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○健康保険法等の一部を改正する法律の施行について(抄)
(昭和四八年九月二六日)
(発社保第一八八号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)
健康保険法等の一部を改正する法律は、昭和四八年九月二六日法律第八九号として公布され同年一○月一日から施行されることとなつた。その趣旨及び内容は次のとおりであるのでこれが周知徹底を図り、その実施に遺憾なきを期せられたく、通知する。
なお、今回の法律改正に伴う健康保険法施行令等の一部を改正する政令及び健康保険法施行規則及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令は、近く制定公布される予定である。
第一 改正の趣旨
今回の改正は、昭和三六年の国民皆保険達成以来重要な課題となつていた家族療養費の給付率の引上げをはじめ、高額療養費支給制度の新設、分娩費の引上げ等保険給付の内容の大幅な改善を行なうとともに多額の累積収支不足額をかかえた政府管掌健康保険について、定率国庫補助の導入、保険料率の改定等諸施策を講じ、もつて、わが国の医療保障の中核をなす医療保険制度の格段の充実強化を期するものであること。
第二 改正の内容
一 健康保険関係
(一) 家族医療給付に関する事項
家族に対する医療給付については、家族療養費の給付割合が制度創設以来五割に据え置かれてきたため、かねてから、その改善が要請されてきたところである。今回の改正においては、家族給付割合を、大幅に、引き上げるとともに、あわせて、高額療養費を支給することにより、近年の医療内容の高度化傾向に保険として、充分対応していくことができるよう家族に対する医療給付内容の改善を図つたものであり、その内容は次のとおりであること。
ア 家族療養費の給付割合を現行五割から七割に引き上げたこと。
イ 家族の療養に要した費用が著しく高額であるときは、自己負担とされるもののうち、一定限度額以上について、政令の定めるところにより高額療養費を支給することとしたこと。
なお、高額療養費の支給要件、支給額等については、近く政令で定めることとなつているので、政令の制定と同時に別途通知する予定であること。
(二) 現金給付に関する事項
現金給付の対象となる保険事故は、経済的にも大きな負担となることから、できるだけその実費を賄い得るものとするため、分娩費及び埋葬料について支給額を次のように引き上げたこと。
ア 分娩費の最低保障額現行二万円を六万円に引き上げ、配偶者分娩費現行一万円を六万円に引き上げたこと。
イ 本人埋葬料に三万円の最低保障を設けるとともに、家族埋葬料現行二、○○○円を三万円に引き上げたこと。
(三) 標準報酬に関する事項
現行の等級区分は、下限については昭和二八年以来、上限については昭和四一年以来据置かれているため、最近における給与の実態と著しくかけ離れるに至つているので、その結果生じていた保険料負担の不均衡を是正するため、標準報酬の上限を現行一○万四、○○○円から二万円に、下限を現行三、○○○円から二万円に改定し、現行三六等級の区分を三五等級の区分としたこと。
(四) 保険料率に関する事項
今回の大幅な給付改善を行なうに際し、保険料についても次のように改正を行なつたこと。
ア 政府管掌健康保険の保険料率現行七%を七・二%に改定したこと。
イ 組合管掌健康保険の保険料率の最高限度現行八%を九%とするとともに、被保険者の負担する保険料率の限度現行三・五%を四%としたこと。
(五) 国庫補助に関する事項
財政基盤の脆弱な政府管掌健康保険に新たに定率国庫補助制度を導入することとし、補助率を療養の給付、家族療養費、傷病手当金等の保険給付に要する費用の一○%としたこと。
(六) 保険料率と国庫補助の調整に関する事項
政府管掌健康保険の財政の安定を制度的に保障するため、次のような改正を行なつたこと。
ア 政府管掌健康保険の保険料率について、厚生大臣は、社会保険庁長官の申出に基づき、社会保険審議会の議を経て、六・六%から八%の範囲内においてこれを変更することができる規定を設けたこと。なお、この規定による保険料率の引上げは給付内容の改善又は診療報酬改定の場合に行なうものとし、保険料率を変更したときは、政府はその旨を国会に報告するものであること。
イ アの規定により保険料率が引き上げられた場合、法定料率をこえる料率○・一%につき、(五)の国庫補助の割合を○・八%増率することとしたこと。
(七) その他
ア 被扶養者の要件を緩和し、主として被保険者により生計を維持している孫及び弟妹は、被保険者と同一世帯に属さなくとも被扶養者とされることとなつたこと。
イ 保険事故が第三者の行為により生じたときの損害賠償請求権の代位取得に関する規定を次のように整備したこと。
(ア) 被保険者又は被保険者であつた者の第三者に対して有する損害賠償請求権を保険者が代位取得することとなつているのを、保険給付を受ける権利を有する者等の第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得することに改めたこと。
(イ) 保険給付を受ける権利を有する者等が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者はその価額の限度で保険給付を行なわないことができることとしたこと。
二 船員保険関係
(一) 家族医療給付に関する事項
家族に対する医療給付については、かねてからその改善が要請されてきたところである。今回の改正においては、健康保険に準じて改善を図ったものであり、その内容は次のとおりであること。
ア 家族療養費の給付割合を現行五割から七割に引き上げたこと。
イ 家族の療養に要した費用が著しく高額であるときは、自己負担とされるもののうち、一定限度以上について、政令の定めるところにより高額療養費を支給することとしたこと。
なお、高額療養費の支給要件、支給額等については、近く政令で定めることとなっているので、政令の制定と同時に別途通知する予定であること。
(二) 現金給付に関する事項
現金給付については、できるだけその実費を賄い得るものとするため、次のように引き上げたこと。
ア 分娩費の最低保障額現行二万円を、六万円に引き上げ、配偶者分娩費現行一万円を六万円に引き上げたこと。
イ 本人葬祭料に三万円の最低保障を設けるとともに、家族葬祭料現行標準報酬月額の一か月分を、一・四か月分に引き上げ、三万円の最低保障を設けたこと。
(三) 標準報酬に関する事項
最近における給与の実態を考慮し、保険料負担の不均衡を是正するため、標準報酬の上限を現行一五万円から二○万円に改定し、現行三四等級の区分を三九等級の区分としたこと。
なお、標準報酬の下限については、厚生年金保険法等の一部を改正する法律により、昭和四八年一一月一日から現行一万二○○○円が二万四○○○円に引き上げられるものであること。
(四) 保険料率の調整に関する事項
疾病部門の保険料率について、厚生大臣は、社会保険庁長官の申出に基づき、社会保険審議会の議を経て法定料率の上下○・七%の範囲内においてこれを変更することができる規定を設けたこと。なお、この規定による保険料率の引き上げは、給付内容の改善又は診療報酬の改定の場合に行なうものとし、保険料率を変更したときは、政府はその旨を国会に報告するものであること。
(五) 附加給付に関する事項
政府は、政令の定めるところにより、疾病部門に関し、附加給付を行うことができるものとしたこと。
(六) その他
ア 被扶養者の要件を緩和し、主として被保険者により生計を維持している孫及び弟妹は、被保険者と同一世帯に属さなくとも被扶養者となれることとなつたこと。
イ 保険事故が第三者の行為により生じたときの規定を整備し、保険給付を受ける権利を有する者等が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者はその価額の限度で保険給付を行わないことができることとしたこと。
三 国民健康保険関係 略
第三 施行期日
この改正法の施行期日は、昭和四八年一○月一日であること。ただし、国民健康保険の改正については昭和五○年一○月一日からであること。