添付一覧
○健康保険法等の一部を改正する法律等の施行について
(昭和五六年二月二五日)
(保発第七号・庁保発第三号)
(都道府県知事あて厚生省保険局長・社会保険庁医療保険部長通知)
健康保険法等の一部を改正する法律(昭和五五年法律第一○八号)の施行については、厚生省発社保第一九号により厚生事務次官から通知されたところであるが、その実施に当たつては、同通知によるほか、次の事項に留意のうえ遺憾のないよう配慮されたい。
なお、今回の法律改正の趣旨及び内容に関する被保険者、事業主、健康保険組合及び保険医療機関等関係機関に対する周知指導方につき、格段の御配意を願いたい。
おつて、この通知においては、健康保険法等の一部を改正する法律を「改正法」と、改正後の健康保険法を「健保法」と、改正後の船員保険法を「船保法」と、改正後の健康保険法施行令を「健保令」と、改正後の保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する政令を「指定令」と、改正後の船員保険法施行令を「船保令」と、改正後の健康保険法施行規則を「健保規則」と、改正後の保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令を「指定規則」と、改正後の船員保険法施行規則を「船保規則」と、改正後の社会保険診療報酬請求書審査委員会規程を「審査委員会規程」とそれぞれ略称する。
第一 一部負担金の額及び家族療養費の給付割合の改正に関する事項
一 入院に係る一部負担金の額及び家族療養費の給付割合が改正されたことに伴い、昭和五六年三月一日前から引き続き入院している者については同年三月一日から改正後の入院時一部負担金の額及び家族療養費の給付割合が適用されること。
二 一部負担金の額及び家族療養費の給付割合が改正されたことに伴い、健康保険の被保険者証並びに船員保険の被保険者証及び被扶養者証(以下「被保険者証等」という。)の様式中の注意事項のうち一部負担金及び家族療養費の給付割合につき改正が行われたが、昭和五六年三月一日前において既に交付されている被保険者証等については、従前どおり使用できるものであること(健保規則様式第六号、船保規則様式第四号及び第六号、健康保険法施行規則の一部を改正する省令附則第二項、船員保険法施行規則の一部を改正する省令附則第二項)。
三 診療報酬明細書の記載事項のうち初診時一部負担金額欄につき改正が行われたが、昭和五六年三月一日前に行われた療養の給付に関する費用の請求については、なお従前の例によるものであること(療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令の一部を改正する省令附則第二項)。
四 船員保険の入院時一部負担金の新設に伴い、通勤災害に係る船舶所有者が負担すべき一部負担金の額は、被保険者又は被保険者であつた者が一部負担金として支払うべき費用から二○○円を控除した額とされたこと。
第二 高額療養費及び家族高額療養費に関する事項
一 高額療養費の支給要件及び支給額は次のとおりであること(健保法第四四条ノ三及び健保令第七四条第一項並びに船保法第二九条ノ二ノ二及び船保令第三条の二第一項)。
(一) 高額療養費の支給対象となる被保険者は市町村民税が課されない者及び生活保護法の被保護者(以下「市町村民税非課税者等」という。)であること。
(二) 高額療養費の支給を受けることができる場合は、市町村民税非課税者等である被保険者が同一の月に、同一の病院又は診療所について療養を受けた際に支払つた一部負担金の額が一万五、○○○円を超え、かつ、療養の給付が優先する公費負担医療に関する給付(別紙一)が行われない場合であること。
(三) 高額療養費の支給額は、被保険者が支払つた一部負担金の額から一万五、○○○円を控除した額であること。
二 家族高額療養費に係る一万五、○○○円の自己負担限度額の特例に関する要件は次のとおりであること(健保令第七八条第二項及び船保令第三条の二の二第二項)。
(一) 特例の対象となる被保険者は、市町村民税非課税者等であること。
(二) 被扶養者が受けた療養について家族療養費の支給が優先する公費負担医療に関する給付(別紙二)が行われないこと。
なお、当該公費負担医療に関する給付が行われる場合の自己負担限度額は三万九、○○○円であること。
三 高額療養費又は家族高額療養費の支給は、保険給付が優先する公費負担医療に関する現物給付が行われる場合を除き、償還払とする等その方法は従前の高額療養費と同様とすること。
四 市町村民税非課税者等に該当することを証する書類については、同一年度(市町村民税が課されない者に該当する場合にあつては、六月から翌年五月までの間)において既に提出されている場合には、改めて当該書類を提出させる必要はないものであること。
五 改正後の高額療養費及び家族高額療養費の支給は、昭和五六年三月一日以後の療養に係る自己負担額について行われるものであること。
第三 分娩費、埋葬料等の支給額等の改正に関する事項
一 分娩費、埋葬料等の支給額は、昭和五六年四月一日前に生じた分娩又は死亡については、なお従前の例によること。
二 分娩費支給額の減額規定の廃止
病院若しくは診療所又は助産所に収容された被保険者又は被保険者であつた者に対する分娩費の支給額の減額規定が廃止されたが、昭和五六年三月一日前に生じた分娩については、なお従前の例によること(健保法第五一条、船保法第三二条ノ五、改正法附則第二条第一項)。
三 療養の給付開始後三年を経過した場合、当該疾病等に係る傷病手当金は支給されない旨の規定が廃止されたが、昭和五六年三月一日前において療養の給付の開始後三年を経過したものに関する傷病手当金の支給については、なお従前の例によること(健保法第五七条一ノ三、船保法第三一条、改正法附則第二条第二項)。
第四 海外において療養を受けた場合の療養費の支給に関する事項
一 被保険者又は被扶養者が、海外の病院等において療養等を受けた場合の費用については、健保法第四四条又は船保法第二九条に基づき療養費の支給が行われるものであること。
二 療養費の支給は、病院等が発行する診療等の内容を明らかにした費用の額に関する証拠書類等に基づき行うものとすること。
三 海外における療養に要する費用の算定に関しては、国内において保険医療機関以外の病院等で療養等を受けた場合と同じく、「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(昭和三三年六月三○日・厚生省告示第一七七号)」の算定の例によるものであるが、これによることが困難である場合には、国内における同様の傷病に係る療養に要する費用の実績額によつて算定することもやむをえないものであること。
第五 保険料率の改正に関する事項
政府管掌健康保険の任意継続被保険者及び船員保険の疾病任意継続被保険者については、改定後の保険料率は昭和五六年四月分の保険料から適用されること。
第六 健康保険組合の財政調整
健保法附則第八条第一項に基づき健康保険組合連合会が健康保険組合に対して行う交付金の交付事業は昭和五六年四月一日から実施される予定であるが、基本調整保険料率はおつて告示される予定であること。また、健康保険組合連合会において交付金に関する細目、拠出金の拠出について必要な事項及び調整保険料率の修正率を定めるべく準備を進めているところであり、これらについてはおつて通知される予定であること。
第七 その他の改正に関する事項
一 健保法第四三条ノ三第六項により保険医又は保険薬剤師の登録があつた場合に保険医療機関又は保険薬局の指定があつたものとみなされることとなつたが、その登録等の事務について次のように定められたこと。
(一) 保険医又は保険薬剤師の登録があつたとき保険医療機関又は保険薬局の指定があつたものとみなされる場合の診療所又は薬局に関しては、当該医師又は薬剤師の登録に関する事務並びに当該医療機関又は薬局についての指定に関する事務及び告示は、当該医療機関又は薬局の所在地の都道府県知事が行うこと(指定令第二条の二及び第三条第一項)。
(二) 診療所又は薬局において、開設者のみが診療又は調剤に従事する場合に、当該開設者が保険医又は保険薬剤師の登録を受けようとするときは、登録申請書に、診療所にあつては使用許可書又は届書、薬局にあつては登録票のそれぞれの写を添付させること(指定規則第六条)。
二 社会保険診療報酬支払基金法の改正により、社会保険診療報酬支払基金が診療報酬請求書の再審査を行うことが制度化されたことに伴い、審査委員会の内部組織として、その定めるところにより再審査部会を置くものとされたこと(審査委員会規程第二条第三項)。
三 政府管掌健康保険にあつては、日本国内に住所を有しない任意継続被保険者の管轄都道府県知事は日本における最後の住所地の都道府県知事とされたこと(健保令第三条第一項)。
四 船員保険にあつては、傷病手当金請求に係る傷病又は負傷の原因が職務上又は通勤災害によるものとする場合、当該請求書に船舶所有者の証明する職務上又は通勤災害に関する証明書を添付することとされたこと(船保規則第四四条第二項第三号及び第四号)。
五 その他所要の整備が行われたこと。
別紙一
一 沖縄の復帰に伴う厚生省関係法令の適用の特別措置等に関する政令(昭和四七年・政令第一○八号)第三条又は第四条の医療費の支給
二 昭和四四年四月三○日・衛発第三一一号・厚生省公衆衛生局長通知「被用者保険の被保険者等に対する一部負担金相当額の支給について」による一部負担金相当額の支給
別紙二
一 老人福祉法(昭和三八年・法律第一三三号)による老人医療費の支給
二 児童福祉法(昭和二二年・法律第一六四号)第二○条の育成医療の給付若しくは育成医療に要する費用の支給又は同法第二一条の九第二項第一号の医療に係る療育の給付
三 予防接種法(昭和二三年・法律第六八号)第一七条第一号の医療費の支給
四 身体障害者福祉法(昭和二四年・法律第二八三号)第一九条の更生医療の給付又は更生医療に要する費用の支給
五 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三二年・法律第四一号)第一四条の二の一般疾病医療費の支給
六 母子保健法(昭和四○年・法律第一四一号)第二○条の養育医療の給付又は養育医療に要する費用の支給
七 沖縄の復帰に伴う厚生省関係法令の適用の特別措置等に関する政令第三条又は第四条の医療費の支給
八 児童福祉法(昭和二二年・法律第一六四号)第二二条の助産施設への入所措置、同法第二七条第一項第三号の措置(精神薄弱児通園施設への入所措置及び保護受託者への委託措置を除く。)、同条第二項の国立療養所への委託措置又は同法第三三条の一時保護に係る医療の給付
九 精神薄弱者福祉法(昭和三五年・法律第三七号)第一六条第一項第二号又は同条第二項の措置に係る医療の給付
一○ 昭和四四年七月一四日・社更第一二七号・厚生省社会局長通知「進行性筋萎縮症者療養等給付事業について」による療養の給付
一一 昭和四五年六月一六日・社老第七三号・厚生省社会局長通知「老人性白内障手術費支給事業の実施について」による手術費の支給
一二 昭和四八年四月一七日・衛発第二四二号・厚生省公衆衛生局長通知「特定疾患治療研究事業について」による治療研究に係る医療の給付
一三 昭和四八年八月三一日・社健第四八号・厚生省社会局長通知「ねたきり老人等に対する老人医療費の支給について」による老人医療費の支給
一四 昭和四九年五月一四日・厚生省発児第一二八号・厚生事務次官通知「小児慢性特定疾患治療研究事業について」による治療研究に係る医療の給付