添付一覧
○福祉手当制度の創設について
(昭和五〇年八月一三日)
(社更第一一二号)
(各都道府県知事あて厚生省社会局長通達)
標記については、昭和五○年八月一三日厚生省社第七四二号厚生事務次官通知をもつてその大綱が示されたところであるが、同制度の実施にあたつては、同通知によるほか、次の事項に留意のうえ、適正な実施を期せられたい。
なお、この通知において、改正後の特別児童扶養手当等の支給に関する法律を「法」と、特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令を「令」と、また、新たに制定された福祉手当の支給に関する省令を「規則」とそれぞれ略称する。
第一 事務の委任
福祉手当制度における手当支給の実施機関は、受給資格者の住所地を所管する福祉事務所を管理する都道府県知事又は市町村長とされているが、この制度は、重度障害者に対する福祉の措置の一環として、身体障害者福祉法、児童福祉法、精神薄弱者福祉法等による援護の措置と相まつて実施されることが望ましいと思料されるので、受給資格の認定、手当の支払い等の支給事務は、法第三十八条第二項に定めるところにより、原則として、その管理に属する福祉事務所の長に委任し、制度の円滑な運用を図られたいこと。
第二 受給資格の認定
一 認定請求手続の簡素化等
福祉手当に係る受給資格認定の請求については、原則として、規則第二条の規定により、福祉手当認定請求書に医師の診断書等所定の書類を添付して行うものであるが、事務の簡素化、請求者の負担の軽減を図るため、次に掲げる範囲内で可能な限り添付書類等を省略して差しつかえないこと。
(一) 医師の診断書の省略
ア 次のいずれかに該当する場合であつて、その障害の原因、症状等からみて、その後の障害の程度に変化が生じていないと認められるときは、福祉手当認定診断書の省略を認めて差しつかえないこと。
(ア) 一級又は二級の身体障害者手帳(二級の身体障害者手帳所持者については、当該手帳の障害名の欄の記載により、その者の障害の程度が福祉手当の支給要件に該当することが明らかな場合に限る。)については、当該手帳の提示があつたとき。
(イ) 特別福祉手当の受給対象障害(児)者については、当該手当証書の提示があつたとき。
(ウ) 福祉手当の受給者であつて、施設への入所、他の実施機関の所管する区域への住所の変更等により受給資格を喪失した後再び支給要件に該当するに至つたものについては、福祉手当の受給者であつたこと及び受給資格喪失の事由が障害の程度にかかるものでないことを証明する書類の提示があつたとき。
イ 次に掲げるものについては、当該各制度における障害の程度についての判定の基礎となつた診断書等を確認することが可能であつて、当該診断書等によりその者の障害の程度が福祉手当の支給要件に該当することが明らかであり、かつ、その後の障害の程度に変化が生じていないと認められるときは、本制度による認定診断書の省略を認めて差しつかえないこと。
(ア) 二級の身体障害者手帳所持者(アの(ア)に該当する者を除く。)
(イ) 障害福祉年金(一級)受給者
(ウ) 特別児童扶養手当(一級)の受給対象障害児
(エ) 療育手帳所持者(重度の記号表示があるものに限る。)
(二) 住民票の写しの省略
実施機関において、住民基本台帳その他の公簿を確認することにより、受給資格者の国籍、住所及びその属する世帯の状況を把握できるときは、住民票の写しの省略を認めて差しつかえないこと。
(三) 所得状況に関する市町村長の証明書の省略
次のいずれかに該当する場合は、所得状況等に関する市町村長の証明書の省略を認めて差しつかえないこと。
ア 市又は福祉事務所を設置する町村の区域内に住所を有する受給資格者に係る所得の状況等について、当該市町村長が課税台帳その他の公簿により確認できるとき
イ 福祉事務所を設置しない町村の区域内に住所を有する受給資格者に係る所得の状況等について実施機関が当該町村長の協力を得て課税台帳その他の公簿により確認できるとき
二 福祉手当認定診断書の作成
福祉手当認定診断書を提出する必要がある者に係る認定診断書の作成は、身体障害者更生相談所、児童相談所、精神薄弱者更生相談所又は当該相談所が行う巡回相談等を利用し若しくは身体障害者福祉法に規定する指定医師又は該当する障害等に係る専門医が作成したものとするよう指導されたいこと。
三 障害程度の認定
障害程度の認定は、別途通知する「福祉手当の障害程度認定基準」及び次により行うこと。
(一) 次に掲げる者については、障害の程度に関し受給資格を有するものとして認定して差しつかえないこと。
ア 一級の身体障害者手帳所持者
イ 二級の身体障害者手帳所持者で、当該手帳の記載内容からその者の障害の程度が福祉手当の支給要件に該当していることが明らかに判断できる場合
ウ 特別福祉手当受給対象障害(児)者
エ 法第一七条第三号及び規則第一条に定める施設への入所、住所の変更等障害の程度に係るものではない事由により受給資格を喪失した者が再び支給要件に該当した場合
(二) 障害程度の認定にあたつては、医学的専門的判断を必要とする場合が多いと考えられるので実施機関においては、必要に応じ、審査に当る医師を嘱託し、その意見を求め、適正な認定を行うこと。
(三) 実施機関において障害程度の認定を行うことが困難な事例については、都道府県本庁に協議することとし、制度の適切、かつ、統一的運用を図ること。
(四) 都道府県知事は、障害程度の認定について実施機関から協議があつた場合は、当該障害の程度に関し、身体障害者更生相談所、児童相談所、精神薄弱者更生相談所等の協力を得て適切な判定を行うこと。
なお、障害程度の認定等に関する不服申立てについては、地方社会福祉審議会の身体障害者福祉専門分科会に福祉手当部会を設ける等の方法により慎重に審査すること。
第三 手当の支払
一 手当の支払方法
手当の支払方法等については、特に定められていないが、受給者が重度の障害者であること等にかんがみ、地域の実情、受給者の便宜等を十分勘案のうえ、次に掲げる方法を併用する等、手当の円滑な支払いが行われるよう配意すること。
ア 実施機関における窓口支払い
イ 金融機関等の口座振替
ウ 金融機関等への支払事務委託
エ 郵送
オ 町村における支払い等
二 手当の支払いの開始期日
支払い月における手当の支払いの開始期日は、各実施機関において特定の日(その日が日曜、祝日又は金融機関等を通じて支払う場合は毎月第二土曜日であるときは翌日とする。)を定めて行うこと。
なお、支払いの開始期日は、支払月の初旬における適当と認める日とすること。
三 支払額の調整
誤認定等により、手当を支給すべきでないにもかかわらず手当が支給された場合にあつては、その支払われた手当は、その後支払うべき手当の内払いとみなして調整を行つて差しつかえないこと。
なお、内払調整すべき期間が長期にわたる等の場合にあつては、安易に調整を行うようなことはせず、調整額に相当する手当額を返納させる等事務処理の適正を期すこと。
四 時効
福祉手当を受ける権利は、手当の支払期月到来後二年を経過した時点で消滅するものであること。
この場合における時効の起算日は、実施機関において定められた当該支払期月の支払の開始期日であり、時効が完成するのは、当該支払開始期日から二年を経過した日であること。
第四 その他の留意事項
一 届出の励行等
(一) 法及び規則に定める各種の届出の励行については、受給資格の認定時その他の機会を通じて十分指導を行い、届出を怠つている者に対しては、届出を行うよう指導すること。
(二) 受給者が定時の所得状況届の提出を怠つているために所得の状況等について確認できないときは、その届出が提出されるまでの間、手当の支給を差し止めること。
二 調査資料の提出等
(一) 実施機関は、福祉手当の受給資格等について疑義があるときは、速やかに所要の調査若しくは診断を行い、又は、資料の提出等を求め、受給資格の確認を行うこと。
(二) 実施機関は、町村その他の関係機関と密接な連携を図り、受給者が受給資格を喪失したことを確認したときは、死亡届又は受給資格喪失届の提出がない場合であつても遅滞なく支給廃止の手続をとること。
三 関係機関との連携
福祉手当の受給資格の認定にあたつては、公的年金等の受給状況、施設への入所状況の確認、他制度に基づく手帳、証書等の活用など他制度と密接な関連を有する場合が少なくないので、これらの内容を十分承知するとともに、これらの制度の担当機関と十分連携を図るよう管下実施機関を指導すること。
四 町村長に対する協力依頼
都道府県の設置する福祉事務所においては特に次の事項について町村長の協力が必要と考えられるので、あらかじめ町村長にその協力を依頼し、手当支給事務の円滑な実施が図られるよう特段の配意を煩わしたいこと。
(一) 認定請求書等の町村役場への備えつけ
認定請求書等受給資格の認定請求その他の届出に必要な書類について町村役場への備えつけ及び請求者からの提出書類の受付、実施機関への送付
(二) 所得状況等の確認
認定請求時及び定時の所得状況等の確認及び証明
(三) 町村役場における手当の支払い
実施機関からの資金前渡を受けて、当該町村に住所地を有する受給者に対する手当の支払い
五 制度の周知徹底
福祉手当制度の実施にあたり、各実施機関は関係町村、民生(児童)委員、身体障害者相談員、精神薄弱者相談員等の協力を得て制度の周知徹底に努め、手当の支給に遺漏がないよう配意すること。
特に、特別福祉手当の受給対象障害者については、本制度の実施に伴い特別福祉手当制度が廃止されることとなるので、その取扱いに特段の配意を煩わしたいこと。