アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○生活保護制度における福祉事務所と民生委員等の関係機関との連携の在り方について

(平成15年3月31日)

(社援保発第0331004号)

(各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生労働省社会・援護局保護課長通知)

生活保護制度については、その適切な実施に向けて、従来より福祉事務所の組織的な対応の強化はもとより、生活保護法上協力機関として位置付けられている民生委員を始めその他関係機関(以下「民生委員等の関係機関」という。)との連携のための体制の確立に努めていただいているところである。

今般、福祉事務所と民生委員等の関係機関との連携の在り方に関し、更に実効的かつ具体的なものを示し、両者の連携体制の強化の参考とするため、別紙「生活保護制度における福祉事務所と民生委員等の関係機関との連携の手引」を策定したので、管内福祉事務所に対して周知方お願いしたい。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に規定する技術的な助言であることを申し添える。

(別紙)

生活保護制度における福祉事務所と民生委員等の関係機関との連携の手引

Ⅰ 目的

生活保護制度の適切な運営に当たっては、要保護者の把握を始め、保護の要件の確認の徹底や被保護者の自立に向けた援助等を行うことが重要であり、そのためには、福祉事務所が民生委員等の関係機関と十分な連携を図ることが必要である。

しかしながら、福祉事務所と民生委員等の関係機関との連携の実態について、形式的であるとの指摘があること等から、これを実効的なものとするため、当該連携に係る具体的な手引を作成することにより、福祉事務所の参考に資することを目的とする。

Ⅱ 具体的な連携の在り方

1 要保護者の発見・連絡

生活保護制度は、申請主義をとっているため、生活に困窮する者からの申請で保護の開始決定を行うことが原則となっている。

しかしながら、単に本人等からの申請を待つだけでなく、真に保護が必要な者に対して適切に保護が実施できるように、地域の実情に応じて、住民に対する制度の周知や民生委員等の関係機関との連携によって生活に困窮する者の情報が福祉事務所につながるような工夫が必要である。

(1) 住民に対する生活保護制度等の周知

福祉事務所は、住民に対して生活保護制度の概要やその相談窓口等について広報紙等を通じて周知する。その際、民生委員が生活保護法上協力機関と規定されていることや福祉事務所と関係機関とが連携を図り、生活に困窮する者の発見等について努めていること等を紹介し、制度への理解と協力を得られるよう工夫する。

○周知が必要な主な事項

事項

内容

①生活保護制度の概要

・法の趣旨、原理原則、保護が受けられる場合等

②相談等の窓口

・福祉事務所の連絡先(郡部事務所については、町村の担当窓口を含む。)

・担当地区別の民生委員名簿等

③民生委員の生活保護法上の位置付け

・生活保護法第22条において、「民生委員は、この法律の施行において、市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事の事務の執行に協力する」ものと規定されていること

④民生委員の守秘義務

・民生委員は、民生委員法第15条により守秘義務が課せられており、活動を通じて知り得た情報については細心の注意をはらって相談・援助活動をしていること

⑤関係機関との連携

・住民の福祉の向上のため、福祉事務所は関係機関との間で生活に困窮する者の発見・連絡等について連携を図っていること

(2) 民生委員等の関係機関との連携体制

社会保険の保険料、水道及び公営住宅の利用料等の長期滞納者や保健・医療・福祉施策の相談や利用の中で発見・通報された生活に困窮する者は、保護受給に至る場合もあり、これらの者に係る情報は重要である。

また、成年被後見人については、成年後見人がその財産の管理等を行っていることから、成年後見人からの情報は成年被後見人の急迫した状況の把握等にとって重要である。

そのため、福祉事務所は、民生委員等の関係機関に対して、生活保護制度の概要及び相談窓口の周知や関係機関が生活に困窮する者を発見した際の対応に係る協力依頼を行うことが必要である。

○民生委員等の関係機関への周知事項

事項

内容

①生活保護制度の概要

・法の趣旨、原理原則、保護が受けられる場合等

②連絡窓口

・福祉事務所の連絡先(郡部事務所については、町村の担当窓口を含む。)

○民生委員等の関係機関への協力依頼事項

事項

内容

①福祉事務所に対する情報提供

・生活に困窮する者の氏名、住所、問題状況等

②生活困窮者に対する情報提供

・制度の概要及び相談窓口(住所、電話番号等)

2 面接相談及び保護申請時の対応

(1) 面接相談時

民生委員等の関係機関が生活に困窮する者を発見し、福祉事務所に連絡した場合及び生活に困窮した者が直接福祉事務所に相談に来た場合のいずれにおいても、他法他施策を活用することで問題解決に至る場合には、関係施策の制度概要及び窓口となる関係機関の紹介を行う。その際、機械的な紹介にならないよう、相談者本人の抱える問題状況等について、当該関係機関にあらかじめ連絡するとともに、窓口が同一建物内である場合は、直接案内するなど配慮する。

○主な他法他施策とその窓口等

他法他施策

窓口等

①公的年金の受給

・社会保険事務所

②医療保険の高額療養費の適用

・市町村の国民健康保険担当課等

③生活福祉資金の貸付

・市町村社会福祉協議会又は民生委員

④各種福祉手当の受給

・市町村の保健福祉部局

(2) 保護申請時

保護申請中の世帯について保護の要否、種類、程度及び方法の決定を行うため、必要に応じて民生委員等の関係機関に情報提供を求め、調査を行う。

なお、民生委員等の関係機関から提供された要保護者に関する情報については、福祉事務所として、総合的に判断するための材料とするよう留意する。

ア 民生委員への協力依頼

保護申請中の世帯の生活実態調査の実施に当たっては、その地区を担当する民生委員に対して、

① 当該世帯の生活状況

② 当該世帯への援助の有無とその内容(生活福祉資金の貸付、高齢者等に対する介護等)

等について、報告等の協力を依頼する。

イ その他関係機関への協力依頼

生活保護法第29条に定める資産や収入に関する調査が、常に迅速かつ円滑に行われるよう関係機関に協力を求める。

○生活保護法第29条調査関係

関係機関

内容

①税務部局(町村)

・課税台帳上の所得状況、固定資産の有無及び評価額等についての照会

②社会保険事務所

・公的年金の給付に係る収入申告に疑義がある場合やその受給権の有無についての照会

③公共職業安定所

・雇用保険の失業給付に係る収入申告に疑義がある場合やその受給権の有無についての照会

④労働基準監督署

・労働者災害補償保険の給付に係る収入申告に疑義がある場合やその受給権の有無についての照会

⑤運輸支局

・自動車の保有についての照会

⑥金融機関・保険会社

・預貯金、生命保険等の保有の有無とその預貯金額及び解約返戻金の額についての照会

⑦雇用主等

・雇用主、取引先、農協等に就労状況や賃金等の額についての照会

3 保護受給中の対応

(1) 関係機関への連絡

保護の申請者は、保護の開始が決定された後、国民健康保険の被保険者証の返還等関係機関へ手続をとる必要があるため、当該手続に遺漏がないよう、本人に対して助言指導をするとともに、関係機関に対して連絡をとる。

○関係機関への主な連絡内容

関係機関

内容

①社会保険部局・社会保険事務所

・国民健康保険:被保険者証の返還

・国民年金:法定免除の手続

・介護保険:介護保険料の代理納付

②小学校、中学校

・教育扶助の適用による教材代等の支払方法の変更の連絡

(2) 援助方針の樹立及び変更

被保護世帯の自立に向けて援助をするためには、あらかじめ援助方針を樹立するとともに適宜当該世帯の状況の変化に併せて、その内容の変更を行う必要がある。そのため、必要に応じて、民生委員等の関係機関から必要な事項等について情報提供を求める。

また、被保護世帯に係る援助方針の樹立及び変更を行った場合は、民生委員に当該援助方針を周知するとともに、必要に応じ、継続的な生活指導への協力及び生活状況の変化が生じた場合の情報提供を求める。

その他、必要に応じ、民生委員等の関係機関に対して情報提供を依頼する。

○援助方針の樹立及び変更に必要な連携

関係機関

内容

①民生委員

・援助方針の樹立及び変更を行うために必要な事項や保護の方法等に関する事項等についての参考意見を聴取

・継続的な生活指導への協力及び生活状況の変化が生じた場合の情報提供について協力を依頼

・被保護世帯に対する訪問活動の際の情報提供について協力を依頼

②保健福祉部局

・高齢者、障害者その他保健福祉施策の援助が必要な者について、次の事項の情報提供を依頼

①身体上及び精神上の障害の状況

②利用している施策及び利用可能な施策

③その他留意点

③公共職業安定所

・求職活動の状況について、次の事項の情報提供を依頼

①求職の登録状況

②紹介実績

③面接等の結果

・求人情報、地域の雇用状況、就労援助のための諸対策等の情報交換を依頼

④保健所

・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第58条第1項の適用の可否や社会復帰に向けての施策の活用や今後の援助方針についての情報提供を依頼

・結核患者に対する結核予防法に基づく各種給付の可否についての情報提供を依頼

⑤児童相談所

・児童の健全育成に関する情報提供を依頼

・児童虐待の事実や疑いがある場合、その被害を受けている子ども及び親に対する援助方針についての情報提供を依頼

⑥配偶者暴力相談支援センター

・一時保護所や民間のシェルターへ入所している際の生活保護の適用やそこから居宅での保護に変更する際に必要な敷金等の認定等に必要な情報提供を依頼

⑦警察署

・児童虐待及びドメスティック・バイオレンスについて、被害者や加害者に関する情報提供を依頼

・非行少年等や社会環境の浄化に関わる問題やその疑いがある場合にこれらに関する情報提供を依頼

⑧小学校、中学校

・児童の健全育成に関する情報提供を依頼

・児童虐待の事実や疑いがある場合、その被害を受けている子どもについての情報提供を依頼

⑨介護支援専門員

・居宅介護支援計画や給付管理についての情報提供を依頼

・介護サービスの利用状況等に関する情報提供を依頼

4 連絡会議等の開催

上記のように、要保護者の発見・連絡から保護受給まで、不断の連携体制を整備するため、少なくとも年2回は民生委員等の関係機関との連絡会議を福祉事務所が開催することが必要である。

(1) 年度当初においては、次の事項についての説明、依頼及び情報交換を行う。

①生活保護制度の概要

②生活困窮者を発見した際の連絡体制

③各種調査への協力

④継続的な支援

(2) 年度末においては、当該年度に生じた事例の点検及び評価を行い、次年度に向けた連携体制の在り方について情報交換を行う。

5 なお、民生委員等の関係機関との連携を図る際には、各地方公共団体における個人情報保護制度に留意し、民生委員等の関係機関との必要な情報の共有を図ることが必要である。