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○健康保険法の一部を改正する法律の施行について

(昭和三二年五月一五日)

(保発第四二号)

(各都道府県知事あて厚生省保険局長通達)

健康保険法の一部を改正する法律の施行については、さきの事務次官依命通知「健康保険法の一部を改正する法律、船員保険法の一部を改正する法律及び厚生年金保険法の一部を改正する法律の施行について」によるほか、左記事項に留意のうえ、その実施に遺憾のないよう配意されたい。なお、この通知においては、改正後の健康保険法を「新法」、改正前の健康保険法を「旧法」、「保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する政令」を「指定政令」、「保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令」を「指定省令」とそれぞれ略称する。

第一 国庫補助に関する事項

国庫は、健康保険の事務の執行に要する費用を負担する外、今回新たに、予算の範囲内において、政府管掌健康保険事業の執行に要する費用の一部について補助するものとされた(新法第七○条ノ三)が、この規定は、昭和三二年三月三一日から施行され(新法附則第一条)、厚生保険特別会計法の一部を改正する法律の施行とともに、昭和三一年度において、すでに三○億円の国庫補助が一般会計から厚生保険特別会計に繰り入れられており、更に昭和三二年度においても、同額の三○億円が予算に計上されていること。

第二 標準報酬等級区分の改訂に関する事項

標準報酬の等級区分を改め、従来の最高第二○級三万六、○○○円のうえに、第二一級三万九、○○○円、第二二級四万二、○○○円、第二三級四万五、○○○円、第二四級四万八、○○○円及び第二五級五万二、○○○円を加えるものとした(新法第三条)が、この関係規定は、すでに本年四月一日から施行されており、昭和三二年四月一日前より引き続き被保険者である者のうち、同年三月の標準報酬月額が三万六、○○○円である者については、その者が同年四月一日に被保険者の資格を取得したものとみなして標準報酬を決定し、同年四月一日から同年九月三○日までの標準報酬とすることとなっている(新法附則第三条)ので、これらの者については、早急に事業主から四月一日現在による届出を行わしめ、本改正に伴う事務処理に遺漏のないようにされたいこと。

第三 一部負担に関する事項

一部負担については、療養の給付を受ける者が初診の際一○○円、又は入院一日につき三○円を一月間、当該保険医療機関に支払うように改正された(新法第四三条ノ八第一項及び第二項)が、この一部負担の改正は、健康保険制度が、被保険者相互間における負担の公平を保ちつつ、合理的に運営されるために制度上必要なものとして実施されるものであるからその実施を円滑ならしめるため、被保険者、医療担当者等の関係者に対し、その内容と趣旨とを、充分に周知徹底させるように特段の配慮を致されたいこと。

なお、一部負担金不払と保険医療機関ないし保険医の診療応需義務との関係は、医師法又は歯科医師法における応招義務の規定により処理されるものであって、健康保険法により特別の扱いをするものでないこと。

1 初診の際の一部負担について、一部負担金の支払を伴う初診の取扱は従来と変りないものであること。すなわち、命令で定める初診として、同一の保険医療機関について、一つの傷病治療中に他の傷病につき給付を受ける場合の初診については、初診の際の一部負担金はこれを支払うことを要しないが、歯科診療及び歯科診療以外の診療をあわせ行う保険医療機関は歯科診療及び歯科診療以外の診療につき、医療法第四条に規定する総合病院である保険医療機関は各診療科ごとに、それぞれ別個の保険医療機関とみなし、それぞれ別個に一部負担を支払うべきものとされていること(規則第四六条)。また、初診の際の療養に要する費用の額が一○○円未満の場合は、当然その一○○円未満の額を支払えばたりるものとされていること(新法第四三条ノ八第三項)。なお、この一部負担は、初診料が一○○円に引き上げられたのではなく、初診の際の療養に要する費用から一部負担金として一○○円を支払うということであり、従って、医療担当者の診療報酬の収入総額については、従来と全く変りないものであること。

2 入院の一部負担については、同一の傷病及びこれにより発した疾病につき、始めて入院の給付を受けた日から起算して一月を経過したときは、支払うことを要しないものとされているが、右の一月は、入院日数ではなく、始めてその傷病につき入院した日から一月を経過したときは、以後は一部負担金を支払うことを要しないということであり、この一月の間に保険医療機関をかわり転医した場合においても同様であること。

3 一部負担の特例として、保険者が健康保険組合である場合は、従来どおり、規約をもつて、新法第四三条第三項第二号に掲げる病院又は診療所についてはその一部負担金を減免し、同条同項第三号に掲げる病院又は診療所については一部負担金を支払わしめることができるものとされていること(新法第四三条ノ一六第二項及び第三項)。また、附則をもつて当分の間、保険医療機関へ一部負担金を支払つた被保険者に対し、その支払つた一部負担金の範囲内で規約で定める額の支給を行うことが認められていること(新法附則第七条)。

4 一部負担についての改正内容は、被保険者への充分なる啓蒙宣伝、医療担当者に対する周知が特に必要とされるものであり、その実施は、本年七月一日に予定されているが、本年五月一日から六月三○日までの期間については、なお、従前どおり初診料相当額の一部負担を支払えばたりるものとされていること(新法附則第一条及び第五条)。

なお、本年七月一日現に入院している者については、その傷病及びこれにより発した疾病につき引続き入院している間に限り、従前どおり、入院の一部負担金は支払うことを要しないよう経過措置として規定されていること(新法附則第六条)。

第四 保険医療組織に関する事項

一 総則

1 旧法においては、保険医又は保険薬剤師及び保険者の指定する者が、療養の給付を担当していたのであるが、この制度のままでは、我が国の医療組織の実態及び社会保険医療運用の面から種々不合理な問題があるので、改正法においては、新たに機関の指定と個人の登録という二本建の制度を採用することによりその不合理な面を是正し、健康保険の医療組織の合理化を図つたものである。従つて、特定の被保険者のための診療又は調剤を行うことを目的とする病院若しくは診療所又は薬局(新法第四三条第三項第二号及び第三号)以外のものは、すべて保険医療機関又は保険薬局とし(新法第四三条第三項第一号)、保険医療機関において保険診療に従事する医師又は歯科医師は保険医であることを要し、保険薬局で保険調剤に従事する薬剤師は保険薬剤師であることを要することとしたこと(新法第四三条ノ二)。

2 新法第四三条第三項第二号に規定するものには、政府管掌健康保険においては健康保険病院が、健康保険組合にあつてはいわゆる事業主医局がこれに該当し、また、第三号に規定するものは、健康保険組合が直営するものであるが、旧法において保険者の指定する者であつたものでも、右のいずれかに該当しないものは保険医療機関又は保険薬局の指定を受けることになるので、制度の切り換えにあたつては特段の配意が必要であること。

なお、新法第四三条第三項第二号又は第三号の病院若しくは診療所であつても、特定の被保険者以外の被保険者の療養の給付を担当するためには、保険医療機関又は保険薬局の指定を受けなければならないものであること。

二 指定

1 保険医療機関又は保険薬局の指定制度は、医療法又は薬事法に定める人員、施設等の基準以上のものを要求する考慮の下に採用されたものではなく、また、定員制の実施又は適正配置の強行等に対する含みは全然ないものであること。

2 指定に関する手続は、新たに制定された指定政令及び指定省令に規定されているが、保険医療機関又は保険薬局からなされる諸届出は、社会保険医療の現状を把握するうえにおいて極めて重要なものであるから、その協力を求め、届出を励行させるとともに、常に衛生関係部局との連絡を密に行うこと。

3 指定は、医療法に規定する病院若しくは診療所又は薬事法に規定する薬局について行われるものであるから、その廃止、開設者の死亡等により病院若しくは診療所又は薬局としての同一性が失われた場合には、保険医療機関又は保険薬局の指定の効力も同時に失われるものであること。

4 旧法による保険医又は保険薬剤師が本年五月一日現在において診療又は調剤に従事している病院若しくは診療所又は薬局は、新法附則第八条第五項の規定により本年一○月三一日までは、新法第四三条ノ三第一項の規定による指定を受けたものとみなされるが、これは当該保険医又は保険薬剤師の行う診療又は調剤についてのみみなされるものであるから、本年五月一日以降において、診療等に従事する医師等に変動のある場合には、その医療機関が療養の給付を担当するのに若干支障を来すことがあると考えられ、また、旧法による保険者の指定するものについての経過措置は、新法附則第九条に定められているが、この措置は本年七月三一日までについてであつて、八月からはその大部分が新法による指定を受けなければならないものであるから、これらの点を医療機関等に周知せしめるとともに、順次指定申請をなさしめ、新法による保険医療機関への切換を円滑に実施して被保険者の療養の給付に支障を来すことのないよう特に配意すること。

三 登録

1 保険医又は保険薬剤師の登録に関する諸手続は、指定政令及び指定省令に規定されているが、登録に関する管轄都道府県知事については業務地主義をとり、業務地がない場合に限り住所地主義をとる(指定政令第三条第一項)とともに、二以上の業務地を有する場合については、主たる業務地にかかる届出のみでよいこととし、保険医又は保険薬剤師の登録事務手続の簡素化を図っているので、異動にともなう諸届の励行を期するよう指導すること。

2 旧法により保険医の指定を受けた者は、五月一日現在で、新法による登録を受けたものとみなされるが、これらの者の名簿の整理にあたっては、関係団体の協力を求めて、名簿の記載もれ、二重登録の防止等に万全を期すること。

なお、必要ある場合には、新法による登録申請書を用いて、その現状を届出させて名簿の整備を行っても差し支えない。ただし、この場合においては、届出は名簿整理のために行うものであって新たに登録するためのものではないことを周知徹底させる必要があること。

3 旧法の規定による厚生大臣の定めに違反した者に対して登録の取消を行う場合には、新法の規定による弁明の機会を与えるとともに地方社会保険医療協議会に諮問して処分を行うことになるが、この場合は速やかに所要の手続をとること。

4 旧法の規定による保険医又は保険薬剤師の指定を取り消されたときから二年を経過したものは、申請により、再登録することになるが、未だ二年を経過しないものであっても相当の期間を経過したものについては、実情を充分勘案のうえ、保険診療又は保険調剤の担当に支障なしと認めた場合には、再登録して差し支えなく、又、取消処分の際、旧法による保険医再指定の時日等について特に条件が附されているものについては、その条件を尊重すること。

四 保険医療機関等の療養担当、保険医等の診療方針等

1 保険医療機関の療養の給付の担当及び保険医の診療方針等については、保険医療機関及び保険医療担当規則を、保険薬局の療養の給付の担当及び保険薬剤師の調剤方針等については保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則をそれぞれ制定してこれによらしむることとしたのであるが、保険医療機関又は保険薬局に対しては、それぞれにおいて診療又は調剤に従事する保険医又は保険薬剤師をしてこれらの担当規則にある診療方針又は調剤方針を守らしめる義務を課し(新法第四三条ノ四第一項)、保険医等が個々の診療又は調剤をなすにあたって守るべき療養担当規定に違反した場合であっても、一応機関の責任にも帰する法のたてまえ(法第四三条ノ一二第一号)を理解せしめ、適正妥当な保険医療の実施に協力せしむるよう指導すること。

五 保険医療機関等の指導監督

1 従来は、保険医及び保険薬剤師等の指導については、「社会保険医療担当者指導大綱」が、検査については「社会保険医療担当者監査要綱」が定められ、その指導監督は、この大綱又は要綱に準拠して実施されてきたのであるが、今後においても、従前どおりこの大綱又は要綱により、今までと同様の方針によって保険医療機関及び保険薬局、保険医及び保険薬剤師等の指導監督が行われるものであること。

2 新法第四三条ノ一○において、保険医療機関等に対する検査規定が新たに設けられたが、この規定は、法第九条及び第九条ノ二と同様に、旧法において漠然としていた規定の内容を明確にすることを目的としたものであり、この規定の違反等は、法第四三条ノ一二及び第四三条ノ一三の規定により、それぞれ取消処分の原因とされているが、旧法と異り、違反等に対し刑罰をもって臨む態度はとっていないこと等の趣旨を関係者に周知せしめること。

六 診療報酬の請求

1 療養の給付に関する費用の請求に関し必要な事項は、今回の改正により、それぞれの担当規則から分離し、新たに「保険医療機関及び保険薬局の療養の給付に関する費用の請求に関する省令」を制定し、これによらしめることにしたこと。

なお、一部負担に関する改正規定が施行される本年七月一日までに診療報酬請求明細書の様式を改正する必要があり、これにともなって右の省令は改正される予定であること。

七 地方社会保険医療協議会

新法においては、地方社会保険医療協議会は、保険医療機関及び保険薬局の指定、指定拒否、指定の取消及び保険医の登録の取消等社会保険医療運営の重要な事項について、法律上旧法より一層重要な任務を持つ機関となったのであるから、委員に対してその重要性を認識せしめる等、これが運営につき特に一層の配意をすること。

八 その他

社会保険医療の運営にあたっては、その重要性にかんがみつねに健康保険の関係者及び医療関係者団体との連絡強調をはかり、その協力を得るように努めるとともに権限の行使にあたっては厳正公平を期さねばならないが、今後の関係職員に対する指導、監督及び教育については一層の意を用うること。なお、保険医療組織に関し必要事項の細部について、今後、更に別途通知する予定であること。

第五 検査権の整備に関する事項

1 事業主、事業所に対する検査権

事業主、事業所に対する検査の規定について若干の改正が行われた(新法第九条)が、これは、従来の規定の明確化を図り、検査権の整備を図ったものであること。

2 医師、歯科医師、薬剤師等に対する検査権

従来不明確であった医療担当者に対する検査権について、これを二分し、保険医療機関及び保険薬局に対する監査権の根拠を明らかにするとともに(新法第四三条ノ一○)、医療担当者に対する報告、物件の掲示、質問の規定が設けられた(新法第九条ノ二第一項)が、この新法第九条ノ二の規定は、新法第四三条ノ一○の規定が療養の給付を担当することに伴う保険医療機関及び保険薬局に対しての療養の給付に関する監査の規定であるのに対し、今後保険給付を行おうとする場合に必要があるときに、行政権を発動して医師、歯科医師、薬剤師等に対して検査を行うための規定であり、医師、歯科医師、薬剤師という身分に着目して規定されているものであること。従って、この医師、歯科医師、薬剤師のうちには、保険医である医師、歯科医師ならびに保険薬剤師である薬剤師をも含むものであるが、新法第九条ノ二の規定による検査の行われる場合と、新法第四三条ノ一○の規定による監査が行われる場合とは明確に区分され、違反に対する制裁も、前者については罰則が適用されるのに対し、後者については、保険医療機関若しくは保険薬局の指定取消又は保険医若しくは保険薬剤師の登録の取消となっているのであって、前者は、医師又は歯科医師の傷病手当金の労務不能意見に疑があるとき、療養費の支給にあたって医師、歯科医師等の意見を求める必要があるとき等に限られるのであるから、運用にあたって、この両者を混同することのないよう特に留意されたいこと。

3 被保険者に対する検査権

厚生大臣又は都道府県知事の、療養の給付又は家族療養費の支給を受けた被保険者又は被保険者であった者に対する報告質問権及び保険者の保険給付を行うについての受給者に対する物件提出提示、質問権が新たに設けられ(新法第九条ノ二第二項及び第六五条第一項)、前者の違反に対しては罰金が適用され、後者の違反に対しては給付制限をなしうるものとされたこと(新法第六五条第二項及び第八八条ノ二)。

なお、これらの改正規定は、いずれも昭和三二年五月一日から施行されていること。

第六 その他

1 資格喪失後継続給付を受けるための資格期間の延長

資格喪失後の継続給付を受けるための資格期間が六月から一年に延長された(新法第五五条第二項)が、これと同時に本保険に対しては何ら財政的に拠出していない共済組合の組合員であった期間及び退職から再就職までの期間を保険するための任意継続被保険者であった期間は、この資格喪失後継続給付を受けるための資格期間には算入しないこととする改正が行われていること。

この改正規定は、昭和三二年五月一日から施行されているが、同日において現に旧法による資格喪失後の継続給付を受けている者は、新法による一年の資格期間をみたしていないものであっても、従前どおり、受給しうるよう経過措置されていること(新法附則第一一条)。

2 被扶養者範囲の明確化

被扶養者の範囲は、被保険者の直系尊属、配偶者(届出をしないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)及び子並びに三親等内の親族であって主としてその被保険者により生計を維持するものとされた(新法第一条第一号及び第二号)が、この改正は、従来の被扶養者の範囲が、何らの親族関係をも有しない者も被扶養者となりうるものでやや広きに失し明確をかいていたので、これを民法の扶養義務者の最大限(民法第八七七条)と一致せしめるとともに、被保険者との生計維持関係について若干の緩和を行って、従来の不合理を是正し、範囲の明確化を行ったものであること。

なお、同様の事情にありながら親族関係を有しないため、被扶養者の範囲に含まれなくなってくるところの届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者の父母及び子については、同一世帯にあり、かつ、主たる生計維持関係を有する場合は、被扶養者となりうる途を開いていること(新法第一条第二項第三号及び第四号)。

この改正規定は、昭和三二年五月一日から施行されているが、改正の結果被扶養者でなくなる者であっても、その者について同日において家族療養費の支給が行われている場合及びその者がいるために被保険者の傷病手当金が減額されていない場合において、引き続きその給付を受けるときは、その給付に限り従前どおり取り扱うよう経過措置されていること(新法附則第二条)。

3 不正利得の徴収

保険者は、不正の行為によって保険給付を受けた者から当該保険給付に要した費用を徴収し得るよう、更に、当該保険給付が、事業主が虚偽の届出若しくは報告をしたため又は保険医が保険者に提出すべき診断書に虚偽の記載をしたため、支給されたものであるときは、当該事業主又は保険医からも連帯して徴収しうるよう改められたこと(新法第六七条ノ二)。なお、保険医から保険者に提出されるべき診断書には、傷病手当金の意見書、看護又は移送に関する意見書を含むものであること。

4 徴収金徴収手続の整備

国税、地方税等の滞納により滞納処分を受け又は事業所が廃止された等により、法第七九条ノ二の規定による保険料の繰上徴収を行うときは、督促を要せずして滞納処分を行いうるよう改められ(新法第一一条第一項但書及び第一一条ノ二)、また、滞納後督促状を発するまでの間において法第七九条ノ二各号の事由があるときは、督促状に指定する期限は特に督促状を発する日から一○日以上を経過した日であることを要しないものとされたが(新法第一一条第三項但書)、これらの改正は、国税徴収法の例によったものであって、いずれも徴収手続の整備を図ったものであること。なお、同時に、保険料その他の徴収金に関し、厚生年金保険法にならい先取特権の順位が改められたとともに、国税徴収法第四条ノ二から第四条ノ五まで及び第九条ノ二の規定が準用され、相続人、合併後の法人に対して追及し、或いは有価証券の委託を受けるための根拠規定が設けられたこと(新法第一一条ノ三及び第一一条ノ四)。

これらの改正規定は、いずれも昭和三二年五月一日から施行されているが、同年四月以前の月に係る保険料の徴収については、新法第一一条及び第一一条ノ二の規定を除き、なお従前の例によるものとされていること(新法附則第四条)。

5 日雇労働者健康保険法の一部改正

附則において日雇労働者健康保険法の一部が改正された(新法附則第一四条)が、これは、もっぱら健康保険法における保険医療組織の改革にともなうものであること。なお、日雇労働者健康保険における一部負担については、従前どおり、一部負担金額は、初診を受ける際に、保険医療機関が甲地にあるときは、五○円、乙地にあるときは四六円であること。(昭和三二年四月厚生省告示第一二二号日雇労働者健康保険法の規定による一部負担金の額)

6 罰則の整備

検査権の整備に伴い、違反に対する罰則についても整備が図られた(新法第八七条から第八八条ノ三及び第九一条)が、昭和三二年五月一日前にした行為に対しては、なお従前の例によるものとされていること(新法附則第一六条)。なお、旧法第八七条の規定が新法においては廃止されているが、これは、当該職員の守秘義務は、国家公務員法及び地方公務員法によって完全にカバーされているので、健康保険法として特に規定を設けておく必要がないとの趣旨によるものであること。

第七 健康保険組合の指導

1 標準報酬の等級区分の改訂、一部負担制度の実施等によって、健康保険組合における収入が当初予算に比し超過を来たす場合の更正予算については、これらの財源をもって新たな支出にあてる場合のほか、これを行う必要はないこと。しかしながら、その結果財政上余裕が確実に見込まれる場合は、これを付加給付の新設若しくは充実又は保健施設の整備拡充等に充当し、あるいは、組合の実情によっては保険料率の引下げを行う等なんらか積極的改善に活用することが望ましいが、これらの場合には、本年度事業運営に関する保険局長通ちよう❜❜❜(二月一日付保発第三号)の趣旨に副って取り扱うよう健康保険組合に対し指導すること。

2 健康保険組合の被保険者の一部負担については、一部負担制度が決められた趣旨にかんがみ、政府管掌における被保険者と原則的には同様に取り扱うべきものと考えられる。従って、組合の実情等よりして、新法附則第七条の規定にかかわらず、本則どおり実行せしむるを適当と認められる組合については、従前同様一部負担を実施せしめるよう指導されて差し支えないが、新法附則第七条の設けられた目的にかんがみ、組合において自主的に還元することに決定し規約改正の認可申請のあった場合においては、これを尊重し、監督権によって規約改正の認可をせず、または保留する等のことのないよう配意すること。

なお、家族療養費の支給につき付加給付を大幅に実施している組合にあっては、改正一部負担制度を実施する場合において、被保険者に対する給付を越えることのないよう配意し指導すること。