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○里親等家庭養育運営要綱の実施について

(昭和六二年一〇月三一日)

(児発第九〇一号)

(各都道府県知事、各指定都市市長あて厚生省児童家庭局長通知)

里親等家庭養育運営要綱については、昭和六二年一〇月三一日厚生省発児第一三八号「里親等家庭養育の運営について」により厚生事務次官から各都道府県知事及び各指定都市市長あて通達されたところであるが、その実施に際しては特に次の事項に留意し、遺憾のないよう努められたい。

なお、昭和四九年九月一七日児発第五九六号本職通知「短期里親の運用について」の前文を「短期里親制度については、基本的には通常の里親制度の一環として、昭和六二年一〇月三一日厚生省発児第一三八号厚生事務次官通知「里親等家庭養育の運営について」及び昭和六二年一〇月三一日児発第九〇一号本職通知「里親等家庭養育運営要綱の実施について」により運用されるものであるが、一時的な委託という性格を考慮し、次の事項に留意して遺憾のないよう努められたい。」と改める。

第一章 里親制度

第一 里親制度の運営機関について

一 児童相談所長は、福祉事務所長、児童委員、児童福祉施設の長をはじめ、里親会その他児童に関し相談に応ずる事業を行う社会福祉法人等の民間団体(以下「民間団体」という。)と緊密に連絡を保ち、里親制度が適正に実施されるよう努めること。

児童相談所長から協力等を依頼された、福祉事務所長、児童委員、児童福祉施設の長等は、誠実に対応すること。

二 都道府県知事から児童を里親に委託する権限の委任を受けた児童相談所長は、必要と思われる事項につき都道府県知事に報告すること。

第二 里親制度の普及について

都道府県知事は、自ら又は児童相談所長等公的機関を通じて、広報活動を行うことはもちろんのこと、民間団体と積極的に協力して広報等の活動を行うことが望ましいこと。

第三 里親の認定等について

一 里親の申込みがあつた場合、児童相談所長は、直ちに児童福祉司等をその家庭に派遣し、又は福祉事務所長若しくは児童委員に調査委嘱を行う等の措置を採り、次に掲げる調査を行つた上、その適否を明らかにする書類を里親申込書に添付して、都道府県知事に送付すること。

(一) 里親申込者についての調査事項

ア 住所、氏名、年齢、性別、経歴、職業

イ 里親申込みに至つた動機、児童養育の熱意及び方針

ウ 健康状態(健康診断を必要とすると思われるときは、保健所、病院又は診療所の健康診断書を提出させること。)

(二) 里親申込者の家庭についての調査事項

ア 家族の氏名、年齢、性別、里親申込者との続柄、経歴、職業又は就学状況

イ 家族の児童養育に対する考え方

ウ 家族の健康状態(健康診断を必要とすると思われるときは、保健所、病院又は診療所の健康診断書を提出させること。)

エ 家庭の経済状態

オ 住居の状況

(三) 近隣の地域的、社会的状況

(四) その他必要と思われる事項

二 都道府県知事が、里親としての認定を行うに当たつては、里親申込み後速やかに認定の適否につき都道府県児童福祉審議会(児童福祉法(昭和二二年法律第一六四号)第八条第二項ただし書きに規定する都道府県にあつては、地方社会福祉審議会。以下同じ。)の意見を聴くこと。なお、知識、経験を有する等児童を適切に養育できると認められるものについては、必ずしも両親がそろつていなくとも、里親として認定して差し支えないこと。

三 都道府県知事は、里親申込者に対して里親として認定する旨又は認定しない旨を遅滞なく通知すること。

四 里親が、里親認定を辞退する場合は、児童相談所長を経て、都道府県知事に、遅滞なくその理由を付して届け出なければならないこと。

五 都道府県知事が、再認定を行うに当たつて、それを適当と認める場合には、都道府県児童福祉審議会にその旨を報告すること。また、里親として認定しておくことを不適当と認める場合には、同審議会の意見を聴くこと。

六 都道府県知事が里親の認定を取り消す場合は、その旨を本人に遅滞なく通知すること。

第四 委託について

一 児童相談所長は、児童福祉法等の規定により通告若しくは送致された児童又は相談のあつた児童につき、必要な調査、判定を行つた結果、その児童を里親に委託することが適当であると認めた場合、これを都道府県知事に報告すること。

二 児童相談所長は、絶えず管轄区域内の児童福祉施設と密接な連絡をとり、その実情に精通するとともに、当該施設において入所保護を受けている児童のうち里親委託を適当とする児童がいた場合には、その児童につき必要な調査、判定を行い、措置を行つた都道府県知事に報告すること。

三 都道府県知事は、児童を里親に委託する場合、児童福祉法施行令(昭和二三年政令第七四号)第九条の六の規定に基づき、児童福祉司等の中から一人を指名して当該里親の指導をさせるとともに、必要に応じて、児童福祉法第二七条第一項第二号の規定に基づき、児童委員に、児童福祉司等と協力して、当該里親の指導をさせること。

四 都道府県知事は、児童を里親に委託する場合、里親に対し、養育上必要な事項及び指導を担当する児童福祉司、児童委員等(以下「指導担当者」という。)の名前を記載した書類を、児童相談所を経て交付すること。

五 虚弱な児童、身体の機能の不自由な児童、精神薄弱の児童等を里親に委託する場合には、知識、経験を有する等それらの児童を適切に養育できると認められる里親に委託すること。

六 里親の家庭において養育される児童の総数は、現に里親と起居を共にする児童を含めておおむね六人以下とすること。

七 都道府県知事は、現に児童を養育している里親にさらに他の児童の養育を委託する場合には、指導担当者等の意見を聴いて、児童を委託すること。

八 都道府県知事は、児童が兄弟姉妹である等必要と認められる場合には、同時の措置によつて、一の里親に対して二人以上の児童を委託して差し支えないこと。

九 児童の伯父、伯母等(叔父、叔母を含む。)に児童を委託できる特別の事情のある場合とは、その児童を施設に入所させるか又は他の里親に委託するよりも、その伯父、伯母等の養育によつて児童の養育がより適正に行われる場合であり、かつ、その伯父、伯母等が生活保護法の適用を受ける等その児童を養育する資力に乏しい場合に限ること。

一〇 里親に乳児又は幼児を委託する場合、児童相談所長は保護者に対し、母子健康手帳を里親に渡すよう指導すること。また、児童又は児童の保護者が母子健康手帳の交付を受けていない場合は、里親に対し、交付を受けるよう指導すること。

第五 里親家庭における養育について

一 里親は児童を養育するに際して、次の点に留意すること。

(一) 里親は、児童に対して自己の子に比し差別的な取扱いをしてはならないこと。

(二) 里親は、学齢期にある児童については、学校教育法(昭和二二年法律第二六号)の規定に基づき通学させ、学習を援助すること。

(三) 里親は、児童を酷使し又は児童の保健、教育その他の児童の福祉上好ましくない用務に使つてはならないこと。

(四) 里親は、児童の健康に十分注意し、異常のあるときは、直ちに適切な処置を採ること。

二 里親は、児童の養育に関し問題が生じ又は生じるおそれがある場合は、指導担当者に連絡し、児童相談所等の公的機関又は民間団体に相談等を行い、児童が健全に育成されるよう努めること。

三 里親は、住所移転、その他里親の状況につき重要な変更を生じた場合、又は児童に重大な事故が発生した場合は、遅滞なく指導担当者に連絡し、児童相談所長を経て、都道府県知事に届け出ること。また、児童が一八歳に至つた場合も同様であること。

四 里親又は児童にやむを得ない事由があつて、児童の養育を継続し難い場合は、里親は遅滞なく理由を付してその旨を指導担当者に連絡し、児童相談所長を経て、都道府県知事に届け出ること。

第六 里親等への指導について

一 都道府県知事は、指導担当者に、定期的に里親家庭を訪問させるなど、里親に対する指導をさせること。

二 児童相談所長は、里親の指導に関して、指導担当者に必要な助言を与えること。

三 指導担当者は、訪問等により里親に対し指導した事項を児童相談所長に報告し、必要があれば、都道府県知事に報告すること。

四 児童の養育に関し適当でないことを発見し必要な助言を与えたにもかかわらず、なお里親がこれを遵守しない場合は、指導担当者は、児童相談所長を経て、都道府県知事に意見を添えて報告すること。

五 都道府県知事は、指導担当者に定期的に親権者、後見人等と連絡させるなど、児童の家庭復帰が円滑に行われるよう努めること。

第七 都道府県間の連絡について

一 都道府県知事は、他の都道府県に居住する里親に児童を委託しようとする場合は、当該都道府県知事に、児童に関する必要な書類を送付して、その児童に適合する里親のあつせんを依頼すること。

依頼を受けた都道府県知事は、適当な里親を選定し、その里親に関する必要な書類を、依頼した都道府県知事に送付し、里親にその旨を通知すること。

書類の送付を受けた都道府県知事は、適当と認められる場合は、その書類に基づいて、これを行うこと。

二 都道府県知事は、都道府県内に居住する里親に委託する適当な児童がいない場合は、里親に関する必要な書類を他の都道府県知事に送付することが望ましい。この場合、里親にその旨を通知すること。

書類の送付を受けた都道府県知事が、その里親に対し児童を委託しようとする場合は、その書類に基づいてこれを行うこと。

三 都道府県知事は、児童を委託した里親が当該都道府県に居住していない者である場合又は他の都道府県に住所の移転を行つた場合は、関係書類を送付して、里親の居住地の都道府県知事に当該里親の指導を依頼するとともに、里親にその旨を告げること。この場合、里親は居住地の都道府県知事の指導監督に服し、第五の三及び四の場合には、居住地の都道府県知事に届け出ること。

四 指導を依頼された都道府県知事が里親委託の措置に影響を及ぼすと認める事実を知つた場合は、直ちに児童を委託した都道府県知事にその旨を連絡すること。

第二章 養子縁組

第一 養子縁組の概要について

養子縁組には、民法第七九二条以下において規定する養子縁組(以下「普通養子縁組」という。)と民法第八一七条の二以下において規定する特別養子縁組とがあるものであること。

一 普通養子縁組

(一) 未成年者を養子とするには、原則として、養子となるべき者の居住地の家庭裁判所の許可を受けなければならないこと。

(二) 後見人が被後見人を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならないこと。

(三) 養子となる者が一五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わつて、縁組の承諾をすることができること。この場合、養子となる者の父母でその監護をすべき者が他にあるときは、その同意を得なければならないこと。

(四) 尊属又は年長者を養子とすることはできないこと。

(五) 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、原則として配偶者とともにしなければならないこと。

二 特別養子縁組

(一) 養親となるべき者の居住地の家庭裁判所の審判により、養子と実方の父母及びその血族との親族関係を終了させる特別養子縁組を成立させることができる。この場合において、養親となる者が養子となる者を六か月以上の期間監護した状況を考慮するものであること。

(二) 特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときは、これを成立させるものであること。

(三) 特別養子縁組の成立には、原則として養子となるべき者の父母の同意がなければならないこと。ただし、父母がその意志を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでないこと。

(四) 養子となるべき者は、六歳未満でなければならないこと。ただし、その者が八歳未満であつて六歳に達する前から引き続き養親となるべき者に監護されている場合はこの限りでないこと。

(五) 養親となる者は、配偶者のある者でなければならないこと。また、夫婦の一方は、他の一方が養親とならない場合は、原則として養親となることができないこと。

(六) 二五歳に達しない者は、養親となることができないこと。ただし、養親となる夫婦の一方が二五歳に達していない場合においても、その者が二〇歳に達しているときは、この限りでないこと。

第二 養子縁組のあつせんに関する手続について

一 児童相談所長は、養子縁組希望者及び児童につき調査、認定をした後、養子縁組当事者として適当な者がある場合は、次に掲げる手続により進めること。ただし、この場合、養子縁組希望者に児童を少なくとも六か月以上里親として養育することを勧めることが適当であること。

二 児童相談所長は、里親委託の要件に該当しない等の事情により里親委託を行わない場合には、養子縁組希望者に対し児童福祉法第三〇条第一項に規定する同居児童の届出を行うよう指導し、都道府県知事に対し同法第二七条第一項第二号の措置を要すると認める旨報告する等、里親の場合と同等の指導体制を採ること。

三 児童相談所長は、児童の戸籍がないか又は判明しない場合は、戸籍法(昭和二二年法律第二二四号)の定めるところにより必要な手続を採ること。

四 児童相談所長は、児童が一五歳未満で法定代理人がいない場合は、民法第八四一条の規定により児童の居住地の家庭裁判所に対し後見人選任の手続を採ること。

五 普通養子縁組の場合

児童相談所長は、児童が一五歳以上であつて普通養子縁組を希望しているか、又は児童が一五歳未満であつてその法定代理人(児童福祉施設の長を含む。)等が児童の普通養子縁組を希望している場合であつてそれが適当と判断されるときには、普通養子縁組のあつせんを行うこと。ただし、この場合でも普通養子縁組に対する家庭裁判所の許可が必要であること。

六 特別養子縁組の場合

児童相談所長は、児童が六歳未満であり、かつその児童の父母(養父母を含む。)が児童の特別養子縁組に同意している場合等であつてそれが適当と判断されるときには、特別養子縁組のあつせんを行うこと。ただし、この場合でも特別養子縁組に対する家庭裁判所の審判が必要であること。

第三 離縁の訴について

児童が一五歳未満であつて、普通養子縁組の結果が児童のため適当でないことを発見し養親が協議上の離縁をしない場合は、家庭裁判所により離縁後に子の後見人となるべく選任された児童相談所長は、離縁の訴を提起することができること。

なお、児童相談所長は特別養子縁組の離縁の訴を提起することはできないこと。

第四 都道府県間の連絡について

二の都道府県にまたがる養子縁組のあつせんについては、里親に関する都道府県間の連絡についての規定を準用すること。

第五 家庭裁判所との連絡について

一 児童相談所があつせんした養子縁組又は里親に委託した児童が養子縁組を結ぶ場合には、当該養子縁組をあつせんした児童相談所又は里親委託の措置を採つた児童相談所が中心となつて家庭裁判所と連絡を行うこと。

二 一以外の場合については、児童の居住地を管轄する児童相談所が中心となって家庭裁判所と連絡を行うこと。