者の指導監督をも含むものであること。

(申出の受理)

三 病院若しくは診療所又は薬局の開設者は、療養の給付を取り扱おうとするときは、病院若しくは診療所又は薬局ごとに、その所在地の都道府県知事にその旨を申し出て(法第三七条第一項)、その申出を受理されることを要するものであること(法第三六条第四項)。この場合における申出の受理とは、当該申出の認容を内容とする行政処分であり、当該受理については都道府県知事は、地方社会保険医療協議会に諮問し(法第五○条第二項)、当該受理を拒むには地方社会保険医療協議会の議によらなければならないこととし(法第三七条第二項)、医療機関の皆保険への参加が適正かつ円滑に行われるようにしたものであること。

(申出の受理の手続)

四 療養取扱機関の申出の受理はいうまでもなく、病院若しくは診療所又は薬局の開設者の申出をまつて行われるものであるが、手続の簡素化をはかるため例外を定めていること。すなわち、療養取扱機関以外の病院若しくは診療所又は薬局につき健康保険法の規定による保険医療機関又は保険薬局の指定があつたときは、開設者が厚生省令の定めるところにより別段の申出をしない限り、その指定の時に、当該病院若しくは診療所又は薬局につき法第三七条第一項の規定による療養取扱機関の申出の受理があつたものとみなされること(法第三七条第三項)、この場合における別段の申出は、登録省令第三条により健康保険法の規定による保険医療機関又は保険薬局の指定申請書にあわせて所定の事項を記載した申出書を都道府県知事に提出して行うこととされていること。

(担当範囲)

五 療養取扱機関は、その所在地の都道府県及び開設者が所在地の都道府県知事に申し出たその他の都道府県の区域内の保険者(組合の場合は、その区域内に主たる事務所がある組合とする。)及びその保険者の被保険者に対する関係においてのみ、療養取扱機関たるものとされていること(法第三七条第五項)。すなわち、療養取扱機関の所在地の都道府県の区域内の保険者及びその被保険者に対する関係においては、当然、療養取扱機関となるものであり、被保険者は、その住所地(組合にあつては、主たる事務所の所在地)の都道府県の区域内の療養取扱機関であれば、従来、保険者が療養担当者としていなかつたものについても当然療養の給付を受けることができることとなり、また、従来、保険者が他の都道府県にある病院若しくは診療所又は薬局を療養担当者としていた場合であつても、当該病院若しくは診療所又は薬局の開設者がその所在地の都道府県知事に対し、当該保険者の所在地である他の都道府県について法第三七条第五項による申出を行わない限り、当該被保険者は、当該医療機関について療養の給付を受けることができないものであること。従つて県境等にあるため他の都道府県の病院若しくは診療所又は薬局を従来療養担当者としていた保険者は、当該病院若しくは診療所又は薬局の開設者に対し、できる限り、当該保険者の所在地の都道府県についても法第三七条第五項の申出を行うよう連絡し、被保険者の療養の給付に遺憾のないよう配慮する必要があること。

また、法第三七条第五項の申出を行うときは、必ず一都道府県の区域を単位としてこれを行うものとし、一都道府県内の特定保険者又は特定区域についての申出はできないものであるから、療養取扱機関に対する周知徹底について十分留意すること。

なお、厚生省所管の国立病院及び療養所(昭和三四年一月九日医発第一七号国立病院長及び国立療養所長あて医務局長通知、国民健康保険法の施行に伴い療養取扱の申出について)をはじめ、一般公的医療機関(昭和三三年一二月二五日医発第一、○四一号都道府県知事あて医務局長通知、公的医療機関と療養取扱機関の関係について)においては、法第三七条第五項の規定によりすべての都道府県にわたつての療養取扱機関となるものであること。

(担当範囲の申出等)

六 法第三七条第五項の申出については、法第三七条第一項の申出の場合と異り、行政処分としての受理を要するものではなく、又この申出を拒むことはできないものであり、さらに一箇月以上の予告期間を設けてこの申出を撤回し、又は二以上の都道府県についてその申出をした場合にその申出の範囲を縮少することができるものであること(法第四七条第一項及び第三項)。

(申出の受理の事務)

七 療養取扱機関の申出の受理等の手続に関しては、登録政令及び登録省令に規定されており、その内容はおおむね健康保険の保険医療機関又は保険薬局の指定等の手続と同様であるが、次の点に関しては特にその取扱に、遺憾のないよう配慮すること。

(1) 都道府県知事は、法第三七条第一項の規定による療養取扱機関の申出を受理したとき及び同条第三項の規定により療養取扱機関の申出の受理があつたものとみなされたとき等においては必要事項を告示しなければならないこととされているが(登録政令第一条第一項)、施行法第一五条第一項の規定により療養取扱機関の申出の受理があつたものとみなされた場合においても、同様の措置を講ずる必要があるので、登録政令第一条第一項に準じて措置するよう配慮されたいこと。

(2) 都道府県知事は、法第三七条第五項の規定による申出を受けたとき、又はその申出が撤回され、若しくはその申出の範囲が縮少されたときは、すみやかに所要事項を告示しなければならないこと(登録政令第一条第二項)。

(3) 都道府県知事は、法第三七条第五項の規定による申出を受けたとき、当該申出をした療養取扱機関が、取消若しくは辞退により療養取扱機関でなくなつたとき、又は当該申出を撤回し、若しくはその申出の範囲を縮少したときは、すみやかに関係都道府県知事に所要事項を通知するものとし、当該通知を受けた都道府県知事、当該通知に係る事項を告示しなければならないこと(登録政令第二条)。

(担当準則)

八 療養取扱機関が取り扱う療養の給付に関する準則については、厚生省令で定めるもののほか健康保険法第四三条ノ四第一項の規定による命令の例、すなわち、保険医療機関及び保険医療養担当規則第一章又は保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第一条から第七条までの規定の例によるものとされたこと(法第四○条)。

(指導大綱)

九 療養取扱機関は、その取り扱う療養の給付に関し、厚生大臣又は都道府県知事の指導を受けなければならないが(法第四一条)、その指導の大綱は、前記の社会保険医療担当者指導大綱によるものであること。

(療養の給付に要する費用の額の算定)

一○ 療養取扱機関において行なわれる療養の給付に要する費用の額の算定については、健康保険法第四三条ノ九第二項の規定による厚生大臣の定の例、すなわち健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(昭和三三年六月厚生省告示第一七七号)の例によることとされたこと(法第四五条第二項)。

(割引契約)

一一 保険者は、都道府県知事の認可を受け、療養取扱機関との契約により、当該療養取扱機関において行われる療養の給付に要する費用の額につき前項一○の算定方法により算定される額の範囲で別段の定をすることができることとされたが(法第四五条第三項)、この規定に基いて契約する療養取扱機関は、従来どおり国立療養所、保健所等に限るものとし、保険者の直営診療施設である療養取扱機関が当該保険者とのみ当該契約を結ぶことは認められないものであること。又この規定による契約は、保険者が個々に契約するものとし、国民健康保険団体連合会及び医師会によるいわゆる団体契約方式は認められないものであること。

なお、現行の点数単価方式以外の方式による診療報酬の算定は、昭和三四年一月一日以後は認められないものであること。

(診療報酬請求書の提出先)

一二 療養取扱機関は、診療報酬を請求しようとするときは、所定の請求書及び請求明細書を調製し、各月分につき、翌月一○日までに保険者に送付することとされているが(請求省令第一項)、保険者が法第四五条第五項の規定により診療報酬の審査に関する事項を国民健康保険団体連合会に委託しているときは、当該連合会に送付するものとすること。

(監督)

一三 厚生大臣又は都道府県知事は、療養の給付に関し必要があると認めるときは、療養取扱機関に対し報告又は診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命ずる等のほか、当該職員に関係者に対して質問させ、又は療養取扱機関について設備、診療録、帳簿書類を検査させることができることとされたが(法第四六条第一項)、この場合における都道府県知事は、当該療養取扱機関の所在地の都道府県知事をいうものであり、当該療養取扱機関の所在地の都道府県知事以外の都道府県知事は、療養の給付に関し必要があると認めるときは、当該療養取扱機関の所在地の都道府県知事に通報して当該処分を依頼する等の取扱をすべきものであること。

(取消処分)

一四 都道府県知事が法第三七条第一項の規定による申出の受理を取り消すことができる事由は、すべて法第四八条に規定され、かつ、取消処分を行うにあたつては、地方社会保険医療協議会に諮問するとともに(法第五○条第二項)、開設者に弁明の機会を与えなければならないこととされたこと(法第五一条第一項)。

経過措置

(旧法の療養担当者)

一 新法の施行の際現に旧法の規定による療養担当者であるもの又は新法の施行の際現に健康保険法の規定による保険医療機関又は保険薬局であるものについては、開設者が厚生省令の定めるところにより別段の申出をしない限り、新法の施行の際、法第三七条第一項の規定による療養取扱機関の申出の受理があつたものとみなされること(施行法第一五条第一項)。この場合における別段の申出は、登録省令附則第二項により、所要の事項を記載した申出書を都道府県知事に提出して行うこととされていること。

(旧法の療養担当者において従事する医師等)

二 法第四六条第一項の規定は、旧法の規定による療養担当者又は療養担当者であつたものが、施行法第一五条第一項本文又は法第三七条第三項本文の規定により療養取扱機関となつた場合に、当該療養取扱機関又は当該療養取扱機関において療養若しくは調剤に従事する医師、歯科医師若しくは薬剤師が旧法第八条ノ五の規定により担当した療養の給付についても適用されるものであること(施行法第一九条)。

(取消事由)

三 旧法の規定による療養担当者又は療養担当者であつたものが、施行法第一五条第一項本文又は新法第三七条第三項本文の規定により療養取扱機関となつたときは、都道府県知事は、当該療養取扱機関につき新法の施行前に新法第四八条各号のいずれかに相当する事実があつたことを理由として同条の規定による取消の処分を行うことができることとされていること(施行法第二○条)。

(八) 所要事項の通知

前記(六)及び(七)のほか国民健康保険医、国民健康保険薬剤師の登録及び療養取扱機関の申出の受理等に関する事務取扱については、おつて別途通知するものであること。

第七 療養費に関する事項

(療養費を支給すべき場合)

一 新法において療養費を支給すべき場合は、法第五四条第一項及び第二項並びに施行法第一四条第三項に規定されているが、療養費支給に関する事務取扱は、かりそめにも放慢に流れることなく、健康保険における取扱に準じて適正に運用されるよう特に留意すること。

(緊急その他やむを得ない理由)

二 法第五四条第二項中被保険者証を提出しなかつた「緊急その他やむを得ない理由」とは、旅行中の急患の際に被保険者証を提出できなかつた場合、法第一一七条の規定に基き、被保険者証の交付につき条例で特例を定めている特別区及び市の被保険者となつた者が被保険者資格取得後、被保険者証の交付を受けるまでの間に疾病にかかつた場合等をいうものであること。

(療養費の額)

三 療養費の額は、療養に要する費用の額から、その額に一部負担金の割合を乗じて得た額を控除した額を基準として、保険者が決定するものとし、療養に要する費用の額の算定については、健康保険法の規定による療養の給付に要する費用の額の算定の例によることとされているが(法第五四条第三項及び第四項)、歯科診療以外の診療に係る法第五四条第一項の規定による療養費の額は、健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(前掲厚生省告示)別表第一(甲表)により算定するものとし、歯科診療以外の診療に係る法第五四条第二項又は施行法第一四条第三項の規定による療養費の額は、当該療養取扱機関の診療報酬が前掲厚生省告示別表第一(甲表)により算定されるものであるときは、当該別表第一により、当該療養取扱機関の診療報酬が前掲厚生省告示別表第四又は別表第五(乙表)により算定されるものであるときは、当該別表第四又は別表第五により、それぞれ算定するものとすること。

(支給)

四 療養費は、当該療養を受けた者が世帯主又は組合員以外の被保険者であるときは、当該世帯主又は組合員に対して支給されること(法第五七条)。

第八 他の法令による医療に関する給付との調整に関する事項

(給付の調整)

一 被保険者が他の社会保険各法その他政令で定める法令の規定により、権利として医療に関する給付を受けることができる場合又はこれらの法令以外の法令により国若しくは地方公共団体の負担において医療に関する給付を受けた場合は、国民健康保険法による療養の給付は、行わないこととしたこと(法第五六条第一項)。右の政令で定める法令とは、施行令第二九条各号に掲げる船員法ほか一三法律をいうものであること。他の社会保険各法その他政令で定める法令以外の法令とは、伝染病予防法、児童福祉法、優生保護法、身体障害者福祉法、その他の法令をいうものであること。ただし、生活保護法については、その性格から当然右の法令に含まれないと解され、又結核予防法と新法との関係については、結核予防法第三七条の規定が適用され、法第五六条の規定は適用されないものであること。

なお、調整の事務取扱に関しては、おつて別途通知するものであること。

(差額支給)

二 一の法令による医療に関する給付が、当該疾病又は負傷につき新法による療養の給付又は療養費を支給したものとした場合における給付に及ばないものであるときは、その差額を被保険者に支給しなければならないものとし(法第五六条第二項)、この場合において、当該被保険者が療養取扱機関について当該療養を受けたものであるときは、保険者は、当該被保険者に対して交付すべき差額の限度において、当該被保険者が当該療養取扱機関に支払うべき費用を当該被保険者に代つて当該療養取扱機関に支払うことができることとしたこと(法第五六条第三項)。

第九 その他の給付に関する事項

保険者は、被保険者の出産及び死亡に関しては、条例又は規約の定めるところにより助産費の支給又は葬祭費の支給等を行うものとしたが、特別の理由があるときは、その全部又は一部を行わないことができることとされたこと(法第五八条第一項)。助産費又は葬祭費の額は、健康保険法の配偶者分娩費又は家族葬祭料の額に準じ、それぞれ一、○○○円又は二、○○○円程度とすることが適当であること。

なお、保険者は、右の給付のほか、条例又は規約の定めるところにより、傷病手当金の支給その他の保険給付を行うことができることとされたが(法第五八条第二項)、この場合においても被保険者の負傷、疾病、出産又は死亡を事由としない給付は認められないものであること。

第一○ 保険給付の制限等に関する事項

保険給付の制限に関しては、旧法には全く規定されていなかつたものであるが、新法においては、健康保険法の規定に準じ、被保険者が日本国外にある場合、被保険者が故意に傷病にかかつた場合等における保険給付の制限に関する規定を整備したほか(法第五九条から第六三条まで)、第三者の行為に基いて発生した給付事由について保険給付を行つた場合の当該第三者に対する損害賠償請求権の取得(法第六四条)、不正行為によつて保険給付を受けた者等に対する不正利得の徴収(法第六五条)、保険者の被保険者等に対する強制診断の権限(法第六六条)等について規定を新設し、その適正な運用により国民健康保険事業の健全性を推進しようとするものであること。

なお、法第六六条の規定により質問又は診断を行う当該職員とは、事務吏員若しくは技術吏員又は医師、歯科医師若しくは薬剤師たる嘱託職員をいい、雇員、傭人である職員等は含まないものであること。又保険者が国民健康保険組合である場合にあつては、右の職員に相当する職務を行う者をいうものであること。

第一一 国民健康保険団体連合会に関する事項

新法においては、連合会の行う最大の業務は、保険者から委託を受けて療養取扱機関に対して支払う療養の給付に関する費用の審査及び支払に関する事務であるが、右の審査については公平であり、支払については、迅速確実であることが必要であるので、加入している保険者の数がその区域内の保険者の総数の三分の二以上になつたときは、その区域内のその他の保険者がすべて当該連合会の会員となることとし、保険者の共同の目的の実現に遺憾なきを期したものであること。

経過措置

(旧法の連合会)

一 旧法の規定により設立された国民健康保険団体連合会で新法の施行の際現にあるものは、法第八五条の規定により設立されたものとみなされ、規約については、新法、施行法及びこれらに基く命令の規定に抵触するものを除いては、新法の施行後もなお効力を有するものであること。

(役員等)

二 新法の施行の際現にある国民健康保険団体連合会の役員及び総会の議員である者の選任及び任期については、おおむね前記組合の場合と同様の取扱であること。

第一二 診療報酬審査委員会に関する事項

(審査及び支払の委託)

一 法第四五条第五項の規定により、保険者は、療養取扱機関の療養の給付に関する費用の請求について、その審査及び支払に関する事務を国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金に委託することができるものであるが、審査の適正と支払の迅速をはかるため、これを連合会に委託させる方針であること。

(審査委員の定数)

二 審査委員会の審査委員は、三者構成により診療報酬請求明細書の取扱件数等を勘案して妥当な人数を定むべきであり、各九人とすることが望ましいこと(法第八八条第一項)。

なお、一般診療と歯科診療とを分け、部会において審査を行う等部会を設ける場合においても、各部会の審査委員は、同条に規定する三者構成により選任されねばならぬものであること。

(委嘱)

三 審査委員会は、連合会に置かれるものであるが、その審査委員会を組織する審査委員は、都道府県知事が委嘱するものであること(法第八八条第二項)。この場合において、国民健康保険医及び国民健康保険薬剤師並びに保険者を代表する委員については、それぞれ関係団体の推薦を必要とするものであること(法第八八条第三項)。したがつて、推薦の依頼から委嘱までの一さいの手続は都道府県知事において行うものであること。

(会長)

四 審査委員会に、公益を代表する委員のうちから、審査委員が選挙する会長一人及び会長に事故があるときはその職務を代表するために、あらかじめ会長の指名する公益を代表する委員一人を置く必要があること(規則第三八条)。

(再審査部会)

五 審査委員会は、規則第三○条に規定する再度の考案を求められた事件につき審査を行うため、その定めるところにより診療報酬再審査部会を置くこととされたいこと(規則第四一条)。

この再審査部会の委員は、審査委員のうちから審査委員会が定めるところにより選任するものであるが、委員の構成は三者構成となるようにすること。

再審査部会は、審査の結果に対し医療担当者、保険者等から提出された要求に基き審査の結果について再度の検討を行うものであるが、特に必要のない限り特別の取扱規定を必要とするものではないこと。再審査の結果前の審査の結果を訂正する必要を認めたときは、従来の苦情処理の際における取扱と同様に行うこと。

(補助審査委員)

六 連合会は、審査委員会の審査の事務を補助する必要があると認めたときは、診療報酬請求明細書の取扱件数、審査委員の構成、審査の実施状況等を勘案のうえ、補助審査委員をおくことができること。補助審査委員の構成及び委嘱は、二及び三の例によること。

(幹事及び書記)

七 審査委員会に連合会の職員のうちから理事が選任した幹事及び書記若干人を置くこととされたこと(規則第四二条)。

この幹事は、会長の指揮を受けて審査委員会の庶務を処理するものであつて、社会保険診療報酬支払基金における幹事とは性格を異にするものであること。

(審査委員の選任方針)

八 審査委員の選任方針については、社会保険診療報酬支払基金における審査委員選任方針の趣旨に則り、厳正公平を期待し得る最適任者を委嘱するようにすること。

(審査基準等)

九 審査委員会における審査は、法第四○条に規定する準則並びに法第四五条第二項に規定する額の算定方法及び同条第一項に規定する定に照らして行われるものであるが(法第四五条第四項)、その審査方針、審査の方法等については、昭和三三年一二月四日付保発第七一号の二厚生省保険局長通達の趣旨に則り、適正かつ能率的に行うよう指導すること。

(招集、定足数等)

一○ 審査委員会は、会長が招集するものであるが(規則第三九条)、委員の定数の半数以上の出席がなければ、審査を行えないものであること。なお、審査は、出席委員の過半数をもつて決し、可否同数のときは、会長の決するところによるが(規則第四十条)、個々の審査委員の審査が最終的決定になるものではなくして、各審査委員の合議により審査委員会として最終決定をすることに留意すべきこと。

(検査権)

一一 審査委員会の法第八九条第一項の規定による権限は、あくまで審査を行う必要のある限度において認められたものであるから、その権限を乱用せしめないようにし、事前に都道府県知事の承認を得るようにせしめること。

なお、出頭若しくは説明を拒んだ者に対し、保険者又は支払を委託された連合会は、その理由のみによつて、診療報酬の支払停止はすることはできないが、そのために審査が不能であれば、審査が終了しないものであるから、支払ができないとしてもやむを得ないものであること。

(費用弁償)

一二 一一の場合において、審査委員会に出頭した者については費用弁償を行わねばならぬこと。ただし、当該療養担当者が提出した診療報酬請求書又は診療録その他の帳簿書類の記載が不備又は不当であつたため出頭を求められ又出頭した者に対しては、費用の弁償の必要がないこと。

(審査期日)

一三 診療報酬請求書の審査は、その提出を受けた日の属する月の二○日までに行わねばならぬものであるから(規則第二九条)審査委員会の日程等を十分考慮し、効果のある審査が行い得るよう配慮すること。

(保険者の審査)

一四 保険者は、療養の給付に関する費用の請求があつた場合において、やむを得ない理由により、その審査に関する事務を連合会に委託できない場合においても、前各項の趣旨に則り、三者構成の委員会を組織して審査を行うべきものであること。

(連合会の審査、支払事務)

一五 連合会は、診療報酬請求書の審査及び支払の委託を受けた場合は、審査委員会を置くほか、つぎの業務を行わねばならない。

(一) 診療報酬の迅速な支払をするために、各保険者から毎月当該保険者が過去三箇月において最高額の費用を要した月の診療報酬額のおおむね一箇月半分に相当する金額の予託を受けるようにすること。

(二) 毎月分の診療報酬請求書は、翌月一○日までに提出されるから(請求省令第三項)、これに対し遅延なく事務的点検を行い、審査委員会の審査が当該月の二○日までに終るよう措置すること。

(三) 審査の終つた診療報酬請求書に対しては、保険者ごとに支払額を決定して、当該保険者にその支払を請求するとともに、療養取扱機関ごとに支払額を決定し、当該月の翌月の末日までに診療報酬を支払うにすること。

(四) 診療報酬請求書の審査及び支払の手数料については、おおむね一件につき七円程度とすることが適当であり、保険者はこの予算経理については、予算科目「療養給付費」中「手数料」の節を設けて支出すべきこと。

(五) 保険者が、療養費の支給決定に当り、連合会に審査の依頼を求めた場合においては、これに対し可能な範囲で協力すること。

(六) 審査委員会に要する経費は、連合会の一般経費と区別し、明確に運営するよう措置すること。

(経過措置)

一六 新法の施行前に行われた療養の給付に係る診療報酬の額及びその審査の基準については、なお従前の例によるものであるが(施行法第一八条第一項)、その診療報酬について新法の施行後に請求があつた場合においても、保険者は、新法第四五条第五項の規定によりその審査及び支払に関する事務を連合会又は診療報酬支払基金に委託することができるから、連合会に委託のあつた場合においては、新法による審査委員会がこれを審査するものであること(施行法第一八条第二項)。

なお、新法施行前に診療報酬支払基金又は連合会に対して診療報酬請求書の審査の請求又は委託が行われ、新法施行の際その審査に関する事務が終了していないものについては、新法第四五条第五項の規定による委託があつたものとみなされるから、連合会に委託のあつた場合においては、新法による審査委員会がこれを審査するものであること(施行法第一八条第三項)。ただし、新法の施行前に都道府県の国民健康保険診療報酬審査委員会に対して行われた請求に関する診療報酬請求書の審査については、その事務が終了するまでの間は、なお当該審査委員会が存続するものであること(施行法第一八条第四項)。

第一三 その他に関する事項

(市町村の監督)

一 組合及び連合会に対する監督については、おおむね旧法の規定と同様の趣旨の規定を、法第一○八条及び第一○九条において設けたのであるが、市町村については、地方自治法の規定によることとしたものであること。

すなわち、新法による国民健康保険事業は、いわゆる団体委任事務と解されるので、国の機関委任事務に対する監督とは異り、地方自治法第二四五条の三第四項の規定による助言及び勧告乃至第二四六条の二の規定による適正な事務処理の確保措置をとることができるものであること。従つて、国民健康保険事業については、その管理執行が法令に違反している場合のほか、確保すべき収入を不当に確保しなかつた場合に、右の規定が適用されることとなるものであること。

なお、国庫負担金等に関する部分については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の適用を受けるものであることはいうまでもないこと。

(修学している者)

二 法第一一六条に規定する「修学のため」とは、学校教育法第一条に規定する学校及び同法第八三条第三項に規定する各種学校に就学している場合をいうものであること。「修学していないとすれば他の市町村の区域内に住所を有する他人と同一の世帯に属すると認められるもの」とは、右の学校に修学する以前に住所を有していた市町村すなわち、通常両親、兄弟その他の親族と同一の世帯に属すると認められるものをいい、これらの者は当該他の市町村の区域内に住所を有するものとする取扱をとる趣旨は、一般に修学中の者は所得を有するとは認められず、これらの者の疾病等の場合の経済的負担は、通常、両親、兄弟その他の者に帰するものであり、又これらの者をその住所地の市町村の被保険者とするときは、修学中の者が集中している大都市における保険財政の健全性を確保する上に少なからぬ支障を及ぼすと考えられるからであること。然しながらこの場合においても、当該修学中の者がその住所地において療養の給付を受けようとするときは、少くとも国立病院、療養所をはじめ公的医療機関についてはこれを受けることができるものであり、療養の給付を受けることができない場合においても療養費の支給は行われるものであること。

なお、修学中の者が辞ら生活を維持している場合の取扱については、法第一一六条の規定を適用することなく、当然その住所地の市町村の被保険者とすべきものであること。

(被保険者証の交付の特例)

三 法第一一七条において、被保険者証の交付に関する特例を設けた趣旨は、特別区及び人口三〇万以上の都市においては、被保険者の移動が激しいため、被保険者証の交付手続に支障をきたすおそれがあるので、三箇月以内の期間に限り、被保険者証交付について一定の整理期間を設け、交付の求めがあつてもこの期間に交付すれば足りるものとし、被保険者の資格取得後被保険者証の交付までの間に係る傷病については、法第五四条第二項の規定による療養費を支給するものであること。

(特別区の調整)

四 都は、条例で特別区の存する区域における国民健康保険の被保険者の資格、給付の種類、範囲、期間及び支給額、保険料の額、徴収方法及び減免並びに一部負担金の負担割合及び減免その他保険財政に関し、特別区相互間の調整上必要な措置を講じなければならないが、その具体的な定は政令に委任されており、この政令は可及的すみやかに定める予定であること。

(罰則)

五 国民健康保険事業の適正な運営を確保するため、健康保険法に準じて、あらたに刑罰規定を設けたが、徒らに強化せられた罰則に依存することなく、常に国民健康保険に対する関係者の深い理解と協力を求めるために十分の努力を払い、社会連帯の観念の昴揚に留意すること。

六 市町村は、世帯主に対してその世帯に属する被保険者の資格の得喪に関する事項その他必要な事項につき、規則の定めるところによる届出をせず、又は虚偽の届出をした者に対し、条例で二、〇〇〇円以下の過料を科する規定を設けることができることとされ、世帯主の届出義務の履行を確保するとともに、世帯主の文書その他の物件の提出若しくは提示義務に違反した場合にも同様の規定を設けることができることとし、保険者の事業運営の適正を期したこと。

また、市町村は、条例で、偽りその他不正行為により保険料その他法の規定による徴収金(例えば、一部負担金)の徴収を免かれた者に対しては、一般の使用料手数料の場合に準じ、その徴収を免かれた金額の五倍に相当する金額以下の過料を科する規定を設けることができるとしたが、これは保険料等の徴収の確保を図るために規定されたものであること。

なお、市町村が条例で右の過料を科することができる旨の規定は、組合にも準用されるものであること。