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○児童福祉法において児童に対し強制的措置をとる場合について

(昭和二五年七月三一日)

(児発第五〇五号)

(各都道府県知事あて厚生省児童局長通知)

児童福祉法によって、児童を取り扱う場合には、児童福祉の原理に従い児童の人権を尊重すべきことは言を俟たないところであり、従って、たとえ保護施設等から逃走する性癖を有する児童であっても、施設の側の受け入れの方法に十分留意し、これを自由な環境で保護して、施設生活に魅力を感じさせるようにすることが児童保護の原則であるが、現下の実状としては、時に強度の浮浪癖等のために極めて頻繁に逃亡を繰り返し、これがためその児童にやむを得ず或る程度の拘束力を加えて施設内に止らせることが却ってその児童の真の福祉を保障する所以となる場合もあると考えられる。これらの場合については特に左記の事項をお含みの上取扱上遺憾のないようにせられたい。

1 児童に対し、強制力を行使することは極めて例外的な場合に限られるべきであって、本来は、児童に自由な環境を与え、あたたかな態度でこれに接することによって、施設内の日常生活におのずから魅力を持たせるようにすることが原則であること。やむを得ず強制力を用いる場合にも決して権力的な態度で臨むことなく、その措置がその児童の真の福祉を保障するために行われるものであることを忘れてはならないこと。

また強制力の行使は能う限り短期間にとどめ速やかに開放的な保護に移行させるよう絶えず努力すること。

2 児童福祉法第三三条の児童相談所長による児童の一時保護の権限について

(1) 児童福祉司其の他の児童福祉関係吏員が、浮浪児又は不良児等の保護に赴いた際にその者を一時保護のために帯同しようとするに当たって、本人が反対の意思表示を行っても、これをそのままに放置することが保護の目的に添わないと認められる場合には、その意思に反してこれを強制的に帯同することが出来るものであること。

(2) 一時保護を加えようとする児童が過去において繰り返し逃走した経歴を有する等の事情のために、十分な監視を以ってしても、其の逃走を防止することが出来ないと認められるような場合、この種の児童に対しては、これを窓に格子を用い、扉に鍵をかけることの出来る特別な一時保護室に於いて保護を加えることが出来ること。

この特別な一時保護室の設置については左の諸点に留意すること。

(イ) 強制的措置の目的を達成するために容易に破壊されないような構造であることは必要であるが、太すぎる格子を用いたり、窓を小さく、或いは高く設ける等刑罰を科する場所のような設計ではなく、あくまでも通常の部屋という印象を与えるように留意すること。

(ロ) 一般衛生特に採光換気に注意し、たとえ格子がはめられ鍵が施されていても、努めて明るい感じを与えるように工夫すること。

(ハ) 児童を一人づつ鍵をかけた個室におくことは不可であって、一室の広さは出来るだけ広くし、その中における児童たちの行動は事情の許す限り自由にすること。

また建物の構造其の他の条件を考え合わせて出来ることならば、各々の室の扉には鍵をかけず廊下の扉に鍵をかけて児童が各室や廊下を自分の行動の範囲とすることが出来るような考慮が望ましいこと。

(ニ) 観察室より観護者が常に児童の生活を観察し、児童から何等かの意思表示があった場合には必ずこれに応ずることが出来るようにすること。

(ホ) 火災等の非常時に際し、児童の完全救出が出来るよう建物の構造上に留意すること。

(3) 一時保護を加えつつある児童が、逃走を企てた場合には、其の児童の意志に反しても、これを連れ戻すことが出来ること。

(4) 一時保護を要する児童が警察官、公吏によって発見され、児童相談所がこれを直ちに引き取ることが不可能であるような事情にある場合には、児童相談所長はその児童の一時保護を警察署長に委託することが出来ること。

但し、此の場合警察署ではその児童を保護的な立場から取り扱うべきは勿論であって、従ってその一時保護は保護室に於いて行うべく、その期間も特に必要ある場合の外は原則として二四時間を超えてはならないこと。

3 教護院、養護施設等より児童が逃亡した場合には施設の長は、児童福祉法第四七条の児童福祉施設の長が行う親権を以ってその児童の意思に反しても、強制的にこれを連れ戻すことが出来ること。

4 教護院において少年法第一八条第二項によって送致された児童に対し、家庭裁判所の決定による指示に従い強制的措置をとるための特別監護の設備についても、2の(2)の(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)に準ずること。

なおこの場合家庭裁判所から指示される保護の方法やその他の措置は、個々の場合について教護院で行いうる強制力行使の最高限度を示されるものと思われるから、必ずその限度までの強制措置を行わねばならないわけでなく、教護院長の技能によって、能う限り最小の強制力行使にとどめ、出来うれば、これを全く行使しないことが理想であること。

5 この通知によって強制力を行使しうる教護院は、昭和二四年六月一五日発児第七二号「児童福祉法と少年法の関係について」第二(四)により指定された教護院に限るものであることは従前の通りである。

従って、同第七二号をもって指定された九都府県としては、この通知に従って準備を進められたいこと。

また、本年度公共事業費をもって設置を予定されている強制収容室に関しては、この通知によるのであるが、建物の構造については、追って図面を作成し、参考として送付する予定であること。