添付一覧
○児童自立生活援助事業の実施について
(平成一〇年四月二二日)
(児発第三四四号)
(各都道府県知事、指定都市市長あて厚生省児童家庭局長通知)
義務教育終了後、児童養護施設等を退所し、就職する児童等の社会的自立を促進する事業として、昭和六三年五月二〇日付本職通知「自立相談援助事業の実施について」に基づき「自立相談援助事業」が実施されてきたところであるが、今般、施設退所後の児童等に対する支援の強化のため、児童福祉法(昭和二二年法律第一六四号。)の改正により、同事業を「児童自立生活援助事業」とし児童居宅生活援助事業の一類型として法定化するとともに、「児童自立生活援助事業実施要綱」を別紙の通り定め、平成一〇年四月一日より適用することとしたので、その適正かつ円滑な実施を図られたく通知する。
なお、本通知の施行に伴い、昭和六三年五月二〇日付本職通知「自立相談援助事業の実施について」は廃止する。
(別紙)
児童自立生活援助事業実施要綱
第1 目的
児童自立生活援助事業は、児童の自立支援を図る観点から、義務教育終了後、児童養護施設、児童自立支援施設等を退所し、就職する児童等に対し、これらの者が共同生活を営むべき住居(以下「自立援助ホーム」という。)において、相談その他の日常生活上の援助及び生活指導並びに就業の支援(以下「援助の実施」という。)を行い、あわせて援助の実施を解除された者への相談その他の援助を行うことにより、社会的自立の促進に寄与することを目的とする。
第2 児童自立生活援助事業者
児童自立生活援助事業者(以下「事業者」という。)は、地方公共団体及び社会福祉法人等であって都道府県知事(指定都市にあっては、指定都市の市長とし、児童相談所設置市にあっては、児童相談所設置市の市長とする。以下同じ。)が適当と認めた者とする。
第3 対象児童
この事業の対象児童は、義務教育を終了した20歳未満の児童等(以下「児童」という。)であって、次の各号のいずれかに該当するものとして、都道府県により児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)第33条の6第1項の規定に基づき援助の実施が必要とされたものとする。
① 小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託する措置又は児童養護施設、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させる措置を解除されたもの
② 前号に規定する児童以外の児童であって、都道府県知事が当該児童の自立のために援助及び生活指導等が必要と認めたもの
第4 対象人員
自立援助ホームの入居定員は、5人以上20人以下とし、当該自立援助ホームの運営規程で定めるものとする。
第5 自立援助ホームの設備等
(1) 日常生活を支障なく送るために必要な設備を有し、職員が入居児童に対して適切な援助及び生活指導を行うことができる形態であること。
(2) 個々の入居児童の居室の床面積は、一人当たり4.95m2以上とすること。なお、一居室当たりの入居児童はおおむね2人までとすること。また、男子と女子は別室とすること。
(3) 居間、食堂等入居児童が相互交流することができる場所を有していること。
(4) 保健衛生及び安全について配慮されたものでなければならないこと。
第6 事業内容
この事業は、児童が自立した生活を営むことができるよう、当該児童の身体及び精神の状況並びにその置かれている環境に応じて適切な援助及び生活指導等を行うものであり、その内容は次に掲げるものとする。
① 就労への取り組み姿勢及び職場の対人関係についての援助・指導
② 対人関係、健康管理、金銭管理、余暇活用、食事等日常生活に関することその他自立した日常生活及び社会生活を営むために必要な相談・援助・指導
③ 職場を開拓するとともに、安定した職業に就かせるための援助・指導及び就労先との調整
④ 児童の家庭の状況に応じた家庭環境の調整
⑤ 児童相談所及び必要に応じて市町村、児童家庭支援センター、警察、児童委員、公共職業安定所等関係機関との連携
⑥ 自立援助ホームを退居した者に対する生活相談など
第7 職員
(1) 自立援助ホームごとに、指導員(主として児童自立生活援助に携わる者)及び管理者を置かなければならない。ただし、管理者は指導員が兼ねることができる。
(2) 指導員は次のとおり配置することとする。
① 入居定員(暫定定員が設定されている場合は暫定定員とする。以下同じ。)が6人以下の場合は指導員を3人以上配置する。ただし、指導員を2人以上配置している場合には残りを補助員(指導員を補助する者)をもって代えることができる。
② 入居定員が7人以上の場合は指導員を4人以上配置することとし、以降入居定員が7人から3人増える毎に指導員を1人加えて得た人数以上とする。ただし、下記の指導員数から1を減じた数以上指導員が配置されている場合には、残りの員数を補助員をもって代えることができる。
【指導員の配置(単位:人)】
入居定員 |
6まで |
7~9 |
10~12 |
13~15 |
16~18 |
19以上 |
指導員数 (補助員を含む) |
3以上 |
4以上 |
5以上 |
6以上 |
7以上 |
8以上 |
必置指導員数 |
2以上 |
3以上 |
4以上 |
5以上 |
6以上 |
7以上 |
③ 指導員は、入居定員に応じて、①又は②を満たす配置とする必要があることから、入居定員に対応する人数の指導員を配置することができない場合は、入居定員を見直し、又は暫定定員を設定するものとする。
(3) 指導員は、児童の自立支援に熱意を有し、次の①から④までのいずれか及び⑤に該当する者をもって充てるものとする。補助員は⑤に該当する者とする。
① 児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号)第43条に定める児童指導員の資格を有する者
② 法第18条の4に定める保育士
③ 児童福祉事業及び社会福祉事業に2年以上従事した者
④ ①~③に準ずる者として、都道府県知事が適当と認めた者
⑤ 法第34条の19第1項各号の規定に該当しない者
第8 申込み、入居及び退居時の取扱い等
(1) 都道府県は、その区域内における児童の自立を図るため必要がある場合において、児童から援助の実施について申込みがあったときは、援助及び生活指導等を行わなければならない。
(2) 援助の実施を希望する児童は、申込書を都道府県に提出しなければならない。この場合、事業者は入居を希望する児童からの依頼を受けて、この児童に代わって都道府県に申込書の提出を行うことができる。
(3) 都道府県は、(1)により援助の実施を行う時、変更又は解除する時は、事業者の意見を聞かなければならない。
(4) 特別な事情により事業者の所在する都道府県以外の都道府県が、援助の実施を行う時あるいは変更又は解除する必要があると認める時は、事業者の所在する都道府県に協議するものとする。
(5) 都道府県は、市町村等から援助の実施が適当であると認める児童について報告を受けた場合は、必要があると認めるときは、その児童に対し申込みを勧奨しなければならない。
(6) 都道府県は、児童福祉法施行規則(昭和23年厚生省令第11号)第36条の27に基づき、その区域内における事業者の名称、場所、入居に関すること等について、当該情報を自由に利用できるよう、インターネットの活用や児童相談所や施設にリーフレットを配布する等により情報提供を行わなければならない。ただし、自立援助ホームの位置に関する情報にあっては、当該自立援助ホームに係る入居者の安全の確保のため必要があると認めるときは、自立援助ホームへの入居を希望する児童又はその依頼を受けた者が直接その提供を受ける方法で行うものとする。
(7) 都道府県は、法第56条第2項の規定により、入居児童本人から、その負担能力に応じて、本事業の実施に要する費用の一部を徴収することができる。
(8) 事業者は、入居児童が死亡したとき、援助の実施を変更又は解除する必要があると認める場合は、これを都道府県に報告するものとする。
第9 実施に当たっての事業者の留意事項
事業者は、運営方針、職員の職務内容、児童への援助内容、金銭管理の方法、入居児童の権利擁護に関する事項等、児童福祉法施行規則第36条の12に規定する運営規程を定めるとともに、次に掲げる事項に留意し適切に事業を実施しなければならない。
(1) 児童の内面の悩みや生育環境、現在の状況に対する深い理解に基づき、児童との信頼関係の上に立って援助及び生活指導等を行うこと。
(2) 児童相談所、福祉事務所、児童福祉施設、児童委員、児童の雇用先事業所、公共職業安定所、学校及び児童の家庭等と密接に連携をとり、児童に対する援助及び生活指導等が円滑かつ効果的に実施されるよう努めること。
(3) 援助及び生活指導等を行うに当たっては、児童及び保護者の意向を把握し懇切を旨とするとともに、秘密保持について十分留意すること。
(4) 特に、虐待などを受けた経験から人間関係がうまく築けないなどにより自立に向けた指導が必要な児童に対し、就労先の開拓や住居の確保、警察等関係機関との調整、退所者のトラブル相談などに対応している場合には一層の体制整備を図ること。
(5) 事業者は、児童の権利擁護及び虐待の防止を図るため、次に掲げる措置を講じること。
① 職員に対し、入居児童に虐待等を行ってはならない旨、徹底しなければならない。
② 責任者を設置する等必要な体制の整備を行うとともに、職員に対し研修を実施する等の措置を講じなければならない
③ 援助に関する児童等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない
④ 苦情の公正な解決を図るために、苦情の解決に当たっては、その職員以外の者を関与させなければならない
⑤ 自らその提供する援助の質の評価を行うとともに、定期的に外部の者による評価を受けて、それらの結果を公表し、常にその改善を図るよう努めなければならない
(6) 都道府県からの求めに応じ、入居児童の状況等について、定期的(6ヶ月に1回以上)に調査を受けること。
(7) 入居児童の所持する物の保管を行う場合には、あらかじめ、運営規程に保管の方法等を定めるとともに入居児童に説明し、同意を得ること。また、保管の状況を月に1回以上入居児童に知らせること。
なお、事業者は、入居児童の金銭や通帳等を保管するに当たっては、民法上の財産管理権を有しているものではないため、入居児童の同意を得ずに取り扱うことがないよう留意すること。
(8) その他、児童福祉法施行規則の規定を遵守し、児童が自立した日常生活及び社会生活を営むことができるよう、適切な援助及び生活指導等を行うこと。
第10 入居児童の費用負担及び適切な経理処理
(1) 事業者は、援助の実施に要する費用のうち、食事の提供及び居住に要する費用その他の日常生活で通常必要になるもので入居児童に負担させることが適当と認められる費用については、入居児童に負担させることができるものとする。
(2) 入居児童に負担させることができる額は、運営規程に定めた額以下とし、あらかじめ入居児童に知らせ、同意を得なければならない。また、当該額は、入居児童の経済状況等に十分配慮した額としなければならない。
(3) 入居児童に費用を負担させた場合は、適正に処理するとともに、これに関連する諸帳簿を整備しなければならない。
第11 経費
本事業の運営に関する経費は、「児童福祉法による児童入所施設措置費等国庫負担金について」(平成11年4月30日厚生省発児第86号厚生事務次官通知)によるものとする。
第12 その他
都道府県知事は、虐待を受けた児童等の緊急の避難先(子どもシェルター)として児童等が共同生活を営むべき住居において相談その他の日常生活上の援助等を行う事業がこの要綱に定める要件を満たす場合は、当該住居を自立援助ホームとし、援助の実施を委託することができるものである。