○戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の施行について
(昭和四〇年六月一日)
(援発第五九一号)
(各都道府県知事・那覇日本政府南方連絡事務所長あて厚生省援護局長通知)
標記のことについては、本日厚生省発援第三九号通達「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法の施行について(依命通達)」をもつて、厚生事務次官から通達されたところであるが、この法律の運用については、更に左記事項に留意し、事務処理に遺憾のないように配意されたく通達する。
なお、この通達において戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法(昭和四○年法律第一○○号)を「法」と、戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法施行規則(昭和四○年厚生省令第二七号)を「規則」とそれぞれ略称する。
記
第一 特別弔慰金の支給要件に関する事項
一 弔慰金に関する事項
(一) 法第二条の戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下「遺族援護法」という。)による弔慰金(以下「弔慰金」という。)とは、同法第三四条の規定に基づき支給されるすべてのものであること。従つて、昭和三八年法律第七四号附則第二条第七項で定められた額の弔慰金(二万円)もこれに該当するものであること。
(二) 「昭和四○年四月一日までに弔慰金を受ける権利を取得した」というのは、必ずしも、昭和四○年四月一日までに弔慰金の受給権の裁定を受けていることを要しないものであること。すなわち、同日以前に受給権が生じていれば、これに該当するのであるが、実際の事務処理上は弔慰金の裁定が特別弔慰金の裁定の前提となること。
なお、弔慰金の受給権発生の時点は次のとおりであること。
ア 制定時の遺族援護法により受給権を取得したものについては、昭和二七年四月一日(戦没者の死亡が同日後であるときは、その死亡の日)
イ 遺族援護法の改正各法により受給権を取得したものについては、当該各法の施行の日又は適用の日(戦没者の死亡が当該日後であるときは、その死亡の日)
(三) 「弔慰金の受給権を取得した者」というのは、弔慰金裁定通知書の名義人のみに限るものではないから、たとえば、戦没者の父と母、兄弟姉妹等のように数人が同順位者として弔慰金の受給権を取得していた場合には、そのすべての者がこれに該当すること。
(四) 次の者は、弔慰金の受給権を取得した者には含まれないので留意すること。
ア 遺族援護法第三九条の規定により、死亡した者の相続人として弔慰金の支給を受けた者
イ 遺族援護法第四五条の規定により、時効によつて弔慰金の受給権が消滅した者
二 公務扶助料等に関する事項
(一) 法第三条ただし書にいう「これらに相当する給付」というのは、旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律による特例扶助料及び特例遺族年金、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法による殉職年金等、国家公務員共済組合法により郵政省共済組合から支給される殉職年金等並びに公共企業体職員等共済組合法により国鉄共済組合及び日本電信電話公社共済組合から支給される殉職年金等をいうものであること。
(二) 特別弔慰金は、昭和四○年四月一日において、同一の戦没者につき請求者又は他の遺族が公務扶助料、遺族年金、遺族給与金その他これらに相当する給付(以下「公務扶助料等」という。)の受給権を有していない場合に支給されるものであること。従つて、過去に公務扶助料等を受給していた遺族があつたが、その遺族のすべてが死亡、年齢到達等により同日前に受給権を失なつている場合はもとより、将来六○歳に達することにより同日後に受給権を取得する予定の遺族がある場合であつても支給されるものであること。
(三) 昭和四○年四月一日において公務扶助料等の受給権を有する遺族があるかどうかの審査をするに当つては、昭和三九年法律第一五九号によるいわゆる再婚解消妻等、最近の遺族援護法の改正により新たに遺族年金又は遺族給与金の受給権を取得した者でまだ請求又は裁定がなされていないものもあると考えられるので、特に慎重を期すること。
三 遺族に関する事項
(一) 請求者が次のいずれかに該当するときは、特別弔慰金の受給権者とはならないこと。
ア 昭和四○年四月一日において、日本の国籍を有していないとき。
イ 昭和四○年四月一日において、離縁によつて戦没者との親族関係が終了しているとき。
たとえば、戦没者の養子であつた者が戦没者と離縁したことにより戦没者の子でなくなつているとき、戦没者の父母の養子であつた者が離縁したことにより戦没者の兄弟姉妹でなくなつているとき等の場合をいうこと。
(二) 配偶者については、戦没者の死亡後再婚した場合は、他の遺族との均衡等もあつて特別弔慰金を支給することは適当でないと考え原則として支給しないこととしたが、戦没者の遺族と再婚した場合及び戦没者の氏を改めないで法律上の再婚をした場合においては、精神的にも、実生活上においても、戦没者との間に依然として強いつながりが残つているとみるのが相当であり、また、他に戦没者に近い遺族がないため弔慰金の支給を受けた者については、たとえ遺族以外の者と再婚した場合であつても、その妻のほかには弔慰の意を表すべき者がいないので、これらの場合に限つて、特別弔慰金を支給することとしたこと。
従つて、配偶者で弔慰金の受給権を取得したものであつても、次に掲げる者には、特別弔慰金を支給しないこととしたこと。
ア 戦没者の死亡後弔慰金の受給権を取得するまでに遺族以外の者と事実上の婚姻をしたにもかかわらず、遺族援護法第三六条第一項第一号の遺族として弔慰金の支給を受けた配偶者で、弔慰金の受給権を取得した当時他に戦没者の子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹がいたもの。
イ 弔慰金の受給権を取得したときまでに、再婚をしたことのないもの、同時期までに遺族と再婚したことのあるもの等であつても、弔慰金の受給権を取得した後昭和四○年三月三一日までの間に、遺族以外の者と再婚をした者(戦没者の氏を改めないで法律上の再婚をした者を除く。)
(三) 弔慰金の受給権を取得した者が次のいずれかに該当する場合において、弔慰金の受給権を取得しなかつた戦没者の子があるときは、特別弔慰金をその子に支給するものであること。
ア 昭和四○年四月一日において、死亡しているとき。
イ 昭和四○年四月一日において、日本の国籍を有していないとき。
ウ 昭和四○年四月一日において、離縁によつて戦没者との親族関係が終了しているとき。
エ 配偶者については、(二)のア又はイに該当するとき。
なお、戦没者の子が(一)のア又はイに該当するときは特別弔慰金の受給権者とならないのはもちろんであること。
第二 請求手続等に関する事項
一 特別弔慰金を受けようとする者が規則第一条第一項に規定する「特別弔慰金請求書」(規則様式第一号)を裁定機関に提出するときは、同条第二項各号に定める書類及び本日公布された特別弔慰金国庫債券の発行交付等に関する省令に規定する「特別弔慰金国庫債券印鑑等届出書」(以下「印鑑票」という。)を添付するものであること。
二 規則第一条第二項各号に掲げる書類は、一般的には次に掲げるものであるが、これら以外にも裁定機関が必要とする書類を提出させることができるものであること。
(一) 請求者(相続人が請求するときは、被相続人をいう。以下同じ。)の昭和四○年四月一日における戸籍の抄本
(二) 請求者が戦没者の配偶者、子、父母、孫及び祖父母である場合は、戦没者の除籍時の戸籍の謄本
(三) 請求者が弔慰金裁定通知書の名義人でないときは、名義人と請求者との身分関係を明らかにすることができる戸籍の謄本又は抄本
(四) 相続人が請求するときは、相続人であることを認めることができる戸籍の抄本
(五) 請求者が配偶者である場合は、昭和四○年四月一日における住民票の謄本
(六) 戦没者の遺族の現況等についての申立書(様式第一号)
なお、(三)及び(四)に掲げる戸籍書類は、(一)又は(二)に掲げる戸籍書類により名義人と請求者との身分関係が明らかである場合又は相続人であることを認めることができる場合は、省略してもさしつかえないこと。
三 特別弔慰金の受給権を有する者が数人ある場合は、特別弔慰金請求同意書(様式第二号)を添付するよう指導すること。なお、相続人が数人ある場合も同様であること。
四 特別弔慰金請求書及びその添付書類(以下「請求書類」という。)は、規則第三条第一項に定めるところにより裁定機関に提出するものであるが、請求者の居住地の市町村長(特別区にあつては、区長。以下同じ。)及び都道府県知事(那覇日本政府南方連絡事務所長を含む。以下同じ。)は、請求書類を受け付けたときは、十分点検し、不備があるときは補正させる等の方法により整備して裁定機関に送付すること。
第三 裁定機関に関する事項
裁定機関は、原則として戦没者の除籍された当時における本籍地の都道府県知事であるが、戦没者が遺族援護法第二条第三項第一号又は第三号に掲げる者である場合には、その者の死亡の原因となつた負傷又は疾病の生じた当時、その者が配置され、又は出動していた工場、事業場等の所在地の都道府県知事が裁定機関であるから、請求者の居住地の都道府県知事は、請求書類をどの裁定機関へ送付するかについて誤らないよう留意すること。
第四 裁定通知に関する事項
一 特別弔慰金の受給権の裁定を行なつた都道府県知事は、規則第二条に規定する「特別弔慰金裁定通知書」(規則様式第二号)又は「特別弔慰金却下通知書」(規則様式第三号)(以下「裁定通知書等」という。)に、その写一部を添えて、請求者の居住地の都道府県知事に送付すること。
二 一により裁定通知書及びその写の送付を受けた請求者の居住地の都道府県知事は、送付された写を保管し、裁定通知書等を請求者の居住地の市町村長を経由して請求者に送付すること。
三 厚生大臣が裁定を行なつた場合においても、一の場合と同様裁定通知書等及びその写一部を請求者の居住地の都道府県知事に送付するから、当該都道府県知事は、二の場合と同様の措置を行なうこと。
第五 帳簿に関する事項
都道府県知事は、次に掲げる帳簿を備え、これを整理しておくこと。
(一) 特別弔慰金請求書受付処理簿(様式第三号)
(二) 特別弔慰金審査請求書(異議申立書)受付送付簿(様式第四号)
様式第1号
様式第2号
様式第3号
様式第4号