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○児童福祉法の一部を改正する法律〔第五次改正〕の施行について

(昭和二六年一一月八日)

(発児第六九号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官依命通達)

児童の基本的人権を保障する基本的立法として、児童福祉法は、制定以来各関係者の不断の努力と協力によつて漸次この法律の所期の目的に近づきつつあるが、本年三月には、わが国の社会福祉事業の公明且つ適正なる運用の確保を図るため社会福祉事業法が制定せられ、同法に基き設置される福祉事務所が本法の事務も所掌することになつたことに伴い、これと既にある児童相談所、児童福祉司との間の権限の調整を図ること及び本法施行以来の経験に鑑み、必要な条項を補足し、もつて児童の福祉を保障する体制を一段と充実促進するために、第一○回国会において、児童福祉法の一部を改正する法律(昭和二六年六月六日法律第二○二号。以下「改正法」という。)が制定せられ、またこれに伴い、児童福祉法施行規則の一部を改正する省令(昭和二六年一○月一九日厚生省令第四三号。以下「改正省令」という。)が公布されたのであるが、この改正法及び改正省令の運用の適否は、児童の福祉に影響するところ極めて大なるものがあるので、特に左記事項について周密な注意を払い、改正の趣旨の徹底を十分に図り、もつて所期の目的を達成するよう格段の努力をいたされたく、命によつて通知する。

なお、この通知においては、改正前の児童福祉法を旧法と略称する。

第一 改正の主要事項

改正の主要事項は、おおむね、左のとおりである。

一 社会福祉事業法に基き設置される福祉事務所と本法の児童相談所、児童福祉司との間の所掌事務の範囲及び権限を明確にしたこと。

二 福祉事務所の設置に伴い、助産施設及び母子寮への入所の措置権を都府県知事、市長及び福祉事務所を設置する町村長の権限としたこと。

三 身体障害者福祉法と対応して、本法においても身体に障害のある児童に対する福祉の措置を定めたこと。

四 年長児童の保護指導の一手段として保護受託者制度を創設したこと。

五 教護院の教科に関する規定を整備したこと。

六 児童福祉施設の長の行う親権行使に関する規定を整備するとともに、新たに児童福祉の観点より、児童相談所長に、家庭裁判所に対して親権喪失の宣告及び後見人の選任又は解任の請求をする権限を付与したこと。

七 私人の設置する児童福祉施設に対し、設備費補助の途を開いたこと。

八 厚生大臣が、児童福祉施設の職員を養成する学校その他の施設を指定する場合における当該指定を受ける手続規定を定めるとともに、保母を養成する学校その他の施設の指定要件を明確にしたこと。

第二 福祉事務所と児童相談所、児童福祉司との関係に関する事項(改正法第一一条第二項、第四項、第一一条の二、第一五条の二、第一六条の二、第一八条の二、第一八条の三、第二五条、第二五条の二、第二六条、第二七条、附則第三項、第四項、第五項)

一 社会福祉事業法第一三条の規定に基き設置される福祉事務所(同法附則第七項の規定に基き支庁又は地方事務所に置かれる組織を含む。)が、児童福祉法の施行についても児童相談所とともに第一線の現業処理機関として活動することが児童福祉法において具体的に明らかにされたので、福祉事務所が生活保護法の施行事務だけでなく、児童福祉法の施行事務についても十分な活動をして、もつて児童福祉の実を適切にして而も効果的にあげるようその指導には細心の注意を払うこと。

二 改正法第二五条の要保護児童の通告は、福祉事務所でも児童相談所でも受理できるのであるが、警察関係職員による通告は、一般に不良行為に関するケースであつて、その処理には専門的に高度の知識と技術とを必要とし、且つ、その多くは一時保護を必要とするものであるから、軽易なものを除き、原則として、児童相談所が通告を受理するようにすること。

三 改正法第二五条の二と第二六条は、終局的には、児童相談所が高度に専門的な知識と技術を必要とするケースを取り扱い、福祉事務所がその他の一般軽易なケースを取り扱うというふうに相互の活動分野を規定したものであるから、ケースの処理にあたつては両機関がそれぞれの特質に応じ緊密な連携をとつて活動するようその指導に努めること。

なお、専門的なケースとは、問題が環境的な原因とともに児童本人の素質に原因する問題行為のあるもの、複雑困難な家庭環境に原因する問題をもつもの及び何等かの原因で児童をその家庭からひきはなす必要のあるものをいい、その他の一般軽易なケースとは、問題の原因が主として児童の環境にあり、保護の実施が比較的容易と判断されるものをいうこと。

四 福祉事務所の設置に伴い、児童相談所のより一層の専門技術化が図られ、所長、判定を掌る所員、相談、調査を掌る所員については新たに専門的資格を必要とすることとなつたので、これら職員の確保充実には格段の意を用いられたいこと。早急に常勤の専門技術職員を得られない場合においても、差し当つて非常勤の職員を嘱託してその充実を図ること。

なお、所長の資格については、改正法附則第五項で経過規定が設けられていること。

五 児童相談所の構成については、措置部、判定指導部、一時保護部の三部制をとつて、その有機的な運営をはかることが望ましいこと。いま各部の機能を掲げると次のとおりであること。

(1) 措置部、法第二七条の措置を行うために必要な業務並びに児童及びその家庭について必要な調査及び指導を行う。

(2) 判定指導部、措置部の行う措置を適切にするため必要な専門的判定を行うとともに、児童の各般の問題につき、家庭その他の相談に応じ、必要な判定及び指導を行う。

(3) 一時保護部 児童に必要な一時保護を行うとともにその生活観察を行う。

なお、判定指導部における判定は、チーム活動によつて決定されるもので、単独の判定員によつて決定されるものでないことは改正法第一六条の二第三項の趣旨でもあるので、判定指導部の業務活動は、判定会議を行う等適切な方法によつて有機的な活動の下に実施するよう指導すること。

六 地方児童相談所で判定を掌る所員がいない現状においては、中央児童相談所の判定を掌る所員が、定期的に巡回して、判定業務を補充するよう指導すること。

なお、「判定」というのは、いわゆる診断のことであつて、児童に関する問題、児童の人格形成及び児童の置かれている環境等について科学的に明らかにすることによつて問題を原因的に判定することをいい、それは、医療行為としての診断よりも広い概念であつて、臨床心理学者、ソシアル・ケース・ワーカー等が行う専門的判断をも含むものであること。

七 社会福祉主事の設置に伴い、児童福祉司は、専門的なケースの指導処置にあたることをその任務とすることになつたので、その活動にあたつては一般的ケース・ワーカーである社会福祉主事と密接な連絡をとり、相互に協力して児童福祉の実をあげるよう指導すること。

なお、専門的なケースについては三のところで述べてあることと同様であること。

八 児童福祉司は、都道府県本庁の職員であつて、都道府県知事の定める担当区域によりその職務を行うものであるが、この場合職務執行の拠点は、原則として児童相談所とし、職務執行上多大の不便のあるときは福祉事務所とすること。但し、児童福祉司の本質に鑑み、児童相談所の職員とすることは差し支えないこと。

福祉事務所に拠点をおいた児童福祉司は、常に児童相談所と緊密な連絡をはかり、専門技術の低下をきたさぬよう努めるとともに、児童問題の処理について福祉事務所の良き助言者となるよう工夫と努力をすること。

九 改正法第一一条第四項の規定によつて児童福祉司が児童及び妊産婦の保護、保健その他福祉に関する事項について相談に応じ、指導を行うにあつては、児童相談所長の指揮監督をうけることになつたが、児童福祉司が指揮監督をうける児童相談所長は、当該児童福祉司が担当する区域を管轄する児童相談所の長を指し、指揮監督の範囲は児童福祉司が行うケース・ワークの職務に直接関連したその技術指導に限定されるものであつて、身分上の監督は都道府県本庁が行い、児童相談所の職員になつた場合には、身分上の監督も当該児童相談所長が行うこと。

一○ 児童福祉司についても専門的資格を必要とすることとなつたので、その確保充実には格段の意を用いられたいこと。

なお、現に任用されている児童福祉司については、改正法附則第四項で経過規定が設けられていること。

第三 福祉の措置権の調整に関する事項

(改正法第二二条、第二三条、第二四条、第二五条の二第三号、第二六条第四号、第三二条第二項、第五○条第六号の二、第五九条の二、第五九条の三、附則第三項、改正省令第一九条)

一 福祉事務所の設置に伴つて、助産施設及び母子寮への入所の措置権は、従来画一的に市町村長が行つていたのであるが、これを福祉事務所を管理する機関がこれを行うことに改められたこと。したがつて、市及び福祉事務所を設置する町村の区域に居住する妊産婦又は母子については、従来と同様、その市町村長が措置権を行うが、福祉事務所を設置しない町村の区域に居住する妊産婦又は母子については、その町村の区域を管轄する福祉事務所を管理する都道府県知事が措置権を行うものであること。

二 右の措置権を行う者の変更に伴い、改正法第二二条及び第二三条の措置に関する相談、調査等の現業の処理は、すべて措置をうける者の居住地又は現在地を管轄する福祉事務所がこれに当ること。したがつて、助産施設又は母子寮入所の申請書類は、当該申請者の居住地又は現在地を管轄する福祉事務所へ提出させること。但し、福祉事務所を設置しない町村にあつては、当該町村の長を経由して申請書を提出させても差し支えないこと。

三 改正法第二二条及び第二三条の措置についても、措置権者と現業処理者とを一体化して事務の能率を図るために、措置をとる権限の全部又は一部をそれぞれその管理する福祉事務所の長へ委任することが望ましいこと。

なお、社会福祉事業法附則第七項によつて支庁又は地方事務所に組織が置かれている場合には、都道府県知事は、右の権限の委任を支庁長又は地方事務所長に対してなすこと。

四 都道府県知事が改正法第二二条又は第二三条の措置をとつた場合、その措置費は、当該都道府県の支弁となるが、市長及び福祉事務所を管理する町村長が措置をとつた場合のその措置費の支弁は従来通りであること。

五 地方自治法第二八四条の規定により、町村が集つて一部事務組合を設け、福祉事務所を設置した場合には、その組合を「福祉事務所を設置する町村」とみなし、その組合の長を「福祉事務所を管理する町村長」とみなすこと。したがつて、助産施設又は母子寮への入所の措置権は当該組合の長が行い、措置費はその組合が支弁するものであること。

六 社会福祉事業法第一三条第四項の規定により、町村は福祉事務所を設置するか否かはその任意にまかされているが、同法同条第七項の規定により、毎会計年度の始期又は終期において、町村が新たに福祉事務所を設けたとき、又は廃止したときは、四月一日以降の助産施設又は母子寮への入所措置権は、都道府県知事から当該町村長に、又は当該町村長から都道府県知事に移ること。この場合、三月三一日までになされた入所の申請、入所の措置等は、四月一日に措置権者の変更があつても、同日以降は、新措置権者の申請受理、入所措置等とみなされて有効に存続すること。前措置権者により措置された者の三月三一日までの措置費のうち、前措置権者の属する地方公共団体が支弁すべき分で未払の分については、四月一日以降の措置権者の変更とは無関係に前措置権者の属する地方公共団体が支弁するものであること。

措置権者が、改正法第二二条又は第二三条の措置に関して、その措置費のうち本人又は扶養義務者の負担すべき額を決定して徴収した後、右により措置権者に変更があり、その後訴願が提起されて当該徴収額の減額が裁決されたときは、その差額は、前の措置権者の属する地方公共団体が負担するものであること。

七 本年十月一日より助産施設及び母子寮への入所の措置権が町村長より都道府県知事に移つた場合、これらの町村長が既になした入所措置等の効力並びに費用の支弁及び負担関係については、六を準用すること。

八 保有所は、地理的に利用される範囲が極めて限定されるので、その措置権者は従来通り市町村長とされていること。

九 市及び福祉事務所を設置した町村においては、法第二四条の措置に関する相談、調査等の現業の処理は、すべて措置を受ける者の居住地又は現住地を管轄する市又は町村の福祉事務所がこれに当ること。したがつて、この場合の保育所入所の申請書類は当該申請者の居住地又は現在地を管轄する福祉事務所へ提出させること。

なお、法第二四条の措置についても、措置権者と現業処理者とを一体化して事務の能率を図るために、措置の権限の全部又は一部をそれぞれ、その管理する福祉事務所の長へ委任することが望ましいこと。

一○ 福祉事務所を設置しない町村においては、法第二四条の措置に関する相談、調査等の現業の処理は、その町村で行うものであること。しかし、この場合においても、その町村の区域を管轄する都道府県の福祉事務所で、保育所入所の相談に応ずる児童もありうるから(改正法第二五条の二)、町村長は常に右の福祉事務所と密接な連絡をとるよう指導すること。

第四 身体に障害のある児童に対する福祉の措置に関する事項

(改正法第二一条の二、第二一条の三、改正省令第一八条の二)

一 身体に障害のある児童の福祉については、今回の改正によつて、児童の保健及び福祉の両面からその福祉の措置が行われることになつたので、関係機関が密接な連絡と協力をとり、その適切な運営につき、格段の努力をするよう指導するとともに、この制度の周知徹底については、特に意を用いられたいこと。

二 保健所長の行う療育についての相談、指導は、視力、聴力、言語機能又は四肢体幹の機能に持続的な障害のある児童に対して行われるのであつて、身体障害者手帳の交付をうけた児童と必ずしもその範囲を一にするものでないこと。

右の相談、指導は、早期に発見し適当な治療を施すことによつて機能の回復を計ることに重点をおくものであるから、児童福祉司、社会福祉主事、身体障害者福祉司、児童委員、保健婦、助産婦、学校の職員等の協力を得て早期発見と早期治療の指導に努めること。

三 保健所で相談に応じた児童で盲、ろうあ・・・児施設又は体不自由児施設等に入所する必要のあるものは、意見を附して児童相談所に報告し、又は通知すること。

なお、治療を必要とする者は専門医療機関に紹介あつ・・旋すること。この場合、治療費を負担できない者であつて、生活保護法の医療扶助を受けることができる者は、その適用をあつ・・旋すること。

また、児童が、満一八歳に達すれば、事後の診査、更生相談等の福祉の措置は、身体障害者福祉法に基いて行われるのであるから、事前に身体障害者更生相談所に対しても、必要な事項を連絡しておくこと。

四 盲人安全つえ・・及び補装具等の交付又は修理は本法によつて行われるが、その基礎となる身体障害者手帳(以下「手帳」という。)は、身体障害者福祉法によつて交付されるものであり、いま同法による手帳の交付について述べると、次のとおりであること。

(1) 手帳の交付を受けようとする場合は、一五歳以上の者にあつては本人、一五歳未満の者についてはその保護者(親権を行う者又は後見人をいう。以下手帳に関し同じ。)が代わつて、申請するものであること。(身体障害者福祉法第一五条第一項)。

したがつて、改正法第四七条第一項の規定により親権を行つている児童福祉施設の長は、当該児童福祉施設に入所している一五歳未満の児童に代わつて手帳の申請をすることとなること。

(2) 手帳交付の申請は、都道府県知事の定める医師の診断書等をそえて、居住地を管轄する福祉事務所長を経由して知事にするのであつて、福祉事務所を設置しない町村の区域に居住する者は、その町村の区域を管轄する都道府県の福祉事務所長を経由して知事にするものであること。但し、後者の場合には町村長を経由して申請することができるものであること。(身体障害者福祉法施行規則第四条)。

(3) 都道府県知事は、申請に基いて審査し、その申請書経由の福祉事務所長を経て、本人に交付し、又は却下するものであること。

(4) 福祉事務所長は、手帳の交付を受けた一八歳未満の者(身体に障害のある一五歳未満の者については、身体障害者手帳の交付を受けたその保護者)についてその居住地を管轄する保健所長に、交付を受けた者の氏名、居住地、生年月日、交付年月日、障害名及びその程度等について通知するものであること。(身体障害者福祉法施行規則第七条、第一二条の二)。

五 盲人安全つえ・・及び補装具等の交付又は修理については、現物の交付又は修理とそれに代え、そのために必要な金銭の支給の二つの方法があるが、現物給付を原則とし、金銭の支給は、現物の交付又は修理ができない場合に限り行うものであること。

右のうち、現物の交付又は修理に当つては、交付券又は修理券を用いるものであること。

六 盲人安全つえ・・及び補装具等の交付又は修理の申請に当つては、手帳及びその費用の負担能力に関する市町村長の認定書を添えて、その居住地を管轄する福祉事務所長(したがつて、市及び福祉事務所を設置する町村の区域に居住する者はその市及び町村の設置する福祉事務所長である。)を経由して都道府県知事に申請するものであるが、都道府県知事の指定する保健所において、療育の指導を受けている者はその保健所の長を経由して申請することができるものであること。(この場合にも、手帳及び費用の負担能力に関する認定書を添える必要のあることもち・・論である。)

なお、右の保健所の指定は、差し当り、一都道府県一カ所ないし三カ所程度とされたいこと。

七 福祉事務所長又は保健所長は、右の申請を受理したときは、手帳を審査のうえ、その手帳を当該申請者に返還し、且つ、当該申請書に意見を附して、前項の認定書とともに都道府県知事に進達すること。

八 盲人安全つえ・・及び補装具等は、都道府県知事が申請を審査のうえ、申請書を経由した福祉事務所長又は保健所長を経て交付するものであること。但し、金銭を支給する場合は、すべて福祉事務所長を経由するものであること。

申請を却下するときは、その旨を文書をもつて、その経由機関を経て、申請者に通知するものであること。

九 補装具の交付又は修理に当つては、その装着について、本人又はその保護者が必ず保健所の専門職員か民間の専門医の指導を受けるよう、又現物の製作については、補装具製作者が同様の指導を受けるよう指導に努めること。

一○ 盲人安全つえ・・及び補装具等の交付又は修理に関する経理その他の事務は、民生部児童課で行うこと。

一一 なお、以上のほか、この取り扱いについては、別途通知の予定であること。

第五 保護受託者に関する事項

本制度の手続については大体里親制度に準ずることになるが、その細目については、昭和二六年一○月二三日児発第一、三一三号児童局長通知「保護受託者制度の運営に関する件」によられたいこと。

第六 親権喪失の宣告、後見人の選任、解任の請求に関する事項

(改正法第三三条の二、第三三条の三、第三三条の四)

一 児童相談所長が行う親権喪失の宣告の請求は、親権が児童の育成のために設けられている権利であるとともに義務であり、その行使には常に児童の福祉が考えられなければならないという趣旨に基くものであること。児童の親権者が、その親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、児童相談所長は、民法第八三四条に規定する子の親族又は検察官とともに、児童の福祉に関する公の代表者として、児童相談所長の判断により、たとえこれらの者から請求がない場合であつても、当該親権者の住所地の家庭裁判所に対し親権喪失の宣告の請求をすることができること。親権喪失の宣告は、家事審判法第九条第一項甲類に掲げる事項と解すること。親権喪失の宣告の請求は、保護者に監護させることが不適当な児童として改正法第二五条により通告せられ、これに基き児童相談所長が行う改正法第二六条の措置とならんで行われることが多いと思われるが、改正法第二五条の通告がなくても児童福祉司、社会福祉主事又は児童委員その他児童の福祉につき関心を有する人々の協力を得て、親権を濫用し、又は著しく不行跡である親権者を適確に把握するとともに、親権喪失の宣告をうけた者の児童につき、改正法第三三条の三に規定する後見人の選任その他その児童の福祉に必要な措置をとること。

二 児童相談所長が、改正法第三三条の三の規定により行う後見人の選任の請求は、児童の福祉のため必要な場合に行うべき義務とされており、その後見人の選任の請求は、民法第八四一条に規定する利害関係人の行う後見人の選任の請求として取り扱われること。後見人の選任は、家事審判法第九条第一項甲類に掲げる事項に属し、その審判事件は、家事審判規則第八二条の規定により、被後見人すなわちこの場合は児童の住所地の家庭裁判所が管轄すること。後見人選任の請求は、保護者のない児童として改正法第二五条により通告せられ、これに基き、児童相談所長が行う改正法第二六条の措置とならんで行われることが多いと思われるが、改正法第二五条の通告がない児童についても、親権を行う者及び後見人のない者を適確に把握し、その児童の福祉のため必要なときは、後見人選任の請求を行うこと。後見人の選任にあたつては、後見人として適当と考えられる者をあらかじめ考慮しておき、適当な者がない場合か、児童相談所長が最も適当であると考えるときには、児童相談所長(その所長たる職)を後見人とするよう申し出ても差し支えないこと。

三 児童相談所長が行う後見人解任の請求は、未成年者の後見人が民法第八五七条の規定により親権を行う者と同一の権利義務を有するが故に、後見人がその職務を行うに当つては、常に児童の福祉が考えられねばならぬという趣旨に基くものであること。児童の後見人に不正な行為、著しい不行跡、その他後見の任務に適しない事由があるときは、児童相談所長は、民法第八四五条に規定する後見監督人又は被後見人の親族とともに、児童福祉に関する公の代表者として、児童相談所長の判断により、たとえこれらの者から請求がない場合であつても、家庭裁判所に対し後見人の解任を請求することができること。後見人の解任は、家事審判法第九条第一項甲類に掲げる事項と解し、その審判事件は、家事審判規則第八六条の規定により、後見人の住所地の家庭裁判所が管轄すること。後見人の解任の請求は、保護者に監護させることが不適当な児童として、改正法第二五条により通告せられ、これに基き、児童相談所長が行う改正法第二六条の措置とならんで行われることが多いと思われるが、改正法第二五条の通告がなくても児童福祉司、社会福祉主事又は児童委員、その他児童の福祉につき関心を有する人々の協力を得て不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由がある者を適確に把握するとともに、その後見人を解任された児童につき、改正法第三三条の三に規定する後見人の選任その他児童の福祉に必要な措置をとること。

第七 児童福祉施設の長の行う親権に関する事項

(改正法第四七条、改正省令第三九条)

児童福祉施設の長は、入所中の児童で親権を行う者又は後見人のないものに対し、親権を行う者又は後見人があるに至るまでの間親権を行う義務を有することになり、この義務の履行のうち、民法第七九六条の規定による縁組の承諾については、改正省令第三九条に規定する許可の申請を都道府県知事に対して行うことになつているが、都道府県知事は、養子縁組が児童に及ぼす身分法的効果の重要なるに鑑み、児童福祉司、社会福祉主事又は児童委員等をして当該縁組につき児童の意思、児童及び養親になろうとする者の家庭の状況等を慎重に調査させ、適当と思われる場合に限り許可すること。

児童福祉施設の長は、親権を行う者又は後見人のある児童の場合には親権を行うことができないが、監護、教育及び懲戒に関し、その児童の福祉のために必要な措置をとることができるから、指導のため必要なときには、適当なしつけ・・・を施し、児童が児童福祉施設から無断外出しようとするときこの児童を児童福祉施設に連れ戻す措置をとり得ること。

第八 児童福祉施設に入所中の児童の教育に関する事項

(改正法第四八条)

一 養護施設、精神薄弱児施設、虚弱児施設、盲ろうあ・・・児施設及び体不自由児施設に入所している児童の義務教育については、旧法においては「学校教育法の定めるところによる」と規定せられていたので、その児童を就学させるべき義務は、当該施設の長が負うのか、その保護者に依然として全面的に就学の義務が残されているのか明らかでなかつたので、改正法第四八条第一項の規定において、当該児童福祉施設の長が学校教育法第二二条並びに第三九条等に規定する保護者に準じて、直接就学させる義務を負うことが明らかにされたものであること。但し、精神薄弱児及び体不自由児施設においては、入所中の児童のうちには就学を猶予又は免除される者が多いことと思われるので、この就学を猶予又は免除された児童については就学させる必要はないが、その代わりその児童の性能に応じた適切な学習指導を行うように努めること。

二 教護院に入院中の児童の教育に関する今回の改正の要点は、つぎのとおりであること。

(1) 教護院の長は、在院中学校教育法の規定による小学校又は中学校に準ずる教科を修めた児童に対し、修了の事実を証する証明書を発行することができること。

(2) 教護院の長は、右の教科に関する事項については、従来は、文部大臣の承認を受ける必要があつたが、今後は、文部大臣の承認を必要としないこと。したがつて、教育を担当する職員の研修、学科教育の方法等について十分研究努力を払うこと。

なお、今後文部大臣の勧告があつたときには、これに従うこと。

(3) 教護院の長が発行する証明書は、学校教育法により設置された各学校(小学校、中学校、養護学校等)と対応する教育課程について各学校の長が授与する卒業証書その他の証書と同一の効力を有すること。

(4) 教護院の長が右の(2)の文部大臣の勧告に従わないで、且つ、当該教護院における教科が著しく不適当である場合において、文部大臣が厚生大臣と協議して、当該教護院を指定したときは、当該教護院の長が発行する卒業証書その他の証書は右の(3)の効力を有しないこと。

(5) 今回の改正は、教護院における教護がすべて児童の不良性を除くことを目的とするところにある点に鑑み、教護院において教護の目的に合致した自主的な学科教育を行わせるための措置であるから、教護の見地からこれに創意と工夫を加え、教護院の目的達成に遺憾のないように努めること。

第九 私立児童福祉施設に対する設備費の補助に関する事項

(改正法第五六条の二、第五六条の三)

一 改正法第五六条の二第一項の規定により、都道府県が私人の児童福祉施設に対し、創設費を除いた修理、改造、拡張又は整備に要する費用の補助金を交付する場合には、同項各号に掲げる要件に適合することが絶対的要件であるから、その取扱については、特に慎重を期されたいこと。「整備に要する費用」とは、建物以外の設備、物品等に要する費用をいい、「四分の三以内」とは四分の三は最高額を意味し、それ以下であつても差し支えないこと。

二 改正法第五六条の二第二項の規定は、補助がなされた当該児童福祉施設に対し、厚生大臣及び都道府県知事が、一般監督のほか、特別監督をなすことによつて、当該児童福祉施設が公の支配・・・・に属するものであることを明確にしたものであること。したがつて、憲法第八九条又は地方自治法第二三○条との抵触はないものであること。

三 改正法第五六条の二第三項による国庫の補助は、都道府県が児童福祉施設に対して補助した金額を基礎として、その金額の三分の二以内を補助するものであつて、国庫が直接に施設に補助する意味ではないこと。

なお、最高額の補助がなされた場合においては、終局的には、国が五○%、都道府県が二五%をそれぞれ補助し、施設が二五%を支出することになること。

四 本補助の具体的運営については、各年度において通知する予定であること。

なお、本年度については、昭和二六年五月三一日児乙発第三号「昭和二六年度法人の設置する児童福祉施設に対する国庫補助協議について」によるものであること。

第一○ 保母に関する事項

(改正省令第三九条の二から第三九条の八まで、第四一条、第四一条の二第三項、第四項、第四一条の三)

一 保母の養成に関する事項のうち、保母を養成する学校又は施設(以下「養成施設」という。)の設置及び運営に関しては、昭和二三年四月八日児発第一八○号児童局長通知により示したところであるが、児童福祉施設における児童の保護に保母の果す機能の重要なるに鑑み、保母養成施設が児童福祉法施行令第一三条第一号の指定を受けるに必要な要件を改正省令に規定することにしたこと。

既に、厚生大臣の指定をうけた養成施設については、特に経過規定が設けられていないが、指定の効果は存続すること。したがつて、改正省令第三九条の二に規定する設置基準に合致すること及び第三九条の五に規定する報告を提出することが要求されることはいうまでもないこと。改正省令第三九条の三に掲げる書類の提出に関しては、当然その義務はないが本省における指導の便宜のため第一項各号に掲げる書類について昭和二六年一二月二○日までに提出するよう指導し、その後において、同条第二項又は第三項に掲げる事項について、変更しようとするとき、又は変更のあつたときは、承認又は届出をさせるようにし、その取扱は同条第二項又は第三項の規定に準ずるよう周知せしめること。

二 保母試験の科目に児童福祉事業概論を加えたのは、従来の社会事業一般から児童の福祉に関する事項を独立させたものであること。

なお、保母試験に関しては、昭和二七年三月末日までに別途通知の予定であること。

第一一 その他の事項

(改正法第五条、第二七条第三項、第二七条の二、第二八条第一項、第三○条第一項、第三一条、第三二条、第三九条、第四三条、第四六条の二、第五六条第三項)

(改正省令第二八条、第二八条の二、第三七条第一項第三号の二)

一 改正法第五条の「親権を行う者」というのは、民法上の親権者である父母(民法第八一八条、第八一九条)のほか、親権の代行者即ち未婚であつて、子を有する未成年者に代わつて、その子に対して親権を行う当該未成年者の親権者又は後見人(民法第八三三条、第八六七条)及び改正法第四七条第一項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を含むものであり、旧法の親権者の意味も右と同様に解していたのであるが、改正法はこれを民法上の用語に統一したものであること。

なお、改正法にいう保護者とは、たとえ親権を行う者又は後見人であつても、児童を現に監護していない場合には、保護者に該当しないことは従来と同様であること。

二 改正法が第二七条第三項、第二八条第一項及び第三○条第一項中「親権者」を「親権を行う者」に改めたのは、右の趣旨と同様であるが、これらの各条においては、児童福祉施設の長を含める余地がないので、改正法第二七条第三項は括弧書きにおいてこれを除外したものであること。

三 改正法第三九条中「保育に欠ける」という字句がそう・・入されたのは、保育所と幼稚園との性格を明確にするためであるから、保育所の運用については、この趣旨に従い、入所の措置、施設の認可、監督等に当られたいこと。

四 改正法第四三条が「指導」を「指導又は援助」に改めたのは、就学年齢にある盲ろうあ・・・児については義務教育制がとられているから、その学習のための援助を盲ろうあ・・・児施設が行い、就学年齢に該当しないその他の盲ろうあ・・・児に対しては、指導を行うという意味であり、学校教育との調整を図つたものであるが、その実体的関係は従来と大差ないものであること。

五 改正法第四六条の二は、従来必ずしも明確でなかつた児童福祉施設の長の受入義務を法文化したものであるから、施設の効率的活用と措置の促進に努められたいこと。

本条にいう「児童福祉施設の長」とは、民間のほか、市町村立、都道府県立のすべてを含むものであること。

なお、この場合において、地方自治法第二一一条の適用はないものと解する。また、「正当な理由」とは、当該施設に収容能力がないとき、当該措置児童に伝染性疾患があつて、他の収容児童に感染するおそれがある場合等をいうものであること。

六 改正省令第三七条第一項に第三号の二が加えられたのは、児童福祉施設の人的構成いかんが将来における当該児童福祉施設の運営の成否を決する要因となることに鑑み設けられたのであるから、その認可にあたつては、これらの者が児童福祉施設の運営に関し、熱意、能力等を有するかどうかを勘案して認可されたいこと。

同号にいう「経営の責任者」とは、施設を具体的に経営するに当り、直接その中心となつて責任を負うている者をいい、それには児童福祉施設の長が該当する場合もあり、又財団法人における理事、理事のうちの理事長又は常務理事、人格なき場合におけるこれらに相当する人等が該当する場合もあると思われるから、具体的な場合について個々に判断すること。

「幹部職員」とは、右以外の者で施設の運営の実務につき、指導的な地位にある者をいい、例えばいわゆる保護主任、保母主任、婦長等がこれに相当すると思われるが、その名称はいろいろ異なると思われるから、実体に即して判断すること。

七 改正法第五六条第三項は、昭和二六年度に限り適用停止されることになつたので、その運営につき誤のないようにすること。

八 改正省令第二八条の規定によつて、改正法第二二条、第二三条本文、第二四条本文、第二五条の二第二号、第二六条第一項第二号又は第二七条第一項第二号若しくは第三号の措置をとる権限を有する者は、児童の福祉のため適当と認めたときは、何時でも職権的に当該措置を解除し、停止し、又は他の措置に変更することができるとされたこと。しかし、改正法第二二条、第二三条本文、第二四条本文又は第二七条第一項第三号の措置を解除し、停止し、又は他の措置に変更する場合には、児童又はその他の者の保護に当つている児童福祉施設の長の意見をきかなければならないとされていること。

九 法第三二条第一項の規定によつて、改正法第二七条第一項の権限の委任をうけた児童相談所長は、第二七条第一項第三号の措置を解除し、停止し、又は他の措置に変更する権限を有し、又改正法第二七条の二の規定により事件を家庭裁判所に送致する権限及び第三一条の規定により在所期間の延長の特例措置をとる権限を有すること。