○補装具給付事務の取扱いについて
(平成五年三月三一日)
(社援更第一〇六号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省社会・援護局長通知)
標記について、今般、老人福祉法等の一部を改正する法律(平成二年法律第五八号)の一部が施行されることに伴い、新たに別紙のとおり補装具給付事業を実施する市町村及び身体障害者更生相談所における「補装具給付事務取扱要領」を定め、平成五年四月一日から適用することとしたので、了知のうえ、貴管下市町村への周知徹底を図り、その実施に遺憾のないよう取り扱われたく通知する。
なお、これに伴い、昭和四八年六月一六日社更第一〇二号本職通知「補装具の種目、受託報酬の額等に関する基準の改正について」の別紙「補装具給付事務取扱要領」は廃止する。
別紙
補装具給付事務取扱要領
第一 基本的事項
1 補装具は、身体障害者の職業その他日常生活の能率の向上を図ることを目的として給付されるものであるから、給付に当たっては、補装具を必要とする身体障害者の機能の現況、性別、年齢、職業、生活環境等の諸条件を考慮して行われなければならないこと。
2 補装具の給付は、身体障害者リハビリテーションの重要な一過程としてなされるものであることから、その取扱いについて適正かつ慎重を期するとともに、経理事務等の処理に当たっては迅速かつ正確に行うよう努めること。
3 補装具を必要とする者及び現に装用している者の状況を常に的確に把握し、これにより計画的な更生援護の措置を講ずるとともに、装用状況の観察、装着訓練の指導等を積極的に行うよう努めること。
4 他法の規定によって補装具の交付又は修理が受けられる者は、従前のとおり、身体障害者福祉法(以下「法」という。)の規定に基づく給付に優先して、関係各法に基づく給付を受けるよう取り扱うものであること。
5 補装具の給付を円滑に行うためには、製作等を委託する業者の設備、技術が整備される必要があるので、公立補装具製作施設についてその設備、技術者等の整備強化を図るとともに、民間の補装具製作施設等に対しても同様の指導を行うこと。
6 補装具製作業者との委託契約に当たっては、その設備、技術等を検討したうえで適切な業者を選定して行うこととし、契約の締結に際しては、別紙契約書例を参考とされたいこと。
7 この補装具給付事務取扱要領における市町村又は市町村長の事務は、その所管区域につき、社会福祉事業法に規定する福祉に関する事務所の長に委任することができること。
第二 実施要領
1 補装具の種目、受託報酬の額等に関する基準の運用について
(1) 価格は、補装具の種目、受託報酬の額等に関する基準(以下「告示」という。)に定める主材料、工作法又は基本構造、附属品等によった場合の最高額として定められているものであるから、各種目における型式等の機能の相違及び特性等を勘案のうえ、画一的な価格の決定を行うことのないよう留意されたいこと。
(2) 身体障害者の障害の状況その他真にやむを得ない事情により、告示に示された補装具の種目、型式、価格等によりがたい補装具を交付する必要があるときは、基準外交付として、都道府県知事を経由(指定都市及び中核市を除く。)して厚生大臣に協議のうえ、その承認を得て交付することができること。
(3) 受託報酬の額が告示本文第一項に掲げる額の一〇〇分の九五に相当する額とするものは、国、地方公共団体、日本赤十字社、社会福祉法人又は民法第三四条の規定により設立された法人の設置する補装具製作施設が自ら製作した補装具についてのみ適用されるものであって、当該施設が民間業者の製作した補装具をあっせん又は取次販売する場合には適用されないものであること。
なお、あっせん又は取次販売する補装具であっても、身体障害者更生相談所(以下「更生相談所」という。)の長の判定を受ける必要のあるものについては、市町村長は更生相談所への適合判定を依頼し、当該更生相談所において関係者立会いのもとに厳密な適合判定を行うことが必要であるので、給付に際して遺憾のないよう特に留意すること。
(4) 補装具の交付数は、原則として一種目につき一個であるが、身体障害者の障害の状況又は職業更生上等特に更生相談所の長が必要と認めた場合は、二個を交付することができること。
(5) 耐用年数は、通常の装用状態において当該補装具が修理不能となるまでの予想年数が示されたものであり、交付を受けた者の作業の種類又は障害の状態等によっては、その耐用年数に相当の長短が予想されるので、再交付の際には実情に沿うよう慎重に取り扱うこと。
なお、災害時により亡失き損した場合は、耐用年数の如何にかかわらず新たに必要とする補装具を交付することができること。
(6) 修理基準の種目欄、型式名称欄、又は修理部位欄に定められていないものに係る修理が必要な場合には、他の類似種目等の修理部位を参考とし、又はそれらの個々について原価計算による見積等により適正な時価を決定し実施して差し支えないものであること。
2 交付、修理を業者に委託して行う場合(国及び都道府県又は他の市町村が設置する補装具製作施設に委託する場合を含む。)の事務処理について
(1) 給付の判定
ア 市町村長は、身体障害者から補装具交付・修理申請書の提出を受けた場合において、その申請が義肢、装具、座位保持装置、眼鏡(色めがね、矯正眼鏡、コンタクトレンズを除く。)、補聴器、車いす(手押し型車いす(レディメイド)を除く。)、電動車いす、歩行器及び頭部保護帽(オーダーメイド)の新規交付に係るものであるときには、この交付の要否及び処方について更生相談所の長の判定を求めること。
これらの種目については、再交付又は修理に際しても、特に医学的判定を要しないと認められる場合を除き、同様とする。
なお、盲人安全つえ、色めがね、点字器、人工喉頭(電動式に限る。)、収尿器、ストマ用装具及び歩行補助つえ(つえに限る。)の交付及び修理に際しては、更生相談所の長の判定を要しないものであり、また、義眼、矯正眼鏡、コンタクトレンズ、人工喉頭(笛式に限る。)、手押し型車いす(レディメイド)、頭部保護帽(レディメイド)及び歩行補助つえ(つえを除く。)の交付及び修理に際しては、補装具交付・修理申請書等で判定できる場合には、更生相談所の長の判定を要しないものであること。
イ 更生相談所の長は、新規申請者にかかる判定を行うときは、できる限り切断その他の医療措置を行った医師と緊密な連絡を取り判定に慎重を期すること。
なお、眼鏡、補聴器、車いす(レディメイド)及び歩行器については、補装具交付・修理申請書等により更生相談所の長が判定ができる場合は、これにより判定しても差し支えないこと。
ウ 更生相談所の長は、補装具の給付判定を行うに当たつて、更生相談所に専任の医師又は適切な検査設備の置かれていないときは、法第一五条第一項に基づく指定医又は法第一九条の二第一項に基づく更生医療指定医療機関において当該医療を主として担当する医師の中から関係医学会等の意見に基づいて選定した専門医に医学的判定を委嘱すること。
(2) 給付の決定等
市町村長は、更生相談所の長の判定に基づいて、又は医学的判定を要しないものについて検討した結果、補装具の給付を決定したときは、速やかに補装具交付・修理券を交付すること。
また、その申請を却下することを決定したときは、速やかに却下決定通知書を発行し、申請者に通知すること。
(3) 型取り、仮合せ
義肢、装具及び座位保持装置の型取り並びに仮合せは、(1)に準じて専門医の指導のもとに実施すること。
(4) 適合判定
ア 更生相談所の長の判定に基づいて製作又は修理された補装具を給付するに際しては、(1)に準じて更生相談所の長による適合判定を受けなければならないこと。
イ 適合判定を行う際は、補装具の給付を受ける者、医師、補装具製作技術者、補装具給付事務に従事する市町村職員(以下「補装具担当職員」という。)及び身体障害者福祉司等の関係者の立会いのもとに実施することが望ましいこと。
ウ 義肢、装具及び座位保持装置の適合判定は、軸位及び切断端とソケットとの適合状況、又は固定、免荷、矯正等装具装着の目的に対する適合状況、安定した姿勢の保持状況、さらに使用材料、工作法、操作法の確実性について検査し、併せて外観、重量及び耐久力について考慮すること。
エ 義肢、装具以外の種目についても、ウに準じて検討し、当該補装具が申請書の使用目的に真に適合しているかどうかを判定すること。
オ 適合判定の結果、当該補装具が申請者に適しないと認められた場合は、製作業者に対し不備な箇所を指摘し改善させた後給付すること。
カ 生理的又は病理的変化により生じた不適合、申請者本人の過失による破損、取扱不良のために生じた不適合等を除き、給付後三か月以内に生じた破損、不適合は、製作業者の責任において改善させること。
(5) 装着訓練及び実施観察
ア 市町村長は、更生相談所の長と連絡して、随時、装着訓練に必要な計画を立て実施すること。
イ 装着訓練に際しては、補装具の装着について熟達した者をモデルとして専門医の指導のもとに実施指導を行うことが効果的であるので、実施に当たっては留意されたいこと。
ウ 市町村長は、給付した補装具について常に補装具担当職員、身体障害者福祉司等にその装用状況を観察させ、装着訓練を必要とする者を発見した場合は、速やかに適切な訓練を施すよう留意すること。
(6) 一括交付の取扱いについて
市町村長は、ストマ用装具は補装具交付券をもって、補聴器用電池、人工喉頭用電池、断端袋及び歩行補助つえ用先ゴムは補装具修理券をもって、次により一括交付することができること。
この場合、法第三八条による費用徴収に係る負担能力の認定は、補装具交付券又は補装具修理券一枚に記載された数量に相当する費用額について行うこと。
ア ストマ用装具
(ア) 補装具交付券一枚により二か月分を交付すること。
(イ) 補装具交付券は、申請一回につき二枚まで一括交付できるものであること。
イ 補聴器用電池
(ア) 年間に必要とされる基準数は、標準型の場合は乾電池二四個、高度難聴用の場合は乾電池であれば三六個、空気電池であれば三〇個であること。
(イ) 一括交付数の限度は、乾電池であれば一二個、空気電池であれば一五個までとする。
(ウ) 補装具修理券は、乾電池であれば一枚につき四個、空気電池であれば一枚につき五個を記載し、申請一回につき三枚まで一括交付できるものであること。
ウ 人工喉頭用電池
(ア) 年間に必要とされる基準数は、乾電池であれば一六個、蓄電池であれば二個までとすること。
(イ) 一括交付数の限度は、乾電池の場合八個までとすること。
(ウ) 補装具修理券は、乾電池の場合、一枚につき四個を記載して、申請一回につき二枚まで一括交付できるものとする。
なお、蓄電池に係る補装具修理券の取扱いについては、一枚につき一個を記載するとともに、申請一回につき一枚とすること。
エ 断端袋
年間に必要とされる基準数は、義手用四枚、義足用六枚であるが、これを補装具修理券一枚により交付することができること。
オ 歩行補助つえ用先ゴム
(ア) 職業の種類、歩行補助つえの利用状況等を勘案して六か月分を限度として必要最低限度の個数を、補装具修理券一枚により交付することができること。
(イ) 補装具修理券は、申請一回につき二枚まで一括交付できるものであること。
3 市町村が自ら行う場合の事務処理について
(1) 市町村が自ら設置する補装具製作施設で製作又は修理を行う場合
ア 更生相談所の長が行う処方又は適合判定等
更生相談所の長が行う給付のための判定、適合判定、装着訓練等については、2の業者に委託して行う場合に準ずること。
イ 給付の決定等
市町村長は、補装具の給付を決定したときは、速やかに補装具決定通知書を発行し申請者に通知すること。
なお、補装具決定通知書に代えて補装具交付・修理券を交付することができること。
また、その申請を却下することを決定したときは、速やかに却下決定通知書を発行し、申請者に通知すること。
(2) 市町村が補装具を購入して給付する場合
ア 購入して給付することが適当であるものについては、給付及び修理に当たり、更生相談所の長の判定を要しないものであること。また、業者に委託する必要はないものであること。
イ 給付の決定等
市町村長は、補装具の給付を決定したときは給付の日時を指定して、その旨を速やかに申請者に通知すること。
また、その申請を却下することを決定したときは、その旨を速やかに申請者に通知すること。
ウ 補聴器用電池、断端袋及び歩行補助つえ用先ゴムを一括交付する場合は、2の(6)に準じて行うこと。
4 費用の徴収について
市町村長は、法第三八条第三項又は同条第四項の規定により、当該身体障害者又はその扶養義務者から、その負担能力に応じた費用を徴収する場合は、補装具給付後一か月以内に納入告知書を発行して徴収すること。
5 給付決定の期間等について
補装具給付決定の迅速化を図るため、補装具決定通知書、却下決定通知書等の発行については、次のとおり取り扱うこと。
(1) 申請書を受理した市町村長は、調査票を作成するとともに、医学的判定を必要とするものについては更生相談所の長の判定を求め、原則として申請日より二週間以内に要否を決定するとともに、補装具決定通知書又は却下決定通知書を発行し、申請者に通知すること。
(2) 市町村長は、申請者に対して補装具交付・修理券を発行した場合には、委託業者に対して発券の旨及びその他の所要の事項(型取りの日時、場所等)を速やかに通知すること。
別紙1(各市町村長が個別に契約する場合)
別紙2(都道府県が一括して契約する場合)