添付一覧
○高額療養費及び老人医療の高額医療費等の生活保護法における取扱いについて(通知)
(平成14年9月30日)
(社援保発第0930001号)
(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局保護課長通知)
健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号)、健康保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成14年政令第282号)、老人保健法施行規則の一部を改正する省令(平成14年厚生労働省令第113号)及び健康保険法施行規則等の一部を改正する等の省令(平成14年厚生労働省令第117号)が公布され、平成14年10月1日及び平成15年4月1日より施行することとされたところである。
今回の改正により、福祉事務所における基本的な事務処理方式は変わらないものであるが、被用者保険の給付率や老人医療の高額医療費支給制度等の変更に伴い、医療受給者の自己負担額の変更が生じることから、生活保護の運用に当たっても、医療扶助費の決定や保護の要否判定における医療費所要額の算定等の取扱いについて、下記の事項に留意の上、遺憾なきを期されたい。
また、本通知の施行に伴い、「高額療養費等及び老人医療一部負担金等の生活保護法における取扱いについて」(平成12年12月22日厚生省社会・援護局保護課長通知)は廃止する。
なお、本通知については、厚生労働省保険局と協議済みであるので念のため申し添える。
記
第1 生活保護の運用に関係する健康保険法等の改正内容について
1 老人医療受給対象者に関する事項
老人医療の実施対象となる年齢を70歳以上から75歳以上に引き上げ、老人医療受給対象者を、75歳以上の者及び65歳以上75歳未満の者であって一定程度の障害の状態にある旨の市町村長の認定を受けたものとされたこと。なお、施行日の前日(平成14年9月30日)において70歳以上である者については、75歳以上に該当するに至った日の属する月の末日までの間は、その者を75歳以上の者とみなすこととされたこと。(平成14年10月1日施行)
2 保険給付に関する事項
(1) 健康保険の一部負担等に関する事項
ア 一部負担に関する事項
健康保険の被保険者及びその被扶養者に係る給付率を7割とすることとされたこと。(平成15年4月1日施行)
また、3歳未満の乳幼児については、給付率を8割に、70歳以上の被保険者及びその被扶養者については、標準報酬月額が一定以上の者を除き、原則として9割給付とされたこと。(平成14年10月1日施行)
イ 高額療養費に関する事項(平成14年10月1日施行)
高額療養費の自己負担限度額について、低所得者及び特定疾病については据え置き、一般の者及び上位所得者については必要な引き上げを行うこととされたこと。
また、70歳未満の者については、世帯合算に係る合算対象基準額が21,000円に引き下げられたこと。
70歳以上75歳未満の者については、老人医療の高額医療費と同様に取り扱うこととされたこと。
(2) 老人医療の一部負担等に関する事項(平成14年10月1日施行)
ア 一部負担に関する事項
外来一部負担金に係る月額上限制及び診療所に係る定額負担選択制を廃止し、一定以上の所得がある者を除き、定率1割負担が徹底されたこと。
イ 高額医療費に関する事項
月額上限制等を廃止し、定率1割負担を徹底することとしたことに伴い、老人の患者負担においても、医療機関の窓口で定率負担を支払い、その窓口負担を世帯単位で合算した額が一定額を超える場合には、当該超えた額を老人に対し高額医療費として支払うこととされたこと。
第2 高額療養費支給制度及び老人医療の高額医療費支給制度等と生活保護法との関係等について
1 高額療養費支給制度等と生活保護法との関係等
(1) 70歳未満の被用者保険加入の被保護者の取扱い
被用者保険の被保険者又はその被扶養者であって70歳未満である被保護者(老人医療受給対象者を除く。以下「70歳未満の被用者保険加入の被保護者」という。)が被用者保険と医療扶助の併用にて療養の給付を受けた場合の高額療養費等の取扱いは、次によるものであること。
なお、この場合、高額療養費の支給は保険医療機関である生活保護法指定医療機関に直接支払う、いわゆる現物給付の形で行われるため、患者負担又は医療扶助を行った上で償還払いを受ける取扱いは必要ないものであること。
また、その保護の程度により医療費の本人負担が生じるときは、以下に掲げる世帯負担限度額が、その負担上限となること。
ア 高額療養費の支給要件及び支給額
70歳未満の被用者保険加入の被保護者については、従前と同様、被保険者又はその被扶養者が同一の月にそれぞれ一の医療機関等について受けた療養(食事療養等を除く。)に係る一部負担金等の額が35,400円を超える場合に、レセプト単位で被用者保険から高額療養費として支給され、その額は当該一部負担金等の額から35,400円を控除した額であること。したがって、世帯負担限度額はレセプト単位で35,400円であること。
なお、(3)のウ又はエによる世帯合算及び多数回該当の措置については、70歳未満の被用者保険加入の被保護者は適用とならないものであること。
また、同一の月にそれぞれ一の医療機関等において受けた療養であっても、医科と歯科の療養、外来と入院の療養は、それぞれ別個の医療機関において受けた療養とみなされるので、留意願いたいこと(イにおいても同様。)
イ 特定疾病に係る高額療養費
厚生労働大臣の定める特定疾病(人工腎臓を実施している慢性腎不全、血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第Ⅷ因子障害又は先天性血液凝固第Ⅸ因子障害及び抗ウイルス剤をしている後天性免疫不全症候群(HIV感染を含み、厚生労働大臣が定める者に係るものに限る。))に係る療養(食事療養を除く。)について保険者の認定を受けた場合に関しては、従前と同様、被保険者又はその被扶養者が同一の月に同一の医療機関等について受けた当該療養に係る一部負担金等の額が10,000円を超える場合にレセプト単位で被用者保険から高額療養費として支給され、その額は当該一部負担金等の額から10,000円を控除した額であること。したがって、世帯負担限度額はレセプト単位で10,000円であること。
ウ 入院時食事療養費標準負担額
入院時食事療養費標準負担額については、被保護者に対する特段の定めはなく、(3)のオによるものであること。
(2) 70歳以上の被用者保険加入の被保護者の取扱い
被用者保険の被保険者又はその被扶養者であって70歳以上である被保護者(老人医療受給対象者を除く。)が被用者保険と医療扶助の併用にて療養の給付を受けた場合の高額療養費等の取扱いは、2の(1)による老人医療受給対象者である被保護者に対する高額医療費等の取扱いと同様であること。
(3) 被保護者以外の70歳未満の医療保険加入者の取扱い
被保護者以外の被用者保険の被保険者及びその被扶養者並びに国民健康保険の被保険者であって70歳未満のもの(老人医療受給対象者を除く。)に対する高額療養費等の取扱いは、おおむね次のとおりであること。
ア 高額療養費の支給要件及び支給額
世帯負担限度額は、一般、上位所得者、低所得者の区分ごとに次に掲げる額とし、高額療養費は、被保険者又はその被扶養者が同一の月に同一の医療機関等で受けた療養(食事療養等を除く。)に係る一部負担金等の額の合算額がそれぞれの世帯負担限度額を超える場合に支給され、その額は当該合算額から当該世帯負担限度額を控除した額であること。
① 一般(②及び③以外の被保険者等) 72,300円に療養に要した額の361,500円を超える部分に100分の1を乗じて得た額を加えた額
② 上位所得者(療養のあった月の標準報酬月額が560,000円以上の被保険者等) 139,800円に療養に要した額の699,000円を超える部分に100分の1を乗じて得た額を加えた額
③ 低所得者(市町村民税非課税者である被保険者等又は要保護者である被保険者等であってこの特例による高額療養費の支給があれば保護を要しないもの) 35,400円
イ 特定疾病に係る高額療養費
対象疾病及び自己負担限度額とも(1)のイと同じであること。
ウ 高額療養費の世帯合算
アにより世帯合算の対象となる一部負担金等の額は、被保険者又はその被扶養者が同一の月にそれぞれ一の医療機関等について受けた療養(食事療養等を除く。)に係る一部負担金等の額のうち21,000円以上のものであること。
エ 高額療養費の多数回該当
被保険者又はその被扶養者が、療養のあった月以前の12月以内に既に3回以上高額療養費(被用者保険加入の被保護者、特定疾病等に係る高額療養費を除く。)が支給されている場合の当該療養に係る世帯負担限度額は、一般については40,200円、低所得者については24,600円、上位所得者については77,700円とすること。
オ 入院時食事療養費標準負担額
入院時食事療養費標準負担額は、1日に当たり780円であること。ただし、低所得者(市町村民税非課税者又は要保護者であってこの特例による入院時食事療養費標準負担額の減額があれば保護を要しないもの)であって過去1年の入院期間が90日以下の者については1日当たり650円、過去1年の入院期間が90日を超える者については1日当たり500円となること。
(4) 被保護者以外の70歳以上の被用者保険加入者等の取扱い
被保護者以外の被用者保険の被保険者及びその被扶養者並びに国民健康保険の被保険者であって70歳以上のもの(老人医療受給対象者を除く。)に対する高額療養費等の取扱いは、2の(2)による被保護者以外の老人医療受給対象者に対する高額医療費等の取扱いと同様であること。
2 老人医療の高額医療費支給制度と生活保護法との関係等
(1) 老人医療受給対象者である被保護者の取扱い
老人医療受給対象者である被保護者が老人医療と医療扶助の併用にて療養の給付を受けた場合、高額医療費の取扱いは、次によるものであること。
なお、この場合、高額医療費の支給は、高額療養費の支給の取扱いと同様、保険医療機関である生活保護法指定医療機関に直接支払う、いわゆる現物給付の形で行われるため、患者負担又は医療扶助を行った上で償還払いを受ける取扱いは必要ないものであること。
また、その保護の程度により医療費の本人負担が生じるときは、以下に掲げる世帯負担限度額が、その負担上限となること。
ア 高額医療費の支給要件及び支給額
老人医療受給対象者である被保護者が同一の月にそれぞれ一の医療機関等において受けた療養(食事療養等を除く。)に係る一部負担金等の額が、入院療養にあっては15,000円、外来療養にあっては8,000円を超える場合にレセプト単位で老人保健制度から高額医療費として支給され、その額は当該一部負担金等の額から15,000円又は8,000円を控除した額であること。したがって、世帯負担限度額はレセプト単位で15,000円又は8,000円であること。
なお、老人医療受給対象者である被保護者の高額医療費の算定に当たっては、同一の月に受けた外来療養に係る一部負担金等の額を合算した額(外来一部負担金合算額)及び同一の世帯に属する者が同一の月に受けた療養に係る一部負担金等の額を合算した額から外来の高額医療費の支給額を控除した額(一部負担金等世帯合算額)は用いないこととされているため、高額医療費の額は、レセプト単位ごとに、それぞれ算定されるものであること。
また、同一の月にそれぞれ一の医療機関等において受けた療養であっても、医科と歯科の療養、外来と入院の療養は、それぞれ別個の医療機関において受けた療養とみなされるので、留意願いたいこと。
イ 特定疾病の取扱い
対象疾病及び世帯負担限度額とも1の(1)のイと同じであること。
ウ 入院時食事療養費標準負担額
入院時食事療養費標準負担額については、被保護者についての特段の定めはなく、(2)のウによるものであること。
(2) 被保護者以外の老人医療受給対象者の取扱い
被保護者以外の老人医療受給対象者に対する高額医療費等の取扱いは、別添「老人医療の高額医療費の支給及び食事療養に係る標準負担額の特例的措置の取扱いについて」(平成14年9月12日保総発第0912001号厚生労働省保険局総務課長通知)のとおりであること。
なお、この際、高額医療費の算定に用いる世帯負担限度額及び外来自己負担限度額並びに入院時食事療養費標準負担額は、おおむね次のとおりであること。
ア 世帯負担限度額
① 一般の世帯(②、③及び④以外の世帯) 40,200円
② 一定以上所得者(定率2割負担の対象者)の世帯 72,300円と、療養に要した額の361,500円を超える部分に100分の1を乗じて得た額を加えた額。ただし、療養のあった月以前の12月以内に高額医療費が支給されている月数が3月以上ある場合には、4月目以降は40,200円とする。
③ 低所得者Ⅱの世帯(市町村民税非課税者の世帯又は要保護者であってこの特例による高額医療費の支給を受け、かつ、入院時食事療養費標準負担額が650円に減額されれば保護を要しない者として市町村長(特別区長を含む。以下同じ)の認定を受けているものの世帯) 24,600円
④ 低所得者Ⅰの世帯(市町村民税非課税者のうち、所得が一定の基準に満たないものの世帯又は要保護者であってこの特例による高額医療費の支給を受け、かつ、入院時食事療養費標準負担額が300円に減額されれば保護を要しない者として市町村長の認定を受けているものの世帯) 15,000円
イ 外来自己負担限度額
① アの①に属する老人医療受給対象者 12,000円
② アの②に属する老人医療受給対象者 40,200円
③ アの③又は④に属する老人医療受給対象者 8,000円
ウ 入院時食事療養費標準負担額
① アの①又は②に属する老人医療受給対象者 1日 780円
② アの③に属する老人医療受給対象者で、過去1年の入院期間が90日以下のもの 1日 650円
③ アの③に属する老人医療受給対象者で、過去1年の入院期間が90日を超えるもの 1日 500円
④ アの④に属する老人医療受給対象者 1日 300円
第3 生活保護運用上の留意点
1 保護の要否判定に当たっての留意点
保護の申請を行った者又は保護継続中の者について要否判定を行う際、最低生活費のうち医療費所要額(入院時食事療養費標準負担額を含む。以下同じ。)の算定については、第2の1の(3)及び(4)並びに2の(2)に掲げるものを用いるが、いずれも低所得者の特例の適用があったものとして行い、これにより算定した医療費所要額に収入充当額が満たない場合に生活保護が適用となること。
なお、被用者保険において被扶養者として認定されている者であって、扶養関係にある被保険者と同居せず、低所得者であるものについては、当該被保険者が低所得者でない場合、高額療養費又は高額医療費等の算定において低所得者には当たらない。しかし、こうした者について保護を開始すると、被保護者の特例による高額療養費又は高額医療費等が適用となり、結局保護は不要となる場合があるが、さらにこのため保護を廃止すると再度要保護状態となるという循環が生じ、煩瑣な状況に陥ることから、こうした被扶養者についても低所得者として要否判定上取り扱うこと。
2 保護の程度の決定に当たっての留意点
1の要否判定により保護が開始された者に対する高額療養費又は高額医療費等の取扱いは、被用者保険については第2の1の(1)及び(2)により、老人医療においては第2の2の(1)により行うが、入院時食事療養費標準負担額について、低所得者としての減額対象となる場合は、市町村民税非課税証明書等必要書類を添付の上、別途保険者において減額認定の手続が必要であるので、福祉事務所においては、適宜指導援助の配慮を願いたいこと。
第4 低所得者の特例措置の取扱い
要保護者ではあるが、高額療養費又は高額医療費及び入院時食事療養費標準負担額の低所得者の特例が適用されることで保護を必要としない状態に至る者については、以下により特例措置の取扱いを受けることで、生活保護法による保護を必要としないものであるので、十分了知されたいこと。
なお、低所得者の特例によらなくとも要保護状態とならない場合は、単なる保護の申請却下又は廃止となり、また、要保護者が低所得者に該当するとしても要保護状態となる場合については、保護の開始又は継続となるものであるので、この措置の対象とはならないこと。
1 福祉事務所における手続
保護の申請者又は被保護者が要否判定により、この特例措置によって保護を要しないことが判明し、これにより当該保護の申請を却下し、又は保護を廃止する場合、保護申請却下通知書又は保護廃止決定通知書の決定理由欄に、以下の区分に従い記載を行った上で通知する必要があること。
なお、70歳以上の者に係る高額療養費及び老人医療の高額医療費の算定に用いる世帯負担限度額については、その者の状態に応じ、2段階の減額措置が設けられているので、特に留意されたいこと。
また、必要に応じ、福祉事務所において、通知書の原本証明について協力願いたいこと。
(1) 高額療養費の世帯負担限度額の減額を受ける場合
ア 被用者保険の被保険者 「特例高額療養費該当」
イ 被用者保険の被扶養者であって被保険者と同じ世帯に属さない者 「被扶養者特例高額療養費該当」
ウ 国民健康保険の被保険者 「国保特例高額療養費該当」
(2) 入院時食事療養費標準負担額の減額を受ける場合((1)の減額認定を受けたことをもって申請時の添付書類を省略できる場合及び老人医療受給対象者である場合を除く。)
ア 被用者保険の被保険者 「○○保険標準負担額減額認定該当」
イ 国民健康保険の被保険者 「国保特例標準負担額減額該当」
(3) 70歳以上の被用者保険加入者等が高額療養費の世帯負担限度額及び入院時食事療養費標準負担額の減額を受ける場合又は老人医療受給対象者が高額医療費の世帯負担限度額及び入院時食事療養費標準負担額の減額を受ける場合
ア 世帯負担限度額が24,600円に減額され、かつ、入院時食事療養費標準負担額が1日当たり650円(過去1年の入院期間が90日を超える場合にあっては、1日当たり500円)に減額されれば保護を要しない者の場合 「限度額適用・標準負担額減額認定該当(Ⅱ)」
イ 世帯負担限度額が15,000円に減額され、かつ、入院時食事療養費標準負担額が1日あたり300円に減額されれば保護を要しない者の場合 「限度額適用・標準負担額減額認定該当(Ⅰ)」
ウ 外来自己負担限度額が8,000円に減額されれば保護を要しない者の場合 「限度額適用・標準負担額減額認定該当(Ⅱ)」
2 特例措置の申請手続
各特例措置による減額認定を受ける場合は、当該特例措置の対象となる要保護者の加入する医療保険の保険者(老人医療受給対象者にあっては、市町村)あての申請書に、1により記載を行った通知書の原本又はその写に福祉事務所長等が原本証明を行ったものを添えて提出する必要があること。このため、申請手続が円滑に行えるよう配慮願いたいこと。
また、高額療養費支給制度又は高額医療費支給制度において、費用の支給が償還払いとされているものについては、申請から支給まで一定の期間を要することから、この間に生活に困窮することのないよう、各種公的貸付金等の活用に関する助言、手続に当たっての援助等について配慮願いたいこと。