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○精神薄弱児施設における職業補導の実施について

(昭和三一年八月三日)

(児発第四六一号)

(各都道府県知事あて厚生省児童局長通知)

精神薄弱児の職業補導については、従来個々の精神薄弱児施設において夫々適切な科目を選定し、これを実施していたところであるが、その設備が極めて小規模又は不完全であるため、年長児童の漸増の現状に対処することは漸次困難となり、かつ、その必要性は一段と緊急の度を加えるに至つたので、昨年度においては、別添「精神薄弱児施設内職業補導実施要綱」にもとづき、全国の精神薄弱児施設のうちから取り敢えず数か所の適切な施設を選定し、これが設備の充実強化を図つたのであるが、精神薄弱児の職業補導の重要性に鑑み、普く今年度からは、全国の精神薄弱児施設にその必要性に応じて、これが設備の設置又は強化を図ることになつたので、前記要綱の趣旨御了知の上、これが適正な実施の励行方を図られたい。

別添

精神薄弱児施設内職業補導実施要綱

一 趣旨及び目的

精神薄弱児は、その特殊性により、施設外の事業場又は公共職業補導所等に委託して職業補導を行うことは至難であるので、精神薄弱児施設内に職業補導設備を設置し、その性能に応じた職業補導を実施し、もつて精神薄弱児の社会復帰促進に資するものとする。

二 対象

現に精神薄弱児施設に収容されている児童で、原則として満一五歳以上の職業補導を適当とする者であること。

三 科目

(一) 施設毎に左の科目のうち、一又は二について行うものとするが、左の科目以外についても適当なものを選択して行つても差し支えないこと。

木工、竹工、紙工、窯業、金工、板金工、製織、縫工、畜産加工、農産加工、洗濯

(二) 左の事項に留意して科目を決定すること。

一 当該科目について適当な職業指導員が居ること。

二 原材料の入手が容易且つ安価で製作品の需給が比較的円滑に行われるものであること。

三 補導科目が地域産業と関係をもつていること。

四 補導目標

補導は技能訓練に併せて感覚及び運動機能の訓練を施し、更にこれらを通じて精神的安定を図ること。

五 経費の負担

精神薄弱児施設の職業補導設備に要する費用に対しては、その二分の一を負担する。

六 収入の処分

職業補導に伴う収入を処理するときは、児童福祉施設最低基準第四五条第三項によること。

(参考資料)

精神薄弱児の就業し得る作業範囲に関する調査(厚生科学研究報告暫定的リスト)から知能指数五○以下の者に対するものとして、取り敢えず集録例示すると次の通りである。

一 金属工業

手工具による原料の粗砕、束ね方に関するもの、鋳造業の砂落しや鋳型の運搬、金属プレス加工、金属玩具類

二 機械器具工業

面とり、縁とり、ペーパーかけなど仕上作業、電気器具類小物組立、電球、乾電池、レンズ加工の一部

三 木工業

建具、下駄台加工、木製玩具製作

四 食品工業

味噌醤油製造

五 農業畜産業

耕耘、除草、刈取、整地、花木栽培、畜産(養豚、養兎、羊毛)

六 窯業

セメント製品、陶磁器、土管類製造

七 その他の工業

紙工品、藁工品、煉炭製造、製織毛糸編物、印刷製本の一部

この例示は左の条件を前提とする。

(一) 作業について知識上の要請があまり無いこと。

(二) 長期の熟練や経験を必要としないこと。

(三) 機械装置、工具、材料、製品などが比較的長期に亘り一定であること。

(四) 機械装置、工具などの修理調整が簡単であるか又はこれを他に依頼できること。

(五) 作業能率上の要請が余り高くないこと。

(六) 作業精度上の要請が余り高くないこと又は之について適当な補助手段が講ぜられていること。

(七) 計算、計量、計尺などの必要がないか、又は簡単であること。又これについて適当な手段が講ぜられていること。

(八) 余り機敏な動作を要しないこと。

(九) 余り大いなる作業速度を要しないこと。

(一○) 長時間の精神緊張を要しないこと。

(一一) 多くの場合指揮者があつて作業上の直接の指揮監督を受けること。

(一二) 現場の社会的人間関係的諸条件が適当であること。

右の外雑誌「児童」第一三号を参照すること。