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○特定療養費に係る療養の基準の一部改正に伴う実施上の留意事項について

(平成九年三月一四日)

(保険発第三〇号)

(各都道府県民生主管部(局)保険主管課(部)長・国民健康保険主管課(部)長あて厚生省保険局医療課長・厚生省保険局歯科医療管理官通知)

特定療養費に係る療養の基準(昭和六三年三月厚生省告示第五三号)の一部改正については、本日付け保発第三二号をもって厚生省保険局長から都道府県知事あて通知されたところであるが、今般、特定療養費に係る療養の基準の実施に伴う留意事項を次のとおり定めたので、その取扱いに遺憾のないよう関係者に対し周知徹底を図られたい。

なお、従前の当職通知で本通知に示した事項に係るものは廃止する。

一 特別の療養環境の提供に係る基準に関する事項

(一) 診療報酬において、室料が療養環境に着目したより広い概念である入院環境料に改編されたことに伴い、それまでの「特別の病室の提供」と「療養型病床群に係る特別の療養環境の提供」を「特別の療養環境の提供」として一本化したものであること。

(二) 具体的には、療養環境の向上に対するニーズが高まりつつあることに対応して、患者の選択の機会を広げるために、より一層良好な療養環境を提供する以下の要件を満たす病床について保険医療機関(特定承認保険医療機関を含む。以下同じ。)の病床数の五割まで患者に妥当な範囲の負担を求めることを認めることとしたものであること。

(三) (二)に加えて、厚生大臣が次に掲げる要件を満たすものとして承認した保険医療機関にあっては、当該承認に係る病床割合まで患者に妥当な範囲の負担を求めることを認めることとしたものであること。

ア 当該保険医療機関の属する地域の病床の整備状況からみて、特別の療養環境に係る病床数の当該保険医療機関の病床数に対する割合を増加しても患者が療養の給付を受けることに支障を来すおそれがないこと。

この場合においては、医療法(昭和二三年法律第二〇五号)に基づく医療計画に定める必要病床数と既存病床数との関係を勘案するとともに、当該保険医療機関におけるこれまでの特別の病室の稼働の状況、特別の病室の申し込みの状況等を併せて勘案し、当該保険医療機関の特定の病室を増加しても、患者が療養の給付を受けることに支障を来すおそれがないかどうか判断するものとすること。

イ 経験を有する常勤の相談員により、特別の療養環境の提供に係る病室への入退室及び特別の料金等に関する相談体制が常時とられていること。

ウ 新看護等の基準(平成六年三月厚生省告示第六三号)の新看護等の基準の項に規定する二対一看護であって、当該基準における看護婦及び准看護婦の最少必要数の七割以上が看護婦であるものにより看護を行う保険医療機関であること。

エ 医療法施行規則(昭和二三年厚生省令第五○号)第一九条第一項第一号及び第二号に定める医師及び歯科医師の員数を満たしていること。

オ 厚生大臣から当該承認を受ける前6月間において特定療養費に係る療養の基準(昭和六三年三月厚生省告示第五三号)に違反したことがなく、かつ現に違反していないこと。

(四) ただし、特定機能病院以外の保険医療機関であって、国又は地方公共団体が開設するものにあっては、その公的性格等にかんがみ、国が開設するものにあっては病床数の二割以下、地方公共団体が開設するものにあっては病床数の三割以下としたこと。

(五) 療養環境については、患者が特別の負担をする上でふさわしい療養環境である必要があり、次のアからエの要件を充足するものでなければならないこと。

ア 特別の療養環境に係る一の病室の病床数は四床以下であること。

イ 病室の面積は一人当たり六・四平方メートル以上であること。

ウ 病床ごとのプライバシーの確保を図るための設備を備えていること。

エ 少なくとも下記の設備を有すること。

(ア) 個人用の私物の収納設備

(イ) 個人用の照明

(ウ) 小机等及び椅子

(六) 特別の療養環境の提供は、患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのないようにしなければならないこと。

(七) したがって、特別療養環境室へ入院させ、患者に特別の料金を求めることができるのは、患者側の希望がある場合に限られるものであり、救急患者、術後患者等、治療上の必要から特別療養環境室へ入院させたような場合には、患者負担を求めてはならず、患者の病状の経過を観察しつつ、一般病床が空床となるのを待って、当該病床に移す等適切な措置を講ずるものであること。

(八) 特別療養環境室へ入院させた場合においては、次の事項を履行するものであること。

ア 保険医療機関内の見やすい場所、例えば、受付窓口、待合室等に特別療養環境室の各々についてそのベッド数及び料金を掲示しておくこと。

イ 特別療養環境室への入院を希望する患者に対しては、特別療養環境室の設備構造、料金等について明確かつ懇切に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること。

ウ この同意の確認は、料金等を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うものであること。

なお、この文書は、当該保険医療機関が保存し、必要に応じ提示できるようにしておくこと。

(九) 患者が事実上特別の負担なしでは入院できないような運営を行う保険医療機関については、患者の受診の機会が妨げられる恐れがあり、保険医療機関の性格から当を得ないものと認められるので、保険医療機関の指定又は更新による再指定に当たっては、十分改善がなされた上で、これを行う等の措置も考慮すること。

(一○) 国又は地方公共団体が開設する保険医療機関が、平成六年三月三一日現在、従来の特別の病室として厚生大臣又は都道府県知事による承認を受け、現に国が開設するものにあっては病床数の二割、地方公共団体が開設するものにあっては病床数の三割を超えて特別の料金の徴収を行っている場合には、当分の間、当該病床割合に基づき特別の料金の徴収を行っても差し支えないものであるが、今後、できるだけ早く、二割以下又は三割以下とするよう努力するものであること。

(一一) 平成六年三月三一日現在、従来の特別の病室として特別の料金を徴収している病室が(四)のイに掲げる要件を満たしていない場合は、当該病床を含む病棟の改築又は建替までは経過的に当該要件を課さないこととするが、早急に改善されるべきものであること。

(一二) 保険医療機関は、特別の療養環境の提供に係る病床数、特別の料金等を定期的に都道府県知事に報告するとともに、当該事項を定め又は変更しようとする場合には、別紙様式一により都道府県知事にその都度報告するものとすること。

二 病院の初診に関する事項

(一) 病院と診療所の機能分担の推進を図る観点から、他の保険医療機関等からの紹介なしに二○○床以上の病院を受診した患者については、自己の選択に係るものとして、初診料を算定する初診に相当する療養部分についてその費用を患者から徴収することができることとしたところであるが、当該療養の取扱いについては、以下のとおりとすること。

ア 患者の疾病について医学的に初診といわれる診療行為が行われた場合に徴収できるものであり、自ら健康診断を行った患者に診療を開始した場合等には、徴収できない。

イ 同時に二以上の傷病について初診を行った場合においても、一回しか徴収できない。

ウ 一傷病の診療継続中に他の傷病が発生して初診を行った場合においても、第一回の初診時にしか徴収できない。

エ 医科・歯科併設の病院においては、お互いに関連のある傷病の場合を除き、医科又は歯科においてそれぞれ別に徴収できる。

オ アからエまでによるほか、初診料の算定の取扱いに準ずるものとする。

(二) 初診に係る特別の料金を徴収しようとする場合は、患者への十分な情報提供を前提として、患者の自由な選択と同意があった場合に限られるものであり、当該情報提供に資する観点から、「他の保険医療機関等からの紹介によらず、当該病院に直接来院した患者については初診に係る費用として○○○○円を徴収する。ただし、緊急その他やむを得ない事情により、他の保険医療機関からの紹介によらず来院した場合にあっては、この限りでない。」旨を病院の見やすい場所に明示するものとすること。

(三) 特別の料金の設定については、上記一に掲げた趣旨にかんがみ、保険医療機関単位で同一の金額とし、例えば医師ごとに異なった料金の設定を行うことは認めないものとすること。

(四) 特別の料金については、その徴収の対象となる療養に要するものとして社会的にみて妥当適切な範囲の額とすること。

(五) 特別の料金等の内容を定め又は変更しようとする場合は、別紙様式二により都道府県知事にその都度報告するものとすること。

(六) 国の公費負担医療制度の受給対象者については、「やむを得ない事情がある場合」に該当するものとして、初診に係る特別の料金の徴収を行うことは認められないものであること。

(七) いわゆる地方単独の公費負担医療(以下「地方単独事業」という。)の受給対象者については、当該地方単独事業の趣旨が、特定の障害、特定の疾病等に着目しているものである場合には、(六)と同様の取扱いとすること。

(八) 社会福祉事業法(昭和二六年法律第四五号)第二条第三項第五号に規定するいわゆる無料低額診療事業の実施医療機関において当該制度の対象者について初診に係る特別の料金の徴収を行うこと、及びエイズ拠点病院においてHIV感染者について初診に係る特別の料金の徴収を行うことは、「やむを得ない事情がある場合」に該当するものとして認められないものであること。

三 予約に基づく診察に関する事項

(一) 予約診察による特別の料金の徴収に当たっては、それぞれの患者が予約した時刻に診療を適切に受けられるような体制が確保されていることが必要であり、予約時間から一定時間(30分程度)以上患者を待たせた場合は、予約料の徴収は認められないものであること。

(二) 予約料を徴収しない時間を各診療科ごとに少なくとも延べ外来診療時間の二割程度確保するものとする。なお、この時間帯の確保に当たっては、各診療科における各医師の同一診療時間帯に、予約患者とそうでない患者を混在させる方法によっても差し支えないものとする。

(三) (二)のなお書きの場合にあっては、予約患者でない患者の診療時間を一時間につき二割程度確保できるよう、予約患者数、予約時間等について適切な措置を講ずるものとする。また、予約患者でない患者についても、概ね二時間以上待たせることのないよう、適宜診察を行うものとすること。

(四) 予約患者については、予約診察として特別の料金を徴収するのにふさわしい診療時間(一○分程度以上)の確保に努めるものとし、医師一人につき一日に診察する予約患者の数は概ね四○人を限度とすること。

(五) 上記の趣旨を患者に適切に情報提供する観点から、当該事項について院内に掲示するとともに、病院の受付窓口の区分、予約でない患者に対する受付窓口での説明、予約患者でない患者への番号札の配布等、各保険医療機関に応じた方法により、予約患者とそうでない患者のそれぞれについて、当該取扱いが理解されるよう配慮するものとすること。

(六) 予約料の徴収は、患者の自主的な選択に基づく予約診察についてのみ認められるものであり、病院側の一方的な都合による徴収は認められないものであること。

(七) 予約料の額は、社会的に見て妥当適切なものでなければならないこと。

(八) 特別の料金等の内容を定め又は変更しようとする場合は、別紙様式三により都道府県知事にその都度報告するものとすること。

(九) 他の保険医療機関等からの紹介状を持参して来た患者について、当該診察に係る予約料の徴収は認められないものであること。

(一○) 専ら予約患者の診察に当たる医師がいても差し支えないものとすること。

四 保険医療機関が表示する診療時間以外の時間における診察(以下単に「時間外診察」という。)に関する事項

(一) 本制度は、国民の生活時間帯の多様化や時間外診察に係るニーズの動向を踏まえて創設されたものであり、したがって、本制度の対象となるのは、緊急の受診の必要性はないが患者が自己の都合により時間外診察を希望した場合に限られ、緊急やむを得ない事情による時間外の受診については従前通り診療報酬点数表上の時間外加算の対象となり、患者からの費用徴収は認められないものであること。

(二) 本制度に基づき時間外診察に係る費用徴収を行おうとする保険医療機関は、時間外診察に係る費用徴収についての掲示をあらかじめ院内の見やすい場所に示しておかなければならないこと。

(三) 社会通念上時間外とされない時間帯(例えば平日の午後四時)であっても、当該保険医療機関の標榜診療時間帯以外であれば、診療報酬上の時間外加算とは異なり、本制度に基づく時間外診察に係る費用徴収は認められるものであること。

(四) 患者からの徴収額については、診療報酬点数表における時間外加算の所定点数相当額を標準とすること。

(五) 患者からの徴収額及び標榜診療時間帯を定め又は変更しようとする場合は、別紙様式四により都道府県知事にその都度報告するものとすること。

五 金属床による総義歯の提供に関する事項

(一) 本制度は、有床義歯に係る患者のニーズの動向等を踏まえて創設されたものであること。

(二) 金属床総義歯とは、義歯床粘膜面の大部分が金属で構成されていて顎粘膜面にその金属が直接接触する形態で、なおかつ金属部分で咬合・咀嚼力の大部分を負担できる構造の総義歯をいうものであること。

(三) 金属床総義歯を提供する場合はスルフォン樹脂を用いたものとみなして特定療養費を支給するが、その費用は患者に対し実際に行った再診、補綴関連検査、補綴時診断、印象採得、仮床試適、義歯製作(材料料を含む。)、装着及び新製義歯調整指導(1回のみ)に係る所定点数を合計して算出すること。

(四) 金属床総義歯に係る費用については、社会的にみて妥当適切なものでなければならないこと。

(五) 本制度に基づき、金属床総義歯に係る費用を徴収する保険医療機関は、金属床総義歯の概要及び金属床総義歯に係る費用について、あらかじめ院内の見やすい場所に掲示しておかなければならないこと。

(六) 本制度が適用されるのは、患者に対して総義歯に関する十分な情報提供がなされ、医療機関との関係において患者の自由な選択と同意があった場合に限られるものであること。

(七) 保険医療機関が、特定療養費及び特別の料金からなる金属床義歯に係る費用等を定めた場合又は変更しようとする場合は、別紙様式五により都道府県知事にその都度報告するものとすること。

(八) 患者から金属床総義歯に係る費用徴収を行った保険医療機関は、患者に対し、特定療養費の一部負担に係る徴収額と特別の料金に相当する自費負担に係る徴収額を明確に区分した当該費用徴収に係る領収書を交付するものとすること。

(九) 本制度に基づき、金属床総義歯の提供を行った保険医療機関は、毎年定期的に金属床総義歯に係る費用を含めた金属床総義歯の実施状況について、都道府県知事に報告するものとすること。

六 治験に係る診療に関する事項

(一) 特定療養費の支給対象となる治験は、薬事法(昭和三五年法律第一四五号)第八○条の二の規定により依頼されたものとすること。

(二) したがって、治験の実施に当たっては、薬事法及び薬事法施行規則(昭和三六年厚生省令第一号)の関係規定によるほか、医薬品の臨床試験の実施に関する基準(平成元年一○月二日薬発第八七四号)によるものとすること。

(三) 特定療養費の支給対象となる期間については、治験の対象となる患者ごとに当該治験を実施した期間とすること。

(四) 特定療養費の支給対象となる診療については、医療保険制度と治験依頼者との適切な費用分担を図る観点から、治験に係る診療のうち、検査及び画像診断に係る費用については、特定療養費の支給対象はせず、また、投薬及び注射に係る費用については、当該治験の対象とされる薬物の予定される効能又は効果と同様の効能又は効果を有する医薬品に係る診療については、特定療養費の支給対象とはしないものとする。なお、これらの項目が包括化された点数を算定している保険医療機関において治験が行われた場合の当該包括点数の取扱いについては、当該包括点数から、当該診療において実施した特定療養費の支給対象とはならない項目のうち当該包括点数に包括されている項目の所定点数を合計した点数を差し引いた点数に係るものについて、特定療養費の支給対象とすること。

(五) 特定療養費の支給対象となる治験は、患者に対する情報提供を前提として、患者の自由な選択と同意がなされたものに限られるものとし、したがって、治験の内容を患者等に説明することが医療上好ましくないと認められる等の場合にあっては、特定療養費の支給対象としないものとすること。

(六) 特定療養費の支給対象となる治験を実施した保険医療機関については、毎年の定例報告の際に、治験の実施状況について、別紙様式六により都道府県知事に報告するものとすること。

(七) 本取扱いについては、平成八年四月一日以降に依頼を受けた治験に係る診療について適用することとし、同日前に治験の実施に係る契約(仮契約を含む。)が締結されているものについては適用しないものとすること。

七 齲蝕に罹患している患者の指導管理に関する事項

(一) 本制度は、小児齲蝕の再発抑制に対するニーズが高まりつつあることを踏まえて創設されたものであること。

(二) 本制度の対象となる指導管理(以下「継続管理」という。)は、齲蝕多発傾向を有しない一三歳未満の患者であって継続的な管理を要するものに対するフッ化物局所応用又は小窩裂溝填塞による指導管理に限られるものとし、特定療養費の額は、再診料及び歯科口腔衛生指導料(初診日の属する月については、再診料)に係る所定点数を合計して算出すること。

なお、一三歳以上の患者については、本制度の対象としないこと。

(三) フッ化物局所応用及び小窩裂溝填塞に係る費用については、社会的にみて妥当適切なものでなければならないこと。

(四) 本制度に基づき、フッ化物局所応用及び小窩裂溝填塞に係る費用を徴収する保険医療機関は、継続管理の概要並びにフッ化物局所応用及び小窩裂溝填塞に係る費用について、あらかじめ院内の見やすい場所に掲示しておかなければならないこと。

(五) 本制度が適用されるのは、患者又は患者の保護者に対して継続管理に関する十分な情報提供がなされ、医療機関との関係において患者の自由な選択と同意があった場合に限られるものとすること。

(六) 保険医療機関が、フッ化物局所応用及び小窩裂溝填塞に係る費用を定め又は変更しようとする場合は、別紙様式七により都道府県知事に報告するものとすること。

(七) 患者又は患者の保護者からフッ化物局所応用及び小窩裂溝填塞に係る費用徴収を行った保険医療機関は、患者に対し、特定療養費の一部負担に係る徴収額と特別の料金に相当する自費負担に係る徴収額を明確に区分した当該費用徴収に係る領収書を交付するものとすること。

(八) 本制度に基づき、継続管理の提供を行った保険医療機関は、毎年定期的にフッ化物局所応用及び小窩裂溝填塞に係る費用を含めた継続管理の実施状況について、都道府県知事に報告するものとすること。

(九) なお、(六)に係る報告については、本制度の実施を控え、平成九年四月一日から受け付けることとし、(八)に係る報告については、本年に限り不要とすること。

(別紙様式1)

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(別紙様式2)

(別紙様式3)

(別紙様式4)

(別紙様式5)

(別紙様式6)

(別紙様式7)