○就労可能な被保護者の就労及び求職状況の把握について
(平成14年3月29日)
(社援発第0329024号)
(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局長通知)
雇用環境が厳しい中において、稼働能力がある被保護者の就労促進にあたり、公共職業安定所との連携を一層図っていくことはもとより、被保護者の就労指導を効果的に行うことが求められている。このため、保護の実施機関は、これらの者の収入及び就労状況を被保護者との信頼関係のもとにおいて的確に把握し、適切な指導援助を行う必要がある。ついては、標記について、下記のとおりその取扱いを定め、平成14年4月1日から適用することとしたので、了知の上、保護の実施に遺漏のなきを期されたい。
また、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項の規定による処理基準としたので申し添える。
記
1 趣旨
生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第4条において、「利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」を活用することが規定されている。したがって、就労可能な被保護者については、稼働能力の十分な活用が求められるとともに、保護の実施機関は、これらの者の就労・求職状況を把握し、その者の自立助長を図るため、適切な指導を行う必要がある。
今般、生活保護制度については、経済的な給付を中心とする制度から、保護の実施機関が組織的に被保護者の自立を支援する制度に転換することを目的として、自立支援プログラムを導入することとしており、被保護者の就労支援については、自立支援プログラム等による就労支援対策の実施により、就労・求職状況を把握し、その状況に応じた具体的な支援を行うこととなる。
一方、就労可能な被保護者が、自立支援プログラムその他の実施機関による就労支援対策によらず、自ら求職活動を行う場合については、保護の実施機関において、当該被保護者に対し、就労・求職活動の報告を求め、これらの者の就労・求職状況を組織的に把握及び管理した上で、その状況に応じて必要な就労支援を行うことにより、適正な保護の決定実施を図るものである。
2 対象者
保護の実施機関が就労可能と判断する被保護者(高校在学、傷病、障害等のため、就労が困難と保護の実施機関が判断する者以外の被保護者をいう。なお、現に就労している被保護者も含む。)
なお、自立支援プログラムその他の実施機関による就労支援対策の実施により、当該被保護者の就労・求職状況の把握が行われている場合は対象としないものとする。
また、対象者として選定する際には、支援方針にその旨記載するなど、実施機関としての取組の方針を明確にすること。
3 申告の徹底
稼働能力の活用状況を確認するため、就労可能な被保護者から、以下の申告を求めること。
(1) 収入の申告
就労可能な被保護者のうち、現に就労している被保護者に対しては、毎月、別紙1を参考にして収入申告書を提出させること。収入申告書は、勤務先、就労日数、収入額を記入させ、これらの事項を証明すべき資料がある場合には、これを添付すること。
ただし、当該被保護者が常用雇用されている等各月毎の収入の増減が少ない場合の収入申告書の提出は、3か月ごとで差しつかえないこと。
(2) 求職活動状況・収入の申告
就労可能な被保護者のうち就労していない者に対しては、毎月、別紙2を参考にして求職活動状況・収入申告書を提出させること。求職活動状況については、求職活動日数、求職活動の内容及びその結果を記入させ、面談等を通じてその状況の把握や必要な助言指導に努めること。
4 就労・求職状況管理台帳の整備
保護の実施機関は、収入申告及び稼働能力活用状況の申告又は稼働能力の活用状況を把握するため、就労可能な被保護者ごとに、別紙3を参考として「就労・求職状況管理台帳」を作成すること。
就労可能な被保護者が収入申告及び求職活動状況の申告を行ったときは、就労・求職状況管理台帳にその旨記載し、収入額、就労日数、求職活動日数等その概要についても記載すること。
なお、被保護者から提出された申告書等については、個別のケース台帳において保管し、また、就労・求職状況について、被保護者から聞き取った内容は、ケース記録に記載すること。
5 稼働能力の活用状況に対する対応
申告された就労・求職状況の内容が、当該地域における求人状況、賃金水準、就労日数、申告者の稼働能力等を勘案し、稼働能力が十分に活用されていないと判断される場合や求職活動の方法等について改善を図る必要があると判断される場合には、その要因を分析したうえ、自立支援プログラムへの参加勧奨を行うなど、必要な助言を行うとともに、支援方針等の見直しを行うこと。
なお、就労支援を行うに当たっては、機械的な取扱いにならないよう、当該被保護者の状況や地域の雇用情勢を考慮するとともに、公共職業安定所との連携はもちろんのこと、公共職業安定所のOB等の雇上げによる体制強化や技能修得費の積極的な活用を図るよう留意すること。
6 就労・求職状況の調査
保護の実施機関は、必要に応じ家庭訪問、関係先調査等を実施することにより、申告された内容の確認を行うこと。特に、申告された内容について、疑義があるときは、申告者に対し説明を求めるとともに、申告内容を証明できる資料がある場合には、これを提出させ、必要に応じ勤務先等関係先に直接調査確認を行うこと。
7 申告を行わない者に対する対応
3による申告については、対象となる被保護者に対し、当該申告書の提出は保護の実施機関が就労を支援していくために必要な情報を得ることを目的としている旨を事前に十分周知を図るとともに、申告を行わない者については、保護の実施機関は、申告を行うよう指導すること。
上記指導を3ヶ月程度継続してもなお、正当な理由もなくこれに従わない場合には、保護の実施機関は、それぞれの個別の事情に配慮しつつ、法第27条に基づき文書による指導・指示を行うこと。さらに、これに従わない場合には、保護の実施機関は、所定の手続きを経た上で、法第62条第3項に規定する保護の変更、停止又は廃止について検討すること。
なお、文書による指導・指示は、申告の期限(目安は1ヶ月程度)を付す等具体的かつ適切な内容となるよう留意すること。
(別紙1)
(別紙2)
(別紙3)