アクセシビリティ閲覧支援ツール

○結核にかかっている児童に対する療育の給付について

(昭和三六年八月九日)

(児発第八二六号)

(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省児童局長通知)

今般児童福祉法の一部を改正する法律が施行され、新たに骨関節結核以外の結核にかかっている児童に対する療育給付及び療養生活に必要な物品(以下「日用品」という。)の支給の制度が設けられることとなり、その運用については、昭和三六年六月三〇日厚生省発児第一五八号厚生事務次官通達「児童福祉法の一部を改正する法律等の施行について」により通達されたところであるが、実施にあたっては次の事項に留意し、遺憾なきを期されたい。

なお、この通達により、昭和三四年五月一八日児発第四五〇号児童局長通知は廃止する。

なお、この通知中第一の3の(5)「日用品の支給」、第一の4の(3)「指定療育機関の指定の申請等」、第二の1の(2)、2の(1)の「給付決定」及び第三の5の(1)「診療報酬審査支払事務費の額」に関する事項のほかは、概ね従来どおりの取り扱いであるので申し添える。

第一 一般事項

1 結核児童療育の方針

結核は、一般に長期間の療養を必要とするものであるが、とくに児童の場合は心身の発育期にあるので、結核にかかっている児童(以下「結核児童」という。)に対しては、その医療のみならず、入院中の教育面及び生活面についても適切な措置を講ずる必要がある。結核児童に対する療育の給付は、このような必要性にかんがみ、とくに長期の療養を必要とする結核児童を病院に入院させ、適正な医療を行なうとともに、併せて学校教育を受けさせ、これに必要な学習用品を支給し、かつ児童の療養生活の指導を行ない、必要に応じて日用品を支給するものである。したがって、都道府県(指定都市及び中核市を含む。)は、この制度が、児童の心身両面にわたる健全な育成を目的とするものであることを考慮し、療育の給付を行なうにあたっては、指定療育機関、教育関係諸機関等にも、この趣旨を徹底させ、その協力を得てその目的が十分達成されるよう努めること。

2 対象

給付の対象となる児童の選定については、結核児童であって、その治療に特に長期間を要するもので、医師が入院を必要と認めた者について行なうものとすること。

3 給付の種類

(1) 療育の給付は、本制度の性格上、児童が入院した場合に限って行なわれ、通院治療の給付は行なわれないこと。

(2) 医療に係る療育の給付(以下「医療給付」という。)は、児童福祉法(以下「法」という。)第二一条の九第三項に規定されているとおりであり、すべて指定療育機関に委託して行なわれるものであること。

(3) 医療給付は、原則として結核の治療に限られるが、結核に起因する疾病又は結核の治療に支障をきたす疾病を併発している場合は、この治療を給付の対象として差し支えないこと。

なお、療育の給付の対象となった児童、特に骨関節結核児童で、将来機能障害を残すおそれの多いものについては、適時に適切な理学療法等を行なうよう考慮し、症状が固定し、身体に機能障害が残ったため長期の機能訓練、職能訓練を必要と認めた場合には、症状に応じて、肢体不自由児施設入所等の措置をとること。

(4) 学習に必要な物品(以下「学習用品」という。)の範囲は、直接学校で使用される教科書、ノート等通常の学習用品のほか、これに伴う予習、復習に必要なものも含まれるものであること。

(5) 療養生活に必要な物品(以下「日用品」という。)の範囲は児童の生活指導に必要な月刊雑誌、子供新聞、教養図書、手工(芸)材料、玩具等のほか必要に応じて身の廻り品、下着等を含むものであること。

4 指定医療機関

(1) 療育の給付は、児童を厚生大臣又は都道府県知事(指定都市及び中核市の市長を含む。以下同じ。)の指定する病院(指定療育機関)に入院させて行なうが、指定療育機関としては、結核の専門的治療を行ない得ることはもちろん、小児専用の結核病棟又は病室を有し、児童の生活上の指導を行ない、かつ、入院した児童が義務教育を受け得るように養護学校若しくは特殊学級が病棟若しくは病室に近接する場所に設置され、又は教員の派遣が行なわれている病院が指定されること。

なお、都道府県知事(指定都市及び中核市の市長を含む。以下同じ。)の指定は、国が開設した病院以外の病院について行われるが、国が開設した病院の指定状況、療育の給付の対象となる児童の数、適正なる地域的配置等を十分に考慮して行うこと。

(2) 指定の基準は、児童福祉法施行令第九条のとおりであるが、この取扱いは次のとおりであること。

イ 結核児童のみを収容する病室の収容定員は、その病室が一つの場合は当該病室の収容定員がおおむね二○人以上であり、二つ以上の場合は、各病室の収容定員をあわせた定員がおおむね二○人以上であること。

二つ以上の場合は一区画にまとまったものでなければならないが、これは療養生活中の児童を他からの悪影響から守ること及び療養生活の指導を行なううえでの便宜のためであり、単に建物の構造上のみならず看護単位のうえからも独立しているものがのぞましいこと。

ロ 結核の診療に必要な設備とは、医療法に規定するもののほか、骨関節結核の診療を担当する病院にあっては、装具、牽引装置等の設備が必要であること。

ハ 結核児童の療育生活の指導を担当する職員は、医師のほか保育士、児童指導員又は小児看護に習熟した看護婦でなければならないこと。

ニ 入院中の結核にかかっている児童のための特殊学級の設置又は教員の派遣は、養護学校の場合と同様に小学校及び中学校の両者について行なわれているか、又は行なわれることが明らかであること。

(3)イ 指定療育機関の指定の申請は様式例第1号により行われるものであること。なお、当該指定に当たっては、都道府県知事はその指定年月日のほか、名称、所在地及び診療を担当しようとする結核の種別を告示することとなるので、これらを明確に記載させること。(児童福祉法施行規則(以下「規則」という。)第一一条及び第一二条関係)

ロ 担当しようとする結核の種別を変更する場合において、指定療育機関の開設者(国を除く。以下同じ。)は都道府県知事の承認が必要であるので、規則第一一条各号に掲げる事項を記載した申請書を提出させること。なお、都道府県知事が承認を行った場合にはその旨を告示すること。(規則第一四条関係)

ハ 指定療育機関の名称等に変更があったとき、指定療育機関が業務を休止し又は再開したとき、あるいは医療法(昭和二三年法律第二○五号)第二四条、第二八条又は第二九条に規定する処分を受けたときのいずれかに該当するに至ったときは、当該指定療育機関の開設者をして、速やかにその事項及びその年月日を届け出させること。なお、都道府県知事は、名称の変更の届出を受けた場合には、その旨を告示すること。(規則第一五条関係)

ニ 指定療育機関の開設者が法第二一条の九第六項に規定する指定の辞退の申出をしてきたときは、都道府県知事は、その旨及び予告期間終了の年月日を告示すること。(規則第一六条関係)

ホ 都道府県知事は、法第二一条の九第七項の規定により指定療育機関の指定を取り消したときはその旨を告示すること。(規則第一七条関係)

(4) 許可、認可等の整理に関する法律(昭和五三年五月二三日法律第五四号)附則第八項により、同法施行前に厚生大臣が指定した指定療育機関(国が開設した病院を除く。)は同法施行後においては、都道府県知事が指定したものとみなされるものであること。

(5) 都道府県知事は、規則第一二条、第一四条第二項、第一五条第二項、第一六条第二項及び第一七条の規定による告示を行ったときは、その旨を厚生省児童家庭局長あて報告するものとすること。この場合においては、当該告示の「写」を必ず添付すること。

5 医療と教育との関係

児童の教育は、結核の治療に支障をきたさぬようその症状に応じて、医師の指導の下に行なわなければならないので、都道府県知事は、指定療育機関と教育機関が相互に密接な連絡を保ちつつ、医療及び教育を行なうよう指導すること。

第二 給付の申請及び給付の決定に関する事項

1 申請

療育の給付の申請は、規則第一○条第一項の規定によるものであるが、次の点に留意すること。

(1) 申請者は、給付を受けようとする児童の親権を行なう者又は後見人であること。申請者に対しては、この給付について(特に自己負担制度について)充分理解させること。

(2) 申請者が申請をする際に希望する指定療育機関については、病名症状に応じた適切な指定療育機関を選定させるよう指導すること。

(3) 申請書には医師の記載した療育意見書及び関係書類を添付させること。

2 給付の決定

(1) 都道府県知事は、給付の可否の決定にあたっては、療育給付を委託する指定療育機関の選定についての申請者の希望、地理的条件及び病名症状等を考慮し、治療期間についても十分検討されたいこと。

(2) 療育の給付を行なうときは、規則第一○条第二項に規定する第四号の二様式による療育券を申請者に交付し、かつ、療育券に記載した指定療育機関にその旨を通知すること。

なお、療育券の交付に際しては、申請者に対し、その取扱につき十分指導すること。

(3) 療育の給付を行なわないことを決定したときは、その旨を、理由を附して、速やかに申請者に通知すること。

3 療育券の取扱い

(1) 療育券の有効期限は療育の給付の終了期限であるので、その記載に当たっては、指定療育機関と十分連絡のうえ、治療の終了予定期限に若干の余裕を見込む等医療の給付に支障のないよう配慮すること。

(2) 療育券に記入された指定療育機関において診療を担当することが不適当のため他の指定療育機関への変更及び給付を療育券の有効期限を過ぎて継続する場合は、都道府県知事は、事前に指定療育機関より医師の意見書を添えて指定療育機関の変更及び療育給付継続の協議を行なわせ、これを承認することができること。

指定療育機関の変更及び療育給付継続の承認は文書によること。

なお、前記については、申請者に対しても通知すること。

(3) 療育券を紛失又は損した場合は、申請により再交付すること。

4 学習用品及び日用品の支給

(1) 学習用品及び日用品の支給は、都道府県知事が直接行なうこととされているが、支給にあたっては指定療育機関又は学校関係者と十分連絡し、事務処理に必要な便宜の提供その他積極的な協力を得るようにすること。

(2) 日用品の支給にあたっては、指定療育機関と十分連絡し特に療育指導を担当する保育士、看護婦等の意見を聞き、児童の療養生活に必要な物品を支給すること。

第三 診療報酬の請求、審査及び支払に関する事項

指定療育機関における療育の給付に係る診療報酬の請求、審査及び支払に関する事務は、育成医療と同様に、社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会又は日本鉄道共済組合に委託して行うものであること。

第四 徴収額の決定及び徴収に関する事項

都道府県知事は、療育の給付の決定を行ったときは、法第五六条第二項の規定により本人又はその扶養義務者から徴収する額を決定し、その額を徴収することができること。

第五 結核予防法及び社会保険各法との関連事項

療育の給付を受ける児童が結核予防法による費用負担を受ける者である場合及び社会保険各法による被保険者、組合員又は被扶養者である場合は、それぞれ結核予防法及び社会保険各法による負担及び給付が行なわれることとなっており、これらの法律により給付を受けた残りの部分、すなわち、その療育の給付に要する費用のうち本人が直接負担する部分について療育の給付の対象とする取り扱いであること。

第六 その他

1 療育の給付について台帳等を備え付け、給付の状況を明らかにしておくこと。

2 本通知に係る各種様式の例は別添のとおりであるので、参考とされたい。

〔別添〕

様式例第1号

画像2 (40KB)別ウィンドウが開きます

様式例第2号

様式例第3号

様式例第4号

(参考)