添付一覧
○矯正施設収容中の身体に障害のある児童に対する福祉の措置について
(昭和三二年七月四日)
(児発第三九〇号)
(各都道府県知事、指定都市市長あて厚生省児童局長通知)
標記について、今般、法務省矯正局長より別紙(一)のとおり協議があつたので、少年刑務所、少年院等の矯正施設(以下「矯正施設」という。)に収容中の身体に障害のある児童に対する児童福祉法の適用につき左記のとおり定めたから、今後は本通達によりその取扱に遺憾なきを期せられたい。
なお、矯正施設収容者に対する身体障害者福祉法の適用について社会局長より別紙(二)昭和三二年六月一九日社発第四四一号通達のとおり通達されたから御了知ありたい。
記
矯正施設に収容されている身体に障害のある児童に対しては、本来、刑事行政の一環としてこれが福祉の措置を講ずべきものと解されるが、現状においては矯正当局において洩れなく福祉の措置を講ずることは困難な実状にあるので、児童福祉法の趣旨にかんがみ当該児童に対し同法による福祉の措置を適用することとするが、その実施については、矯正施設の性質上種々の制約が予想されるのでその取扱は次によられたいこと。
一 育成医療の給付について
育成医療の給付につき申請のあつたときは、都道府県知事又は指定都市の市長は、矯正施設の長と協議の上施設在所中に育成医療の給付を行うことが必要であり、かつ、矯正当局に同種の医療を期待することが困難と認めるときは、給付して差し支えないこと。
給付の申請は、一般の申請者と同様、親権を行う者又は後見人の居住地又は現在地を管轄する療育指定保健所(昭和二九年七月一日児発第二九八号通知左記第一の「二」参照)を経由し、当該療育指定保健所を管理する都道府県知事又は指定都市の市長あてに行うこと。なお、申請書に添附する意見書は必ず施設所在地の療育指定保健所又は指定医療機関の医師に依頼して作成するよう取り計らわれたいこと。また、調査書は、本人又は扶養義務者の居住地(本人の居住地については別紙(二)社会局長通達記一による。)を管轄する福祉事務所長に作成を依頼すること。
二 補装具の交付又は修理について
補装具の交付又は修理の申請があつたときは、都道府県知事又は指定都市の市長は、矯正施設の長と協議の上施設に在院中に補装具の交付又は修理を行うことが必要であり、かつ、矯正当局にその措置を期待することが困難であると認めるときは補装具の交付又は修理を行つて差し支えないこと。
交付の申請の手続は、一般の申請者の場合と同様、本人又は親権を行う者若しくは後見人の居住地(本人の居住地については別紙(二)社会局長通達記一による。昭和二六年一二月一九日児発第一、四一○号通知記第二の「五」参照)を管轄する福祉事務所を経由して、当該福祉事務所の所在地の都道府県知事又は指定都市の市長あてに行うこと。申請書に添附すべき意見書は必ず施設所在地の療育指定保健所又は指定医療機関の専門医師が作成することとし、調査書は本人又は扶養義務者の居住地(本人の居住地については別紙(二)社会局長通達記一による。)を管轄する福祉事務所長に作成を依頼すること。
なお、義肢、補装具類の製作にあたつては型取り、仮合せ、適合検査等に必ず前記の専門医師が立合つて指導するよう配意されたいこと。
三 療育指導等について
矯正施設所在地の療育指定保健所長は、施設長と協議の上適宜に療育指導を実施されたいこと。
別紙(一)
矯正施設収容者中身体障害を有する者に対する援護について
(昭和三二年四月三日 法務省矯正甲第二七○号)
(厚生省児童局長あて法務省矯正局長通知)
現在、刑務所並びに少年院においては、身体障害者福祉法による身体障害を有する者約一、五○○名(うち身体障害者手帳の交付を受けていない者約一、三○○名)を収容しておりますが、その取扱にはかねて種々困難を伴つており、これらの者に対する矯正保護につきましては同法による福祉援護を是非とも必要と致しますので、貴省社会局長とも本人の在所又は在院中に手帳の交付を受け、できるだけ援護が受け得られるよう協議中でありますが、前記障害者中には一八歳未満の該当者も若干名ありますので、同様趣旨において児童福祉法による福祉措置が受け得られるよう特に御配慮を願いたく協議致します。
別紙(二)
矯正施設収容者に対する身体障害者福祉法の適用について
(昭和三二年六月一九日 社発第四四一号)
(各都道府県知事、指定都市市長あて厚生省社会局長通知)
刑務所服役者に対する身体障害者手帳の交付及び福祉措置については、昭和二七年一二月一六日社乙発第一七一号本職通知により処理されているところであるが、今般、刑務所、少年院等矯正施設(以下「矯正施設」という。)に収容中の者に対する身体障害者福祉法の適用の細部について左記のとおり定めたので、今後は本通達によりその取扱に遺憾のないよう配意されたい。
おつて、昭和二七年一二月一六日社乙発第一七一号本職通知は廃止する。
記
矯正施設収容者の処遇については、監獄法、同施行規則、少年院法、少年院処遇規則及び少年鑑別所処遇規則により定められているところであり、矯正施設の特殊性からして身体に障害ある収容者に対する福祉措置についても本来はこれら諸法令中に規定されるべきものと考えられるが、現在のところ特別な規定がなく、矯正当局においては福祉が図られ難い状況にある。従つて、身体障害者の福祉に関する一般法たる性格をもつ身体障害者福祉法は、矯正施設収容者に対しても原則として適用あるものと解せられるが、矯正施設の特殊性からくる種々の制約があるので、援護の措置その他この法律の適用と取扱に当つては次によられたいこと。
一 居住地の認定について
矯正施設収容者の居住地は、施設に収容されたことによつて施設所在地に移つたとみるべきではなく、収容前に居住地を有し、かつ、現在そこに家族等が居住していて、釈放後本人が復帰する見込のあるときは、当該地を引続き現在の居住地とみるべきである。従つて、この場合、身体障害者手帳の交付は、当該居住地の都道府県知事又は指定都市の市長が行い、また当該居住地を管轄する福祉事務所を管理する都道府県知事又は市町村長が援護の実施機関として援護の実施に当るものであること。
なお、既に前記社乙発第一七一号通知により、矯正施設所在地の都道府県知事又は指定都市の市長から身体障害者手帳の交付を受けた者については、適当な期間内に身体障害者福祉法施行規則第十条の規定による居住地変更の手続に準じて措置するよう取り計らうこと。
収容前に居住地を有しないか又は明らかでない者、或は収容前の居住地に復帰する見込のない者については、矯正施設所在地の都道府県知事又は指定都市の市長が身体障害者手帳の交付を行い、また、援護の実施に当るものであること。
二 身体障害者手帳の交付について
身体障害者手帳の交付申請があつた場合は、一般の身体に障害のある者と同様の手続により、障害程度を認定し、障害が法別表に該当すると認めるときは、これを交付すること。
なお、身体障害者手帳の交付申請に際し添付する医師の診断書及び意見書の作成に当つては、矯正施設所在地の都道府県知事又は指定都市の市長は、当該施設の長と協議して、指定医師の派遣等受診につき便宜的な措置を講ぜられたいこと。
三 補装具の交付又は修理について
補装具の交付又は修理につき申請があつたときは、援護の実施機関は、矯正施設の長と協議し、矯正当局においては、同種の給付が困難であり、かつ当該身体障害者の更生のために必要と認められるときは、予算の範囲内において、一般の身体障害者と同様に措置して差し支えないこと。
なお、交付又は修理の決定に当つて援護の実施機関は、身体障害者福祉法施行規則第十四条第二項の規定により必要な調査を行うとともに、義肢、装具、義眼、眼鏡、補聴器、車いす等については補装具の給付及び要否について当該矯正施設所在地の都道府県又は指定都市の身体障害者更生相談所の長に判定を依頼すること。また、交付又は修理を委託する業者については、申請の際の希望を参酌し、当該矯正施設所在地の業者を指定し、義肢、装具等の型取り、仮合せ及び適合の判定については、当該地の身体障害者更生相談所の医師等に委嘱して遺漏のないようせられたいこと。
四 身体障害者福祉司等による更生指導について
矯正施設所在地を管轄する福祉事務所の長は、矯正施設当局に協力して身体障害者福祉司等による更生指導を極力実施せられたいこと。
五 その他の援護について
右のほか、身体障害者福祉法によるその他の援護については、原則として適用のないものであるが、特に少年院に収容中の身体障害者については、少年院処遇規則第四九条の規定に基き、少年院外において医療を受けさせることが可能な場合が多いので、更生のため在院中に更生医療の給付を行うことが必要であり、かつ、少年院当局に同種の医療を期待することが困難な場合は、援護の実施機関は、当該少年院の長と協議の上、予算の範囲内において本法第一九条の規定による更生医療の給付をして差し支えないこと。給付の決定に当つては、補装具の場合と同様、身体障害者福祉法施行規則第一三条の二第二項の規定により必要な調査を行い、かつ、当該少年院所在地の身体障害者更生相談所の長に判定を依頼することが必要であり、また、更生医療の給付を委託する指定医療機関については、当該少年院の長とも協議して決定すること。