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○養護施設入所児童のうち中学校卒業後就職する児童に対する措置の継続等について
(昭和六三年三月二九日)
(児発第二六六号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省児童家庭局長通知)
近年の社会の高学歴化に伴い、中学校を卒業して就職する児童を取り巻く社会環境はますます厳しくなつている。
とりわけ、養護施設を退所して就職する児童については、退所後のよりどころとなる家庭に恵まれないことから、就職後、比較的短期間のうちに離職する傾向がみられる。
このような現状に鑑み、養護施設入所児童のうち中学校卒業後就職する児童等について、一定期間入所措置を継続し、自立の促進を図ることとしたので、次の事項に留意のうえ、管下関係機関及び養護施設の指導に遺漏のないよう配意願いたい。
なお、里親委託児童についても同様に取り扱われたい。
記
第一 措置の継続について
一 趣旨
就職後の一定期間は環境の変化等により、精神的にも不安定な期間である。就職する児童にとつては、施設退所と同時に就労し、自活するということはまつたく新しい経験であり、この新しい環境に直ちに対応することは容易なことではなく、ささいなことがつまずきの原因となり離職につながることが多い。
したがつて、就職後一定期間は要養護性が依然として高いことから、この期間を職場定着のための訓練期間と位置づけ、措置を継続し、施設から通勤させ、その間施設職員が引き続き適切な助言・指導を行うことにより、児童の社会的自立を促進することを目的とする。
二 対象児童
養護施設入所児童及び里親委託児童のうち中学校を卒業した後、施設及び里親家庭から通勤可能な地域に就職する児童であつて、なお引き続き助言・指導が必要とされる児童とする。
三 措置継続の期間
措置継続の期間は引き続き助言・指導が必要とされる期間であつて、就職後概ね六か月程度とする。
四 実施方法
(一) 養護施設長及び里親(以下「施設長等」という。)は措置の継続が必要とされる児童が就職する少なくとも一か月前に都道府県知事又は指定都市の市長(措置をとる権限を児童相談所長に委任している場合には管轄の児童相談所長とする。以下「都道府県知事等」という。)に措置継続の協議を行うものとする。
(二) 協議を受けた都道府県知事等は速やかに措置継続の適否を判定し、当該施設長等にその適否を通知するものとする。
(三) 都道府県知事等は措置継続をした児童の実態把握に努めるものとする。
五 助言・指導内容
児童に対する助言・指導は就労への取組の姿勢、職場の対人関係、余暇の活用、金銭の管理、健康管理等について行うものとする。
六 実施に当たつての留意事項
(一) 当該児童と他の入所児童とは生活形態も異なり、また生活体験の差異も日々大きくなることが考えられるので、他の入所児童との関係において、その処遇に関して、施設長等は十分配慮すること。
(二) 施設長等は当該児童の職場とは連絡を密にし、措置継続の趣旨について十分理解を求めることが必要である。また、措置継続が終了するときには、円滑なる退所ができるよう特に配慮すること。
(三) 当該児童の就労によつて得た金銭については、児童福祉施設最低基準(昭和二三年厚生省令第六三号)第四五条第四項の規定に準じて取り扱うものとする。
七 費用
措置継続については、当該施設の入所定員の範囲内で行うこととし、措置費の支弁の対象であること。
第二 再措置について
都道府県知事等は措置を解除し就職した後、何らかの理由により離職し、自立するに至つていない児童等について、再び養護に欠ける状態にある場合には、児童相談所の児童福祉司による訪問指導や一時保護の活用及び施設職員による訪問指導を充実させることにより、養護に欠ける状態の解消を図ることが重要であり、更に必要な場合には、各養護施設の理解と協力を得て、再措置に努めること。