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○児童の「いじめ」問題に関する相談活動の充実について

(昭和六〇年一一月一五日)

(児発第九〇四号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省児童家庭局長通知)

最近、学校等における児童の「いじめ」問題が大きな社会問題となつており、児童の健全育成上からも見過ごすことができない。

先般、臨時教育審議会会長から別添の談話が発表され、学校等における「いじめ」問題に対する関係各省庁の積極的かつ総合的対応が求められている。

児童の健全育成については常日頃種々御配慮を煩わしているところであるが、特に「いじめ」問題への対策の緊急性に鑑み、左記事項について貴管下児童相談所等関係諸機関に対し相談活動の一層の充実強化を図るよう御指導願いたい。

一 「いじめ」問題においては、悩みを持つ児童に、いかに手をさしのべるかが重要であるところから、児童相談所、福祉事務所(家庭児童相談室)等は次のような創意工夫をして効果的な対応を図ること。

(一) 保護者からの相談はもとより、児童が心やすく利用できる相談窓口を整備充実すること。

(二) これらの相談機関の窓口の利用方法等について、児童、家庭、学校等に周知徹底すること。

(三) 巡回相談または各種行事等を利用して「いじめ」の相談窓口を設ける等、積極的に地域住民の相談ニーズに応えること。

二 「いじめ」問題は非行、情緒障害等と深い関連をもつているところから、児童福祉施設等の有する児童養育に関する専門的知識や経験を積極的に活用すること。

三 児童相談所は、「いじめ」問題について学校等から協力依頼があつた場合には、学校、家庭、児童と迅速に連絡をとり適切な対応を講じること。

四 児童の健全育成は地域全体で総合的に関わることが重要であるので、母親クラブ等児童健全育成の地域組織活動とも積極的に連携をとり活用を図ること。

〔別添〕

「いじめ」の問題に関する臨時教育審議会会長談話

(昭和六○年一○月二三日)

本審議会は、発足以来、近年における「いじめ」、校内暴力、青少年非行などの教育荒廃の現象について、憂慮すべき事態として検討を続けてきた。

すでに第一次答申においても、その要因・背景として、受験競争の過熱や、児童生徒の多様な能力、適性等に対応し得ない学校教育の制度やその運用の画一性、硬直性あるいは閉鎖的な学校の在り方等の問題があることを指摘した。

本審議会としては、これらの問題について、さらに基本答申に向けて総合的に検討を加える課題として取り組んでいるが、昨今の「いじめ」の問題については、児童生徒の自殺や心理的障害にまで至らせるような痛ましい事例が発生するなど、教育問題としても社会問題としてももはや看過できないものと考え、緊急に総会において審議を行つた。

その結果、基本的には個性重視の原則に立つてこれまでの教育の在り方を見直すとともに、子どもをめぐる社会全体の教育環境の改革が必要であると考える。

同時に、当面の対策として、現在、学校現場はもとより各方面の関係者が真剣な努力を続けていることは評価されるが、特に次の諸点が重要である。

一 各省庁をはじめ関係諸機関がそれぞれの必要な施策を進め、さらに相互の連携を強化し総合的に対策を推進すること。

二 学校において、教師間の人間関係に相互に配慮し、校長、教員が一致協力してこの問題に真剣に取り組むこと。また、子どもの多様な個性の配慮に欠ける教育に陥ることを戒めるとともに、いやしくも教員自らの暴力の行使等は厳に慎むこと。

三 家庭においては、過保護、過干渉、放任に陥ることなく、その役割を自覚するとともに、地域、学校との連携を強めること。

四 地域における多様な相談の窓口が有機的に機能し、父母や子どもが心安く相談できる体制を確立すること。

五 学校の教育条件、家庭や地域等子どもの生活の場など教育環境の人間化に努めること。

以上は、いわゆる対症的応急の措置でもあるが、この問題は、根本において、現代社会にみられる心の荒廃が子どもの成長過程において生じていることと深くかかわつているものであり、青少年の健全育成の観点に立つたテレビ・週刊誌等マスコミの自粛・自重を含め事態の解決のための社会全体の取り組みや協力が必要である。

臨時教育審議会としては、現在見られる教育荒廃の病理現象に対し、その背後にある要因を掘り下げ、教育改革のための総合的、基本的考え方を示すという本審議会の使命と責任を痛感しており、この「いじめ」の問題についてもそのような立場に立つて引き続き特別の関心を持つて審議を深めていきたい。