添付一覧
○母子福祉法の一部を改正する法律等の施行について
(昭和五七年四月五日)
(児発第二七九号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省児童家庭局長通知)
標記については、別途「母子福祉法の一部を改正する法律等の施行について(昭和五七年四月五日厚生省発児第八二号、各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生事務次官通知)」の通知がなされたところであるが、母子福祉法の一部を改正する法律の実施に当たつては同通知によるほか、なお、次の事項に留意のうえ、遺憾のないよう取り扱われたい。また、法人税法施行令が改正され(昭和五七年三月三一日政令第七一号)、母子福祉団体に対する税制上の取扱いが変更されたので、併せて通知する。
なお、この通知においては、母子福祉法の一部を改正する法律による改正前の法律を「母子福祉法」と、改正後の法律を「母子及び寡婦福祉法」と称することとする。
第一 定義
一 寡婦(母子及び寡婦福祉法第五条第三項)
(一) 「寡婦」とは、配偶者のない女子であつて、かつて母子家庭の母であつたものをいうものであること。すなわち、かつて母子家庭の母であつてその扶養する児童が二○歳に達し、独立し、又は死亡した等の配偶者のない女子がこれに含まれるものであること。また、児童を扶養したことのない配偶者のない女子、現在母子家庭の母である配偶者のない女子は寡婦に含まれないものであること。
(二) なお、「母子家庭の母」とは、配偶者のない女子で現に児童を扶養しているものをいうこと。
二 寡婦等(母子及び寡婦福祉法施行令第二四条第六号)
「寡婦等」とは、寡婦又は母子家庭の母で二○歳以上である子その他これに準ずる者(以下「二○歳以上である子等」という。)を扶養しているものをいうこと。これは、母子家庭の母について、その扶養する子のうち二○歳以上である子等に関連する貸付金については、母子及び寡婦福祉法第一○条第二項に基づき継続的に貸し付けられる母子福祉資金を除き、母子福祉資金の貸付けを行うことができないこととされており、寡婦が扶養する二○歳以上である子等との公平を図る観点から、母子家庭の母であつても寡婦福祉資金の貸付けを行うこととしたことに伴い、二○歳以上である子等に関連する貸付金についての貸付対象となる者を定義したものであること。
三 扶養
(一) 「扶養」とは「民法第八七七条の規定による扶養」をいい、これには、同条第一項により扶養義務を負つている直系血族及び兄弟姉妹間における扶養と、同条第二項により家庭裁判所の審判に基づいて扶養の義務を負う三親等内の親族間における扶養との二つの場合が含まれること。
(二) 寡婦が扶養している「二○歳以上である子等」とは、母子及び寡婦福祉法の立法の理念に照らし、民法第八七七条第一項の規定による目下の直系血族(子、孫、ひ孫等)及び弟妹と、同条第二項によるおい、めいとをいうものであること。
なお、扶養は、同一生計を必ずしも要件とするものではないが、母子一体の原則に照らし、寡婦が二○歳以上である子等の生活の主要部分の維持を行つていることを必要とすること。
第二 寡婦福祉資金の貸付け
一 貸付けの対象
(一) 貸付けの対象となる者は、次のいずれかの者であること。
(1) 寡婦(修学資金、修業資金、就学支度資金及び結婚資金については寡婦等)
(2) 四○歳以上の配偶者のない女子であつて母子家庭の母及び寡婦以外のもの(以下「四○歳以上の配偶者のない女子」という。)
(3) 修学資金又は修業資金の貸付けを受けている寡婦が死亡したときのその二○歳以上である子等
(4) 母子福祉団体であつて母子及び寡婦福祉法施行令第五条に規定する事業を行い、その事業に使用される者が主として母子家庭の母及び寡婦であるもの
(二) 従来の寡婦福祉資金貸付制度要綱に基づく貸付制度(以下「旧制度」という。)の対象者については、四○歳以上という年齢制限が設けられていたが、新法に規定する寡婦には年齢制限が設けられないものであること。なお、旧制度の対象者は、新法に基づく貸付けの対象者に含まれるものであること。
(三) 修学資金、修業資金、就学支度資金及び結婚資金については、母子家庭の母で同時に二○歳以上である子等を扶養しているものに対しても、その二○歳以上である子等の福祉を増進するための貸付けを行うものであること。
(四) 母子福祉団体に対する貸付けの目的は、母子家庭の母及び寡婦に就職の場を与えることにあるので、その目的が効果的に達成されるようにするため、貸付金額の決定に当たつては、貸付けの対象となる事業に使用される母子家庭の母及び寡婦の数を勘案するものとし、また当該事業については、できる限り母子家庭の母及び寡婦を使用するよう指導されたいこと。
二 扶養する子等のない寡婦に対する所得制限
(一) 扶養する子等のない寡婦及び四○歳以上の配偶者のない女子の所得の額が二○三万六、○○○円を超える場合は、寡婦福祉資金の貸付けは行われないこと。なお、ここでいう所得とは前年の所得をいうが、所得認定事務を考慮し、一月一日から五月三一日までの間に申請のあつた貸付けについては、前前年の所得とすること。
(二) 所得認定については、課税台帳に基づいて市町村長の発行する所得証明書により行うこととし、関係書類の整備及び審査事務の適正な処理について十分に配慮されたいこと。
(三) (一)の場合においても、その者が災害、盗難、疾病、負傷等の理由により生活の状態が著しく窮迫していると認められる事情にあるときは、個々の事情について十分調査のうえ、借受申込資金の種類及び償還能力の有無を勘案して貸付対象とすることができるものであること。
(四) 旧制度における所得制限は、収入金額で三一○万七、五○○円以下とされていたが、今回母子及び寡婦福祉法に規定されたことに伴い所得金額で規定することとしたものであること。
三 母子福祉資金との調整
母子福祉資金及び寡婦福祉資金の双方から同一の理由で同種の資金の貸付けを受けることはできないこと。たとえば、母子福祉資金の中の修学資金は、母子家庭の児童が二○歳となつた後も学校を卒業するまでの間継続して貸付けを受けることができるが、その場合は、その者に関連する寡婦福祉資金の修学資金の貸付けを受けることはできないものであること。ただし、この場合において寡婦が寡婦福祉資金の事業開始資金の貸付けを受けることは差し支えないこと。
四 資金の種類等
(一) 寡婦福祉資金の種類は、母子福祉資金の種類のほかに結婚資金が設けられていること。
(二) 結婚資金は、寡婦等が扶養している二○歳以上である子等が婚姻(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。以下同じ。)をする際必要とする挙式披露等のための経費、家具什器等の購入費等について寡婦が負担する経費にあてることを予定しているものであること。
(三) 就職支度資金及び療養資金については、母子福祉資金と異なり、寡婦のためにのみこれを貸し付けることができるものであつて、寡婦の扶養する二○歳以上である子等のためにこれを貸し付けることができないこと。
(四) 寡婦の扶養する子等が二○歳以上であることから、就学支度資金における小学校又は中学校への入学に際し必要な資金の貸付け、修学資金及び修業資金の貸付金額の限度における児童が一八歳に達したことにより受けることができなくなつた児童扶養手当等の金額の加算並びに技能習得資金及び生活資金における母子及び寡婦福祉法施行令第一一条第二項第二号及び第三号の事由による貸付けの停止は適用されないこと。
(五) 前記(一)から(四)までを除き、資金の種類等は母子福祉資金と同じであること。
五 保証人
寡婦福祉資金の貸付けを受けようとする者は、保証人をたてることとされているが、これについては母子福祉資金と同様に取り扱われたいこと。
第三 削除
第四 国の債権の管理
一 削除
二 昭和五六年度以前に、国が旧制度に基づく寡婦福祉資金の貸付けの財源の一部として各道府県・指定都市に交付した補助金で貸付業務を廃止したときに国に返還することとなつているものは、国が各道府県・指定都市に貸し付けたものとみなすこととなるので、これを国の債権として管理されたいこと。なお、これに伴い改めて特定資金枠外債として起債許可の手続きを行う必要はないが、地方自治法施行規則(昭和二二年内務省令第二九号)第一五条の二に規定する「予算に関する説明」の中の「地方債の前前年度末における現在高並びに前年度末及び当該年度末における現在高の見込みに関する調書」に計上すること。
第五 寡婦等の雇用対策
一 地方公共団体の設置する公共的施設内における売店等の優先許可、日本専売公社のたばこ小売人の優先指定(以下「売店等の許可」という。)を寡婦に対して行うことは、寡婦に対して職場開拓を積極的に図ろうとするものであるが、これらの措置については、あくまで母子家庭が寡婦に優先するものであること。
二 寡婦に対する売店等の許可により、母子家庭の母として売店等の許可を受けた女子は、子どもが二○歳に達しても営業を続けることができることとなつたが、当該女子が他の方途により自立が図られるようにたつた場合には、より必要の高い母子家庭の母または寡婦に機会を譲るよう指導されたいこと。
三 売店等の許可を受けた者は、病気その他正当な理由がある場合のほかは自らその業務に従事しなければならないこと。したがつて、特にいわゆる名義貸しの行われないよう、この趣旨を徹底されたいこと。
四 寡婦、母子家庭の母又は児童の雇用の促進のために、地方公共団体は、国とともに職業訓練の実施、就職のあつせん等必要な措置を講ずるよう努められたいこと。
第六 母子福祉団体に対する税制上の取扱い
母子福祉団体が収益事業を行うに当たつては、従来、従業員の半数以上を母子家庭の母で占める事業、母子福祉資金貸付金の貸付けに係る事業及び公共的施設内における売店等の事業については、法人税を非課税とされていたが、法人税法施行令の一部改正(昭和五七年三月三一日政令第七一号)により昭和五七年度からは、新たに、従業員の半数以上を母子家庭の母及び寡婦で占める事業及び寡婦福祉資金貸付金の貸付けに係る事業についても、法人税を非課税とされるものであること。
第七 通知の廃止
昭和四四年五月九日児発第二九六号本職通知「寡婦福祉資金貸付制度の運営について」は、昭和五七年三月三一日をもつてこれを廃止する。