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○特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第3における障害の認定について

(昭和50年9月5日)

(児発第576号)

(各都道府県知事あて厚生省児童家庭局長通知)

今般、特別児童扶養手当等の支給に関する法律等の一部を改正する法律が公布され、昭和50年10月1日から障害の程度が特別児童扶養手当等の支給に関する法律(昭和39年7月2日法律第134号。以下「法」という。)別表第1に定める二級に該当する障害児を新たに特別児童扶養手当の支給対象障害児としたことに伴い、標記の認定要領等を別紙のとおり改正し、昭和50年10月1日から適用することとしたので、この取扱いについて遺憾のないようにされたい。

なお、「重度精神薄弱児扶養手当支給事務に係る児童相談所における判定について」(昭和39年9月8日児発第793号各指定都市の市長あて本職通知)は、昭和50年9月30日限りで廃止する。

おって、管内市町村に対し、周知方お願いする。

別紙

特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第3における障害の認定要領

1 この要領は、特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令(昭和50年7月4日政令第207号。以下「令」という。)別表第3に該当する程度の障害の認定基準を定めたものであること。

2 障害の認定については、次によること。

(1) 法第2条第1項にいう「障害の状態」とは、精神又は身体に令別表第3に該当する程度の障害があり、障害の原因となつた傷病がなおつた状態又は症状が固定した状態をいうものであること。

なお、「傷病がなおつた」については、器質的欠損若しくは変形又は後遺症を残していても、医学的にその傷病がなおれば、そのときをもつて「なおつた」ものとし、「症状が固定した」については、症状が安定するか若しくは回復する可能性が少なくなつたとき又は傷病にかかわりなく障害の状態が固定したときをいうものであり、慢性疾患等で障害の原因となつた傷病がなおらないものについては、その症状が安静を必要とし、当面医療効果が少なくなつたときをいうものであること。

(2) 障害の程度は、令別表第3に定めるとおりであり、国民年金法(昭和34年法律第141号)による障害程度の1級及び2級に相当するものであること。

(3) 内科的疾患に基づく身体の障害及び精神の障害の程度の判定にあたつては、現在の状態、医学的な原因及び経過、予後等並びに日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度等を十分勘案し、総合的に認定を行うこと。

ア 1級

令別表第3に定める「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」とは、精神上若しくは身体上の能力が欠けているか又は未発達であるため、日常生活において常に他人の介助、保護を受けなければほとんど自己の用を弁ずることができない程度のものをいうものであること。

例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲が就床病室内に限られるものであること。

イ 2級

令別表第3に定める「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」とは、他人の助けをかりる必要はないが、日常生活は極めて困難であるものをいうものであること。

例えば、家庭内の極めて温和な活動はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。

(4) 障害の認定は、特別児童扶養手当認定診断書(特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行規則に定める様式第2号)及び特定の傷病に係るエックス線直接撮影写真(以下「診断書等」という。)によつて行うが、これらのみでは認定が困難な場合には必要に応じ療養の経過若しくは日常生活状況等の調査又は必要な検診等を実施したうえ適正な認定を行うこと。

(5) 障害の程度について、その認定の適正を期するため、必要な場合には期間を定めて認定を行うこと。

ア 障害の程度について、その状態の変動することが予測されるものについては、その予測される状態を勘案して認定を行うこと。

イ 精神疾患(知的障害を含む)、慢性疾患等で障害の原因となつた傷病がなおらないものについては、原則として当該認定を行つた日からおおむね2年後に再認定を行うこと。

ウ その他必要な場合には、イにかかわらず適宜必要な期間を定め再認定を行うこと。

なお、この場合は、過去の判定経歴、年齢、育成医療等の受療状況など、障害程度の変動の可能性等を十分に勘案して再認定期間を定めること。

エ 再認定を行う場合は、令和元年5月31日障発0531第4号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「特別児童扶養手当における有期認定の取扱いについて」により行うこと。

(6) 各傷病についての障害の認定は、別添1「障害程度認定基準」により行うこと。

なお、ヒト免疫不全ウイルス感染症に係る障害認定については、「特別児童扶養手当及び特別障害者手当等におけるヒト免疫不全ウイルス感染症に係る障害認定について」(平成10年3月27日障企第24号通知)に定める事項に留意して認定を行うこと。

3 障害の状態を審査する医師について

(1) 都道府県又は指定都市においては、児童の障害の状態を審査するために必要な医師を置くこと。

(2) 障害児の廃疾の状態は、令別表第3の内容からみて、複雑多岐にわたるものであるので、障害の状態を審査する医師には、少なくとも内科、小児科、整形外科及び精神科の診療を担当する医師を加えること。

なお、内科、整形外科及び精神科の診療を担当する医師は、児童扶養手当制度における児童又は児童の父の障害の状態を審査する医師に兼務させても差しつかえないものであること。

4 障害の認定に係る診断書等について

(1) 各傷病についての特別児童扶養手当認定請求書に添付する診断書は、別添2「特別児童扶養手当認定診断書」によること。

(2) 障害児が身体障害者福祉法第15条第4項の規定により身体障害者手帳(以下「手帳」という。)の交付を受けているときは、当該手帳に記載されている障害名及び等級表による級別によつて障害の程度が令別表第3の各号のいずれかに該当することが明らかと判定できる場合は、診断書を添付させることに代えて、特別児童扶養手当認定請求書に手帳に記載されている障害名及び等級表による級別並びに手帳番号を記入せしめ、これによつて認定しても差しつかえないものであること。

なお、認定にあたつて障害の内容等について承知する必要がある場合には、都道府県又は指定都市の手帳関係事務主管課で保管する「身体障害者診断書」によること。

(3) 障害児が療育手帳制度要綱(昭和48年9月27日厚生省発児第156号各都道府県知事、指定都市市長あて厚生事務次官通知の別紙)による療育手帳の交付を受けているときの取扱いについては、障害の程度が「A」と記載されているものは令別表第3の1級に該当するものとして認定してさしつかえないこと。

また、療育手帳に「A」の記載がない場合においても、診断書を作成する医師は、診断書に記載すべき項目の一部が療育手帳取得の際に児童相談所の長が判定に用いた資料(以下「療育手帳取得の際の資料」という。)により明らかである場合は、当該療育手帳取得の際の資料を当該診断書に添付することをもって当該診断書の該当項目の記載を省略することができる。

なお、これらの場合には、特別児童扶養手当認定請求書の備考欄にその旨記入すること。

(4) 提出された診断書等だけでは、認定の可否を決定することができないため、法第36条第2項による再診を必要とする場合には、昭和37年7月9日児発第752号各都道府県知事あて本職通知「児童扶養手当の障害認定にかかる再診の取扱いについて」に準じて行うこと。

(5) 精神の障害に係る認定診断書は、できる限り精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定する精神保健指定医、精神保健福祉センターの医師、児童相談所若しくは知的障害者更生相談所の医師又は精神科の診療に経験を有する医師の作成したものとするよう指導されたいこと。

経過措置(第17次改正)

1 この通知による改正前のそれぞれの通知で定める様式(以下「旧様式」という。)により使用されている書類は、この通知による改正後のそれぞれの通知で定める様式によるものとみなす。

2 旧様式による用紙については、合理的に必要と認められる範囲内で、当分の間、例えば、手書きによる訂正等により、これを取り繕って使用することができることとする。

別添1

特別児童扶養手当 障害程度認定基準

第1節/眼の障害

眼の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

施行令別表第3に定める障害の程度は、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの

一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの

ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの

自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が20点以下のもの

2級

両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの

一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの

ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの

自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下かつ両眼中心視野視認点数が40点以下のもの

身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

2 認定要領

眼の障害は、視力障害と視野障害に区分する。

(1) 視力障害

ア 視力は、万国式試視力表又はそれと同一の原理に基づく試視力表により測定する。

イ 視標面照度は500~1,000ルクス、視力検査室の明るさは50ルクス以上で視標面照度を上回らないこととし、試視力表から5mの距離で視標を判読することによって行う。

ウ 屈折異常のあるものについては、矯正視力により認定するが、この場合最良視力が得られる矯正レンズによって得られた視力を測定する。眼内レンズ挿入眼は裸眼と同様に扱い、屈折異常がある場合は適正に矯正した視力を測定する。

エ 両眼の視力を別々に測定し、良い方の眼の視力と他方の眼の視力とで障害の程度を認定する。

オ 屈折異常のあるものであっても次のいずれかに該当するものは、裸眼視力により認定する。

(ア) 矯正が不能のもの

(イ) 矯正により不等像視を生じ、両眼視が困難となることが医学的に認められるもの

(ウ) 最良視力が得られる矯正レンズの装用が困難である医学的に認められるもの

カ 視力が0.01に満たないもののうち、明暗弁のもの又は手動弁のものは視力0として計算し、指数弁のものは0.01として計算する。

キ 「両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.03以下のものをいう。

ク 「一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.04かつ他方の眼の視力が手動弁以下のものをいう。

ケ 「両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.07以下のものをいう。

コ 「一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの」とは、視力の良い方の眼の視力が0.08かつ他方の眼の視力が手動弁以下のものをいう。

(2) 視野障害

ア 視野は、ゴールドマン型視野計又は自動視野計を用いて測定する。認定は、ゴールドマン型視野計又は自動視野計のどちらか一方の測定結果で行うこととし、両者の測定結果を混在させて認定することはできない。

イ ゴールドマン型視野計を用いる場合は、それぞれ以下によって測定した「周辺視野角度の和」、「両眼中心視野角度」、「求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの」に基づき、認定を行う。なお、傷病名と視野障害の整合性の確認が必要な場合又はⅠ/4の視標で測定不能の場合は、Ⅴ/4の視標を含めた視野を確認した上で総合的に認定する。

(ア) 「周辺視野角度の和」とは、Ⅰ/4の視標による8方向(上・内上・内・内下・下・外下・外・外上の8方向)の周辺視野角度の和とする。8方向の周辺視野角度はⅠ/4視標が視認できない部分を除いて算出するものとする。

Ⅰ/4の視標で、周辺にも視野が存在するが中心部の視野と連続しない部分は、中心部の視野のみで算出する。

Ⅰ/4の視標で、中心10度以内に視野が存在しない場合は、周辺視野角度の和が80度以下として取り扱う。

(イ) 「両眼中心視野角度」とは、以下の手順に基づき算出したものをいう。

a Ⅰ/2の視標による8方向(上・内上・内・内下・下・外下・外・外上の8方向)の中心視野角度の和を左右眼それぞれ求める。8方向の中心視野角度はⅠ/2視標が視認できない部分を除いて算出するものとする。

b aで求めた左右眼の中心視野角度の和に基づき、次式により、両眼中心視野角度を計算する(小数点以下は四捨五入し、整数で表す)。

両眼中心視野角度=(3×中心視野角度の和が大きい方の眼の中心視野角度の和+中心視野角度の和が小さい方の眼の中心視野角度の和)/4

c なお、Ⅰ/2の視標で中心10度以内に視野が存在しない場合は、中心視野角度の和は0度として取り扱う。

(ウ) 「求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるもの」とは、求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標による視野の面積が、中心5度以内の視野の面積と同程度におさまるものをいう。なお、その際、面積は厳格に計算しなくてよい。

ウ 自動視野計を用いる場合は、それぞれ以下によって測定した「両眼開放視認点数」及び「両眼中心視野視認点数」に基づき、認定を行う。

(ア) 「両眼開放視認点数」とは、視標サイズⅢによる両眼開放エスターマンテスト(図1)で120点測定し、算出したものをいう。

(イ) 「両眼中心視野視認点数」とは、以下の手順に基づき算出したものをいう。

a 視標サイズⅢによる10―2プログラム(図2)で中心10度以内を2度間隔で68点測定し、左右眼それぞれについて感度が26dB以上の検査点数を数え、左右眼それぞれの中心視野視認点数を求める。なお、dBの計算は、背景輝度31.5asbで、視標輝度10,000asbを0dBとしたスケールで算出する。

b aで求めた左右眼の中心視野視認点数に基づき、次式により、両眼中心視野視認点数を計算する(小数点以下は四捨五入し、整数で表す)。

両眼中心視野視認点数=(3×中心視野視認点数が多い方の眼の中心視野視認点数+中心視野視認点数が少ない方の眼の中心視野視認点数)/4

(図1)

(図2)

エ ゴールドマン型視野計では、中心30度内は適宜矯正レンズを使用し、30度外は矯正レンズを装用せずに測定する。

自動視野計では、10―2プログラムは適宜矯正レンズを使用し、両眼開放エスターマンテストは矯正眼鏡を装用せずに実施する。

オ 自動視野計を用いて測定した場合において、認定上信頼性のある測定が困難な場合は、ゴールドマン型視野計で測定し、その測定結果により認定を行う。

カ ゴールドマン型視野計又は自動視野計の結果は、診断書に添付する。

キ 「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、求心性視野狭窄又は輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2の視標で両眼の視野がそれぞれ5度以内におさまるものをいう。

(3) 視力障害と視野障害が併存する場合には、併合認定の取扱いを行う。

第2節/聴覚の障害

聴覚の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

施行令別表第3に定める障害の程度は、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの

2級

両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの

身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

2 認定要領

聴覚の障害による障害の程度は、純音による聴力レベル値(純音聴力レベル値)及び語音による聴力検査値(語音明瞭度)により認定する。

(1) 聴力レベルは、オージオメータ(JIS規格又はこれに準ずる標準オージオメータ)によって測定するものとする。

ただし、聴覚の障害により特別児童扶養手当を受給しておらず、かつ、身体障害者手帳を取得していない障害児に対し、1級に該当する診断を行う場合には、オージオメータによる検査に加えて、ABR検査(聴性脳幹反応検査)等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査を実施する。また、その結果(実施した検査方法及び検査所見)を診断書に記載し、記録データのコピー等を提出(添付)するものとする。

(2) 聴力レベルのデシベル値は、話声域すなわち周波数500、1000、2000ヘルツにおける純音の各デシベル値をa,b,cとした場合、次式により算出する。

なお、この算式により得た値が境界値に近い場合には

画像4 (10KB)別ウィンドウが開きます
の算式により得た値を参考とする。

a:周波数500ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

b:周波数1000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

c:周波数2000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

d:周波数4000ヘルツの音に対する純音聴力レベル値

(注) 聴力が純音聴力損失値によって算出されているときは、10デシベルを加算した数値を聴力デシベルにおけるデシベル値として認定する。

(3) 最良語音明瞭度の算出は、次によるものとする。

ア 検査は、録音器又はマイク付オージオメータにより、通常の会話の強さで発声し、オージオメータの音量を適当に強めたり、弱めたりして最も適した状態で行う。

イ 検査語は、語音弁別能力測定用語音集により、2秒から3秒に1語の割合で発声し語音明瞭度を検査する。

なお、語音聴力表は、「57s式語表」あるいは「67s式語表」とする。

ウ 語音明瞭度は、次式により算出し、語音明瞭度の最も高い値を最良語音明瞭度(語音弁別能)とする。

語音明瞭度=正答語音数/検査語数×100(%)

(4) 「身体の機能の障害が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のものをいう。

(5) 聴覚の障害により特別児童扶養手当を受給しておらず、かつ、身体障害者手帳を取得していない障害児の障害の状態が1級に該当する場合は、オージオメータによる検査結果のほか、ABR検査(聴性脳幹反応検査)等の他覚的聴力検査又はそれに相当する検査結果を把握して、総合的に認定する。

(6) オージオメータにより聴力レベルを測定できない乳幼児の聴力の障害による認定については、ABR検査(聴性脳幹反応検査)又はASSR検査(聴性定常反応検査)及びCOR検査(条件詮索反応検査)を組み合わせて実施するものとする。

ア ABR検査(聴性脳幹反応検査)又はASSR検査(聴性定常反応検査)の聴力レベルのデシベル値が両耳とも100デシベル以上、COR検査(条件詮索反応検査)の聴力レベルのデシベル値が100デシベル以上の場合は1級と認定する。

イ ABR検査(聴性脳幹反応検査)又はASSR検査(聴性定常反応検査)の聴力レベルのデシベル値が両耳とも90デシベル以上、COR検査(条件詮索反応検査)の聴力レベルのデシベル値が90デシベル以上の場合は2級と認定する。

なお、ア及びイにより認定した場合は、原則として当該認定を行った日からおおむね2年後に再認定を行うこととする。

第3節/平衡機能の障害

平衡機能の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

施行令別表第3に定める障害の程度は、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

2級

平衡機能に著しい障害を有するもの

2 認定要領

(1) 平衡機能の障害には、その原因が内耳性のもののみならず、脳性のものも含まれる。

(2) 「平衡機能に著しい障害を有するもの」とは、四肢体幹に器質的異常がない場合に閉眼で起立・立位保持が不能又は開眼で直線を歩行中に10メートル以内に転倒あるいは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ない程度のものをいう。

第4節/そしゃく・嚥下機能の障害

そしゃく機能・嚥下機能の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

施行令別表第3に定める障害の程度は、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

2級

そしゃくの機能を欠くもの

2 認定要領

(1) そしゃく・嚥下機能の障害は、歯、顎(顎関節も含む。)、口腔(舌、口唇、硬口蓋、頬、そしゃく筋等)咽頭、喉頭、食道等の器質的、機能的障害(外傷や手術による変形、障害も含む)により食物の摂取が困難なもの、あるいは誤嚥の危険が大きいものである。

(2) そしゃく・嚥下機能の障害の程度は、摂取できる食物の内容、摂取方法によって次のように区分するが、関与する器官、臓器の形態・機能、栄養状態等も十分考慮して総合的に認定する。

ア 「そしゃく・嚥下の機能を欠くもの」とは、流動食以外は摂取できないもの、経口的に食物を摂取することができないもの、及び経口的に食物を摂取することが極めて困難なもの(食餌が口からこぼれ出るため常に手、器物等でそれを防がなければならないもの、または一日の大半を食事に費やさなければならない程度のもの)をいう。

(3) そしゃく機能の障害と嚥下機能の障害は、併合認定の取扱いを行わない。

第5節/音声又は言語機能の障害

音声又は言語機能の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

施行令別表第3に定める障害の程度は、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

2級

音声又は言語機能に著しい障害を有するもの

2 認定要領

(1) 音声又は言語機能の障害とは、発音に関わる機能又は音声言語の理解と表出に関わる機能の障害をいい、構音障害又は音声障害、失語症及び聴覚障害による障害が含まれる。

ア 構音障害又は音声障害

歯、顎、口腔(舌、口唇、口蓋等)、咽頭、喉頭、気管等の発声器官の形態異常や運動機能障害により、発音に関わる機能に障害が生じた状態のものをいう。

イ 失語症

大脳の言語野の後天性脳損傷(脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷や脳炎など)により、一旦獲得された言語機能に障害が生じた状態のものをいう。

ウ 聴覚障害による障害

先天的な聴覚障害により音声言語の表出ができないものや、中途の聴覚障害によって発音に障害が生じた状態のものをいう。

(2) 「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」とは、発音に関わる機能を喪失するか、話すことや聞いて理解することのどちらか又は両方がほとんどできないため、日常会話が誰とも成立しないものをいう。

(3) 構音障害、音声障害又は聴覚障害による障害については、発音不能な語音を評価の参考とする。発音不能な語音は、次の4種について確認するほか、語音発語明瞭度検査等が行われた場合はその結果を確認する。

ア 口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音等)

イ 歯音、歯茎音(さ行、た行、ら行等)

ウ 歯茎硬口蓋音(しゃ、ちゃ、じゃ等)

エ 軟口蓋音(か行音、が行音等)

(4) 失語症については、失語症の障害の程度を評価の参考とする。失語症の障害の程度は、音声言語の表出及び理解の程度について確認するほか、標準失語症検査等が行われた場合はその結果を確認する。

(5) 失語症が、音声言語の障害の程度と比較して、文字言語(読み書き)の障害の程度が重い場合には、その症状も勘案し、総合的に認定する。

(6) 喉頭全摘出手術を施した結果、発音に関わる機能を喪失したものについては、2級と認定する。

(7) 歯のみの障害による場合は、補綴等の治療を行った結果により認定を行う。

(8) 音声又は言語機能の障害(特に構音障害)とそしゃく・嚥下機能の障害とは併存することが多いが、この場合には、併合認定の取扱いを行う。また、音声又は言語機能の障害(特に失語症)と肢体の障害又は精神の障害とは併存することが多いが、この場合についても、併合認定の取扱いを行う。

第6節/肢体の障害

肢体の障害による障害の程度は、上肢の障害、下肢の障害、体幹の障害及び肢体の機能の障害に区分し、次により認定する。

第1 上肢の障害

1 認定基準

上肢の障害については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

両上肢の機能に著しい障害を有するもの

両上肢の全ての指を欠くもの

両上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの

2級

両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの

両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの

一上肢の機能に著しい障害を有するもの

一上肢の全ての指を欠くもの

一上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

2 認定要領

上肢の障害は、機能障害、欠損障害に区分する。

(1) 機能障害

ア 「両上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両上肢の用を全く廃したもの」とは、両上肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

なお、認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

イ 「一上肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一上肢の用を全く廃したもの」とは、一上肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

ウ 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいう。

なお、認定に当たっては、一上肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

エ 「上肢の指の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「上肢の指の用を全く廃したもの」とは、指の著しい変形、麻痺による高度の脱力、関節の不良肢位強直、瘢痕による指の埋没又は不良肢位拘縮等により、指があってもそれがないのとほとんど同程度の機能障害があるものをいう。

オ 「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」とは、両上肢のおや指の用を全く廃した程度の障害があり、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指の用を全く廃した程度の障害があり、そのため両手とも指間に物をはさむことはできても、一指を他指に対立させて物をつまむことができない程度の障害をいう。

カ 「指の用を廃したもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。

(ア) 指の末節骨の長さの2分の1以上を欠くもの

(イ) 中手指関節(MP)又は近位指節間関節(PIP)(おや指にあっては、指節間関節(IP)に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの

キ 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。

(ア) さじで食事をする

(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)

(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)

(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)

(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)

(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

(2) 欠損障害

ア 「上肢の指を欠くもの」とは、基節骨の基部から欠き、その有効長が0のものをいう。「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの」とは、必ず両上肢のおや指を基部から欠き、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指を基部から欠くものである。

イ 「指を失ったもの」とは、おや指については指節間関節(IP)、その他の指については、近位指節間関節(PIP)以上で欠くものをいう。

(3) 関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価

測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。

ア 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については、参考とする。

なお、各関節の主要な運動は次のとおりである。

部位

主要な運動

肩関節

屈曲・外転

肘関節

屈曲・伸展

手関節

背屈・掌屈

前腕

回内・回外

手指

屈曲・伸展

イ 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価する。

ただし、両側に障害を有する場合にあっては、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とする。

ウ 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価する。

(ア) 筋力 (イ) 巧緻性 (ウ) 速さ (エ) 耐久性

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から上肢の障害を総合的に認定する。

(4) 人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは、そう入置換した状態で認定を行うものとする。

第2 下肢の障害

1 認定基準

下肢の障害については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

両下肢の機能に著しい障害を有するもの

両下肢を足関節以上で欠くもの

2級

両下肢の全ての指を欠くもの

一下肢の機能に著しい障害を有するもの

一下肢を足関節以上で欠くもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

2 認定要領

下肢の障害は、機能障害、欠損障害に区分する。

(1) 機能障害

ア 「両下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「両下肢の用を全く廃したもの」とは、両下肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

ただし、両下肢それぞれの膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように、両下肢の3大関節中単に1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その両下肢を歩行時に使用することができない場合には、「両下肢の用を全く廃したもの」と認定する。

なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

イ 「一下肢の機能に著しい障害を有するもの」すなわち「一下肢の用を全く廃したもの」とは、一下肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの、すなわち、次のいずれかに該当する程度のものをいう。

(ア) 不良肢位で強直しているもの

(イ) 関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

(ウ) 筋力が著減又は消失しているもの

ただし、膝関節のみが100度屈曲位の強直である場合のように、単に1関節の用を全く廃するにすぎない場合であっても、その下肢を歩行時に使用することができない場合には、「一下肢の用を全く廃したもの」と認定する。

ウ 「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」とは、両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの)をいう。

なお、認定に当たっては、一下肢のみに障害がある場合に比して日常生活における動作に制約が加わることから、その動作を考慮して総合的に認定する。

エ 「関節の用を廃したもの」とは、関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時(起床より就寝まで)固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいう。

オ 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。

(ア) 片足で立つ

(イ) 歩く(屋内)

(ウ) 歩く(屋外)

(エ) 立ち上がる

(オ) 階段を上る

(カ) 階段を下りる

(2) 欠損障害

ア 「足関節以上で欠くもの」とは、ショパール関節以上で欠くものをいう。

イ 「趾を欠くもの」とは、中足趾節関節(MP)から欠くものをいう。

(3) 関節可動域の測定方法、関節の運動及び関節可動域等の評価

測定方法については、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による。

ア 関節の運動に関する評価については、各関節の主要な運動を重視し、他の運動については、参考とする。

なお、各関節の主要な運動は次のとおりである。

部位

主要な運動

股関節

屈曲・伸展

膝関節

屈曲・伸展

足関節

背屈・底屈

足指

屈曲・伸展

イ 関節可動域の評価は、原則として、健側の関節可動域と比較して患側の障害の程度を評価する。

ただし、両側に障害を有する場合にあっては、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域を参考とする。

ウ 各関節の評価に当たっては、単に関節可動域のみでなく、次の諸点を考慮した上で評価する。

(ア) 筋力 (イ) 巧緻性 (ウ) 速さ (エ) 耐久性

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、上記諸点を考慮し、日常生活における動作の状態から下肢の障害を総合的に認定する。

(4) 人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは、そう入置換した状態で認定を行うものとする。

第3 体幹の障害

1 認定基準

体幹の障害については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

2 認定要領

(1) 体幹の障害

体幹の機能障害は、高度体幹麻痺を後遺した脊髄性小児麻痺、脳性麻痺などによって生じるものである。

ア 「体幹の機能に座っていることができない程度の障害を有するもの」とは、腰掛、正座、あぐら、横すわりのいずれもができないものをいい、「体幹の機能に立ち上ることができない程度の障害を有するもの」とは、臥位又は坐位から自力のみで立ち上れず、他人、柱、杖、その他の器物の介護又は補助によりはじめて立ち上ることができる程度の障害をいう。

イ 「体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの」とは、室内においては、杖、松葉杖、その他の補助用具を必要とせず、起立移動が可能であるが、野外ではこれらの補助用具の助けをかりる必要がある程度の障害をいう。

第4 肢体の機能の障害

1 認定基準

肢体の機能の障害については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

2 認定要領

(1) 肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフィー等)の場合には、本節「第1 上肢の障害」、「第2 下肢の障害」及び「第3 体幹の障害」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によらず、「第4 肢体の機能の障害」として認定する。

(2) 肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。

なお、他動可動域による評価が適切ではないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。

(3) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

1 一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの

2 四肢の機能に相当程度の障害を残すもの

2級

1 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの

2 四肢に機能障害を残すもの

(注) 肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定すること。

なお、肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し、認定すること。

(4) 日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができないが、おおむね次のとおりである。

ア 手指の機能

(ア) つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)

(イ) 握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)

(ウ) タオルを絞る(水をきれる程度)

(エ) ひもを結ぶ

イ 上肢の機能

(ア) さじで食事をする

(イ) 顔を洗う(顔に手のひらをつける)

(ウ) 用便の処置をする(ズボンの前のところに手をやる)

(エ) 用便の処置をする(尻のところに手をやる)

(オ) 上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)

(カ) 上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)

ウ 下肢の機能

(ア) 片足で立つ

(イ) 歩く(屋内)

(ウ) 歩く(屋外)

(エ) 立ち上がる

(オ) 階段を上る

(カ) 階段を下りる

なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱う。

(5) 身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりである。

ア 「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいう。

イ 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。

ウ 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。

第7節/精神の障害

精神の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

精神の障害については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

2級

精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

精神の障害は、多種であり、かつ、その症状は同一原因であっても多様である。

したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する。

2 認定要領

精神の障害は、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」に区分する。

症状性を含む器質性精神障害、てんかんであって、妄想、幻覚等のあるものについては、「A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」に準じて取り扱う。

A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害

(1) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

1 統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの

2 気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの

2級

1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの

2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

(2) 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害の認定に当たっては、次の点を考慮のうえ慎重に行う。

ア 統合失調症は、予後不良の場合もあり、施行令別表第3に定める障害の状態に該当すると認められるものが多い。しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、また、その反面急激に増悪し、その状態を持続することもある。したがって、統合失調症として認定を行うものに対しては、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。

イ 気分(感情)障害は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する。

また、統合失調症等とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(3) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

(4) 人格障害は、原則として認定の対象とならない。

(5) 神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、障害の状態とは評価しない。(その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。)

なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD―10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること。

B 症状性を含む器質性精神障害

(1) 症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む。)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものである。

なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害(以下「精神作用物質使用による精神障害」という。)についてもこの項に含める。

また、症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(2) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの

2級

認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの

(3) 脳の器質障害については、精神障害と神経障害を区分して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合して、全体像から総合的に判断して認定する。

(4) 精神作用物質使用による精神障害

ア アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象とならない。

イ 精神作用物質使用による精神障害は、その原因に留意し、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮する。

(5) 高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会生活に制約があるものが認定の対象となる。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。

なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状の経過を十分考慮する。

また、失語の障害については、「第5節 言語機能の障害」の認定要領により認定する。

(6) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

C てんかん

(1) てんかん発作は、部分発作、全般発作、未分類てんかん発作などに分類されるが、具体的に出現する臨床症状は多彩である。

また、発作頻度に関しても、薬物療法によって完全に消失するものから、難治性てんかんと呼ばれる発作の抑制できないものまで様々である。

さらに、てんかん発作は、その重症度や発作頻度以外に、発作間欠期においても、それに起因する様々な程度の精神神経症状や認知障害などが、稀ならず出現することに留意する必要がある。

(2) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作を極めてひんぱんに繰り返すため、常時の援助が必要なもの

2級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作をひんぱんに繰り返すため、日常生活が著しい制限を受けるもの

(注) てんかんは、発作と精神神経症状及び認知障害が相まって出現することに留意が必要。また、精神神経症状及び認知障害については、前記「B 症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定すること。

(3) てんかんの認定に当たっては、発作のみに着眼することなく、てんかんの諸症状、社会適応能力、具体的な日常生活状況等の他の要因を含め、全体像から総合的に判断して認定する。

様々なタイプのてんかん発作が出現し、発作間欠期に精神神経症状や認知障害を有する場合には、治療及び病状の経過、日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

また、てんかんとその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(4) てんかん発作については、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない。

(5) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

D 知的障害

(1) 知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいう。

(2) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

2級

知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの

なお、この場合における精神発達遅滞の1級と2級の程度を例示すれば、標準化された知能検査による知能指数がおおむね35以下のものが1級に、おおむね50以下のものが2級に相当すると考えられる。

(3) 知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。

また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(4) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

E 発達障害

(1) 発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをいう。

(2) 発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。

また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

(3) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動が見られるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの

2級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動が見られるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの

(4) 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。

第8節/神経系統の障害

神経系統の障害による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

神経系統の障害については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

2 認定要領

(1) 肢体の障害の認定は、本章「第6節 肢体の障害」に示した認定要領に基づいて認定を行う。

(2) 脳の器質障害については、神経障害と精神障害を区別して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合し、全体像から総合的に判断して認定する。

第9節/呼吸器疾患

呼吸器疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

呼吸器疾患の障害については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

呼吸器疾患の障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたり安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

また、呼吸器疾患による障害の認定の対象は、そのほとんどが慢性呼吸不全によるものであり、特別な取扱いを要する呼吸器疾患として肺結核・気管支喘息があげられる。

2 認定要領

呼吸器疾患は、肺結核と呼吸不全に区分する。

A 肺結核

(1) 肺結核による障害の程度は、病状判定及び機能判定により認定する。

(2) 肺結核の病状による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値等)、排菌状態(喀痰等の塗抹、培養検査等)、一般状態、治療及び病状の経過、年齢、合併症の有無及び程度、具体的な日常生活状況等により総合的に認定する。

(3) 病状判定により各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

認定の時期前6ヵ月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会病型分類(以下「学会分類」という。)のⅠ型(広汎空洞型)又はⅡ型(非広汎空洞型)、Ⅲ型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、長期にわたる高度の安静と常時の介助を必要とするもの

2級

1 認定の時期前6ヵ月以内に排菌がなく、学会分類のⅠ型若しくはⅡ型又はⅢ型で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

2 認定の時期前6ヵ月以内に排菌があり、学会分類のⅢ型で病巣の拡がりが1(小)又は2(中)であるもので、かつ、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの

(4) 肺結核に他の結核又は他の疾病が合併している場合は、その合併症の軽重、治療法、従来の経過等を勘案した上、具体的な日常生活状況等を十分考慮して、総合的に認定する。

(5) 肺結核及び肺結核後遺症の機能判定による障害の程度は、「B 呼吸不全」の認定要領によって認定する。

B 呼吸不全

(1) 呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と動脈血CO2分圧が異常で、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいう。

認定の対象となる病態は、主に慢性呼吸不全である。

慢性呼吸不全を生ずる疾患は、閉塞性換気障害(肺気腫、気管支喘息、慢性気管支炎等)、拘束性換気障害(間質性肺炎、肺結核後遺症、じん肺等)、心血管系異常、神経・筋疾患、中枢神経系異常等多岐にわたり、肺疾患のみが対象疾患ではない。

(2) 呼吸不全の主要症状としては、咳、痰、喘鳴、胸痛、労作時の息切れ等の自覚症状、チアノーゼ、呼吸促迫、低酸素血症等の他覚所見がある。

(3) 検査成績としては、動脈血ガス分析値、予測肺活量1秒率及び必要に応じて行う運動負荷肺機能検査等がある。

(4) 動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の異常の程度を参考として示すと次のとおりである。

なお、動脈血ガス分析値の測定に当たっては、安静時室内空気下により行うものとする。

A表 動脈血ガス分析値

区分

検査項目

単位

中等度異常

高度異常

1

動脈血O2分圧

Torr

60~56

55以下

2

動脈血CO2分圧

Torr

51~59

60以上

(注) 病状判定に際しては、動脈血O2分圧値を重視する。

B表 予測肺活量1秒率

検査項目

単位

中等度異常

高度異常

予測肺活量1秒率

30~21

20以下

(5) 呼吸不全による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもあり、軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としており、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 呼吸不全による各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

前記4のA表及びB表の検査成績が高度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの

2級

前記4のA表及びB表の検査成績が中等度異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

なお、呼吸不全の障害の程度の判定は、A表の動脈血ガス分析値を優先するが、その他の検査成績等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(7) 慢性気管支喘息については、症状が安定している時期においての症状の程度、使用する薬剤、酸素療法の有無、検査所見、具体的な日常生活状況などを把握して、総合的に認定することとし、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

最大限の薬物療法を行っても発作強度が大発作となり、無症状の期間がなく一般状態区分表のウに該当する場合であって、予測肺活量1秒率が高度異常(測定不能を含む)、かつ、動脈血ガス分析値が高度異常で常に在宅酸素療法を必要とするもの

2級

呼吸困難を常に認める。常時とは限らないが、酸素療法を必要とし、一般状態区分表のイ又はアに該当する場合であって、経口ステロイド薬の連用を必要とするもの

(注1) 上記表中の症状は、的確な喘息治療を行い、なおも、その症状を示すものであること。

(注2) 喘息は疾患の性質上、肺機能や血液ガスだけで重症度を弁別することには無理がある。このため、臨床症状、治療内容を含めて総合的に判定する必要がある。

(注3) 「喘息+肺気腫(COPD)」あるいは、「喘息+肺腺維症」については、呼吸不全の基準で認定する。

(8) 常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中のものについては、原則として2級と認定する。

(9) 原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患については、前記(4)のA表及び認定時の具体的な日常生活状況等によって、総合的に認定する。

第10節/心疾患

心疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

心疾患については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

心疾患による障害の程度は、呼吸困難、心悸亢進、尿量減少、夜間多尿、チアノーゼ浮腫等の臨床症状、X線、心電図等の検査成績、一般状態、治療及び病状の経過等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) この節に述べる心疾患とは、心臓だけではなく、血管を含む循環器疾患を指すものである。

心疾患による障害は、先天性心疾患、心筋・心膜疾患、後天性弁疾患、難治性不整脈、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)に区分する。

(2) 心疾患の障害等級の認定は、最終的には心臓機能が慢性的に障害された慢性心不全の状態及び低酸素状態(チアノーゼ)を評価することである。この状態は先天性心疾患や後天性弁疾患、心筋・心膜疾患などのあらゆる心疾患の終末像である。この末期像には手術後も含まれる。

慢性心不全とは、心臓のポンプ機能の障害により、体の末梢組織への血液供給が不十分となった状態を意味する。左心室、右心室双方の障害を考慮に入れなければならない。左心室系の障害により、動悸や息切れ、肺うっ血による呼吸困難、チアノーゼなどが、右心室系の障害により、全身倦怠感や浮腫、尿量減少、頸静脈怒張などの症状が出現する。

先天性心疾患では、これらに加え、単心室機能障害、右左短絡による低酸素状態、フォンタン循環による慢性心不全などが加わる。

(3) 心疾患の主要症状としては、胸痛、動悸、呼吸困難、失神等の自覚症状、浮腫、チアノーゼ、持続する咳嗽、喘鳴、低酸素(チアノーゼ)発作等の他覚所見がある。

臨床所見には、自覚症状(心不全に基づく)と他覚所見があるが、後者は医師の診察により得られた客観的症状なので常に自覚症状と連動しているか否かに留意する必要がある(以下、各心疾患に同じ)。

ただし、乳幼児の場合、精神発達遅滞が併存する場合は、この限りではない。重症度は、心電図、心エコー図・カテーテル検査、動脈血ガス分析値(酸素飽和度は経皮酸素飽和度での代用可能)も参考とする。

(4) 検査成績としては、血液検査(BNP値)、心電図、心エコー図、胸部X線写真、X線CT、MRI等、核医学検査、循環動態検査、心カテーテル検査(心カテーテル法、心血管造影法、冠動脈造影法等)等がある。

(5) 肺血栓塞栓症、肺動脈性肺高血圧症は、心疾患による障害として認定する。

(6) 心血管疾患が重複している場合には、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定する。

(7) 心疾患の検査での異常検査所見を一部示すと、次のとおりである。

区分

異常検査所見

LevineⅢ度以上の器質的雑音が認められるもの

安静時の心電図において、0.2mV以上のSTの低下もしくは年齢に見合わない異常陰性T波の所見のあるもの

負荷心電図などで明らかな心筋虚血所見があるもの

胸部X線上で心胸郭係数60%以上又は明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫のあるもの

心電図で明らかな右室肥大、左室肥大または両室肥大所見があるもの

心電図で、重症な頻脈性又は徐脈性不整脈所見のあるもの

体心室(体血圧を維持する心室)の駆出率(EF)40%以下のもの

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が200pg/mL相当を超えるもの

重症冠動脈狭窄病変で左主幹部又は右冠動脈(S1から3)に50%以上の狭窄、あるいは、3本の主要冠動脈に75%以上の狭窄を認めるもの

心電図で陳旧性心筋梗塞所見があり、かつ、今日まで狭心症状を有するもの

経皮酸素飽和度が90%以下であるもの

(注1) 原則として、異常検査所見があるもの全てについて、それに該当する心電図等を提出(添付)させること。

(注2) 「キ」についての補足

心不全の原因には、収縮機能不全と拡張機能不全とがある。

近年、心不全症例の約40%はEF値が保持されており、このような例での心不全は左室拡張不全機能障害によるものとされている。しかしながら、現時点において拡張機能不全を簡便に判断する検査法は確立されていない。左室拡張末期圧基準値(5―12mmHg)をかなり超える場合、パルスドプラ法による左室流入血流速度波形を用いる方法が一般的である。この血流速度波形は急速流入期血流速度波形(E波)と心房収縮期血流速度波形(A波)からなり、E/A比が1.5以上の場合は、重度の拡張機能障害といえる。ただし、15歳未満はこれを適応しない。

(注3) 「ケ」についての補足

すでに冠動脈血行再建が完了している場合を除く。

(8) 心疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもあり、軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としており、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(9) 前記(7)のいずれか2つ以上の異常検査所見があり、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの、又は乳児で著しい体重増加の障害(標準体重の80%以下のもの)を1級と、(7)のいずれか1つの異常検査所見があり、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するものを2級と認定する。

(10) 各疾患によって用いられる検査が異なっており、また、特殊検査も多いため、診断書上に適切に症状をあらわしていると思われる検査成績が記載されているときは、その検査成績も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

第11節/腎疾患

腎疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

腎疾患については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

腎疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、人工透析療法の実施状況、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 腎疾患による障害の認定の対象はそのほとんどが、慢性腎不全に対する認定である。

慢性腎不全とは、慢性腎疾患によって腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいう。

すべての腎疾患は、長期に経過すれば腎不全に至る可能性がある。その原因となる腎疾患の中で最も多いものは、先天性腎尿路奇形、遺伝性腎障害であるが、他にも巣状糸球体硬化症、先天性ネフローゼ症候群、多発性嚢胞腎、慢性腎炎、糖尿病性腎症、膠原病、急性腎障害後の慢性腎不全等がある。

(2) 腎疾患の主要症状としては、悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛等の自覚症状、浮腫、貧血、アシドーシス、発育障害等の他覚所見がある。

(3) 検査としては、尿検査、血球算定検査、血液生化学検査(血清尿素窒素、血清クレアチニン、血清電解質、血清シスタチンC等)、血液ガス分析、推算糸球体濾過値(eGFR)、腎生検等がある。

(4) 病態別に検査項目及び異常値の一部を示すと次のとおりである。

① 慢性腎不全

区分

検査項目

単位

中等度異常

高度異常

内因性クレアチニンクリアランス

ml/分

15以上30未満

15未満

eGFR

ml/分

15以上30未満

15未満

(注) 小児において血清クレアチニン基準値が低く、年齢や性別でも基準値が異なることから、日本小児腎臓病学会による日本人小児のeGFR計算法を用いてeGFRを算出すること。

内因性クレアチニンクリアランスは、最も正確な測定法であるイヌリンクリアランスによる糸球体濾過値(GFR)よりも高値に出てしまう傾向があるため、イが30未満の時には中等度異常と取り扱うことも可能とする。

② ネフローゼ症候群

区分

検査項目

単位

異常

血清アルブミン

g/dl

2.5以下

早朝尿蛋白/クレアチニン比

g/gクレアチニン

2.0以上

夜間尿蓄尿蛋白量

mg/hr/m2

40以上

(5) 腎疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもあり、軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としており、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

1 前記(4)①の検査成績が高度異常を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のウに該当するもの

2 前記(4)②の検査成績のうちアが異常を示し、かつ、イ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの

2級

1 前記(4)①の検査成績が中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

2 前記(4)②の検査成績のうちアが異常を示し、かつ、イ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

3 人工透析療法施行中のもの

(7) 人工透析療法施行中のものについては、原則として2級と認定する。

なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

(8) 検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、腎疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとする。

(9) 糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、多発性嚢胞腎、腎盂腎炎、先天性腎尿路奇形、遺伝性腎障害、巣状糸球体硬化症、先天性ネフローゼ症候群、急性腎障害等に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。

(10) 腎疾患は、その原因疾患が多岐にわたり、それによって生じる臨床所見、検査所見も、また様々なので、前記(4)の検査成績によるほか、合併症の有無とその程度、他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考として、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して総合的に認定する。

(11) 腎臓移植の取扱い

ア 腎臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 特別児童扶養手当を支給されている児童が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

第12節/肝疾患

肝疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

肝疾患については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

肝疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 肝疾患による障害の認定の対象は、慢性肝炎と慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症及びそれに付随する病態(食道・胃などの静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝がんを含む。)である。

肝硬変では、一般に肝は萎縮し肝全体が高度の線維化のため硬化してくる。

肝硬変の原因として、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスによるウイルス性慢性肝炎やその他自己免疫性肝炎による肝硬変、胆道閉鎖症及びその手術後が原因となった胆汁うっ滞型肝硬変、代謝性肝硬変(ウイルソン病、ヘモクロマトーシス)等がある。

(2) 肝疾患の主要症状としては、易疲労感、全身倦怠感、腹部膨満感、発熱、食欲不振、悪心、嘔吐、皮膚そう痒感、吐血、下血、有痛性筋痙攣等の自覚症状、肝萎縮、脾腫大、浮腫、腹水、黄疸、腹壁静脈怒張、食道・胃静脈瘤、肝性脳症、出血傾向等の他覚所見がある。

(3) 検査成績としては、まず、血球算定検査、血液生化学検査が行われるが、さらに、血液凝固系検査、免疫学的検査、超音波検査、CT・MRI検査、腹腔鏡検査、肝生検、上部消化管内視鏡検査等が行われる。

(4) 肝疾患での重症度判定の検査項目及び臨床所見並びに異常値の一部を示すと次のとおりである。

検査項目/臨床所見

基準値

中等度の異常

高度異常

血清総ビリルビン(mg/dl)

0.3~1.2

2.0以上3.0以下

3.0超

血清アルブミン(g/dl)

(BCG法)

4.2~5.1

3.0以上3.5以下

3.0未満

血小板数(万/μl)

13~35

5以上10未満

5未満

プロトロンビン時間(PT)(%)

70超~130

40以上70以下

40未満

腹水

腹水あり

難治性腹水あり

脳症(表1)

Ⅰ度

Ⅱ度以上

表1 昏睡度分類

昏睡度

精神症状

参考事項

睡眠―覚醒リズムの逆転

多幸気分ときに抑うつ状態

だらしなく、気にとめない態度

あとでふり返ってみて判定できる

指南力(時、場所)障害、物をとり違える(confusion)

異常行動

ときに傾眠状態(普通のよびかけで開眼し会話ができる)

無礼な言動があったりするが、他人の指示に従う態度をみせる

興奮状態がない

尿便失禁がない

羽ばたき振戦あり

しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる

嗜眠状態(ほとんど眠っている)

外的刺激で開眼しうるが、他人の指示に従わない、または従えない(簡単な命令には応じえる)

羽ばたき振戦あり

(患者の協力がえられる場合)

指南力は高度に障害

昏睡(完全な意識の消失)

痛み刺激に反応する

刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどがみられる

深昏睡

痛み刺激にも全く反応しない


(5) 肝疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(6) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

前記(4)の検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの又は高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの

2級

前記(4)の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

なお、障害の程度の判定に当たっては、前記(4)の検査成績及び臨床所見によるほか、他覚所見他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(7) 検査成績は、その性質上変動しやすいので、肝疾患の経過中において、最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとする。

(8) 食道・胃などの静脈瘤については、吐血・下血の既往、治療歴の有無及びその頻度、治療効果を参考とし、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて、総合的に認定する。特発性細菌性腹膜炎についても、同様とする。

(9) 肝がんについては、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて肝がんによる障害を考慮し、本節及び「第15節/悪性新生物」の認定要領により認定する。ただし、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常がない場合は、第15節の認定要領により認定する。

(10) 肝臓移植の取扱い

ア 肝臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 特別児童扶養手当を支給されていた児童が、肝臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

第13節/血液・造血器疾患

血液・造血器疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

血液・造血器疾患については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

血液・造血器疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び症状の経過等(薬物療法による症状の消長の他、薬物療法に伴う合併症等)、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 血液・造血器疾患は、臨床像から血液・造血器疾患を次のように大別する。

ア 赤血球系・造血不全疾患(再生不良性貧血、溶血性貧血等)

イ 血栓・止血疾患(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)

ウ 白血球系・造血器腫瘍疾患(白血病、悪性リンパ腫、組織球症等)

(2) 血液・造血器疾患の主要症状としては、顔面蒼白、易疲労感、動悸、息切れ、発熱、頭痛、めまい、知覚異常、紫斑、月経過多、骨痛、関節痛等の自覚症状、黄疸、心雑音、舌の異常、易感染性、出血傾向、血栓傾向、リンパ節腫脹、肝腫、脾腫、成長・発達の障害等の他覚所見がある。

(3) 検査としては、血球算定検査、血液生化学検査、免疫学的検査、鉄代謝検査、骨髄穿刺、リンパ節生検、骨髄生検、凝固系検査、染色体検査、遺伝子検査、細胞表面抗原検査、画像検査(CT検査・超音波検査、MRI検査など)等がある。

(4) 血液・造血器疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもあり軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としており、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(5) 各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

A表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅰ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの

2級

A表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があり、B表Ⅱ欄に掲げるうち、いずれか1つ以上の所見があるもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

ア 赤血球系・造血不全疾患(再生不良性貧血、溶血性貧血等)

A表

区分

臨床所見

1 高度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの

2 輸血をひんぱんに必要とするもの

1 中度の貧血、出血傾向、易感染性を示すもの

2 輸血を時々必要とするもの

B表

区分

検査所見

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) ヘモグロビン濃度が7.0g/dL未満のもの

(2) 網赤血球数が2万/μL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) 白血球数が1,000/μL未満のもの

(2) 好中球数が500/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が2万/μL未満のもの

1 末梢血液中の赤血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) ヘモグロビン濃度が7.0g/dL以上9.0g/dL未満のもの

(2) 網赤血球数が2万/μL以上6万/μL未満のもの

2 末梢血液中の白血球像で、次のいずれかに該当するもの

(1) 白血球数が1,000/μL以上3,000/μL未満のもの

(2) 好中球数が500/μL以上1,000/μL未満のもの

3 末梢血液中の血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

イ 血栓・止血疾患(血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症等)

A表

区分

臨床所見

1 高度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの

2 補充療法をひんぱんに行っているもの

1 中度の出血傾向、血栓傾向又は関節症状のあるもの

2 補充療法を時々行っているもの

(注) 補充療法は、凝固因子製剤(代替医薬品やインヒビター治療薬の投与を含む。)の輸注、血小板の輸血、新鮮凍結血漿の投与などを対象にする。

B表

区分

検査所見

1 APTT又はPTが基準値の3倍以上のもの

2 血小板数が2万/μL未満のもの

3 凝固因子活性が1%未満のもの

1 APTT又はPTが基準値の2倍以上3倍未満のもの

2 血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

3 凝固因子活性が1%以上5%未満のもの

(注1) 凝固因子活性は、凝固第〔Ⅱ・Ⅴ・Ⅶ・Ⅷ・Ⅸ・Ⅹ・ⅩⅠ・ⅩⅢ〕因子とフォンヴィレブランド因子のうち、最も数値の低い一因子を対象にする。

(注2) 血栓疾患、凝固因子欠乏症でインヒビターが出現している状態及び凝固第Ⅰ因子(フィブリノゲン)が欠乏している状態の場合は、B表(検査所見)によらず、A表(臨床所見)、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定する。

ウ 白血球系・造血器腫瘍疾患(白血病、悪性リンパ腫、組織球症等)

A表

区分

臨床所見

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染性、肝脾腫等の著しいもの

2 輸血をひんぱんに必要とするもの

3 治療に反応せず進行するもの

1 発熱、骨・関節痛、るい痩、貧血、出血傾向、リンパ節腫脹、易感染性、肝脾腫等のあるもの

2 輸血を時々必要とするもの

3 継続的な治療が必要なもの

(注1) A表に掲げる治療とは、疾病に対する治療であり、輸血などの主要な症状を軽減するための治療(対症療法)は含まない。

(注2) A表に掲げる治療に伴う副作用による障害がある場合は、その程度に応じて、A表の区分を判断すること。

B表

区分

検査所見

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が7.0g/dL未満のもの

2 末梢血液中の血小板数が2万/μL未満のもの

3 末梢血液中の正常好中球数が500/μL未満のもの

4 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μL未満のもの

1 末梢血液中のヘモグロビン濃度が7.0g/dL以上9.0g/dL未満のもの

2 末梢血液中の血小板数が2万/μL以上5万/μL未満のもの

3 末梢血液中の正常好中球数が500/μL以上1,000/μL未満のもの

4 末梢血液中の正常リンパ球数が300/μL以上600/μL未満のもの

(6) 検査成績は、その性質上変動しやすいものであるので、血液・造血器疾患による障害の程度の判定に当たっては、最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて行うものとする。

特に、輸血や補充療法により検査数値が一時的に改善する場合は、治療前の検査成績に基づいて行うものとする。

(7) 血液・造血器疾患の病態は、各疾患による差異に加え、個人差も大きく現れ、病態によって生じる臨床所見、検査所見も、また様々なので、認定に当たっては前記(5)のA表及びB表によるほか、他の一般検査、特殊検査及び画像診断等の検査成績、病理組織及び細胞所見、合併症の有無とその程度、治療及び病状の経過等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(8) 造血幹細胞移植の取扱い

ア 造血幹細胞移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、移植片対宿主病(GVHD)の有無及びその程度、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 慢性GVHDについては、日本造血細胞移植学会(ガイドライン委員会)において作成された「造血細胞移植ガイドライン」における慢性GVHDの臓器別スコア及び重症度分類を参考にして、認定時の具体的な日常生活状況を把握し、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に認定する。

ウ 特別児童扶養手当の支給対象となっている障害児が造血幹細胞移植を受けた場合は、移植片が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

<参考>「造血細胞移植ガイドライン」より抜粋

表6 慢性GVHDの臓器別スコア


スコア0

スコア1

スコア2

スコア3

皮膚

無症状

<18%BSA,硬化病変なし

19~50%BSAあるいは浅在性硬化病変(つまみあげられる)

>50%BSAあるいは深在性硬化病変(つまみあげれない)

口腔

無症状

軽症,経口摂取に影響なし

中等症,経口摂取が軽度障害される

高度障害,経口摂取が高度に障害される

無症状

軽度dry eye。日常生活に支障なし(点眼1日3回まで),無症状の角結膜炎

中等度dry eye。日常生活に軽度支障あり(点眼1日4回以上),視力障害なし

高度dry eye。日常生活に高度支障あり,眼症状のため労働不可,視力障害

消化管

無症状

嚥下困難,食欲低下,嘔気,嘔吐,腹痛,下痢,5%以上の体重減少を伴わない。

5~15%の体重減少を伴う消化器症状

15%以上の体重減少を伴う消化器症状あるいは食道拡張

無症状

Bil,ALP,AST,ALTの正常上限の2倍以内の上昇

Bil>3mg/dLあるいはBil,他の酵素の正常上限の2~5倍の上昇

Bil,他の酵素の正常上限の5倍以上の上昇

無症状

FEV1*1>80%or LFS*2=2

階段昇降時息切れ

FEV1:60~79%or LFS:3~5

歩行時息切れ

FEV1:40~59%or LFS:6~9

安静時息切れ

FEV1<39%or LFS:10~12

関節・筋膜

無症状

日常生活に影響しない軽度の拘縮,可動制限

日常生活に支障のある拘縮,可動制限,筋膜炎による紅斑

日常生活に高度支障をきたす拘縮,可動制限

(靴紐結び,ボタンがけ,着衣など不能)

性器

無症状

内診で軽度異常あるが軽度不快程度で性交痛なし

内診で中等度異常あり,不快あり

内診で高度異常あり,内診不応,性交痛あり

*1FEV1;% predicted,*2LFS:Lung Function Score;FEV score + DLCO score.

FEV score,DLCO scoreはともに>80%=1,70~79%=2,60~69%=3,50~59%=4,40~49%=5,30~39%=6

慢性GVHDの重症度は,各臓器別にスコアリングを行い,決定する。

慢性GVHD(移植片対宿主病)の全般的重症度(NIH)

● 軽症

1か所あるいは2か所の臓器障害で各臓器スコアが1を超えない、かつ肺病変を認めない。

● 中等症

① 3か所以上の臓器障害を認めるが、各臓器スコアは1を超えない。

② 肺以外の1臓器以上でスコア2の障害を認める。

③ スコア1の肺病変

のいずれか

● 重症

① 少なくとも1つの臓器でスコア3の臓器障害を認める。

② スコア2あるいは3の肺病変

のいずれか

付記

皮膚:スコア2以上の皮膚病変を認める場合に全般的重症度に換算される。

肺:FEV1を全般的重症度の換算に用いる。

はっきりとしたGVHD以外の原因による臓器障害がある場合には、その臓器は換算しない。

GVHDを含む複数の原因による臓器障害である場合は、そのまま換算する。

第14節/代謝疾患

代謝疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

代謝疾患については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

代謝疾患による障害の程度は、合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状態治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 代謝疾患は、糖代謝、脂質代謝、蛋白代謝、尿酸代謝、その他の代謝の異常に分けられる。

(2) 糖尿病による障害の程度は、合併症の有無及びその程度、代謝のコントロール状態治療及び症状の経過、具体的な日常生活状況等を十分考慮し、総合的に認定する。

(3) 糖尿病は、血糖が治療、一般生活状態の規制等によりコントロールされている場合には認定の対象とならない。

但し、インスリン療法の自己管理が出来ない場合は認定の対象とする。

(4) 代謝疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもあり、軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としており、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(5) その他の代謝疾患は、合併症の有無及びその程度、治療及び症状の経過、一般検査及び特殊検査の検査成績、認定時の具体的な日常生活状況等を十分考慮して、総合的に認定する。

第15節/悪性新生物

悪性新生物による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

悪性新生物については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

悪性新生物による障害の程度は、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考にして、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) 悪性新生物は、全身のほとんどの臓器に発生するため、現れる病状は様々であり、それによる障害も様々である。

(2) 悪性新生物の検査には、一般検査の他に、組織診断検査、腫瘍マーカー検査、超音波検査、X線CT検査、MRI検査、血管造影検査、内視鏡検査等がある。

(3) 悪性新生物による障害は、次のように区分する。

ア 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)によって生ずる局所の障害

イ 悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)による全身の衰弱又は機能の障害

ウ 悪性新生物に対する治療の結果として起こる全身衰弱又は機能の障害

(4) 悪性新生物による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもあり、軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としており、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(5) 悪性新生物による障害の程度は、基本的には認定基準に掲げられている障害の状態を考慮するものであるが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のウに該当するもの

2級

衰弱又は障害のため、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの

(6) 悪性新生物そのものによるか又は悪性新生物に対する治療の結果として起こる障害の程度は、本章各節の認定要領により認定する。

(7) 悪性新生物による障害の程度の認定例は、(5)に示したとおりであるが、全身衰弱と機能障害とを区別して考えることは、悪性新生物という疾患の本質から、本来不自然なことが多く、認定に当たっては組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像診断等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果などを参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(8) 転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係があるものと認められる。

第16節/その他の障害

その他の疾患による障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

その他の疾患については、次のとおりである。

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

その他の障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとし、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状があり、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1) その他の疾患は、「第1節/眼の障害」から「第15節/悪性新生物」において取り扱われていない疾患を指すものであるが、本節においては、腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症、人工肛門・新膀胱、遷延性植物状態、いわゆる難病及び臓器移植の取扱いを定める。

(2) 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症

ア 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症とは、胃切除によるダンピング症候群等、短絡的腸吻合術による盲管症候群、虫垂切除等による癒着性腸閉塞又は癒着性腹膜炎、短腸症候群、腸ろう等をいう。

イ 腹部臓器・骨盤臓器の術後後遺症の障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、原疾患の性質、進行状況、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとする。

(3) 人工肛門・新膀胱

次のものは2級と認定する。

ア 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設したもの又は尿路変更術を施したもの

イ 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にあるもの

なお、全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等により総合的に判断し、さらに上位等級に認定する。

(4) 遷延性植物状態については、次により取り扱う。

ア 遷延性植物状態については、日常生活の用を弁ずることができない状態であると認められるため、1級と認定する。

イ 障害の程度を認定する時期は、その障害の状態に至った日から起算して3月を経過した日以後に、医学的観点から、機能回復がほとんど望めないと認められるときとする。

(5) いわゆる難病については、その発病の時期が不定、不詳であり、かつ、発病は緩徐であり、ほとんどの疾患は、臨床症状が複雑多岐にわたっているため、その認定に当たっては、客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定するものとする。

なお、厚生労働省研究班や関係学会で定めた診断基準、治療基準があり、それに該当するものは、病状の経過、治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(6) 臓器移植の取扱い

ア 臓器移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過及び検査成績等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 障害等級に該当するものが、臓器移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間、少なくとも1年間は従前の等級とする。

(7) 障害の程度は、一般状態が次表の一般状態区分表のウに該当するものは1級に、同表のイ又はアに該当するものは2級におおむね相当するので、認定に当たっては、参考とする。

一般状態区分表

区分

一般状態

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助のいることもあり、軽い運動はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としており、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(8) 「第1節/眼の障害」から「第15節/悪性新生物」及び本節に示されていない障害及び障害の程度については、その障害によって生じる障害の程度を医学的に判断し、最も近似している認定基準の障害の程度に準じて認定する。

第17節/重複障害

身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合の障害の程度は、次により認定する。

1 認定基準

障害の程度

障害の状態

1級

身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

2級

身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であって、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

2 認定要領

(1) 施行令別表第3の2級に該当する程度の機能障害が2以上あるときは、施行令別表第3の1級に該当するものとする。

(2) 病状と機能障害が重複する場合又は病状が重複する場合には、その状態が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめるときは、施行令別表第3の1級に該当するものとする。

(3) 機能障害又は病状が重複する場合(前記1の場合を除く。)において、その状態が日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものであるときは、施行令別表第3の2級に該当するものとする。

なお、障害の併合認定については、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」の第2章「併合等認定基準」及び「身体障害者福祉法の合併認定」を参考とするものとする。

別添2

特別児童扶養手当認定診断書 略