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○戦傷病者戦没者遺族等援護法施行について

(昭和二七年五月一五日)

(発援第三〇三号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

「戦傷病者戦没者遺族等援護法」は、昭和二七年四月三〇日法律第一二七号をもつて公布施行され、同年四月一日から適用されることとなり、これに伴う同法施行令(政令第一四三号)及び同法施行規則(厚生省令第一六号)も公布されるに至つたが、この法律は、国家補償の根本精神に立脚し、遺族年金、障害年金若しくは弔慰金を支給し、又は更生医療の給付、補装具の支給若しくは国立保養所への収容の措置をとることによつて、戦傷病者、戦没者遺族等を援護することを目的とするものであつて、この法律運用の適否は、各方面に影響するところ極めて大であるから、法律施行に関する諸般の整備を行うことは勿論、広く本法の普及徹底を図り、特に左記事項に留意し、この法律の所期する目的を達成されるよう努められたく、命によつて通知する。

第一 立法の趣旨

一 従来恩給法により、この法律にいう軍人であつた者が受けていた増加恩給及び遺族扶助料は、連合国総司令部の覚書に基き、恩給法の特例に関する件(昭和二一年勅令第六八号)により、それぞれ制限又は停止されていたのであるが、講和独立直後の今日直にこれらの恩給を復活させることは、諸種の事情により困難な状況にあるので、この際、障害年金又は遺族年金を支給するものであること。

二 恩給法の適用を受けなかつたもとの陸海軍部内の有給の嘱託員、雇員、よう・・人、工員及び鉱員であつた者の傷病又は死亡に関しては、内地勤務の者に限り、旧陸軍軍属戦災救恤規程又は旧海軍共済組合令等により処遇され、現在なお、旧令共済組合等からの年金受給者のための特別措置法により、障害年金又は殉職年金が支給されているが、戦地勤務の者については、現在なんら国の処遇が行なわれていないので、戦地勤務の者の傷病又は死亡に関しても障害年金又は遺族年金を支給し、内地勤務の者と均衡を図ろうとするものであること。

三 弔慰金については、

イ この法律にいう軍人軍属が昭和一六年一二月八日以後における公務上の傷病により死亡した場合には、一時金たる弔慰金を支給するものであること。

ロ 国家総動員法に基く勅令の規定により徴用された者、協力させられた者、陸海軍の要請に基いて戦闘に参加した者及び特別未帰還者についても、その身分を有していた期間における公務上の傷病に準ずべき傷病により死亡したときは、軍人軍属に準じて弔慰金を支給するものであること。

四 戦傷病者等に対しては、更生医療の給付及び補装具等の支給等を行うのであるが、これは戦傷病者をして正常な社会活動に復帰することができるよう必要な援助を行い、もつて援護の徹底を期するものであること。

なお、戦傷病者等のうち、重度の不具廃疾を有する者は、これを国立保養所に収容して、医学的管理の下に保養を行わしめ、その援護を図るものであること。

第二 一般事項

一 この法律の実施に当たつては、戦傷病者、戦没者遺族等にこの法律の趣旨を普く周知せしめるため特に広報活動に意を用いこの法律の趣旨の達成に遺憾なきを期すること。

二 法律に規定する援護の内容は、相当に複雑であり、個々の遺族等に対し、権利の有無、請求の手続等について相談に応じ、適切な指導を行うことが極めて肝要であり、又、援護の実施にあたつては、遺族間に紛争を生ずることも予想されるので、都道府県庁、福祉事務所等の相談機構を整備し、且つ、児童相談所等をも活用するとともに、市町村、民生委員等との連絡を密にし、相談指導の充実を図り、法律の円滑な実施に遺憾のないよう努力すること。

三 戦傷病者の一部には、街頭又は車内において募金行為をする者が見受けられるが、これは、本人の更生のために、かえつて支障があるばかりでなく、一般国民に与える影響も好ましくないので、この援護対策の実施を機として、身体障害者福祉司等による更生指導を強化し、自らかかる行為を止め、一日も早く正常な社会生活に復帰するよう指導すること。

四 戦傷病者、戦没者遺族等の援護については、この法律による援護の外、所得税の控除、遺族の子弟に対する育英制度の拡充等の措置をとつているが、これらの者の援護については、以上の各措置をもつて足れりとすることなく、国に殉じた者に対する国民の援護思想を昂揚し、物心両面から、援護の万全を期するように努めること。

第三 年金及び弔慰金に関する事項

一 年金及び弔慰金の支給は、国が当然の責務としてなすべきものであるから、これらの事項に関する事務は、厚生大臣その他国の機関が行う建前であるが、援護の対象者数がぼう・・大であるため、これら事務処理の円滑を期し、又、遺族等の便宜をも考え、厚生大臣の権限に属する事務のうち次の事務を都道府県に委任することとしたこと。

イ 請求者の住所地の都道府県知事は、市町村長から、障害年金請求書、障害年金額改定請求書、遺族年金請求書及び弔慰金請求書を受理し、これを死亡者については、その者の除籍当時の本籍地、傷病者については、その者の退職当時の本籍地(以下本籍地という。)の都道府県知事に送付すること。本籍地の都道府県知事は、これを受理し、関係機関に送付すること。

ロ 本籍地の都道府県知事は、遺族年金証書及び弔慰金裁定通知書に所定の事項を記入(もとの海軍の軍人軍属に係る証書及び裁定通知書への記入を除く。)し、住所地の都道府県知事、住所地の市町村長の順により経由して、これを権利者に交付すること。

ハ 本籍地の都道府県知事は、原則として、障害年金、遺族年及び弔慰金を受ける権利の裁定に必要な調査の事務を行うこと。

二 本籍地の都道府県知事において、委任された事務を処理するに当たつては、特に次の点に留意すること。

イ 年金及び弔慰金は、長期にわたつて国から十分に処遇を受けていなかつた戦傷病者、戦没者遺族等に支給されるのであるから、その処理に当たつては、努めて迅速に行うとともにその正確を期すること。

ロ 弔慰金は、遺族のうち先順位者である者に支給されるのであるが、遺族の順位は相当に複雑であるから、請求者が先順位であるかどうかについては、請求書類をよく調査して過誤のないようにすること。

ハ 同一の戦没者等に遺族が数人ある場合には、被選定人を選定して、遺族年金の請求をなし、又、その支給を受けることを原則としているが、これは、請求及び支給の手続を簡易にするために設けた規定であるから、被選定人によらないで請求することは、なるべく避けるようにすること。

ニ 遺族年金については、同一の支給事由による二以上の支給を受けることが禁止されているから、重複支給を防止することに留意するとともに管下市町村長を指導し、遺族が重複して請求することのないように努めること。

ホ 同一人の死亡を支給事由とする遺族年金及び弔慰金の請求は、一括して行うよう指導すること。

ヘ 年金及び弔慰金の請求又は支給の請求をする場合において、当該請求者が未成年者であるときは、原則として、親権者その他親権を行う者がその法定代理人として請求に関する行為(被選定人を選定する行為を含む。)を行うものであること。但し、親権を行う者をして請求に関する行為を行わせることが不適当である場合においては、未成年者(乳児、幼児等意思能力のない者を除く。)が自己の名で請求しても差し支えないが、この場合には、当該未成年者の保護に欠けることがないように努めること。なお、未成年者以外の無能力者については、民法の定めるところにより法定代理人により請求するものであること。

ト 軍人たるによる増加恩給を受ける権利につき裁定があつた者は、原則として自動的にこの法律による障害年金の裁定があつたものとみなし、且つ、軍人たるによる増加恩給を受ける権利を有する者は、その増加恩給につき裁定を受けた後でなければ、障害年金の支給を受けることができないものとして、障害年金の請求手続を省略し、且つ、恩給との調整を図つているので、障害年金請求書の受理については、特に注意すること。

なお、障害年金を受ける権利と増加恩給を受ける権利とが競合する場合は、多額の方のみを支給し、同額のときは、増加恩給のみを支給するものであること。

三 各種請求書の提出及び証書の交付は、住所地の市町村長を経由することにし、この法律の円滑な運用と権利者の便宜を図つているので、管下市町村長に対し、この法律に規定する諸手続等に関し指導し、法律の円滑な実施について積極的に市町村長の協力を得るように努めること。

四 年金又は弔慰金に関する処分に不服がある者は、不服の申立をすることができることとし、権利の保護に遺憾ないようにしているのであるが、この制度の活用について十分周知せしめられたいこと。

第四 更生医療、補装具及び国立保養所等に関する事項

一 一般事項

イ これらの援護の受給資格の認定は、障害年金証書又は軍人たるによる増加恩給に関する恩給証書等により行うのであるが、必要がある場合には身体障害者福祉司等をして実地に調査せしめ、又は関係町村長等の意見を聴取する等の方法を講じ、いやしくも漏給のないよう留意すること。

ロ これらの援護をうける大部分の者は、身体障害者福祉法に定める身体障害者に該当すると考えられるので、できうる限り身体障害者手帳を交付して身体障害者福祉法に定める福祉の措置を併せて受けるように指導し、援護の徹底を期すること。

ハ この援護のうち、更生医療の給付及び補装具の支給の事務は、身体障害者福祉法に定める援護の実施機関に委任されるので、その事務の取扱については特に管下関係職員の指導に留意すること。

ニ 都道府県におけるこれらの援護の事務は、相当複雑であり、且つ、量も増加するものと思考されるので、必要な職員の確保及び配置には、特別な配慮を講ずること。

ホ 更生医療の給付は、更生相談所の医学的、心理学的、職能的判定に基いて行う必要があり、補装具の支給は、福祉事務所長が必要と認めるときは、更生相談所の判定を受けることとなるので速やかにこれが整備充実を図ること。なお、未設置の都道府県にあつては必ず設置するよう取り計らうこと。

ヘ 福祉事務所は、第一線において直接戦傷病者等の更生指導に当たるものであつて、これが運用の適否は戦傷病者等の援護に至大の影響を与えるものであるから、特に身体障害者福祉司の整備充実を図り、且つ、その資質の向上に努めること。

二 更生医療に関する事項

イ この医療の給付は、戦傷病者等の公務に因る身体上の障害に対して職業又は日常生活の能力を増進するために直接必要と認められる医療を施し更生援護の徹底を図るものであつて、社会保険制度における医療給付や生活保護法の医療扶助とはその趣旨を異にする新しい制度であるから、これが円滑な運用を期するよう特に配意すること。

ロ この医療の対象者は、一応症状が治癒しているか、又は症状が固定している場合が多く、本人はその効果について認識をもつていない場合が少くないと予想されるので単に本人の申請をまつだけでなく積極的に対象者の発見に努め、これが相談指導を行い戦傷者が自ら進んでこの医療を受けるよう必要な措置を講ずること。

ハ 更生医療の給付の申請は、福祉事務所長を経由して行うのであるが、福祉事務所を設置しない町村の区域内に居住地を有する者については、その町村長を経由しても申請することができることにしたから、当該町村長がその申請書の提出を受けたときは速やかに福祉事務所長に進達するよう指導すること。

ニ この医療は、直接生命の危険を救うためのものではなく、本人の将来の更生に重点をおいて行われるものであるので、厚生大臣が指定した医療機関において現物給付の方法をとり、金銭給付は行わないものであるから特に留意すること。

ホ 都道府県知事は、指定医療機関が行う更生医療についてその診療内容及び診療報酬を随時審査することになつているのであるが、当分の間は総ての事例について必ず審査を行うこと。

ヘ 医療費の審査機関は、社会保険診療報酬支払基金法(昭和二三年法律第一二九号)に定める審査委員会でも差し支えないのであるが、なるべく身体障害者福祉審議会審査部会の委員、指定医療機関の代表者、都道府県の適当な吏員及び学識経験者等により構成される審査機関において行うのが望ましいこと。

ト この医療の給付に関する実施要領については、別途通知すること。

三 補装具の支給又は修理に関する事項

イ 補装具の支給又は修理手続は、概ね身体障害者福祉法の場合と同様であるが、その経費については本人の負担能力は考慮せず全額国が負担するものであること。

ロ 補装具の支給又は修理は、更生のために真に必要とする者に対して行うもので、その基準については身体障害者福祉法の場合と同様に昭和二五年八月一二日社乙発第七九号及び昭和二六年三月一〇日社乙発第三四号社会局長通知に従つて支給又は修理を行うこと。

なお、事情やむを得ない場合の他はなるべく金銭給付は行わないこと。

ハ 補装具の支給又は修理を行うに当たつて、仮合せ、或いは現品の受領のため必要がある場合は本人に旅費を支給することができること。

なお、この旅費については真に必要な範囲を限度として支給すること。

ニ 補装具の支給は、医学的、心理学的、職能的判定に基いて真に本人に適合したものが支給されなければならないのであるが、身体障害者福祉法による補装具の支給については、従来ややもすれば漫然と支給されている向もあり、従つて支給された補装具も十分に使用されていない場合もあるように見受けられるので、必ず更生相談所の判定を受けさせるように努め、且つ、更生相談所において必要な適合検査と後の装着訓練を実施して更生の実を挙げるよう努めること。

四 国立の更生援護施設に関する事項

イ 国立保養所は、戦傷病者のうち重度の不具廃疾の状態にあり、且つ、常に複雑な介護を必要とするものを収容して医学的管理のもとにその保養を行う施設で、本年度は取り敢えず全国に二カ所設置し二〇〇人を収容する予定であるが、これが入所の手続その他については追つて通知すること。

ロ 国立光明寮に本年度は戦傷病者のうちで特に視力に障害ある者を一二〇名収容して生活の訓練とあんま・・・はり・・きゆう・・・等の職業の補導を行い援護の徹底を図ることとなり、塩原及び神戸光明寮の増築を行う予定であるので、該当者がある場合は入寮を勧奨すること。

ハ 国立身体障害者更生指導所は、本年度中に東京都内に移転し更生医療から作業療法、職能訓練、職業指導まで一貫して指導することとなつたので、戦傷病者のうちに該当者がある場合は入所を勧奨すること。

ニ 国立施設に入所せしめた者については、身体障害者福祉司等をしてその連絡を密にせしむると共に退所後の更生指導を徹底せしめるよう留意すること。

第五 その他

一 戸籍法の適用を受けない朝鮮人及び台湾人に対しては、当分の間、この法律を適用しないものであること。なお、沖縄に本籍を有する者については、別途通知するものであること。

二 旧国家総動員法に基く勅令の規定により徴用された者若しくは協力させられた者、旧陸海軍の要請により戦闘に参加した者及び特別未帰還者の遺族に対する弔慰金の支給手続の詳細については、別途通知するものであること。