添付一覧
○家庭児童相談室の設置運営について
(昭和三九年四月二二日)
(児発第三六〇号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省児童局長通知)
標記については、昭和三九年四月二二日厚生省発児第九二号で厚生事務次官から各都道府県知事、各指定都市の市長あて通達されたところであるが、特につぎの事項に留意し、家庭児童相談室の設置、運営につき万全を期されたい。
第一 趣旨
家庭は児童育成の基盤であり、児童の人格形成にとってきわめて大きな影響を及ぼすものであるが、近年における社会の変動に伴なう家庭生活の変化は、家庭における児童養育にも大きく影響し、これが児童の非行発生の要因ともなっている現状にかんがみ、特に家庭における人間関係の健全化及び児童養育の適正化等家庭児童福祉の向上を図るための相談指導援助を充実強化するため福祉事務所に家庭児童相談室を設置するものであること。
第二 設置
1 所在の表示
家庭児童相談室の所在が利用者に明確に把握されるように、その所在を掲示板等により表示すること。
2 設備及び備品
相談室及び待合室の設備、調度の整備に当たっては、利用者の心理、利便等を十分考慮すること。
また、相談業務を円滑に行なうために、少なくともつぎに掲げる備品を備えること。
(1) 相談用の机及び椅子
(2) 待合用の椅子
(3) 整理戸棚
(4) 電話器
(5) 相談に必要な心理検査器具
(6) 相談に必要な参考文献
(7) 帳簿
ア 登録台帳
イ 相談カード
ウ 家庭児童票
(8) ケースファイル(ケース番号索引簿)
第三 職員
1 家庭児童福祉関係専門職員の配置
家庭児童相談室の運営を担当する課に、家庭児童福祉関係専門職員として、家庭児童福祉の業務に従事する社会福祉主事及び家庭相談員を配置するよう配慮されたいこと。
なお、必要に応じ、家庭児童相談室の運営に係る庶務等を担当する事務員の配置についても配慮されたいこと。
2 家庭相談員の身分、資格及び服務
(1) 家庭相談員は、都道府県又は市町村の非常勤の特別職として取扱うようにされたいこと。
(2) 昭和三九年四月二二日付け厚生省発児第九二号事務次官通知の第六の2に掲げる家庭相談員の資格のうち、第四号に該当する者としては、師範教育令(昭和一八年勅令第一〇九号)に基づく師範学校、高等師範学校、女子高等師範学校、青年師範学校を卒業した者等で、特に家庭児童福祉に関し学識経験を有するもの又は多年にわたり母子相談、精神薄弱児相談業務に従事し成果をあげたものが考えられること。
(3) 家庭相談員は、非常勤職員であるが、家庭児童相談が常時行なわれるような服務体制としておくこと。
第四 運営等
1 相談事項
家庭児童相談室における相談事項は、家庭における児童養育の技術に関する事項及び児童に係る家庭の人間関係に関する事項、その他家庭児童の福祉に関する事項とすること。
2 ケースの分担
家庭児童福祉に関し、その処理に専門的技術を必要とするケースのうち、主として訪問による指導及び法的措置を必要とするケースは、家庭児童福祉の業務に従事する社会福祉主事がこれを担当し、主として、所内における相談指導で解決されるケースは家庭相談員がこれを担当するものとすること。
ただし、これらは必ずしも画一的に分類することが難かしいので、相互の協調連絡がとくに必要であること。
3 ケースの記録
家庭児童福祉の業務に従事する社会福祉主事及び家庭相談員が取扱ったケースに関しては、その種別、相談経過指導後の状態等を備付けの帳簿に明確に記録しておくこと。
4 査察指導を行なう所員及び現業を行なう所員との関係
家庭児童福祉の業務に従事する社会福祉主事及び家庭相談員が職務を行なうに当たっては、査察指導を行なう所員の指揮監督を受けることとすること。
また、家庭児童福祉の業務に従事する社会福祉主事及び家庭相談員が新たに設置されても家庭児童福祉に関する一般的現業事務に関しては、従前どおり現業を行なう所員がこれを行なうものであり、相互の連絡協調をとくに緊密にすること。
5 児童相談所との関係
福祉事務所と児童相談所の業務に関する相互関係については、法令の定めるところによるが、家庭児童相談室の設置に伴いとくに福祉事務所における家庭児童福祉に関する相談指導の機能が強化されるので、ケースの難易度や措置権限等(別紙参照)を十分考慮し、地域住民の利便度も勘案のうえ、福祉事務所で取扱うことが適当と思われるケースについては、できるだけこれを処理するよう配慮すること。
なお、児童相談所の児童福祉司が福祉事務所に駐在している場合は、家庭児童相談室が設置され次第、原則として児童相談所にひきあげること。
6 主任児童委員との協力
家庭児童相談室が児童委員との協力を図る場合には、主任児童委員の積極的な活用を図ること。
このため、家庭児童福祉の業務に従事する社会福祉主事及び家庭相談員は、定期的に主任児童委員との連絡会議を開く等の方法により常に連携を図り、地域の児童・家庭の実情の把握に努めること。
また、地域における児童健全育成活動や啓発活動等を実施する場合には、主任児童委員に情報を提供し、その協力を求めること。
さらに、区域を担当する児童委員から協力を求められた個別の相談ケースに関する調査支援等を行う場合にも、必要に応じ主任児童委員の協力を求めること。
7 児童委員との協力
家庭児童相談室の機能を十分に活用するためには、児童委員の協力が不可欠の要件であり、とくに児童委員の本来業務とされている問題児の発見と通告及び社会福祉主事が行なう指導への協力等が積極的に行なわれるよう趣旨の徹底につとめること。
また、家庭児童福祉の業務に従事する社会福祉主事及び家庭相談員は地域における児童委員協議会等へすすんで参加し、啓発指導を行なうようにすること。
8 地域における家庭児童相談指導ボランティアの開拓、養成地域において、家庭児童相談指導について特別の学識経験を有する人々に有志指導者(ボランティア)として家庭児童相談事業への協力を求めるほか積極的にその開拓や養成につとめること。
9 地域活動の促進
家庭児童相談室においては、地域における家庭児童福祉の向上を図るため、地域における母親クラブ、親の会、婦人会等の組織活動の助長及び家庭における児童養育の適正な知識、技術の一般的普及活動等を他の児童福祉関係機関と協力して積極的に行なうこと。
〔別紙〕略