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○未熟児養育事業の実施について

(昭和六二年七月三一日)

(児発第六六八号)

(各都道府県知事、各政令市市長、各特別区区長あて厚生省児童家庭局長通知)

未熟児養育事業の実施については、昭和四九年一〇月二日児発第六三七号厚生省児童家庭局長通知「未熟児養育事業の実施について」により実施してきたところであるが、本年四月一日より地方公共団体の団体事務とされたこと等に伴い、前記通知を廃止し、本通知により実施することとしたので、左記事項を留意のうえ、適正かつ円滑な実施を期されたい。

第一 未熟児養育についての方針

未熟児は、正常な新生児に比べて生理的に欠陥があり、疾病にもかかりやすく、その死亡率は極めて高率であるばかりでなく、心身の障害を残すことも多いことから、生後すみやかに適切な処置を講ずることが必要である。

このため、医療を必要とする未熟児に対しては養育に必要な医療の給付を行うとともに、必要に応じて保健所職員等により未熟児の保護者に対する訪問指導を行うこととする。

第二 未熟児養育対策

一 低体重児届出の徹底

未熟児の養育対策の万全を期するため、母子保健法(以下「法」という。)第一八条の規定による低体重児の早期届出の徹底を図る必要がある。

このため、妊娠の届出、母子健康手帳の交付、母親学級等の機会をとらえてすみやかに届出が行われるよう指導するほか、医師会、助産婦会等の積極的な指導協力を得るため、医師会、助産婦会との連絡協調を密にし、未熟児の早期把握に万全を期すこと。

二 未熟児養育医療

(一) 対象

養育医療の対象は、法第六条第六項に規定する未熟児であって、医師が入院養育を必要と認めたものとすること。

なお、法第六条第六項にいう諸機能を得るに至っていないものとは、例えば、次のいずれかの症状等を有している場合をいう。

ア 出生時体重二、〇〇〇グラム以下のもの

イ 生活力が特に薄弱であって次に掲げるいずれかの症状を示すもの

(ア) 一般状態

a 運動不安、痙攣があるもの

b 運動が異常に少ないもの

(イ) 体温が摂氏三四度以下のもの

(ウ) 呼吸器、循環器系

a 強度のチアノーゼが持続するもの、チアノーゼ発作を繰り返すもの

b 呼吸数が毎分五〇を超えて増加の傾向にあるか、又は毎分三〇以下のもの

c 出血傾向の強いもの

(エ) 消化器系

a 生後二四時間以上排便のないもの

b 生後四八時間以上嘔吐が持続しているもの

c 血性吐物、血性便のあるもの

(オ) 黄疸

生後数時間以内に現れるか、異常に強い黄疸のあるもの

(二) 指定養育医療機関の基準

指定養育医療機関の具備すべき基準は、次のとおりとすること。

ア 産科又は小児科を標ぼうしていること

イ 独立した未熟児用の病室を有すること

ウ 保育器、酸素吸入装置、その他未熟児養育医療に必要な器具を有すること

エ 未熟児養育に習熟した医師及び看護婦を適当数有すること

(三) 診療上の留意事項

指定養育医療機関は、未熟児の医療が専門外にわたるときは、指定養育医療機関医療担当規定及び保険医療機関及び保険医療担当規則に定めるところにより、適切な措置を講ずること。

(四) 移送

指定養育医療機関は、移送用保育器及び酸素吸入装置を整備し、医師及び看護婦の付添いのもとに救急用自動車等により移送するよう配慮すること。

(五) 養育医療の申請及び給付

ア 給付の申請

養育医療の給付の申請は、母子保健法施行規則(以下「規則」という。)第九条の規定によるものであるが、その要領については次によること。

(ア) 申請者は、未熟児の保護者(法第六条第四項)であること。

(イ) 申請書には、医師の記載した養育医療意見書及びその他必要とする関係書類を必ず添付させること。

イ 給付の決定

(ア) 都道府県知事又は保健所を設置する市の市長は、すみやかに養育医療を給付するか否かを決定すること。

(イ) 養育医療の給付を行うことを決定したときは、規則第九条第二項による養育医療券(以下「医療券」という。)を申請者に交付し、かつ医療券に記載した指定養育医療機関にその旨を通知すること。

また、養育医療の給付を行わないことを決定したときは、すみやかに、その理由を明らかにして、申請者に通知すること。

(ウ) 医療券の交付に際しては、申請者に対し、その取扱いについて十分指導すること。

なお、費用徴収する場合には、あらかじめ周知徹底させておくこと。

(エ) 医療は、医療券を指定養育医療機関に提出して給付を受けることとなっているが、やむを得ない理由により、医療券を提出できない場合には、取りあえず医療を行い、その理由がなくなった後、すみやかに、医療券を提出させること。

ウ 医療券の取扱い

(ア) 医療券の有効期間の記載にあたっては、その始期は、当該指定養育医療機関による当該医療開始の日にさかのぼる取扱いとすること。

また、その終期は、当該医療の終了の日であるので、診療の終了予定期間に若干の余裕を考慮して記入すること。

なお、病院診療所用及び薬局用の医療券を併せて交付する場合における有効期間は、同一の有効期間とすること。

(イ) 当該医療を医療券の有効期間を過ぎて継続する必要のある場合は、都道府県知事又は保健所を設置する市の市長は、事前に保護者若しくは当該指定養育医療機関より医師の意見書を添えて養育医療継続の申請を行わせ、これを承認することができること。

養育医療継続の承認は、文書によるものとし、これに期限を附すこと。

なお、継続の承認決定を行ったときは、前記(五)のイ(イ)に準じて、申請者及び指定養育医療機関にその旨を通知すること。

(ウ) やむを得ない理由により当該指定養育医療機関を転院する場合は、新たに、申請を行わせるものとすること。

この場合の申請書には、意見書及び転院を必要とする理由を記載した医師の証明書を添附すること。

エ 医療の給付

(ア) 医療の給付は、現物給付によることを原則とし、やむを得ない事情がある場合にのみ現物給付に変えて、その費用を支給することとすること。

(イ) 給付の範囲は、法律第二〇条第三項に定められているところであるが、これらのうち看護及び移送の給付の取扱いについては、次によること。

a 付添看護は、原則認められないが、真にやむを得ない事情により付添看護料を支給する場合は、都道府県知事の承認を得たうえ、従前の例により支給すること。ただし、本取扱いは平成八年三月三一日(健康保険法の一部を改正する法律(平成六年法律第五六号)附則第四条第一項の規定による承認を受けた病院又は診療所にあっては、別に厚生大臣が定める日)までの間とする。

b 移送は、入院又は医師が特に必要と認めた場合に承認するものとし、その額は必要とする最小限の実費とすること。

なお、移送に際し、介護の必要があると認められる場合は、付添人の移送費についても支給して差支えないこと。

c 移送費等の支給申請は、その事実についての指定養育医療機関の医師の証明書及び当該費用の額に関する証拠書類を添えて、給付の申請者から都道府県知事又は保健所を設置する市の市長に申請させること。

(六) 診療報酬の請求、審査及び支払

診療報酬の請求、審査及び支払については、昭和二九年四月二八日社発第三五三号厚生省社会局長、児童局長通知「医療扶助並びに更生医療及び育成医療の給付に伴う診療報酬の審査及び支払に関する事務の委託について」に定めるところによること。

(七) 徴収

法第二一条第三項の規定により当該措置に要する費用を扶養義務者から徴収することができること。

(八) 医療保険各法との関連事項

母子保健法施行規則第一四条第二項の医療保険各法と本給付との関係は、その本人が医療保険各法の被扶養者等である場合は、医療保険各法による医療の給付が優先すること。

したがって、養育医療の給付は、いわゆる自己負担分を対象とするものであること。

(九) その他

給付の状況を明確にするため、「養育医療給付台帳」を備付け、その状況を明らかにしておくこと。

3 未熟児訪問指導

(一) 訪問指導の実施

法第一九条による訪問指導の実施にあたっては、医療機関等を通じて未熟児の症状等の把握に努めるものとし、指導内容は、当該医療機関の医師等の意見を聞くほか、平成八年一一月二〇日児発第九三四号本職通知「母性、乳幼児に対する健康診査及び保健指導の実施について」の別添「母性、乳幼児の健康診査及び保健指導に関する実施要領」のⅡの第二の三及び第三の三を参考とし、特に、合併症又は後遺症等の発現について留意のうえ適切な指導を行うこと。

(二) 対象の把握

訪問指導を徹底するため、常に低体重児の届出状況等を把握するとともに、医療機関等との連絡を密にし、対象の把握に努めること。

このため、退院年月日、退院後の住所及び退院時の状況等について、特に医療機関等からの報告を求めるなど積極的な協力を求めること。

なお、報告を求めるにあたっては、未熟児の出生内容等に関しての医療機関から保健所に対する連絡票をあらかじめ関係医療機関に配布しておくこと。

(三) 訪問指導の徹底

未熟児は、通常養育上の必要性から訪問指導を必要とするため、出生したすべての未熟児を対象として訪問指導を行うことが望ましい。特に、未熟児養育医療の対象となった児を重点対象とすること。

(四) 事後指導の徹底

訪問指導を行ったときは、母子健康手帳及び関係書類に必要な事項を記入して事後指導の徹底を図ること。

第三 その他

一 妊婦健康診査及び保健指導の徹底

未熟児の出生を防止するためには、未熟児出生の原因となる妊婦の疾病等の予防と早期発見に努め、早期に治療を行うことが必要であるので、妊婦に対する妊娠中の定期的な健康診査及び保健指導の徹底に努めること。

二 医療機関等の協力

未熟児養育事業の円滑な実施を図るため、本事業に直接関係する医療機関はもとより、医療保健関係者等に対し、医師会、助産婦会、看護協会等を通じて本事業の趣旨の周知徹底を図るとともに、積極的な協力を求めること。

三 広報活動

未熟児養育事業の実施については、未熟児医療にたずさわる医師及び助産婦等の医療保健関係者はもとより、母子保健推進員、母子保健地域組織の構成員等に対し、本事業の趣旨の周知徹底をはかるほか、積極的な協力を求めて効率的な運営をはかること。

また、住民、特に妊婦に対し、本事業の趣旨の徹底を図り、母親学級等の保健衛生教育の場を通じて常に未熟児養育上の正しい知識とその方法を普及すること。

四 その他

本通知に係る各種様式については、別添を参考とされたいこと。

別添

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(参考)

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