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○優生保護法の一部を改正する法律等の施行について

(昭和二七年七月二三日)

(発衛第一三二号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

優生保護法の一部を改正する法律(昭和二七年法律第一四一号)、優生保護法施行令の一部を改正する政令(昭和二七年政令第一七九号)及び優生保護法施行規則(昭和二七年厚生省令第三二号)の施行については、特に左の事項に留意の上、その運用の万全を期せられるよう通知する。

第一 一般的事項

一 優生保護法の一部を改正する法律は、優生保護法(以下「法」という。)の趣旨を徹底するために、優生手術ができる範囲を拡大し、人工妊娠中絶の手続を簡易にし、受胎調節の実地指導の規定を新設した外、優生保護相談所及び優生保護審査会に関する規定の整備等を行つたものであること。

二 優生保護法施行令の一部を改正する政令は、法の一部改正に伴い、地区優生保護審査会に関する規定を削り、優生手術に関して国庫が負担すべき費用の範囲を拡大し、優生保護相談所の設置及び運営に要する費用の国庫補助に関する規定を加えたものであること。

三 優生保護法施行規則の改正は、法の一部改正に伴い、受胎調節の実地指導及び認定講習に関する規定等を新設し、優生保護相談所の申請手続その他に関する規定に所要の改正を加えたものであること。

第二 優生手術に関する事項

一 法第三条第一項第一号の改正は、従来、配偶者の四親等以内の血族関係にある者が遺伝性精神病又は遺伝性精神薄弱にかかつている場合には、法第三条第一項第二号によつて優生手術を行うことができるにも拘わらず、配偶者が同様の疾病にかかつている場合には、これができないという不合理な点があつたので、これを是正すると共に、母性保護を徹底するために配偶者が遺伝性でない精神病又は精神薄弱にかかつている場合にも優生手術を行うことができるようにしたものであること。

二 法第三条第二項の改正は、配偶者(妻)が法第三条第一項第四号又は第五号に該当する場合に、その夫に優生手術を行うことができることとして、母性保護の徹底をはかつたものであること。

三 法第一二条及び法第一三条の改正は、従来、遺伝性でない精神病又は精神薄弱にかかつている者については、任意、審査のいずれによつても優生手術を行うことができなかつたため、これらの者の保護が十分でないうらみがあつたので、審査を要件として優生手術を行うことができることとしたものであること。

なお、都道府県優生保護審査会の審査を要件としたのは、これらのものの多くは意思能力に欠けるところがあるため、保護義務者の同意だけでは、不当に優生手術が行われるおそれがあることも考えられるので、かかるへい・・害を防止しようという趣旨によるものであること。

四 法第三条及び法第四条の見出を改め、法第三条第一項中「任意」の字句を削除したのは、いずれも本分の内容を的確に表現するためであつて、これにより優生手術の性格が変更されたものではないこと。

五 政令第五条第一項中「旅費」を「鉄道賃、船賃、車賃に改めたのは、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和二五年法律第一一四号)の用語に合せたものであること。

六 規則において、任意の優生手術及び人工妊娠中絶に関する同意書の徴収及び保存に関する規定を廃止したのは、手続を簡素化するために同意書の形式及びその保存期間を限定せず、医師が適宜、これを行うようにしたものであること。

第三 人工妊娠中絶に関する事項

法第一四条の改正は、従来、手続がはんさ・・・にすぎるため当然優生保護法による人工妊娠中絶を行うことができる者でも、これを回避して違法な人工妊娠中絶を行うおそれがあり、しかも、この様な場合は拙劣な技術により母体の健康を害することも少なくないと認められるので、これらの者も適法且つ安全に人工妊娠中絶を行うことができるように、その手続を簡素適正化したものであること。

一 人工妊娠中絶を行うことができる者の範囲は、本人又は配偶者が遺伝性でない精神病質にかかつている場合が追加されたほかは、従前通りであること。

二 この改正により、経済的理由及び強姦等による場合の事実の認定も、一切指定医師に任されたので、その認定に当つては、適切に行うよう十分指導されたいこと。なお、認定に当つて疑わしいときは、関係者から証明書又はこれに代るべき事実を証する書面等を徴収することはさしつかえないこと。

三 法第一四条第一項第四号には、妊娠又は分娩が母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるものをも含むものであること。

第四 受胎調節に関する事項

法第一五条の改正は、受胎調節の普及策に便乗して、十分な知識及び技能を有しない者が、受胎調節の実地指導を行うおそれがあるので、これを防止するために特定の受胎調節の指導を一般的に禁止し、医師及び都道府県知事の指定を受けた者だけにこれを許して、受胎調節の適正且つ効果的な普及をはかつたものであること。

一 法第一五条の受胎調節の実地指導とは、直接女子の身体に対して行うものをいい模型により又は口頭で行うもの等はこれに含まれないこと。

二 規則第一○条、第一二条及び第一四条に規定する指定証及び標識の交付、更訂及び再交付に関する手数料は、地方公共団体手数料令(昭和二二年政令第三二七号)及び同規則(昭和二三年政令第五号)によられたいこと。

第五 優生保護相談所に関する事項

一 優生結婚相談所の名称を優生保護相談所と改めたのは、これを事業の内容に適合させたものであつて、相談所の性質を変更したものではないこと。

二 法第二三条の「優生保護相談所に類似する文字」とは、たとえば、優生結婚相談所、優生保護相談所等の如く優生保護相談所にまぎらわしい名称を用いることをいうものであること。

第六 その他

一 法第一八条第五項の改正は、都道府県優生保護審査会の委員の報酬及び費用弁償に関する根拠を規定したものであり、各都道府県は、これに基き、報酬及び費用弁償の額及びその支給方法等を都道府県条例で定められたいこと。

二 法第二五条の改正は、法第三八条の特例を除き、優生保護法により優生手術及び人工妊娠中絶を実施したすべての場合について届出義務を課するとともに、その届出方法を簡素化したものであること。

なお、法第三八条の人工妊娠中絶の届出の特例が適用されるのは、指定医師が自ら死産の届出に関する規程によつて届出をした場合に限られること。したがつて、同規程により医師以外の届出義務者が届出をした場合でも、その医師は、これとは別に、法第二五条による届出をしなければならないこと。

三 法第二七条の秘密保持の規定の改正により、公務員以外で優生手術及び人工妊娠中絶の施行の事務に従事した者についても、この義務が課せられたのであるが、この中には、これらの手術を実施した医師及びこれを補助した看護婦等も含まれるものであること。