アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○特別児童扶養手当及び特別障害者手当等におけるヒト免疫不全ウイルス感染症に係る障害認定について

(平成一〇年三月二七日)

(障企第二四号)

(各都道府県民生主管部(局)長あて厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課長通知)

ヒト免疫不全ウイルス感染症に係る特別児童扶養手当、障害児福祉手当及び特別障害者手当の障害の認定について、別紙のとおり留意事項を定めたので、管下市町村及び関係機関に周知徹底を図るとともに、その運用に当たっては特段のご配慮を願いたい。

別紙

第一 特別児童扶養手当

1 ヒト免疫不全ウイルス感染症に係る特別児童扶養手当の認定について

ヒト免疫不全ウイルス感染症に係る障害の認定については、従来どおり「特別児童扶養手当等の支給に関する法律別表第一における障害の認定について」(昭和五〇年九月五日児発第五七六号児童家庭局長通知)に定める「特別児童扶養手当等の支給に関する法律別表第一における障害の認定要領」(以下「認定要領」という。)によるものとする。

2 ヒト免疫不全ウイルス感染症による障害の範囲について

ヒト免疫不全ウイルス感染症による障害認定の対象となる障害は、次のとおりである。

(1) ヒト免疫不全ウイルス感染症とその続発症による日常生活上の障害

(2) 副作用等治療の結果として起こる日常生活上の障害

3 障害認定のあり方について

続発症(ヒト免疫不全ウイルス消耗症候群、日和身感染症等)の有無及びその程度及びCD4値(注1)等の免疫機能の低下の状態を含む検査所見、治療及び症状の経過を十分考慮し、日常生活上の障害を総合的に認定すること。

(注1) CD4値:血液中に含まれるリンパ球の一種で、免疫全体をつかさどる機能を持つリンパ球数のこと。

4 認定請求の際に添付する診断書について

ヒト免疫不全ウイルス感染症に係る障害により、特別児童扶養手当の認定の請求をしようとする者が認定請求書に添付する診断書は、特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行規則(昭和三九年厚生省令第三八号。以下「規則」という。)第一条第二号及び規則様式第二号(五)に定める特別児童扶養手当認定診断書(外部障害・呼吸器結核・精神障害以外の疾患用)とするが、これのみでは認定が困難な場合には、必要に応じ療養の経過若しくは日常生活状況等の調査又は必要な検診等を実施したうえ適正な認定を行うこと。

5 障害の程度について

ヒト免疫不全ウイルス感染症による障害の程度は、基本的には認定要領の別添2内科的疾患に基づく身体の障害についての認定基準8その他の障害に掲げられている障害の状態であること。

(1) 特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令(昭和五〇年政令第二〇七号。以下「令」という。)別表第三第九号の一級に該当すると思われる病状には、次のようなものがある。

回復困難なヒト免疫不全ウイルス感染症及びその合併症の結果、生活が室内に制限されるか日常生活に全面的な介助を要するもの

(2) 令別表第三第一五号の二級に該当すると思われる病状には、次のようなものがある。

エイズ指標疾患(注2)や免疫不全に起因する疾患又は症状が発生するか、その既往が存在する結果、治療又は再発防止療法が必要で、日常生活が著しく制限されるもの

(注2) エイズ指標疾患(別添資料)‥サーベランスのためのAIDS診断基準における特徴的症状に該当する疾患

病状の程度については、一般状態が次表の一般状態区分表の4に該当するものは一級に、同表の2又は3に該当するものは二級に概ね相当するので、認定の参考とすること。

区分

一般状態

0

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえる。

1

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や坐業はできる。例えば、軽い家事、事務など。

2

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもある。軽労働はできないが、日中の五〇%以上は起居している。

3

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の五〇%以上は就床している。

4

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

6 検査所見及び臨床所見について

ヒト免疫不全ウイルス感染症による障害の程度について、以下の項目に留意し、認定を行うこと。

ア 疲労感、倦怠感、不明熱、体重減少、消化器症状の程度、出現頻度、持続時間

イ 日和見感染症、悪性腫瘍の種類、重症度、既往、出現頻度

ウ CD4値、ヒト免疫不全ウイルス|RNA定量値、白血球数、ヘモグロビン量、血小板数の状況

エ 治療の状況(治療薬剤、服薬状況、副作用の状況)

なお、現時点におけるエイズ治療の水準にかんがみ、CD4値が二〇〇未満の状態では、多くの感染児において強い疲労感、倦怠感が認められており、また、この段階では、多数の日和見感染症等の発症の可能性が高まるために、抗エイズ薬等の多剤併用療法が実施され、重篤な副作用を生じる結果、日常生活が著しく制限される場合が多いことにも留意すること。

7 複数の外部障害、精神の障害等が存在する場合の認定についてヒト免疫不全ウイルス感染症及びその続発症によるか、又はヒト免疫不全ウイルス感染症に対する治療の結果によるかの原因の如何を問わず、視機能障害、四肢麻痺、精神・神経障害等の不可逆的な障害は、原疾患との重複認定により認定すること。この場合、認定要領別添4身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合の障害についての認定基準をもとに認定すること。

第二 障害児福祉手当及び特別障害者手当

1 ヒト免疫不全ウイルス感染症に係る障害児福祉手当及び特別障害者手当の認定について

ヒト免疫不全ウイルス感染症に係る障害の認定については、従来どおり「障害児福祉手当及び特別障害者手当の障害程度認定基準について」(昭和六〇年一二月二八日社更第一六二号社会局長通知)に定める「障害児福祉手当及び特別障害者手当の障害程度認定基準」(以下「認定基準」という。)によるものとする。

2 ヒト免疫不全ウイルス感染症による障害の範囲について

ヒト免疫不全ウイルス感染症による障害認定の対象となる障害は、次のとおりである。

(1) ヒト免疫不全ウイルス感染症とその続発症による日常生活上の障害

(2) 副作用等治療の結果として起こる日常生活上の障害

3 障害認定のあり方について

続発症(ヒト免疫不全ウイルス消耗症候群、日和見感染症等)の有無及びその程度及びCDS値等の免疫機能の低下の状態を含む検査所見、治療及び症状の経過を十分考慮し、日常生活上の障害を総合的に認定すること。

4 認定請求の際に添付する診断書について

ヒト免疫不全ウイルス感染症に係る障害により、障害児福祉手当若しくは特別障害者手当の認定の請求をしようとする者(児)が認定請求書に添付する診断書は、障害児福祉手当及び特別障害者手当の支給に関する省令(昭和五〇年厚生省令第三四号。以下「省令」という。)第二条第二号及び省令様式第二号(七)に定める障害児福祉手当認定診断書(肝臓血液疾患及びその他の疾患用)若しくは省令第一五条第二号及び省令様式第六号(七)に定める特別障害者手当認定診断書(肝臓血液疾患及びその他の疾患用)とするが、当該診断書のみでは認定が困難な場合には、必要に応じて療養の経過、日常生活の状況の調査、検診等を実施した結果に基づき認定すること。

5 障害の程度について

(1) 障害児福祉手当のヒト免疫不全ウイルス感染症による障害の程度は、基本的には認定基準の第二障害児福祉手当の個別基準5その他の疾患に掲げられている障害の状態であること。

(2) 特別障害者手当のヒト免疫不全ウイルス感染症による障害の程度は、基本的には認定基準の第三特別障害者手当の個別基準のうちで次に掲げられている障害の状態であること。

(ア) 1(7)その他の疾患

(イ) 2(1)コ(イ)その他の疾患

(ウ) 3(1)に規定する第二障害児福祉手当の個別基準5その他の疾患

(3) 令別表第一第八号に該当すると思われる病状には、次のようなものがある。

回復困難なヒト免疫不全ウイルス感染症及びその合併症の結果、生活が室内に制限されるか日常生活に全面的な介助を要し、診断書の「⑫安静を要する程度」が1又は2であるもの

(4) 令別表第二第六号に該当すると思われる病状には、次のようなものがある。

回復困難なヒト免疫不全ウイルス感染症及びその合併症の結果、生活が室内に制限されるか日常生活に全面的な介助を要し、診断書の「⑫安静を要する程度」が2以上であるもの

(5) 認定基準第三の2(1)次表第10号に該当すると思われる病状には、次のようなものがある。

エイズ指標疾患や免疫不全に起因する疾患又は症状が発生するか、その既往が存在する結果、治療又は再発防止療法が必要で、日常生活が著しく制限されるもので、身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助を必要とし、日中の五〇%以上は就床しているもの(診断書の「⑬活動能力の程度」が4であるもの)

(6) 認定基準第三の3(1)に規定する第二障害児福祉手当の個別基準5その他の疾患に該当すると思われる病状には、次のようなものがある。

回復困難なヒト免疫不全ウイルス感染症及びその合併症の結果、生活が室内に制限されるか日常生活に全面的な介助を要し、診断書の「⑫安静を要する程度」が1であるもの

6 検査所見及び臨床所見について

ヒト免疫不全ウイルス感染症による障害の程度について、以下の項目に留意し、認定を行うこと。

ア 疲労感、倦怠感、不明熱、体重減少、消化器症状の程度、出現頻度、持続時間

イ 日和見感染症、悪性腫瘍の種類、重症度、既往、出現頻度

ウ CD4値、ヒト免疫不全ウイルス|RNA定量値、白血球数、ヘモグロビン量、血小板数の状況

エ 治療の状況(治療薬剤、服薬状況、副作用の状況)

なお、現時点におけるエイズ治療の水準にかんがみ、CD4値が二〇〇未満の状態では、多くの感染者(児)において強い疲労感、倦怠感が認められており、また、この段階では、多数の日和見感染症等の発症の可能性が高まるために、抗エイズ薬等の多財併用療法が実施され、重篤な副作用を生じる結果、日常生活が著しく制限される場合が多いことにも留意すること。

7 複数の外部障害、精神の障害等が存在する場合の認定について

ヒト免疫不全ウイルス感染症及びその続発症によるか、又はヒト免疫不全ウイルス感染症に対する治療の結果によるかの原因の如何を問わず、視機能障害、四肢麻痺、精神・神経障害等の不可逆的な障害は、原疾患との重複認定により認定すること。この場合、障害児福祉手当においては、認定基準第二の7令別表第一第一〇号による障害をもとに認定すること。

第三 個人情報の保護及び申請手続きについて

(1) ヒト免疫不全ウイルス感染者(児)に係る特別児童扶養手当、障害児福祉手当及び特別障害者手当の申請から支給までには、市町村及び都道府県の職員、嘱託医等が関わることになる。したがって、これらの諸手当の受付、認定及び支給事務をとり行うに際しては、支給対象障害児若しくは認定請求者の病名、病状等の個人情報の保護について十分留意すること。

特に、ヒト免疫不全ウイルス感染者(児)にあっては、諸般の事情により病名を明らかにできない場合もあることから、認定に際しては、ヒト免疫不全ウイルス感染症との記載がない場合であっても、何らかの形でヒト免疫不全ウイルス感染症であると認められる場合には、ヒト免疫不全ウイルス感染症として取扱い、認定を行われたい。

(2) 特別児童扶養手当、障害児福祉手当及び特別障害者手当の認定(額改定)請求書及び有期認定の障害認定診断書(以下「請求書等」という。)は、一元的に市町村において受付することとなっているが、これらの請求書等は支給対象障害児若しくは認定請求者等の病名、病状等が記載された診断書等の添付を要するものであり、申請者保護の観点から、ヒト免疫不全ウイルス感染者(児)に係る当該請求書等においては本人に代わって関係のある者が提出することができるものとする。

また、ヒト免疫不全ウイルス感染者(児)に係る請求書等は、郵送により提出することとして差しつかえないこととし、この場合において記載又はその添付書類等の不備により、市町村が当該請求書等を返付する場合も受給資格者又は受給者あてに郵送によることとして差しつかえないものとする。

別添資料

サーベイランスのためのAIDS診断基準

(厚生省エイズサーベイランス委員会、1994)

我が国のエイズサーベイランス委員会においては、下記の基準によってAIDSと診断することとする。

Ⅰ HIV検査で感染が認められた場合

酵素抗体法(ELISA)又はゼラチン粒子凝集法(PA)といったHIVの抗体スクリーニング検査法の結果が陽性で、かつWestern Blot法又は蛍光抗体法(IFA)といった確認検査法の結果も陽性であった場合、または抗原検査、ウイルス培養、PCR法などの病原体に関する検査(以下、「病原検査」という。)によりHIV感染が認められた場合であって、下記の特徴的症状(Indicator Diseases)の一つ以上が明らかに認められるときはAIDSと診断する。

なお、周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後15か月未満の児については、Ⅱによることとする。

Ⅱ 周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後15か月未満の児の場合

周産期に母親がHIVに感染していたと考えられる生後15か月未満の児については、HIVの抗体確認検査が陽性であっても、それだけではHIV感染の有無が判定できないので、さらに以下の①または②のいずれかに該当する場合で免疫不全を起こす他の原因が認められないものをAIDSと診断する。

① HIV抗原検査、ウイルス分離、PCR法などの病原検査法が陽性で、特徴的症状の一つ以上が明らかに認められるとき

② 血清免疫グロブリンの高値に加え、リンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数の減少、CD4陽性Tリンパ球数/CD8陽性Tリンパ球数比の減少といった免疫学的検査所見のいずれかを有する場合であって、特徴的症状の一つ以上が明らかに認められるとき

(特徴的症状)

1 カンジダ症(食道、気管、気管支又は肺)

2 クリプトコックス症(肺以外)

3 クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)

4 サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以上で、肝、脾、リンパ節以外)

5 単純ヘルペスウイルス感染症(1か月以上継続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの又は生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの)

6 カポジ肉腫(年齢を問わず)

7 原発性脳リンパ腫(年齢を問わず)

8 リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)

9 非定型抗酸菌症(結核以外で、肺、皮膚、頚部もしくは肺門リンパ節以外の部位、又はこれらに加えて全身に播種したもの)

10 ニューモシスチス・カリニ肺炎

11 進行性多発性白質脳症

12 トキソプラズマ脳症(生後1か月以後)

13 化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌による敗血症、肺炎、髄膜炎、骨関節炎又は中耳・皮膚粘膜以外の部位の深在臓器の腫瘍が2年以内に、二つ以上、多発あるいは繰り返して起こったもの)

14 コクシジオイデス症(肺、頚部もしくは肺門リンパ節以外に又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)

15 HIV脳症(HIV痴呆、AIDS痴呆又はHIV亜急性脳炎)

16 ヒストプラスマ症(肺、頚部もしくは肺門リンパ節以外に、又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)

17 イソスポラ症(1か月以上続く下痢)

18 非ホジキンリンパ腫(B細胞もしくは免疫学的に未分類で組織学的に切れ込みのない小リンパ球性リンパ腫又は免疫芽細胞性肉腫)

19 活動性結核(肺結核(13歳以上)又は肺外結核)

20 サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌によるものを除く)

21 HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)

22 反復性肺炎

23 浸潤性子宮頚癌

※ 19のうち肺結核、22、23は1994年の新たな診断基準で採用された特徴的症状である。

※※ 肺結核及び浸潤性子宮頚癌については、HIVによる免疫不全を示唆する症状または所見がみられる場合に限る。

(付記)AIDSに関連する特徴的症状の診断法

1 カンジダ症(食道、気管、気管支又は肺)

内視鏡もしくは剖検による肉眼的観察又は患部組織の顕微鏡検査によって、カンジダを確認する。

ただし、嚥下時に胸骨後部の疼痛があり、かつ紅斑を伴う白い斑点又はプラク(斑)が肉眼的に認められ、粘膜擦過標本で真菌のミセル様繊維を顕微鏡検査で確認できる口腔カンジダ症が存在する場合はカンジダが確定診断されなくとも食道カンジダ症と診断してよい。

2 クリプトコックス症(肺以外)

顕微鏡検査又は培養によるか、患部組織又はその浸出液からクリプトコックスを検出することによって診断する。

3 クリプトスポリジウム症(1か月以上続く下痢を伴ったもの)

顕微鏡検査によって診断する。

4 サイトメガロウイルス感染症(生後1か月以上で、肝、脾、リンパ節以外)

顕微鏡検査によって診断する。

ただし、サイトメガロウイルス性網膜炎は眼底検査によって、網膜に鮮明な白斑が血管にそって遠心状に広がり、数か月にわたって進行し、しばしば網膜血管炎、出血又は壊死を伴い、急性期を過ぎると網膜の痂皮形成、萎縮が起こり、色素上皮の斑点が残るという特徴的な臨床像から診断してよい。

5 単純ヘルペスウイルス感染症

1か月以上継続する粘膜、皮膚の潰瘍を形成するもの又は生後1か月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を合併するもので、顕微鏡検査又は培養によるか、患部組織又はその浸出液からウイルスを検出することによって診断する。

6 カポジ肉腫

顕微鏡検査によって診断する。

肉眼的には皮膚又は粘膜に特徴のある紅斑又はすみれ色の斑状の病変を認めることによる。

ただし、これまでカポジ肉腫を見る機会の少なかった医師は推測で診断しない。

7 原発性脳リンパ腫

顕微鏡検査もしくはCT又はMRIなどの画像診断法によって診断する。

8 リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)

顕微鏡検査によって診断する。

臨床的には胸部X線で、両側性の網状小結節様の間質性肺陰影が2か月以上認められ、病原体が同定されず、抗生物質療法が無効な場合はLIP/PLH complexと診断する。

9 非定型抗酸菌症(肺、皮膚、頚部又は肺門リンパ節以外、又はこれらの部位に加えて全身に播種したもの)

細菌学的培養によって診断する。

糞便、汚染されていない体液又は肺、皮膚、頚部もしくは肺門リンパ節以外の組織の顕微鏡検査で、結核菌以外の抗酸菌が検出された場合は非定型抗酸菌症と診断する。

10 ニューモシスチス・カリニ肺炎

顕微鏡検査によって、カリニ原虫を確認する。

ただし、最近3か月以内に運動時の呼吸困難又は乾性咳嗽があり、胸部X線でび慢性の両側間質像増強が認められ、又はガリウムスキャンでび慢性の両側の肺病変があり、かつ、動脈血ガス分析で酸素分圧が70mmHg以下であるか呼吸拡散能が80%以下に低下しているか、又は肺胞―動脈血の酸素分圧較差の増大がみられ、かつ細菌性肺炎を認めない場合は、カリニ原虫が確認されなくとも、ニューモシスチス・カリニ肺炎と診断してよい。

11 進行性多発性白質脳症

顕微鏡検査もしくはCT又はMRIなどの画像診断法によって診断する。

12 トキソプラズマ脳症(生後1か月以後)

顕微鏡検査によって診断する。

臨床的には、頭蓋内疾患を示唆する局所の神経症状又は意識障害がみられ、かつ、CT又はMRIなどの画像診断で病巣を認め、又はコントラスト薬剤の使用により、病巣が確認できる場合で、かつ、トキソプラズマに対する血清抗体を認めるか、又はトキソプラズマ症の治療によく反応する場合はトキソプラズマ脳症と診断する。

13 化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌による敗血症、肺炎、髄膜炎、骨関節炎又は中耳・皮膚粘膜以外の部位の深在臓器の腫瘍が2年以内に、二つ以上、多発あるいは繰り返し起こったもの)

細菌学的培養によって診断する。

14 コクシジオイデス症(肺、頚部もしくは肺門リンパ節以外に又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)

顕微鏡検査又は培養によるか、患部又はその浸出液からコクシジオイデスを認めることによって診断する。

15 HIV脳症(HIV痴呆、AIDS痴呆又はHIV亜急性脳炎)

就業もしくは日常生活活動に支障をきたす認識もしくは運動障害が臨床的に認められる場合、又は子供の行動上の発達障害が数週から数か月にわたって進行し、HIV感染以外にこれを説明できる疾病や状況がない場合をいう。これらを除外するための検査法としては、脳脊髄液の検査や脳のCT又はMRIなどの画像診断や病理解剖などがある。

これらは、確定的な診断法ではないがサーベイランスの目的のためには十分である。

16 ヒストプラスマ症(肺、頚部もしくは肺門リンパ節以外に、又はそれらの部位に加えて全身に播種したもの)

顕微鏡検査又は培養によるか、患部組織又はその浸出液からヒストプラスマを検出することによって診断する。

17 イソスポラ症(1か月以上続く下痢)

顕微鏡検査によって診断する。

18 非ホジキンリンパ腫(B細胞もしくは免疫学的に未分類で組織学的に切れ込みのない小リンパ球性リンパ腫又は免疫芽細胞肉腫)

ここに挙げたリンパ腫の中にはT細胞性のもの、組織学的な型の記載のないもの、又はリンパ球性、リンパ芽球性、切れ込みのある小リンパ球性もしくは類プラスマ細胞様リンパ球性と記載されたものは含まない。

顕微鏡検査によって診断する。

19 活動性結核(肺結核(13歳以上)又は肺外結核)

細菌学的培養によって診断する。培養結果が得られない場合には、X線写真によって診断する。

20 サルモネラ菌血症(再発を繰り返すもので、チフス菌を除く)

細菌学的培養によって診断する。

21 HIV消耗性症候群

通常の体重の10%を超える不自然な体重減少に加え、慢性の下痢(1日2回以上、30日以上の継続)又は慢性的な衰弱を伴う明らかな発熱(30日以上にわたる持続的もしくは間歇性発熱)があり、HIV感染以外にこれらの症状を説明できる病気や状況(癌、結核、クリプトスポリジウム症や他の特異的な腸炎など)がない場合にHIV消耗性症候群と診断する。これらは確定的な診断法ではないがサーベイランスの目的のためには十分である。

22 反復性肺炎

1年以内に2回以上の急性肺炎が臨床上又はX線写真上認められた場合に診断する。

23 浸潤性子宮頚癌

病理組織学的検査による。