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○災害救助法の一部を改正する法律の施行について

(昭和二八年八月二六日)

(発社第八六号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)

「災害救助法の一部を改正する法律」は、八月三日法律第一六六号として公布と同時に施行(一部は四月一日にさかのぼつて適用され、これに伴う「災害救助法施行令の一部を改正する政令(昭和二八年政令第一八一号)」も八月一二日公布と同時に施行されることとなつたが、この法律は、救助種類の拡充、救助費に対する国庫負担額の改正、救助事務費に対する国庫負担の明文化、専用通信施設の使用権の設定及び災害救助基金の改正等により、応急救助の内容を充実し、救助活動の円滑性を確保するとともに応急救助に対する国の責任を実質的に明確にする等極めて重要な事項を含むものであつて、この法律運営の適否は、応急救助活動の成否、ひいては災害時における民生の安定、社会秩序の保持に重大な影響を及ぼすものであるから、左記の点に充分留意のうえ、ひろく改正の趣旨を普及徹底し、この法律の実施に遺憾のないよう特段の御配慮を煩わしたく命によつて通知する。

第一 改正の趣旨

災害救助法は、法制定以来数次の部分的改正を経て今日に至つているが、法制定当時に較べて社会的経済的情勢の著しく変動している現在においては制度的にも不備が認められ、殊に救助費に対する国庫負担については物価の変動及び地方財政の実情からみてその額は必ずしも妥当なものでなく、そのため災害救助に関する国の基本的責任が鮮明を欠く状態にあり、救助の種類についてもそれが非常災害に対する応急措置としては若干の不備が認められ、救助活動の円滑、適正を期する点については専用通信施設の確保が要望されるほか、災害救助基金についてもその額を経済情勢に即応し、都道府県の財政規模に応じた合理的な額とする必要が認められるに至り、こゝに今次の救助費の国庫負担対象額に関する改正を中心とした改正が行われるに至つたものである。

第二 改正の要点

一 救助の種類に関する事項

法第二三条が改正され、救助の種類として、新たに「飲料水の供給」、「災害にかかつた者の救出」及び「災害にかかつた住宅の応急修理」が加えられ、収容施設のうちに応急仮設住宅を含めることが明らかにされたこと。

「飲料水の供給」とは、災害のため飲料水が渇又は汚染し、現に飲用に適する水を供給する必要が認められる場合に行われるものであつて、この場合飲用以外の水及び伝染病予防法の規定により供給する家用水は含まれないこと。

「災害にかかつた者の救出」は、災害のため生命身体が危険な状態にある者又は生死不明の状態にある者の捜査若しくは救出又は安全地帯への移送等を行うものであること。

「災害にかかつた住宅の応急修理」は、災害のため破損した住家に対して、居住のため必要な最少限度の部分を応急的に補修するものであること。

二 救助費に対する国庫負担に関する事項

法第三六条が改正され、同条により国が災害救助費を負担する場合は、救助費総額が当該年度における普通税収入見込額の一○○○分の二を超過する場合であり、国庫は、その超過した額のうち、一○○○分の二を超え一○○○分の二○以下の部分については、その額の一○○分の五○、一○○○分の二○を超え一○○○分の四○以下の部分についてはその額の一○○分の八○、一○○○分の四○を超える部分の額についてはその額の一○○分の九○に相当する額を負担することに改められたこと。

三 救助事務費に関する事項

法第三三条が改正され、救助事務費は、救助に要する費用のうちに含まれることが明らかにされたこと。

なお、救助事務費は、法第二三条に規定する応急救助を行うための必要やむをえない経費と認められるものに限られるものであること。

四 専用通信施設の使用に関する事項

法第二八条が改正され、厚生大臣、都道府県知事、法第三○条の規定により救助の実施に関する都道府県知事の職権の一部を委任された市町村長又はこれらの者の命によつて応急救助に従事する者は、警察等の専用通信施設を使用できることが認められたこと。

なお、専用通信施設の使用は、あくまで非常災害に際して、緊急やむをえない場合に限り認められるものであること。

五 災害救助基金に関する事項

法第三八条が改正され、都道府県の災害救助基金の最少額は、当該年度の前年度の前三年間における普通税収入額の決算額を平均した額(以下「平均普通税収入決算額」という。)の一○○○分の五に相当する額に改められたこと。

なお、この改正に伴い、法施行令第一五条が改正され、災害救助基金がその最少額に達しない場合、当該年度において積み立てなければならない金額は、災害救助基金の最少額の五分の一に相当する額に改められたこと。

この改正は、災害救助基金を都道府県の財政規模に応じて積み立てようとするものであつて、その額は毎年度更新されることになるが、災害救助基金の最少額が各年度を通じ常に平均普通税収入決算額の一○○○分の五に相当する額であること及び災害救助基金が最少額に達していない場合年度毎にその額の五分の一に相当する額を積み立てることについては、改正前と変らないものであること。

第三 施行期日

この法律は、公布の日(八月三日)から施行され、救助費に対する国庫負担に関する事項及び救助事務費に関する事項については、本年四月一日にさかのぼつて適用されること。従つて、新たに救助の種類として認められたものについては原則として、八月三日以後の災害に関し適用されるが同日以前に発生した災害に対する救助であつて引き続き同日以後にわたり行われるものについては、同日以後はこの法律による救助と認められること。