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○身体障害者更生相談所の設置及び運営について

(平成15年3月25日)

(障発第0325001号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)

標記については、平成5年3月31日社援更第107号通知「身体障害者更生相談所の設置及び運営について」により取扱われてきたところであるが、今般、社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律(平成12年法律第111号)の一部が平成15年度より施行され、福祉サービスの仕組みが措置制度から支援費制度へ移行されることとなり、身体障害者更生相談所は各市町村が行う支給決定事務に係る援助・指導の役割を新たに担うこととなったところである。これに伴い、別紙のとおり「身体障害者更生相談所設置運営基準」を定め、平成15年4月1日から適用することとしたので、了知のうえ、貴管下身体障害者更生相談所及び市町村等関係機関への周知徹底を図り、身体障害者更生相談所の事業の円滑な実施に努められたい。

なお、本通知は地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言として位置づけられるものである。

おって、平成5年3月31日社援更第107号厚生省社会・援護局長通知「身体障害者更生相談所の設置及び運営について」は廃止する。

(別紙)

身体障害者更生相談所設置運営基準

第一 設置

1 設置

都道府県(身体障害者更生相談所(以下「更生相談所」という。)を設置する指定都市を含む。以下同じ。)は、身体障害者福祉法(以下「法」という。)第11条の規定により更生相談所を設置することとされているが、各都道府県の判断によって、保健所、福祉事務所、児童相談所、知的障害者更生相談所等の関連する相談所、身体障害者更生援護施設(以下「更生援護施設」という。)、医療施設等との総合的有機的運営を図る観点から、これらの相談所、更生援護施設等と併設又は事務所の統合を行うことも可能であること。

2 設置に当たり留意すべき事項

更生相談所の設置に当たっては、地域における身体障害者の実情、地理的条件(環境、交通の利便等)等を考慮し、当該更生相談所の管轄する区域(以下「管轄区域」という。)内の身体障害者の更生援護事業の技術的拠点としての機能が十分発揮できる場所を選ぶこと。

また、更生相談所の専門的機能を維持するため、医学的・心理学的及び職能的判定に必要な診断器具等を備えること。

3 職員

(1) 職員の配置

更生相談所には、所長及び事務職員のほか、市町村(その設置する福祉事務所を含む。以下同じ。)等に対する専門的な技術的援助及び助言、情報提供、市町村間の連絡調整、各種判定、相談等の専門的機能を維持するために身体障害者福祉司、医師、理学療法士、作業療法士、義肢装具士、言語聴覚士、心理判定員、職能判定員、ケース・ワーカー、保健師又は看護師等の専門的職員を配置すること。この場合、職能判定員については心理判定員と兼務することも差し支えなく、また、作業療法士、義肢装具士、言語聴覚士についても、更生相談所の業務に支障がないときは、職務の共通する者について他の相談所、更生援護施設等と兼務すること等も差し支えないこと。

なお、ここで示す専門的職員の配置基準は、標準的な考え方を示すものである。

(2) 職員の資格

所長及び所員(事務職員を除く。)の資格は、次のとおりとする。

ア 所長は、次の各号のいずれかに該当する者であること。

(ア) 医師

(イ) 社会福祉事業に従事する者として五年以上その職務を行い、所長として必要な学識経験を有する者

(ウ) 身体障害者福祉司として三年以上の経験を有する者

(エ) 心理判定員又は職能判定員の資格を有する者

(オ) 前各号に準ずる者であって、所長として必要な学識経験を有する者

イ 心理判定員、職能判定員は、次の各号のいずれかに該当する者であること。

(ア) 学校教育法に基づく大学又は旧大学令において、心理学を専修する科目を修めて卒業した者

(イ) 身体障害者福祉司その他社会福祉事業に従事する者として二年以上その職務を行い、前号に準ずる学識経験を有すると認められる者

ウ ケース・ワーカーは、次の各号のいずれかに該当する者であること。

(ア) 身体障害者福祉司、社会福祉士又は社会福祉主事の資格を有する者

(イ) 前号に準ずると認められる者

エ その他の専門職員については、それぞれの職種に関する資格又はそれに準ずる学識経験を有すると認められる者であること。

4 職務分掌

所長及び所員の職務分掌は、次のとおりとする。

(1) 所長

職員を指揮監督し、判定会議の議長となる等所務を統括し、運営全般についてその責を任ずること。

(2) 身体障害者福祉司

市町村等に対する専門的技術的援助及び助言や情報提供、市町村間の連絡調整、市町村職員に対する研修の企画運営等を担当すること。

(3) 医師

医学的判定を担当すること。

(4) 心理判定員

心理学的判定を担当すること。

(5) 職能判定員

職能的判定を担当すること。

(6) ケース・ワーカー

相談及び生活歴その他の調査を行うこと。

(7) 保健師又は看護師

医師の指示に従い、医学的判定等の業務に従事すること。

(8) 医療関連の専門職員

理学療法士、作業療法士、義肢装具士、言語聴覚士等医療関連の専門職員は、医師の指示に従い、医学的判定等の業務に従事すること。

(9) 事務職員

庶務、会計に従事すること。

第二 運営

1 業務の概要

更生相談所の業務は、概ね次のとおりである。

(1) 身体障害者に関する専門的な知識及び技術を必要とする相談及び指導業務

(2) 身体障害者の医学的、心理学的及び職能的判定並びに補装具の処方及び適合判定業務

(3) 市町村が行う援護の実施に関し、市町村に対する専門的な技術的援助及び助言、情報提供、市町村相互間の連絡調整、市町村職員に対する研修、その他必要な援助及びこれらに付随する業務

(4) 地域におけるリハビリテーションの推進に関する業務

それぞれの業務の実施要領は、2から7に掲げるとおりである。

2 専門的相談指導業務

(1) 更生相談所においては、法第9条第5項の規定に基づき福祉事務所に身体障害者福祉司を置いていない市町村の長及び福祉事務所を設置していない町村の長の求めにより、身体障害者の相談及び指導のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを実施するものであること。

更生相談所における相談及び指導は、更生相談所に配置された専門的な知識及び技術を有する職員による相談及び指導並びにこれら職員の連携による総合的な相談及び指導を行うことにより、身体障害者に対する適切な更生援護を確保することを目的とするものである。

(2) 更生相談所における相談及び指導は、身体障害者の支援目標を設定するために一定程度の時間をかけ、医学、心理学その他の専門的分野からの対処を行うものであり、次のような事例が考えられる。

ア 市町村における相談及び指導をもってしても、目標設定が困難であった者に対する相談及び指導

イ 心理的要因により市町村において対処することが困難なため専門的対応を要する相談及び指導

ウ 知的障害を伴うため、様々な評価判定により本人像を的確に把握する必要がある専門的対応を要する相談及び指導

エ 心理、社会、職業等各分野の技術職員により長期にわたる評価判定を行う必要がある等専門的対応を要する相談及び指導

(3) 更生相談所の相談及び指導の結果、市町村等関係機関における対応が必要な場合には、当該関係機関へ依頼する等の対応を行うこと。

3 判定業務

(1) 更生相談所の医学的、心理学的及び職能的判定業務等としては、概ね次のような業務を行うこと。

ア 市町村の長から市町村が扱うケースについて医学的、心理学的及び職能的判定を求められた場合に、これに応じること。

イ 市町村の長の求めに応じ、更生医療の要否を判定し、又は補装具の支給及び居宅生活支援費、施設訓練等支援費の支給決定(身体障害程度区分の決定又は変更を含む。以下同じ。)等について意見を提出すること。(国の設置する身体障害者更生施設等に係る意見の提出を含む。)

ウ 市町村が巡回して診査、更生相談を行う場合は、これと協力して相談を受ける身体障害者の医学的、心理学的及び職能的判定を行うこと。

エ 更生相談所が行う判定業務については、判定についての記録及び基礎資料を整備しておくこと。

(2) 判定会議の要領

更生相談所における判定業務の処理については、判定会議を経て行うことを原則とすること。

ア 判定会議は所長が議長となり、すでにそのケースについての専門的判定を行った各職員が参加すること。また、市町村において社会的評価を行ったケースについては、原則としてその評価を行った担当者の参加を求めること。

イ 判定会議は、身体障害者に対する支援目標とその方法を明らかにするものであること。

ウ 支援目標とその方法を明らかにするに当たっては、客観的に妥当と考えられる内容について一致した見解をもって行うものであること。

エ 支援目標は、必ずしも固定的なものではないが、種々の条件を綿密に検討して現状において最も適当と考えられる判定を得るよう努めること。

(3) 判定業務の指標

ア 医学的判定

(ア) 原(傷)病名及び機能障害の現況の把握を行うこと。

(イ) 全身所見及び機能障害の現況とにより治療の要否、支援の目標を判定すること。

(ウ) 更生医療の要否を判定し、治療後において確保しうる動作能力の程度を予測すること。

(エ) 機能障害の状況並びに日常生活能力及び職業的作業動作能力の状況を勘案して補装具の処方を行い、又はその適合の状況を観察すること。

(オ) 医学的見地から、全身所見及び機能障害と就労が可能な職業との関係を判定すること。

(カ) 必要に応じ、日常生活能力及び職業的作業動作能力向上のための各種設備の改善方策を判定すること。

イ 心理学的判定

(ア) 心理学的検査等の結果に基づき、その心理的諸特性を把握し、判定を行うこと。

(イ) 心理学的見地から、その心理的諸特性に対応した指導及び適応訓練等の支援方策を明らかにすること。

(ウ) 心理学的検査等の結果に基づき、知的・精神状況を把握すること。

ウ 職能的判定

(ア) 動作能力や作業条件に対する適応力を判定すること。

(イ) 残存機能及び作業能力を把握し、就労可能性を判定すること。

(ウ) 心理学的諸検査に基づいて心理的諸特性を把握し、生活、環境及び障害を勘案して就労可能性を判定すること。

(エ) 就労に係る技能の修得可能程度を判定すること。

(オ) 就労を目的とした職業訓練、職業指導の適性を判定すること。

エ 総合判定

居宅生活支援費及び施設訓練等支援費の支給決定に係る判定をするときには、医学的判定、心理学的判定及び職能的判定に社会的評価を勘案し、総合して行うこと。

(4) 国の設置する身体障害者更生施設等への入所に係る判定について法施行規則第12条の3第2項の規定に基づき、市町村が、国の設置する身体障害者更生施設等への入所の要否に係る意見書の交付申請を行った身体障害者に対し、意見書を交付するに当たり、特に医学的、心理学的及び職能的判定を必要とする場合に、その求めに応じて判定を行うこと。

4 市町村等に対する専門的な技術的援助指導等の業務

(1) 市町村等に対する専門的な技術的援助指導等

ア 市町村による身体障害者に対する更生援護の適切な実施を確保するため、更生相談所においては、専門的な技術的援助指導として次のような業務を実施すること。

(ア) 援助の実施に関し、身体障害者福祉司を置いていない市町村及び福祉事務所を設置していない町村から技術的援助及び助言を求められた場合には、例えば、更生相談所の身体障害者福祉司自ら市町村に出向き、担当者に対し、個別のケースをはじめ種々の事項について直接専門技術的な援助及び助言を行うなど、地域の実情に応じ、工夫をこらした方法により、援助及び助言を行う。

(イ) 市町村の身体障害者福祉行政推進について都道府県福祉事務所から専門的技術的な援助及び助言を求められた場合には、身体障害者福祉司が中心となり、所内の専門技術職員との連携の下に適切な援助及び助言を行う。

(ウ) 更生援護施設に対し、入所者の支援、施設機能の地域社会への開放等について、地域の実情に応じた方法により、専門的技術的援助及び助言を行う。

(エ) 居宅支援事業所に対し、地域の実情に応じた方法により、身体障害者の居宅支援に係る専門的技術的援助及び助言を行う。

(オ) 補装具の処方及び適合判定に関する業務を適正に実施するため、補装具製作業者等を指導すること。

(カ) 障害の状況が同様である障害者に係る障害程度区分の結果が、決定を行う市町村により著しく異なることがないよう、研修の実施等を通じて、市町村職員への技術的支援を行う。

イ 前項に定める業務を円滑に実施するため、必要な情報の収集及び提供に関し、概ね次に掲げる業務を行うこと。

(ア) 管轄区域内の市町村、更生援護施設等と定期的に情報の交換を行うなど、関係機関からの情報の収集を行うこと。

(イ) 収集した情報について、管轄区域の身体障害者の更生援護に必要な統計資料の整備を行うこと。

(ウ) 管轄区域内の市町村、更生援護施設、事業者等に対し、収集又は処理した情報を提供すること。

(2) 市町村相互間の連絡調整等

支援費制度では、利用者がサービスを選択することが基本であるが、施設サービスに関し、施設の定員を入所希望者が大きく上回っている場合には、施設が入所者を選別することなく施設の利用が円滑かつ公平に行われるよう、都道府県が施設の空き情報を入手した上、施設や関係者の参画を得て、都道府県や市町村が入所の調整を図る必要がある。更生相談所は必要に応じて、専門的見地から都道府県の機関として、この調整に参画するものである。

5 巡回相談

(1) 巡回相談の目的

巡回相談は、市町村による援護の適切な実施の支援及び身体障害者の更生援護の利便のため、巡回して、医学的、心理学的及び職能的判定等を行い、その更生援護に必要な総合的相談に応じ、もって当該身体障害者の更生の方途を指導し、援護の万全を期することを目的とするものであること。

(2) 巡回相談実施上の留意点

ア 巡回相談は、更生相談所がこれを実施することとし、計画の策定に当たっては、都道府県本庁、市町村及び関係機関と十分協議のうえ、積極的な協力を求めること。

イ 巡回相談の実施に当たっては、その十分な実効を挙げるため、市町村及び関係機関との緊密なる協力体制を確保し、また、必要に応じ職業安定関係職員等を加え行うこと。

ウ あらかじめ管轄区域内の身体障害者の分布状況、巡回相談を必要とする状況、地理的条件等を考慮し、身体障害者が集まりやすい時期、場所を選び、実施すること。

(3) 巡回相談実施前の準備事項

ア 巡回地区の状況把握

巡回相談の対象となる地区内における障害別身体障害者数、身体障害者手帳交付状況、市町村別人口と障害者数の比率等その他参考となる統計資料を収集し、当該地区における身体障害者の状況をあらかじめ把握しておくこと。

イ 関係機関への連絡

必要に応じ、公共職業安定所、身体障害者福祉団体及び補装具製作関係者等に連絡を行い、出席を依頼すること。

ウ 事前周知

広報、パンフレットの作成等により対象地区内の身体障害者に対する周知徹底を図ること。

なお、会場の準備及び身体障害者に対する通知は、更生相談所と市町村が協議のうえ、原則として市町村が行うこと。

(4) 巡回相談後の対応

更生相談所の長は、必要に応じ巡回相談を受けた身体障害者の居住地の市町村に記録票の写しを送付する等の通報を行い、又は巡回相談の内容に従って速やかに必要な対応を講じるなど、巡回相談の実効を挙げるよう努めること。

6 地域におけるリハビリテーションの推進に関する業務

身体障害者の更生援護を効果的かつ体系的に実施する上で、住みなれた地域で適切なリハビリテーションサービスが総合的に提供されることが重要であることから、管轄区域を単位とした関係機関相互の連携の推進を図るため、概ね次の事業を実施すること。

(1) 地域におけるリハビリテーションの推進に資するため、身体障害者の更生援護に係る支援技術等の調査研究を行い、その具体的な適用について市町村等に意見を述べ、又は報告書を作成及び公表すること。

(2) 在宅の身体障害者に対する訪問指導は、地域におけるリハビリテーションの推進において特に重要な分野であるが、専門的な知識及び技術を必要とするため市町村における対応が困難である場合は、市町村の長の求めに応じこれに協力すること。

(3) 地域におけるリハビリテーション関係職員の資質向上を図るため、身体障害者の更生援護に係る各種研修(15条指定医研修等)を企画し、実施すること。

(4) 関係機関において、より効果的なサービスが提供されるよう、身体障害者の更生援護に関する事業に従事する者が参加するケース研究会を企画し、実施すること。

7 その他関連する業務

(1) 都道府県本庁の求めに応じ、身体障害の障害等級の認定に関する医学的意見を述べること。

(2) 就職あっせんに関する公共職業安定所への紹介

法第17条の2第1項第2号に規定する就職あっせんを必要とする身体障害者については、市町村の求めに応じ更生相談所において医学的、心理学的及び職能的判定を行い、必要に応じ公共職業安定所に紹介すること。この際、障害者職業センターとの連携に留意すること。