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○歯科診療報酬点数表の一部改正等に伴う留意事項について

(昭和五七年三月二九日)

(保険発第一五号)

(各都道府県民生主管部(局)保険・国民健康保険課(部)長あて厚生省保険局歯科医療管理官通知)

唇顎口蓋裂に起因した咬合異常の場合における歯科矯正(以下「歯科矯正」という。)に係る診療報酬点数の算定について行われた「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」の一部改正等については、本日付保発第一六号をもつて厚生省保険局長から都道府県知事あて通知されたところであるが、これが実施に伴う留意事項は、次のとおりであるので、その取扱いに遺憾のないよう関係者に対し、周知徹底を図られたい。

なお、歯科矯正に係る診療報酬点数の算定は、本年四月一日以後の診療分について、改正された歯科診療報酬点数表(以下「歯科点数表」という。)等によつて算定されるものであるので、念のため申し添える。歯科点数表第一○部歯科矯正に関する事項

1 算定の原則

(1) 歯科矯正の費用は、第一節の各区分の注に「材料料を含む。」と規定されている場合を除き、第一節の各区分の所定点数に第二節の使用材料料を合算して算定するものであること。

(2) 印象採得、咬合採得及び装着については、それぞれの診療行為を行つた日に算定するものであること。

(3) 歯科矯正料の項に掲げられていない歯科矯正のうち、特殊な歯科矯正の歯科矯正料は、その都度当局に内議し、最も近似する歯科矯正として準用が通知された算定方法により算定する。

2 歯科矯正診断料

(1) 歯科矯正診断料は、患者の口腔状態、顎骨の形態、成長及び発育等を分析し、これらの分析結果と過去に行つた治療内容の評価と併せて可及的に長期的な予測を行い、治療計画書を作成した場合に算定するものであること。

(2) 治療計画書とは、歯科矯正において採用すべき個々の療法の開始時期及びその内容、療養上の指導計画等が記載されているものをいうこと。なお、裂型の分類及び歯牙年齢によるステージ分類が記載されているものであること。

(3) 歯科矯正診断料を算定した後、注2.に掲げる歯科矯正診断料を算定した日から起算して六月以内の場合並びにセファログラム及び歯列弓の分析を行わなかつた場合には、歯科矯正診断料は、算定できないものであること。

(4) 治療計画書の要点を診療録に記載すること。

3 歯科矯正管理料

(1) 注1.に規定する「計画的な歯科矯正管理」とは、歯と顎の変化及び移動の把握並びにそれに基づく治療計画の点検及び修正をいうものである。

また、「経過模型による歯の移動等の管理」とは、経過模型を作製し、過去に作製した経過模型と対比し、歯の移動等を把握することをいうものであること。

(2) 区分「三六○」の注1.に規定する治療計画書が作成されていない場合及び当該医療機関において歯科矯正の治療が行われていない場合には、歯科矯正管理料は算定できないものであること。

(3) 「療養上必要な指導」とは、区分「三六○」の注1.に規定する治療計画書に基づいた矯正装置の取扱い、口腔内衛生、栄養、日常生活その他療養上必要な指導をいうものであること。

なお、療養上必要な指導を行つた場合には、患者の症状の経過に応じて、既に行われた指導等の評価及びそれに基づいて行つた指導の内容の要点を診療録に記載すること。

(4) 再診が電話等により行われた場合にあつては、歯科矯正管理料は算定できないものであること。

(5) 歯科矯正管理を行つた場合に使用した経過模型、口腔内写真、顔面写真等の費用は、歯科矯正管理料に含まれるものであること。

(6) 保定における保定装置の調整の費用は、歯科矯正管理料に含まれるものであること。

4 歯科矯正セファログラム

(1) 歯科矯正セファログラムとは、焦点と被写体の中心及びフィルム面が常に一定の距離を保持し、かつ、エックス線の主線が両耳桿の延長線に対して、○度、九○度又は四五度に保てる規格の機器を用いて撮影したものをいうものであること。

なお、常に一定の距離とは、個々の患者につき、焦点と被写体の中心及びフィルム面の距離が経年的に一定であること。

(2) 一連とは、側貌、後前像、斜位像等の撮影を全て含むものであること。

(3) フィルム料は、区分「一三五」により算定するものであること。

5 模型調製

(1) 平行模型は、咬合平面が水平になるよう作製したときは、顎態模型は、眼耳平面を基準として顎顔面頭蓋との関係を明らかにした模型を作製したときに算定するものであること。

(2) プラスターベースは、平行模型及び顎態模型を一定の規格に維持した状態で長期にわたつて保管する必要があるために用いるものであること。

(3) 予測模型は、歯及び顎の移動後の咬合状態の予測を模型上にあらわしたものであること。

(4) 平行模型は、歯科矯正を開始したとき、動的処置を開始したとき、マルチブラケット法を開始したとき、顎離断等の手術を終了したとき及び保定を開始したとき、各々につき一回に限り算定するものであること。

(5) 予測模型は、歯科矯正の治療においてダイナミックポジショナー及びスプリングリテーナーを作製した場合には各々につき一回算定するものであること。なお、歯科矯正を開始したとき又は動的処置を開始したときはいずれかについて一回に限り算定するものとし、顎離断等の手術を開始したときも一回に限り算定するものであること。

6 動的処置

(1) 動的処置とは、区分「三六○」の注1.に規定する治療計画書及び区分「三六七」の注2.に規定する力系に関するチャートに基づき、矯正装置に用いた主線、弾線、スクリュー等の調整並びに床の削除及び添加により、歯及び顎の移動、拡大等を計画的に行うものをいうものであること。

(2) 動的処置は、装置装着時及び保定装置の使用時には算定できないものであること。

(3) 装置の装着と同一月内の動的処置は、区分「三六四」の1.のロ.又は区分「三六四」の2.のロ.により算定するものであること。

7 印象採得

(1) 歯科矯正における印象採得は、床装置、アクチバトール(FKO)等装置ごとに算定するものであること。

(2) マルチブラケット装置の印象採得をステップⅠ、ステップⅡ、ステップⅢ及びステップⅣの各ステップにおいて行つた場合は、各ステップにつき一回に限り算定するものであること。

(3) 区分「三六五」の2.のイ.に該当するものは、唇裂の場合であること。

(4) 区分「三六五」の2.のロ.に該当するものは、唇顎口蓋裂、顎口蓋裂、口蓋裂及び唇顎裂の場合であること。

(5) 区分「三六五」の2.のハ.に該当するものは、前記(4)に該当する場合であつて前後又は側方の顎の狭窄を伴うため顎の拡大の必要がある場合又は残孔の状態にある場合であること。

(6) リトラクター又はプロトラクターを作製するために、顎顔面の採型を行つた場合は、区分「三六五」の2.のハ.により算定するものであること。

8 咬合採得

(1) 歯科矯正における咬合採得は、床装置、アクチバトール(FKO)等装置ごとに算定するものであること。

(2) マルチブラケット装置の場合は、算定できないものであること。

(3) 区分「三六六」の2.に該当するものは、7の(4)に該当する場合であつて前後又は側方の顎の狭窄を伴うため顎の拡大の必要がある場合であること。

(4) 構成咬合とは、アクチバトール、ダイナミックポジショナーの作製のために筋の機能を賦活し、その装置が有効に働き得る咬合状態を採得するものであること。

9 装着

(1) 区分「三六七」の1.のイ.に該当するものは、患者が自由に着脱できる床装置、アクチバトール、リトラクター等であること。

(2) 区分「三六七」の1.のロ.に該当するものは、患者が自由に着脱できないリンガルアーチ、マルチブラケット装置、ポータータイプの拡大装置等であること。

(3) 装着料は、マルチブラケット装置を除き第一回の装着の場合にのみ算定するものであること。

(4) マルチブラケット装着料は、各ステップにつき一回に限り算定するものであること。

(5) ポータータイプ又はスケレトンタイプの拡大装置に使用する帯環の装着料は、装置の装着料に含まれるものであること。

(6) マルチブラケット装置の装着時の結紮料は、装着料に含まれるものであること。

(7) フォースシステムとは、歯及び顎の移動に関して負荷する矯正力の計画をたてることであり、力系に関するチャートとは、フォースシステムをもとにした矯正装置の選択及び設計のチャートであること。

(8) メタルリテーナーを除いた保定装置の作製に当たつて、フォースシステムを行つた場合であつても、フォースシステムの費用は、算定できないものであること。

10 撤去

ポータータイプの拡大装置の撤去の費用は、同装置を最終的に撤去する場合に一回に限り帯環数に応じて算定するものであること。

11 セパレイティング

セパレイティングとは、帯環を調製装着するため歯間を離開させることをいい相隣接する二歯間の接触面を一箇所として算定するものであること。

なお、これに使用した真鍮線等の撤去に要する費用は、所定点数に含まれるものであること。

12 結紮

マルチブラケット装置において結紮を行つた場合にのみ算定するものであること。

13 装置

(1) マルチブラケット装置以外の装置については、次により算定するものであること。

ア 区分「三七一」の1.及び区分「三七六」の1.に該当するものは、顎の狭窄を伴わない場合の装着する装置であること。

イ 区分「三七一」の2.及び区分「三七六」の2.に該当するものは、前後又は側方の顎の狭窄を伴う場合又は残孔の状態にある場合に装着する装置であること。

ウ 区分「三七二」に該当するものは、マンディプラリトラクター及びマキシラリリトラクターであること。

エ 区分「三七二」の注のスライディングプレートの作成のために行う印象採得、咬合採得、材料等の費用は、含まれるものであること。

オ 区分「三七三」に該当するものは、ホーンタイプ、フレームタイプ及びフェイスボウタイプの装置であること。

カ 区分「三七四」に該当するものは、プレートタイプ、ボータータイプ、インナーボウタイプ及びスケレトンタイプの拡大装置であること。

キ 区分「三七五」に該当するものは、アクチバトール及びダイナミックポジショナーであること。

ク 区分「三七六」に該当するものは、リンガルアーチ及びレビアルアーチ(唇側弧線装置)であること。

(2) マルチブラケット装置については、次により算定するものであること。

ア 区分「三七七」のマルチブラケット装置とは、帯環及びダイレクトボンドブラケットを除いたアーチワイヤーをいうものであること。

イ ステップが進んだ場合には、前のステップに戻つて算定することはできないものであること。

ウ ステップⅠとは、レベリングを行うものであること。

エ ステップⅡとは、主として直径○・○一四~○・○一六インチのワイヤーを用いた前歯部の歯科矯正又は犬歯のリトラクションを行うものであること。

オ ステップⅢとは、主として直径○・○一六~○・○一八インチのワイヤー又は角ワイヤーを用いた側方歯部の歯科矯正を行うものであること。

カ ステップⅣとは、主として直径○・○一六~○・○一八インチあるいはそれ以上のワイヤー又は角ワイヤーを用いた臼歯部の歯科矯正及び歯列弓全体の最終的な歯科矯正を行うものであること。

キ セクショナルアーチを行う場合の第一回目の装置の印象採得は区分「三六五」の1.、装着は区分「三六七」の1.のロ.及び装置は区分「三七七」の1.のロ.に掲げる所定点数により算定するものとし、第二回目以降の装置については区分「三七七」の1.のロ.のみの算定をするものであること。なお、区分「三六七」の注2.については算定できるものであるが、区分「三七七」の注1.については算定できないものであること。

14 保定装置

(1) 保定装置とは、動的処置の終了後、移動させた歯及び顎を一定期間同位置に保持する装置をいうものであること。

(2) 動的処置に使用した矯正装置をそのまま保定装置として使用した場合には、保定装置の費用は算定できないものであること。

(3) メタルリテーナーは、前後又は側方の顎の狭窄を伴うため顎の拡大を行つた後の保定を維持する場合であつて、メタルリテーナーを使用する必要性がある場合に限つて算定するものであること。

(4) 区分「三七八」の5.に該当するものは、リンガルバー及びパラタルバーを使用する装置であること。

15 その他

(1) 区分「三七九」の2.に該当するものは、アダムス鉤であること。

(2) 帯環作製の場合のろう着の費用は、当該各区分の所定点数に含まれるものであるが、帯環にチューブ、ブラケット等をろう着する場合は、区分「三八六」により算定するものであること。

(3) 区分「三八二」に該当するものは、リンガルボタン、クリーク、フック等であるが、チューブに付随していて新たなろう着の必要のないものは、算定できないものであること。

(4) 弾線をリンガルアーチ等に用いるためにろう着を行つた場合は、区分「三八六」により算定するものであること。

(5) トルキングアーチについては、装着、結紮等の費用は別に算定できないものであること。

(6) 附加装置には、材料等の費用及び交換用のエラスティクスの費用を含むものであること。

(7) 区分「三八六」に該当するものは、通常のろう着、自在ろう着、電気熔接であること。

なお、チューブ、ブラケット等を電気熔接する場合には、一個につき一か所として算定するものであること。

(8) 区分「三八七」に該当するものは、床装置の破損等であるが、床装置において動的処置の段階で床の添加を行う場合の床の添加に要する費用は、動的処置に含まれるものであること。