アクセシビリティ閲覧支援ツール

添付一覧

添付画像はありません

○社会福祉法第2条第3項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設の設備及び運営について

(平成15年7月31日)

(社援発第0731008号)

(各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生労働省社会・援護局長通知)

標記の事業を行う施設(以下「無料低額宿泊所という。)については、近年、その設置数が急増しているものの、一部には居室がプライバシーに配慮されていない等利用者の適切な処遇が確保されていないもの等がみられる。

こうした状況にかんがみ、無料低額宿泊所の適切な設備及び運営を確保する観点から、別紙「無料低額宿泊所の設備、運営等に関する指針」(以下「指針」という。)を定めたので、下記の事項に留意し、本指針の趣旨を踏まえ、利用者の適切な処遇が確保されるよう努められたい。

なお、本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定による技術的助言である。

1 本指針は、すべての無料低額宿泊所を対象とするものであり、主にホームレスが起居している無料低額宿泊所だけを対象とするものではないこと。

また、生計困難者(生活保護法第6条第2項にいう要保護者を含む。以下同じ。)に簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設(1において「宿泊所」という。)を利用させることを目的とし、かつ、近隣の同種の住宅に比べて低額であるか、又は1か月当たりの料金を住宅扶助で賄うことができる宿泊所については、他の法令で定める施設であるものを除き、3の届出の有無にかかわらず、無料低額宿泊所に該当するものであること。

なお、生計困難者を募集し、又は勧誘を行っている場合には、当該目的があるものと判断して差し支えないこと。

2 各地方公共団体において、独自に無料低額宿泊所の設備、運営等に関する指針を策定することを妨げるものではないが、規定する内容については本指針の趣旨に沿ったものであること。

3 既存の無料低額宿泊所に対しては、適切な運営を確保する観点から、定期的に、社会福祉法(昭和26年法律第45号。以下「法」という。)第70条に規定する調査等を実施し、本指針に沿った運営が行われるよう働きかけるとともに、利用者の処遇に関する不当な行為等が認められたときは、利用者保護の観点から、6の経営の制限等の命令を行うことも含め、適切な運営方法等について指導すること。また、新規に法第69条第1項に規定する届出(以下「届出」という。)をしようとしている事業者に対しては、指針の趣旨、目的、内容等を説明し、遵守させるよう努めること。

なお、法第70条に規定する調査等の対象には、無料低額宿泊所の定義に該当しているにもかかわらず届出をしていない無料低額宿泊所も含まれるものであるため、福祉事務所等の関係機関と連携して適切に調査等を実施し、事業者に対し届出を励行させるとともに、本指針に沿った運営が行われているか確認すること。

4 3の調査等に当たっては、居室の状況やサービスの実施状況等について、利用者から利用状況等を聴取するなど実態把握に努め、必要に応じて建築部局や消防機関とも連携を図ること。

また、必要に応じて、貸借対照表、損益計算書等の財務諸表の検査を行うこと等により、経営状況の把握を行うとともに、利用契約書や管理規定等について提出を求め、実態と乖離していないか確認すること。

5 無料低額宿泊所に起居する被保護者について、福祉事務所等保護の実施機関は、適切な処遇が行われているか等の生活実態の把握や一般賃貸住宅への転居等自立の支援に努めること。

6 法第70条の規定による報告の求めに応ぜず、若しくは虚偽の報告をしたとき、検査若しくは調査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき又は不当に営利を図り、又は利用者の処遇につき不当な行為をしたときは、法第72条第1項の規定により、社会福祉事業を経営することの制限又は停止を命じること。また、届出が行われていない無料低額宿泊所についても、不当に営利を図り、又は利用者の処遇につき不当な行為をしたときは、法第72条第3項の規定により、社会福祉事業を経営することの制限又は停止を命じること。

また、次に掲げる場合には、不当な営利を図り、又は不当な行為をし、適正な運営ができなくなったものとして、社会福祉事業を経営することの制限又は停止を命じること。

① 居室の利用及びそれ以外のサービスの利用を強要し、又はあいまいな名目による不適切な金銭の支払いを求めているとき

② 居室の利用以外のサービスに係る費用の契約を締結しないことにより退去を求めているとき

③ その他利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼすおそれがあるとき

なお、当該命令に違反して引き続き社会福祉事業を経営し続けた場合には、法第131条の規定により、刑事罰として6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられるものであること。

7 事業者に対して経営の制限又は停止を命じる際には、当該施設を利用している者に対してその内容を情報提供するとともに、被保護者の転居等について福祉事務所等保護の実施機関と連携すること。

(別紙)

無料低額宿泊所の設備、運営等に関する指針

1 設備基準

(1) 建物は、建築基準法(昭和25年法律第201号)に規定する耐火建築物又は準耐火建築物であるなど建築基準法を遵守し、かつ、建築基準法、消防法(昭和23年法律第186号)等に定める避難設備、消火設備、警報設備その他地震、火災、ガスもれ等の防止や事故・災害に対応するための設備を十分設けること。

(2) 居室は、原則として、個室とし、一居室の面積は7.43平方メートル以上とすること。

なお、地域の事情によりこれにより難い場合は、居室の床面積が1人当たり4.95平方メートル以上確保すること。

また、既存の無料低額宿泊所の居室について、上記床面積が確保されていない場合には、段階的、計画的に基準を満たすよう整備すること。

(3) 居室を地階に設けないこと。

(4) 居室はプライバシーが守られるよう、環境整備に配慮すること。

また、居室の採光や建築物の間仕切壁等については、建築基準法の防火関係規定を満たす必要があること。

(5) 談話室及び相談室を整備すること。相談室を談話室と兼用とする場合は、プライバシーが守られるよう配慮すること。

(6) 食事を提供する場合は、食堂を設置すること。

(7) 浴室は、定員に見合った広さを確保すること。洗面所及びトイレは、居室のある各階に定員に見合った数を設置すること。

(8) 避難誘導灯・避難口及び避難通路を整備し、利用者の安全確保を図ること。

また、消火器及び避難器具等を設置するなど消防法を遵守すること。

2 運営基準

(1) 入居募集に当たっては、提供する福祉サービス(宿泊所を利用させること)の内容について、十分に情報提供すること。(法第75条関係)

(2) 福祉サービスの利用希望者からの申込みがあった場合には、利用契約に関する内容及びその履行に関する事項について説明するよう努めること。(法第76条関係)

(3) 福祉サービスの利用契約に際して、利用者に対し、事業者の名称、提供される福祉サービスの内容、料金、福祉サービスの提供開始年月日、福祉サービスに関する苦情を受け付けるための窓口等を記載した書面を交付しなければならないこと。(法第77条第1項関係)

(4) 福祉サービス以外のサービスを提供する場合には、当該サービスの内容及び費用等を明らかにした上で、福祉サービスの利用契約とは別の書面で契約を締結すること。また、福祉サービス以外のサービスに係る契約を締結しないことを福祉サービスの利用契約解除の条件としないこと。

(5) 入居に当たって保証人を求めないこと。

(6) 施設長及び利用者数、提供するサービス内容に応じて必要な職員数を配置すること。

(7) 常時、生活の相談に応じるなど利用者の自立支援に努めること。

また、利用者の心身の状況に応じた自立支援に資するよう、適切な知識、経験等を有する職員等の配置に努めるとともに、職員等の資質の向上のために、その研修の機会を確保するよう努めること。

なお、被保護者の自立支援を行うに当たっては、利用者の生活状況等について福祉事務所等保護の実施機関に情報提供するなど適宜連携するよう努めること。

(8) 利用者のプライバシーを尊重した施設運営に努めること。

(9) 利用者等からの苦情に対しては、適正な解決に努めること。

(10) 入浴は、週に3回以上行うこと。

(11) 食事を提供する場合は、各種法令を遵守するとともに、調理者、調理器具、食品、食器類、食堂等の衛生管理に努めること。

(12) 利用者の金銭、預金等の管理は利用者自身が行うことを原則とすること。ただし、利用者本人が希望して施設に依頼した場合には、施設において利用者の金銭等を管理することもやむを得ないこと。

この場合にあっては、利用者からの依頼の事実を書面で確認するとともに、金銭等の具体的な管理方法、本人への定期的報告等を管理規定等で定めること。

(13) 利用者の健康管理に留意するとともに、施設内の衛生管理に努めること。

(14) 施設内における感染症の発生及びまん延防止に努めること。

(15) 消防計画を作成し、避難訓練を実施すること。

(16) 常に、地域住民との相互理解に努めること。

(17) 事業者は、下記により事業経営の透明性を確保すること。

ア 領収書、契約書等を保管するとともに、施設の収支等に関する帳簿類を整備すること。

イ 貸借対照表及び損益計算書など収支の状況を毎会計年度終了後3月以内に公開すること。

(18) 職員処遇については、労働基準法等を遵守し、その向上に努めること。

(19) 利用者の氏名及び連絡先を明らかにした名簿並びに設備、職員、会計及び利用者の状況に関する帳簿を整備すること。入居者の個人情報に関する取扱いについては、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)を遵守すること。

(20) 提供する福祉サービスについて広告するときは、誇大広告等により、利用者に不当に期待をいだかせたり、それによって誤認させるようなことがないよう、内容等について実態と乖離のない正確な表示をすること。(法第79条関係)

3 施設長等の要件

(1) 施設長の要件

施設長は、次のいずれかに該当する者であること。

ア 社会福祉法第19条各号のいずれかに該当する者

イ 社会福祉事業に2年以上従事した者

ウ ア又はイと同等以上の能力を有していると認められる者

(2) 職員の要件

職員は、可能な限り社会福祉主事の資格を有すること。

4 費用

(1) 居室使用料

ア 居室使用料は、無料又は低額であることとし、使用料を徴収する場合には、当該宿泊所の整備に要した費用、修繕費、管理事務費、地代に相当する額等を基礎として合理的に算定したものとし、当該使用料に見合った居住環境を確保すること。

イ アの「低額」とは、近隣の同種の住宅に比べて、低額であるか、又は1か月当たりの料金が当該無料低額宿泊所所在地における厚生労働大臣が自治体ごとに定める生活保護の住宅扶助の特別基準額以内の額であること。

ウ 敷金・礼金による負担を求めないこと。

(2) 食費、日用品費等

ア 食事、日用品等を提供する場合は、食費、日用品費等に見合った内容のものとすること。

イ 光熱水費を徴収する場合は、実費相当とすること。

(3) (1)及び(2)の金額は、文書により本人に明示すること。また、(2)の内訳を文書に示すこと。

5 その他

(1) 施設を開設しようとするときは、開設地を所管する都道府県、指定都市又は中核市に対し事前相談を行うこと。

(2) 施設開設前に、施設の所在地の福祉事務所と利用の方法等について協議すること。また、施設設置について近隣住民の理解を得るように努めること。

(3) 利用者の生活向上への支援、地域住民との相互協力、関連する福祉サービスとの連携など、社会福祉の基本理念を遵守すること。(法第3条、第4条及び第5条)

(4) 不当に営利を図り、又は利用者の処遇において不当な行為をした場合は、宿泊所の経営の制限又は停止を命じられる場合があること。(法第72条第1項関係)

なお、当該命令に違反して宿泊所を経営し続けた場合には、刑事罰として6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられるものであること。(法第131条関係)

(5) 2の(3)及び(19)に該当したときも、宿泊所の経営の制限又は停止を命じられる場合があること。(法第72条第2項関係)

(6) 利用者で組織される自治会等が利用者から費用を徴収し、施設内で利用者に食事等の提供を行っている場合は、その自治会等に収支計算書等の提出を求め、収支状況を把握するよう努めること。