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○里親等家庭養育の運営について
(昭和六二年一〇月三一日)
(発児第一三八号)
(各都道府県知事、各指定都市市長あて厚生事務次官通知)
里親制度は、現在、各種の児童福祉施設と並んで要保護児童対策において重要な役割を果たしており、また、民法(明治二九年法律第八九号)に定める養子制度によつても同様に児童の保護が行われている。その運営については、昭和二三年一○月四日厚生省発児第五○号本職通知「里親等家庭養育の運営に関して」によつて行われてきたところであるが、近年における社会情勢の変化、民法等の改正を踏まえ、里親又は養親による要保護児童の養育がより一層適正に行われるよう、新たに別紙のとおり里親等家庭養育運営要綱を定め、昭和六三年一月一日から適用することとしたので、その適正かつ円滑な実施に努められたく通知する。
なお、昭和二三年一○月四日厚生省発児第五○号本職通知「里親等家庭養育の運営に関して」は、本通知の施行に伴い廃止する。
〔別紙〕
里親等家庭養育運営要綱
第一章 里親制度
第一 里親制度の意義
里親制度の意義は、家庭での養育に欠ける児童に、その全人格を養護、育成するための温かい愛情と正しい理解をもつた家庭を与えることにより、児童の健全な育成を図るものであること。
第二 里親の定義
里親とは、児童を一時的又は継続的に自己の家庭内に預り養育することを希望する者であつて、都道府県知事が適当と認定したものをいうこと。
この児童とは、現に監護する保護者がない者又は保護者に監護させることが不適当な者であつて、都道府県知事が里親に委託して保護することが適当であると認めた一八歳未満のものをいうこと。
第三 里親制度の運営機関
一 里親制度については、都道府県知事、児童相談所長、福祉事務所長、児童委員及び児童福祉施設の長等が児童福祉法(昭和二二年法律第一六四号)の規定により、それぞれ運営し、関与するものであるが、特に児童相談所長は、その中心となり、他の諸機関と緊密な連絡を保ち、本制度が円滑に実施されるよう努めること。
二 児童福祉法第三二条の規定により、都道府県知事は、児童相談所長に対して児童を里親に委託する権限をできるだけ多く委任することが望ましいこと。
第四 里親制度の普及
都道府県知事は、自ら又は児童相談所長、福祉事務所長、児童委員、民間団体等をして、里親制度の普及を図り、それに対する一般の理解と協力を高めるように努めること。
また、児童を養育し難い保護者及び児童の養育を希望する者が、児童相談所等に相談に来るよう啓発に努めること。
第五 里親の認定等
一 里親になることを希望する者は、居住地の都道府県知事にその旨を申し込まなければならないこと。
二 都道府県知事は、必要な調査を行い、次の点に配慮して里親の認定を行うこと。
(一) 里親申込者及びその家族が、児童の養育について理解と熱意及び豊かな愛情を有すること。
(二) 家庭生活が、精神的にも物質的にも健全に営まれていること。
三 都道府県知事は、認定した里親について、少なくとも五年毎に再認定を行うこと。この場合、児童相談所長が、里親継続の意志、家庭の状況等を調査の上、都道府県知事が再認定を行うものとする。
なお、再認定の際、里親に児童が委託されている場合には、再認定の手続を簡便にする等、実情にあつた運用を行うこと。
四 里親から里親認定を辞退する届出が行われた場合及び里親として認定しておくことが不適当であると認められる場合には、都道府県知事は里親認定を取り消すこと。
第六 委託
一 都道府県知事は、児童福祉法第二七条第一項第三号の措置又は措置の変更をしようとするときは、児童相談所長、児童福祉施設の長、児童又はその保護者の意見を十分聴き、里親制度の活用を図るように努めること。
二 都道府県知事は、里親に児童を委託する場合、当該児童に最も適合する里親に委託するように努めること。
三 都道府県知事は、三親等内の児童を現に養育し又は養育しようとする者に対しては、その児童につき里親委託の措置を採つてはならないこと。ただし、特別の事情がある場合には、この限りでないこと。
四 都道府県知事は、里親に委託されている児童の保護がより適切に行われると認められる場合には、児童に通所施設の指導訓練を受けさせることができること。
五 里親に委託された児童について、家庭復帰、養子縁組若しくは社会的自立等により里親委託が必要でなくなつた場合又は里親委託が継続し難い事由が発生した場合、都道府県知事は児童相談所長の意見を聴いて里親委託を解除すること。この場合、児童福祉の観点から慎重に調査の上行うこと。
第七 里親家庭における養育
一 里親は、児童を家庭の一員として迎え、児童の自主性を尊重し、かつ児童に対する深い理解と愛情をもつて、児童が基本的な生活習慣を確立し、健全な身体及び豊かな情操と社会性をもつた人間となるよう、必要な監護、教育等を行い、誠実に養育すること。
二 里親は、現に養育している児童を他の家庭等の養育にゆだねてはならないこと。ただし、里親が児童を一時養育できない場合には、都道府県知事の承認を得て、児童を一時他の家庭等の養育にゆだねることができること。
第八 指導、研修
一 都道府県知事は、児童相談所等を通じて、現に児童を委託されている里親のみならず児童を委託されていない里親に対しても、児童の養育方法等の研修を行い、又は研修を受けるよう指導に努めること。
二 都道府県知事は、里親に対し、児童の養育に関し必要な指導を行うこと。
三 都道府県知事は、里親に対し、児童の養育に関し必要な報告をさせることができる。
第九 秘密の保持
里親等の調査、指導等に当たる者は、職務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らしてはならないこと。また、里親は、児童の委託に関して知り得た秘密を正当な理由なく漏らしてはならないこと。
第一○ 都道府県間の連絡
二の都道府県にまたがる里親委託については、各都道府県知事は相互に緊密な連絡をとり必要な協力を行うこと。
第一一 費用
児童福祉法第二七条第一項第三号の規定により児童を里親に委託した場合の措置に要する費用については、昭和四八年四月二六日厚生省発児第八四号本職通知「児童福祉法による収容施設措置費国庫負担金の交付基準について」によること。
第二章 養子縁組
第一 養子制度の意義
児童福祉における養子制度の意義は、保護者のない児童又は家庭に恵まれない児童に温かい家庭を与え、かつその児童の養育に法的安定性を与えることにより、児童の健全な育成を図るものであること。
第二 養子縁組の種類
養子縁組については、民法第七九二条以下において規定する養子縁組と民法第八一七条の二以下において規定する特別養子縁組の二種類の養子縁組があること。
第三 児童相談所の役割
児童相談所長は、要保護児童対策の一環として、保護に欠ける児童が適当な養親を見い出し、適正な養子縁組を結べるよう努めること。
第四 調査、認定等
一 自己の養子とする児童のあつせんを希望する者(以下「養子縁組希望者」という。)の相談を受けた児童相談所長は、その家庭調査を行い、その者が養親として適当であるかどうかの認定を行うこと。
二 自己の子を他の者の養子とすることを希望する者の相談を受けた児童相談所長は、その児童につき調査を行うこと。
三 児童相談所長が、児童及び養子縁組希望者について調査及び認定を行う場合には、原則として里親に関する調査、認定の規定を準用すること。
四 児童相談所長は、調査、認定を行つた後、養子縁組希望者及び児童(児童福祉法等の規定によつて通告又は送致された児童を含む。)につき、養子縁組のあつせんを行うことが適当と判断される者があるときは、養子縁組のあつせんに関し必要な指導等を行うこと。
五 里親が、委託されている児童と養子縁組を希望する場合には、児童相談所長は、事情を十分調査した上で、それをまとめるように努めること。
第五 都道府県間の連絡
二の都道府県にまたがる養子縁組のあつせんについては、各都道府県知事は相互に緊密な連絡をとり必要な協力を行うこと。
第六 家庭裁判所との協力
児童相談所長は、養子縁組につき家庭裁判所から調査等を依頼された場合において、児童福祉の観点から必要と認められるときには、協力を行うこと。