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○「受胎調節普及実施要領」並びに「同細目」について

(平成八年九月二五日)

(児発第八二七号)

(各都道府県知事・政令市市長・中核市市長・特別区区長あて厚生省児童家庭局長通知)

優生保護法の一部を改正する法律が平成八年法律第一〇五号をもって公布されたことに伴い、従来の「受胎調節普及実施要領」並びに「同細目」を見直し、別添のとおりとしたので、これに基づいて各地の実情に即応した実施計画を策定し、速やかに実施に移されるようお取り計らい願いたい。なお、本通知の実施に伴い、厚生省公衆衛生局長通知昭和二七年六月二七日衛発第五八五号「「受胎調節普及実施要領」並びに「同細目」について」は廃止する。

(別添)

受胎調節普及実施要領

第一 方針

人工妊娠中絶が母体の生命及び健康に及ぼす影響は相当に考慮すべきものがあるので、次のような方法により、公衆衛生の見地から積極的に適切な受胎調節の普及を行い、国民の福祉及び資質の向上を図るものとする。

第二 要領

一 受胎調節を行うかどうかは、あくまで個人が自主的に決定すべきものであるから、これを強制することなく十分理解させるよう指導する。

二 実施の方法は、個別指導(ケース・ワーク)及び集団教育(クループ・ワーク)に重点をおき、併せてその広報活動を行うものとする。

ア 個別指導

個別指導は、厚生大臣が指定する避妊用の器具を直接女子の身体に対して使用する実地指導の方法とその他受胎調節に関する一般的な知識、関係施設の利用及び薬品の使い方等について口頭で説明する方法とによるものとする。

(1) 医師及び都道府県知事の指定を受けた助産婦、保健婦(士)又は看護婦(士)は実地指導の方法及びその他の方法とを併せて行うものとする。

(2) 前号の指定を受けない助産婦、保健婦(士)又は看護婦(士)並びに医療社会事業担当者その他のケース・ワーカーは、その職務の範囲内で受胎調節の必要性及び保健所又は実地指導者の所在等を口頭で説明するものとする。

(3) 開局薬剤師(薬局に勤務する薬剤師を含む)は、薬局においてその業務の範囲内で、器具又は薬品の使い方及び保存の方法等を口頭で説明するものとする。

(4) 保健所は、集団教育を主たる活動として行うが、個別指導についても前記の職員によってこれを行うものとする。

イ 集団教育

工場、婦人団体その他の特定集団に対する教育指導は、保健所が行う。なお、適当な指導者のある場合は集団自体も実情に応じこれを行うものとする。

ウ 広報活動

広報活動は、主として厚生省及び都道府県(政令市、中核市、特別区を含む。以下同じ。)がこれを行うものとする。

三 実施に当たっては、関係民間団体の積極的かつ適切な協力を期待するものとする。

四 保健所は、母体保護法指定医師、一般医師、助産婦等並びに医療社会事業担当者その他のケース・ワーカー及び開局薬剤師の行う個別指導、集団が行う集団教育及び民間団体の行う活動に対して、適切な技術及び資料を提供する等、努めてこれに便宜を供与するものとする。

第三 措置

一 指導者に対する教育の実施

ア 厚生省は、国立公衆衛生院において、各都道府県の担当職員に対する専門教育を行う。

イ 都道府県は、前項の職員を中心として、保健所の担当職員その他の集団教育指導者に対する専門教育を行う。

ウ 都道府県は、都道府県医師会及び日本看護協会都道府県支部と共同して、助産婦、保健婦(士)及び看護婦(士)に対する専門教育を行う。

二 集団教育及び広報活動の実施

ア 保健所は、座談会等を開催し、器具の展示、映画、スライドの上映等により集団教育を行い、併せて各団体に対してこれらの行事を行うように指導し、かつその実施について協力する。

イ 厚生省及び都道府県は、個別指導及び集団教育の実施効果を上げるため、ラジオ、新聞その他の方法により広報活動を行う。

保健所は、適当な方法により所内に器具等を展示し、常時必要とする人々の参考に資するものとする。

ウ 集団教育及び広報活動に必要な映画、スライド、パンフレット、リーフレット等の資材は、厚生省、都道府県において作成整備する。

三 民間団体に対する協力、指導

厚生省は、受胎調節普及に関する民間団体の設置に協力し、その事業の育成を図るとともに既存民間団体の指導を行う。

第四 実施上の注意

一 普及指導は女子だけでなく、男子に対しても積極的にこれを行うこと。

二 人工妊娠中絶、死産及び妊産婦死亡の特に多い地域並びに受胎調節普及度の低い地域ないし階層に対しては特に重点をおいて普及指導を行うこと。

三 一般の広報活動及び集団指導に当たっては、社会の善良な風俗を害さないよう十分注意するとともに、国民の質的並びに文化的向上に留意して行うものとすること。

四 個人に対する指導に当たっては、その者の住居の状況、経済的条件、知識の程度等を十分観察の上、それらに応じて継続的に実施しうる効果的な方法を指導すること。

受胎調節普及実施要領細目

この細目は、「受胎調節普及実施要領」を補足的に解説するものである。

第一 受胎調節普及の実施方法

一 個別指導

(1) 女子に対する実地指導に使用すべき避妊用の器具は、避妊用用具として厚生大臣より製造許可を受けたものとする。

現在は、次の五種類がある。

① ペッサリー類

② 避妊用海面その他の避妊用スポンジ類

③ 避妊薬注入用器具類

④ 家庭用腟内洗滌器具類

⑤ 子宮内避妊器具類

(2) 医療社会事業担当者等のケース・ワーカー及び開局薬剤師は、従来の職務の範囲内において行うものであって、実施に当たっては上記の範囲を逸脱しないよう特に注意するものとする。

受胎調節普及のためのケース・ワーカーとしては特に次のものが期待される。

① 医療社会事業者

② 保健婦(士)

③ 衛生教育担当者

④ 生活改良普及員

⑤ 助産婦

⑥ 民生委員

⑦ 衛生管理者

二 集団教育

(1) 集団教育の対象となる集団は、工場、事業場、婦人団体、青年団体、母親学校、公民講座等である。

(2) 集団教育は、受胎調節普及の目的をもって集団自体、保健所が行う場合のみならず、集団が他の目的をもって行う会合を利用して行う等必要に応じ効果的な方法をもって行うものとする。

(3) 実施に当たっては、社会の善良な風俗を害さないように、開催の掲示を適切に行い、内容の如何によっては受講者を男女に区別し、又は既婚者のみとし、あるいは年齢を限定する等入場者を制限する措置を採るものとする。

(4) 講習会等の内容は、おおむね次のような項目が骨子となる。

この際、映画、スライド、掛図等の視覚教材及びパンフレット、リーフレット等を利用し、また、状況に応じ実地指導を行うことも効果的であると考えられる。

① 受胎調節の必要性

② 妊娠の成立

③ 受胎調節の方法

④ 実地指導に応じる場所及び実地指導者の存在の教示

三 広報活動

(1) 広報活動は、一般社会風潮特に年少者に対する影響を考慮し、受胎調節の方法そのものよりも、受胎調節の必要性、相談施設、指導者の存在、各種行事の開催期日等について行うものとする。

(2) 具体的な方法として特に次のものがあげられる。

① ラジオ……講演、放送討論会、スポットニュース、「皆さんの健康」、婦人の時間、「県(都)民の時間」

② 新聞……家庭欄、地方版、壁新聞等

③ 講演会、映画会、展示会等……場所及び入場者の選択等については特に留意すること。

第二 指導者の教育

一 中央における講習

厚生省は、公衆衛生院において、各都道府県(政令市、中核市、特別区を含む。以下同じ。)の衛生主管部局、保健所の医師である担当職員に対して講習(年三回程度毎回一週間位)を行う。

二 伝達講習

都道府県は、前項の講習終了の都度、前項の職員を中心として、保健所の担当職員に対して伝達講習を行う。

三 認定講習

実施指導を行う助産婦、保健婦(士)及び看護婦(士)に対しては、母体保護法第一五条第二項に基づく認定講習を行う。

(1) 主催者としては都道府県等の公共団体、都道府県医師会、日本看護協会都道府県支部、日本赤十字社、済生会等の公共的な団体又は助産婦養成所等の養成機関が適当と考えられる。

(2) 講習の課目及び時間数は、次表のとおりとする。

科目

時間数

備考

総論

受胎調節の意義と目的、母体保護と受胎調節、関連概念の整理、母体保護法及び薬事法の解説並びに人工妊娠中絶の現状と母体に及ぼす影響を含む。

受胎調節の基礎

 

受胎調節の指導

一三

 

実習

一〇

実習は模型又は人体で行うものとし、実習に必要な模型は三人に一個、モデルは三人に一人を基準とする。

討論

 

考査

 

四〇

 

受講者は一クラス一〇人ないし三〇人とする。

第三 各実施機関の活動

一 厚生省

(1) 受胎調節普及実施に関する基本的事項の企画、運用を行う。

(2) 受胎調節普及指導に関する資材を作成して各都道府県及び関係方面に配布するとともに、ラジオ、新聞等による全国的な広報活動を行う。

(3) 前記第二の一により都道府県の担当職員等に対して講習を行う。

(4) 関係各省との連絡、調整を図り、民間団体の設置運営について適切な指導を行う。

二 都道府県

(1) 厚生省の定める基本方針に即応し、現地の実情を勘案して、管内における受胎調節普及指導の適切な企画、運用を図る。

(2) 受胎調節に関する資材を収集、作成の上、保健所及び関係各方面に配布するとともに、ラジオ、新聞及び壁新聞と積極的に全県的な広報活動を行う。

(3) 前記第二の二及び第二の三により、保健所の担当職員に対する伝達講習、並びに助産婦、保健婦(士)、看護婦(士)に対する認定講習を行う。

(4) 関係行政庁及び民間団体との連絡、調整を図り、必要に応じ、受胎調節普及推進協議会等適当な連絡機関を設置する。

三 保健所

都道府県の計画に基づき、受胎調節普及実施の中心として、講習会、座談会等の所内指導及び集団又は個人に対する巡回指導を行い、関係機関との連絡、調整を図る。