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○入院時食事療養の新設に伴う実施上の留意事項について

(平成六年八月五日)

(保険発第一〇四号)

(都道府県民生主管部(局)保険主管課(部)長、国民健康保険主管課(部)長あて厚生省保険局医療課長通知)

標記の件については、本日、「入院時食事療養費に係る食事療養の費用の額の算定に関する基準」(平成六年八月厚生省告示第二三七号)が公布されたところであるが、この実施に伴う留意事項は左記のとおりであるので、その取扱いに遺憾のないよう関係者に対し、周知徹底を図られたい。

1 一般的事項

(一) 食事は医療の一環として提供されるべきものであり、それぞれ患者の病状に応じて必要とする栄養量が与えられ、食事の質の向上と患者サービスの改善をめざして行われるべきものである。

(二) 食事の提供に関する業務は保険医療機関自らが行うことが望ましいが、保険医療機関の管理者が業務遂行上必要な注意を果たし得るような体制と契約内容により、食事療養の質が確保される場合には、保険医療機関の最終的責任の下で第三者に委託することができる。

(三) 患者への食事提供については病棟関連部門と食事療養部門との連絡が十分とられていることが必要である。

(四) 一般食を提供している患者の栄養所要量については、平成一二年二月二日健医発第一四七号厚生省保健医療局長通知「入院時食事療養における一般食を提供している患者の栄養所要量について」に沿って提供されている。

(五) 調理方法、味付け、盛り付け、配膳等について患者の嗜好を配慮した食事が提供されており、嗜好品以外の飲食物の摂取(補食)は原則として認められない。

なお、果物類、菓子類等病状に影響しない程度の嗜好品を適当量摂取することは差し支えない。

(六) 当該保険医療機関における療養の実態、当該地域における日常の生活サイクル、患者の希望等を総合的に勘案し、適切な時刻に食事提供が行われている。

(七) 適切な温度の食事が提供されている。

(八) 食事療養に伴う衛生は、医療法(昭和二三年法律第二〇五号)及び同法施行規則(昭和二三年厚生省令第五〇号)の基準並びに食品衛生法(昭和二二年法律第二三三号)に定める基準以上のものである。

なお、食事の提供に使用する食器等の消毒も適正に行われている。

(九) 患者に十分な栄養指導を行う。

(一〇) 食事療養の内容については、当該保険医療機関の医師を含む会議において検討が加えられている。

(一一) 患者から標準負担額を超える費用を徴収する場合は、あらかじめ食事の内容及び特別の料金が患者に説明され、患者の同意を得て行っている。

(一二) なお、入院時食事療養(Ⅰ)の届出を行っている保険医療機関においては、左記の点に留意すること。

ア 医師又は栄養士による検食が毎食行われ、その所見が検食簿に記入されている。

イ 普通食(常食)患者年齢構成表、加重平均栄養所要量表及び食品構成表を必要に応じて(少なくとも六か月に一回)作成していること。

ウ 食事の提供に当たっては、喫食調査等を踏まえて、また必要に応じて食事せん、献立表、患者入退院簿及び食料品消費日計表等の食事療養関係帳簿を使用して食事の質の向上に努める。

エ 患者の病状等により、特別食を必要とする患者については、医師の発行する食事せんに基づき、適切な特別食が提供されている。

オ 食事提供業務の第三者への一部委託については平成五年二月一五日健政発第九八号厚生省健康政策局長通知の第三及び平成五年二月一五日指第一四号厚生省健康政策局指導課長通知にのっとって実施されたい。

2 特別食加算

(一) 特別食加算は、入院時食事療養(Ⅰ)の届出を行った保険医療機関において、患者の病状等に対応して医師の発行する食事せんに基づき、「入院時食事療養の基準等」(平成六年八月厚生省告示第二三八号)の第三号に示された特別食が提供された場合に算定する。なお、当該加算を行う場合は、特別食の献立表が作成されている必要がある。

(二) 加算の対象となる特別食は、疾病治療の直接手段として、医師の発行する食事せんに基づいて提供される患者の年齢、病状等に対応した栄養量及び内容を有する治療食、経管栄養のための濃厚流動食、無菌食及び特別な場合の検査食をいうものであり、治療乳を除く乳児の人工栄養のための調乳、離乳食、幼児食等並びに治療食のうちで単なる流動食及び軟食は除かれる。

(三) 治療食とは、腎臓食、肝臓食、糖尿食、胃潰瘍食、貧血食、膵臓食、高脂血症食、痛風食、フェニールケトン尿症食、楓糖尿症食、ホモシスチン尿症食、ガラクトース血症食及び治療乳をいうが、胃潰瘍食については流動食(経管栄養のための濃厚流動食を除く。)を除くものである。また治療乳とは、いわゆる乳児栄養障害症(離乳を終らない者の栄養障害症)に対する酸乳、バター穀粉乳のように直接調製する治療乳をいい、治療乳既製品(プレミルク等)を用いる場合及び添加含水炭素の選定使用等は含まない。

ここでは努めて一般的な名称を用いたが、各医療機関での呼称が異なっていてもその実質内容が告示したものと同等である場合は加算の対象となる。ただし、混乱を避けるため、できる限り告示の名称を用いることが望ましい。

(四) 心臓疾患、妊娠中毒症等に対して減塩食療法を行う場合は、腎臓食に準じて取り扱うことができるものである。なお、高血圧症に対して減塩食療法を行う場合は、このような取り扱いは認められない。

(五) 腎臓食に準じて取り扱うことができる心臓疾患、妊娠中毒症等の減塩食については、総量七・〇g以下の減塩食をいう。

(六) 肝臓食とは、肝庇護食、肝炎食、肝硬変食、閉鎖性黄疸食(胆石症及び胆嚢炎による閉鎖性黄疸の場合も含む)等をいう。

(七) 十二指腸潰瘍の場合も胃潰瘍食として取り扱って差し支えない。手術前後に与える高カロリー食は加算の対象としないが、侵襲の大きな消化管手術の術後において胃潰瘍食に準ずる食事を提供する場合は、特別食の加算が認められる。また、クローン病、潰瘍性大腸炎等により腸管の機能が低下している患者に対する低残渣食については特別食として取り扱って差し支えない。

(八) 高度肥満症(肥満度が+七〇%以上又はBMIが三五以上)に対して食事療法を行う場合は、高脂血症食に準じて取り扱うことができる。

(九) 経管栄養のための濃厚流動食は、各栄養素の質的構成に十分考慮が払われているとともに、一グラム(一mlと読みかえてもよい)につき一キロカロリー程度の熱量を有するものである。

(一〇) 特別な場合の検査食とは、潜血食をいう。

(一一) 大腸X線検査・大腸内視鏡検査のために特に残渣の少ない調理済食品を使用した場合は、「特別な場合の検査食」として取り扱って差し支えない。ただし、外来患者に提供した場合は、保険給付の対象外である。

(一二) 特別食として提供される高脂血症食の対象となる患者は、空腹時定常状態における血清総コレステロール値が二二〇mg/dl以上である者又は血清中性脂肪値が一五〇mg/dl以上である者である。

(一三) 特別食として提供される貧血食の対象となる患者は、血中ヘモグロビン濃度が一〇g/dl以下であり、その原因が鉄分の欠乏に由来する患者である。

(一四) 特別食として提供される無菌食の対象となる患者は、無菌治療室管理加算を算定している患者である。

3 特別管理加算

(一) 特別管理加算は、入院時食事療養(Ⅰ)の届出を行った保険医療機関において食事の質的向上を図るために、地方社会保険事務局長に届け出て、適時・適温等一定の要件を満たす食事を患者に提供した場合に算定できる。

なお、この特別管理加算に特別食を使用した場合にあっては、特別食の加算を算定できる。

(二) 適時の食事の提供に関しては、実際に病棟で患者に夕食が配膳される時間が、原則として午後六時以降とする。ただし、病床数が概ね五〇〇床以上であって、かつ、当該保険医療機関の構造上、厨房から病棟への配膳車の移動にかなりの時間を要するなどの当該保険医療機関の構造上等の特別な理由により、やむを得ず午後六時以降の病棟配膳を厳守すると不都合が生じると認められる場合には、午後六時を中心として各病棟で若干のばらつきを生じることはやむを得ない。この場合においても、最初に病棟において患者に夕食が配膳される時間は午後五時三〇分より後である必要がある。また、全ての病棟で速やかに午後六時以降に配膳できる体制を整備するよう指導に努められたい。

4 食堂加算

(一) 食堂加算は、入院時食事療養(Ⅰ)の届出を行っている保険医療機関であって、左記(二)の要件を満たす食堂を備えている病棟又は診療所に入院している患者(療養病棟に入院している患者を除く。)について、病棟又は診療所単位で算定する。

(二) 他の病棟に入院する患者との共用、談話室等との兼用は差し支えない。ただし、当該加算の算定に該当する食堂の床面積は、内法で当該食堂を利用する病棟又は診療所に係る病床一床当たり〇・五平方メートル以上とする。

(三) 診療所療養型病床群療養環境加算一、精神療養病棟入院料等の食堂の設置が要件の一つとなっている点数を算定している場合は、食堂加算をあわせて算定することはできない。

(四) 食堂加算を算定する病棟を有する保険医療機関は、当該病棟に入院している患者のうち、食堂における食事が可能な患者については、食堂において食事を提供するように努めること。

5 選択メニュー加算

(一) 選択メニュー加算は、入院時食事療養(Ⅰ)の届出を行っている保険医療機関において、毎日又は予め定められた日に、一日のうち二食以上の食事の主菜等について患者が選択できる複数のメニューによる食事を提供した場合に算定する。

(二) 予め患者に対して提示された複数のメニューから、患者が選択した食事が提供された日に、選択メニューを提示した患者を対象として算定する。

(三) 当該保険医療機関においては、あらかじめ患者に対して選択メニューについて、当該サービスにより患者に特別な負担がないことを含めて説明しておかなければならない。

(四) 選択メニュー加算の対象となる食事療養では患者から特別料金の支払を受けることはできない。患者から特別の料金の支払を受けた特別メニューによる食事の提供をあわせて実施している保険医療機関においては、両者の区別を明確にしておかなければならない。また、患者から特別料金の支払を受ける特別メニューによる食事を提供した場合は、選択メニュー加算は算定できない。

6 鼻腔栄養との関係

(一) 患者が経口摂取不能のために鼻腔栄養を行った場合は左記のとおり算定する。

ア 薬価基準に収載されている高カロリー薬を経鼻経管的に投与した場合は、健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(平成六年三月厚生省告示第五四号)医科診療報酬点数表区分「J一二〇」鼻腔栄養の手技料及び薬剤料を算定し、入院時食事療養の費用及び投薬料は別に算定しない。

イ 薬価基準に収載されていない流動食を提供した場合は、区分「J一二〇」鼻腔栄養の手技料及び入院時食事療養費を算定する。

イの場合において、更に特別食の算定要件を満たしているときは特別食の加算を算定して差し支えない。薬価基準に収載されている高カロリー薬及び薬価基準に収載されていない流動食を併せて投与及び提供した場合は、ア又はイのいずれかのみにより算定する。

(二) 食道癌を手術した後、胃瘻より流動食を点滴注入した場合は鼻腔栄養に準じて取り扱う。

7 特別料金の支払を受けることによる食事の提供

(一) 入院患者に提供される食事に関して多様なニーズがあることに対応して、患者から特別の料金の支払を受ける特別メニューの食事(以下「特別メニューの食事」という。)を提供した場合は、左記の要件を満たした場合に妥当な範囲内の患者の負担は差し支えない。

ア 特別メニューの食事の提供に際しては、患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別メニューの食事が提供されることのないようにしなければならない。また、あらかじめ提示した金額以上に患者から徴収してはならない。なお、患者の同意がない場合は標準負担額の支払を受けることによる食事(以下「標準食」という。)を提供しなければならない。

イ 患者への情報提供に資するために、各病棟内等の見やすい場所に特別メニューの食事のメニュー及び料金を掲示し、またパンフレット等によりわかりやすく説明するなど、患者が自己の選択に基づき特定の日にあらかじめ特別のメニューの食事を選択できるようにする。

ウ 特別メニューの食事は、通常の入院時食事療養の費用では提供が困難な高価な材料を使用し特別な調理を行うなど、その内容が入院時食事療養の費用の額を超える特別の料金の支払を受けるのにふさわしいものでなければならない。また、特別メニューの食事を提供する場合は、当該患者の療養上支障がないことについて、主治医の確認を得る必要がある。

エ 当該保険医療機関は、特別メニューの食事を提供することにより、それ以外の食事の内容及び質を損なうことがないように配慮する。

オ 栄養量については、当該保険医療機関においては、患者ごとに栄養記録を作成し、医師との連携の下に栄養士により個別的な医学的・栄養学的管理が行われることが望ましい。また、食堂の設置、食器への配慮等食事の提供を行う環境の整備についてもあわせて配慮がなされていることが望ましい。

カ 特別メニューの食事の提供を行っている保険医療機関は、毎年七月一日現在で、その内容及び料金などを入院時食事療養に関する報告とあわせて地方社会保険事務局長に報告する。

(二) 入院時食事療養費制度の新設に伴い、従来の特別注文食品を含む給食の提供及び特別の材料による給食の提供は平成六年九月三〇日をもって廃止する。

8 掲示

入院時食事療養に関する特別管理の届出を行っている保険医療機関、選択メニュー加算を算定している保険医療機関及び特別のメニューの食事を提供している保険医療機関は、各々次に掲げる事項を病棟内等の患者に見えやすい場所に掲示するものとする。

(一) 特別管理

ア 入院時食事療養に関する特別管理の届出を行っていること。

イ 特別管理による食事の提供では、管理栄養士によって管理された食事が適時(夕食については午後六時以降)、適温で提供されること。

(二) 選択メニュー

ア 当該保険医療機関では毎日、又は予め定められた日に、予め患者に対して提示された(複数の)メニューから、患者が好みの食事を選択できること。

イ 当該サービスに関しては、患者に特別な自己負担がないこと。

(三) 特別メニューの食事

ア 当該保険医療機関では毎日、又は予め定められた日に、予め希望した患者に対して患者の自己負担により特別メニューの食事を選択できること。

イ 特別メニューの食事の内容及び特別料金

具体的には、例えば一週間分の食事のメニューの一覧表(特別のメニューの食事については特別料金を示したもの等)また、パンフレット等でもわかりやすく説明すること。